自作PCで楽しむ!仮想通貨マイニング

マイニングをはじめてみたい人向けのPCを組む、仮想通貨に向いたPCパーツの選び方

手軽にPCマイニングを始める手順を解説 text by マイナー太郎

 最近、よく目にするようになったビットコインを代表とする仮想通貨。それに合わせ、PCでのマイニングも再注目されるようになりました。

 ただ、現在のマイニングの状況を詳しく知る人は少なく、「GPUを使って仮想通貨を採掘しているらしい」といった漠然としたイメージ方が多いのではないでしょうか。

 そこで、今回はPCでの仮想通貨マイニングとは実際に何を行うのか、マイニングを始めるには何が必要なのか、具体的な方法と、はじめる際に必要となるPCの性能を紹介したいと思います。

 なお、筆者としては、マイニングはCinebenchや3DMarkのようなPCの性能を引き出して数値化するベンチマーク的な部分も楽しさだと考えています。「電気代で赤字にならない」という点は意識しますが、マイニングに必要となる性能はどのような部分なのかを今回は主題にしています。

 ちなみに、今年の4月頃であれば大きな利益を出せましたが、記事執筆時点の8月4日時点の成果は電気代で赤字にならない程度といった感じでした。なお、マイニングで利益が出るかは相場の影響が大きく、このあたりはコントロールできないためタイミングや運次第な面があります。

マイニングを始めるには「マイニングソフト」と「ウォレット」から準備しよう

 PCでマイニングを実行するために必要となるのは2つ。ひとつは仮想通貨を採掘するための「マイニングソフト」と、採掘した仮想通貨を保管する財布である「ウォレット」です。

NiceHash Miner(表示されている数値は8月4日時点のもの)

 マイニングソフトに関しては、とりあえずはじめてみたい人には「NiceHash Miner」がお勧めです。

 仮想通貨にはビットコインを代表とする様々な種類があり、マイニングを行う際にはそれぞれの通貨に対応したソフトを用意する必要があります。「NiceHash Miner」はその手間を省いてくれるソフトで、自動でその時に自分のPCが最も効率よくマイニングできる仮想通貨を選び、自動でマイニングを行ってくれるソフトです。簡単に始められる環境が整っているのが今のマイニングの特徴です。

 マイニングした仮想通貨はビットコインに両替されて報酬として支払われます。ソフトの詳しい説明は省きますが、より詳しく知りたい方は公式サイトを確認してもらえればと思います。

 なお、NiceHash Minerはバージョンが複数用意されていますが、現時点でデフォルトバージョンとして公開されている1.7系のものを使用するかたちで問題ありません。

動作中はログが表示されます。(表示されている数値は8月4日時点のもの)
ウォレットソフトの「Jaxx」

 そして、マイニングソフトで採掘した仮想通貨を受け取るためには、通貨を保管するためのウォレット(財布)が必要です。仮想通貨用のウォレットには様々な種類が存在しており、扱える仮想通貨の種類もウォレット毎に異なっています。

 今回お勧めするのは「Jaxx」というウォレットです。Jaxxはビットコインやイーサリアムといった複数の仮想通貨を扱える他、WindowsやAndroid、iOSなど複数のデバイス間で連携して利用できるのが特徴です。もちろん、先にご紹介したNiceHash Minerの報酬を受け取るウォレットとしても使用できます。

Jaxxは様々な仮想通貨に対応しており、導入も簡単です。
ビットコインを選ぶとこのようなかたちで口座の状態が表示されます。
Jaxxはスマートフォンからも利用可能で、複数のデバイス間で連携して利用可能です。

マイニング向けPCの選び方、重要なポイントを解説

マイニングPCで特に重要なビデオカード、マザーボード、電源ユニットの3パーツ。

 マイニングPCで特に重要なパーツは「ビデオカード」「マザーボード」「電源ユニット」の3パーツ。この3種類はマイニングに適した特性を持つモデルを選ぶ必要があるので、重点的に紹介します。

