ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
NEC PC-9801シリーズ初のモニタ一体型モデル「PC-9801CV21」
2022年2月22日 00:00
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回はNECが1988年に発売した、PC-9801シリーズ初のブラウン管ディスプレイ一体型PC「PC-9801CV21」を取り上げます。
1984年にApple Computer(当時)から発売された初代Macintosh・Macintosh 128Kは、9インチのモノクロブラウン管モニタと本体が一体になった形状を採用し、天面には持ち運ぶために手を入れられるスペースと放熱板が設けてありました。そのフォルムはMacintosh 512K、Macintosh Plus、そして1987年に登場したMacintosh SEでも引き続き使われます。
そんなMacintoshと似たデザインを採用し、カラーブラウン管モニタと本体が一緒になった一体型PC-9801としてリリースされたのが、1988年のゴールデンウィーク前に出荷が始まった「PC-9801CV21」で、価格は355,000円でした。NECから発表されたのは1988年2月23日(火)で、同日にはPC-9801LV21とPC-9801UV11もお披露目されています。余談ですが、3月9日にはPC-88VA3も姿を現し、これらの件は月刊誌『Oh!PC』の1988年4月号で取り上げられていました。
PC-9801CV21のCPUは、10MHzと8MHzの切換が行えるV30を採用し、メインメモリも640kbytesを内蔵しています。グラフィックは4,096色中16色2画面が表示できるほか、3.5インチFDDも2基備えていました。さらに、この時期の3.5インチFDDモデルではお馴染みのサウンド機能も搭載し、FM音源3声・SSG音源3声を実現しています。
これだけの