 逆にこれ以外のPCパーツは、ケースなどに関しては冷却性能重視がポイントになりますが、どれだけコストパフォーマンスの高いものが選べるかといったあたりがポイントになります。

PCマイニングの最重要パーツはビデオカード、

 今回使用したのはSAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 470 4G GDDR5 OC。Radeon RX 470を搭載したビデオカードで、VRAMの容量は4GB。

 PCでマイニングを行う上で最も重要になるのがビデオカードです。

 仮想通貨をそれぞれ独自のアルゴリズムを用いて運用されており、これを処理するのに現在のGPUが適している状況になっています。

 ビットコインのように専用設計されたASICで演算するのが良い通貨もあれば、イーサリアムに代表されるAMDのPolarisアーキテクチャ(Radeon RX 400/500)のGPUと相性の良いもの、モナコインやジーキャッシュといったNVIDIAのPascal(GeForce 10)やMaxwell(GeForce 900)と相性の良いものもあります。

 CPUでもマイニングが行えますが、現状あまり相性の良い仮想通貨が無いため、電気代がギリギリ回収できるかどうかといった効率といった状態です。

 記事執筆中の8月2日時点では、比較的多くの仮想通貨のアルゴリズムと相性が良く、マイニング時にワットパフォーマンスが優れることから、Radeon RX 470搭載カードの「Sapphire NITRO+ Radeon RX 470 4G GDDR5 OC」を選びました。ミドルクラスのカードなので、今回はこのモデルを2枚使用します。また、今回は触れませんが、マイニング向けのチューニングもRadeonの方が進んでいるという面もあります。

 なお、現在Radeonは品薄となっていますが、Radeon RX 470搭載品以外にも、Radeon RX 480/570/580などであれば費用対効果の面で有利です。

 ビデオカードを選ぶ際の注意点としては、一部の仮想通貨はマイニング時に2GB以上のVRAMを要求するものもあるので、最低でも3GB、余裕を持って4GB以上のVRAMを搭載したモデルを選ぶことも重要です。

記事執筆時では入手困難なものの、コストパフォーマンスを考慮するとRadeon RX 470/480/570/580あたりがお勧め。
オーバークロックモデルなどをしていない標準的なモデルで問題ありません。
今回はRadeon RX 470搭載カードを2枚使用してテストを行います。
NiceHash Minerのサイトで表示されているマイニング性能の目安。画像は上が8月1日、下が8月4日もので、リアルタイムで更新されています。表示されている値からも、GPUが現在はマイニングに適し、CPUがマイニングに適していないことがわかります。

マザーボードはスロット配置に要注意、メーカーがマイニングに力を入れているとより安心

 マザーボードやCPUは直接マイニングの性能に影響しないので、最新世代の製品でなくても大丈夫ですが、スロット配置には気をつける必要があります。また、長時間稼働するので耐久性の高い製品の方が安心です。今回はポイントを押さえつつ扱いやすいASRock H270 Pro4を選択しました。

 最近はマイニング向けに設計されたマザーボードも販売されており、本格的にマイニングをするならそれらを利用するのがお勧めではありますが、ポイントを外さなければ安価なモデルでも問題ありません。
 まず重要になるのは、ビデオカードを取り付ける拡張スロットの数とレイアウトです。1枚だけビデオカードを使用するのであれば問題になるケースはほぼ無いと思われますが、2枚、3枚とビデオカードを使用する場合は、同時にスロットを使用できるのか、物理的にビデオカードを複数枚搭載できる配置になっているのかなどをチェックする必要があります。

 今回は2スロットを占有するビデオカードを2枚搭載するので、PCI Express x16形状のカードが挿せるスロットを2本以上備える点と、さらに冷却のためにカードの間に1スロット分の空きスペースを確保できるASRock H270 Pro4は、目的に合致したモデルなります。

 また、ASRock H270 Pro4は搭載部品に高耐久仕様のものが使用されており、湿度による電気短絡からマザーボードを保護する高密度ガラス繊維PCBを採用するなど、安定性が重視された設計になっている点もマイニング向きと言えます。

 このほかでは、メーカーがマイニングを意識しているかが今後重要になるかもしれません。ASRockはマイニング専用マザーボードをラインナップするなど、マイニングに力を入れているメーカーで、BIOSにマイニング用途向けの項目が用意されていたりもします。マイニングに安心して使えるという点もメーカーを選ぶ際のポイントになります。

自分が使用するビデオカード分のスロットがあるか、スロットは位置に無理が無いかなどが選ぶ際のポイントです。
ASRock H270 Pro4の背面パネル。
マイニング向けマザーボードのBIOS設定上には「4G Decoding」の項目が用意されています。これはビデオカードを多く搭載する際に必要となる設定の項目で、この項目があるかどうかもマイニングに使えるマザーボードがどうか判断する材料の一つになります。今回使用しているH270 Pro4にもこの項目は用意されています。

なるべく高効率なものを選びたい電源ユニット、数%の効率の差が年間では響く

 マイニングPCのランニングコストは主に電気代です。いくら高性能なGPUを使ってマイニングをしたとしても、採掘で得られた仮想通貨の価値より、マイニング作業で消費した電力の電気代が上回ってしまっては赤字になってしまいます。このため、電源ユニットの変換効率は大変重要です。

 現在の電源ユニットの多くは変換効率の指標である80 PLUS認証を取得しており、大まかな変換効率を知ることができます。マイニング専用として常時稼働させていれば数パーセントの効率の差が、年間では数万円~数十万円の差になることもあるので、これから選ぶのであれば80 PLUS GOLD認証以上の高効率電源を選ぶのがおすすめです。

 また、長時間安定して電力を供給し続けるためには、安定性と耐久性の両面に優れた電源ユニットである必要もありますビデオカードを2枚を用いる今回のマイニングPCであれば、2万円程度まではコストを掛けてでも品質に優れた電源ユニットを選ぶべきです。

 今回選んだのはSilverStone SST-ST65F-PT。80 PLUS Platinum認証取得の650W電源で、電源効率が高いだけで無く、常時連続稼働(24時間/7日)も可能な高品質をウリとするモデルです。出力容量も今回の構成なら十分な余裕があります。

ゲームルはフルプライグインタイプで、扱いやすい点もポイントのモデルです。
SST-ST65F-PTの出力。Radeon RX 470搭載カード2枚を使うのであれば十分な容量があります。
ケーブルは取り回しのしやすいフラットタイプになっています。

その他のパーツ構成

 マイニングは、ビデオカード以外は高い性能を要求しない面があるので、安価なPCパーツを積極的に選ぶことができます。ケースに関してはビデオカードが熱を持つので、冷却性能重視のモデルがお勧めです。

 今回の構成ではCPUやメモリ、ストレージをなるべく安く抑えましたが、普段使いやゲームもする場合は、これらのPCパーツのグレードを上げても問題はありません。

CPUの処理能力は特に必要ないので、LGA1151対応CPUで最も安価なIntel Celeron G3930を選択。
CPUクーラーはCPUに付属する純正クーラーを使用します。CPU負荷は特に高くないので付属品で十分です。
メモリも4GBあればマイニングには十分です。今回は4GBメモリのCrucial CT4G4DFS824Aを1枚だけ搭載しました。マイニング以外の用途でも使うのであれば、もう少し容量を増やしてもよいでしょう。
システム用のストレージは120GB SSDのWestern Digital WDS120G1G0B。一部のマイニングソフトはストレージにバッファをとる場合があるので、余裕をみて120GB程度の安価なSSDを選択するのがおすすめです。
PCケースを使用する場合、ビデオカードの発熱をケース外に排出できるものがおすすめです。今回のSilverStone SST-RL06BR-PROは、1万円前後という価格で4基のファンが標準搭載しているので、元々廃熱性能が高い点は魅力です。
OSはWindows 10 Home 64bitを使用します。Windows 10は障害発生時に完全にフリーズしてしまうことが少なく、ビデオカードのドライバにも制約が少ないため、マイニング用途に適しています。

 完成したPCがこちら。PCケースのSST-RL06BR-PROが見た目重視のPCケースであるため、まるでゲーミングPCかのようなルックスに仕上がりました。

 マイニングPCとしては、LEDは消灯できた方が嬉しいかもしれませんが、LEDの消費電力は非常に小さいものなので、追加でケースファンを用意するコストが掛らないことの方がメリットになるでしょう。

今回作製したマイニング用PC。

マイニング向けPCで24時間連続マイニングにチャレンジ

 今回構築したマイニング用PCを使って、NiceHash Minerで24時間連続マイニングにチャレンジしてみました。ちなみにテストをスタートしたのは8月3日で、完了したのは8月4日。

 まずは、NiceHash Minerを起動して「Settings」を選択。表示されたウインドウで、Bitcoin Addressの欄にウォレットソフトのJaxxで取得したアドレスを入力します。その他の設定は必須ではありませんが、「Service Location」を「Japan - Tokyo」、「Display Currency」を「JPY」にして、「Save and Close」で設定を保存します。

NiceHashのメインウインドウでSettingsをクリック。
報酬を受け取るためのビットコインアドレスの設定は必須です。これを忘れると報酬のビットコインを受け取れません。

 基本設定が完了したら、次は「Benchmark」を選択します。画面上部のデバイス一覧から、GPUにチェックが入っていることと、CPUにチェックが入っていないことを確認し、右下の「Start」を押してベンチマークを実行します。これにより、NiceHashがハードウェアの特性を把握して、最適なマイニングソフトを選択してくれるようになります。

NiceHashのメインウインドウでBenchmarkをクリック。
GPUにチェックが入っていることと、CPUにチェックが入っていないことを確認して、ベンチマークを実行します。

 ベンチマークが完了したら、いよいよマイニングの開始です。メインウインドウで「Start」を押すと、NiceHashが自動で選択したマイニングソフトが起動します。

 マイニング実行中は、ウインドウの下部に処理を継続した場合のレートが表示されます。SettingsでDisplay CurrencyをJPYに設定していれば、日本円でのレートが表示されます。

ベンチマーク完了後にメインウインドウで「Start」を押すとマイニングが開始されます。
ウインドウ下部には、実行しているマイニング処理に応じた報酬レートが表示されます(表示は8月3日時点のもの)。

 なお、24時間連続でNiceHash Minerを介したマイニングを継続した結果、報酬は1日当たり0.86313mBTC=約309.71円(8/4日時点)という結果になりました。ワットチェッカーで計測したところ、この間に消費した電力は6.88kWhでしたので、東京電力の一般的な電気料金(1kWhあたり19円52銭~30円02銭)で換算すると、約134~207円の電気代を差し引き、1日あたり約103~176円程度の利益が出たことになります。

24時間のマイニングで0.86313mBTC=約309.71円の報酬を得られました(表示されている数値は8月4日時点のもの)
今回のPCのピーク電力。24時間での消費電力は6.88kWhでした。
24時間マイニングを行った際のログ(表示されている数値は8月3~4日時点のもの)

簡単にはじめられるマイニング、一般的なGPUがあればあとは全自動のソフトにお任せ

 PCでマイニングをはじめること自体は簡単であることがわかってもらえたと思います。特にソフトは以前と比べて導入が簡単になりました。

 今回紹介したようなPCパーツを持っているのであれば、PCのマシンパワーが余っている際に行ったりする分には手軽に行えますし、今回紹介したPCのような構成であれば、マイニング用件普段使い用としても利用できます。

 今回はRadeonをメインに使用して紹介しましたが、GeForceでも当然行うことが可能ですし、より効率よくマイニングするためにチューニングを施してセッティングする面白さを楽しむこともできます。

 記事執筆時の8月4日時点では、成果は一日のマイニングで採掘できたのは電気代+αといった感じでしたが、PCの性能を引き出しつつ利益も出る遊びとしてマイニングを楽しんでみてはいかがでしょうか。

[制作協力:ASRock]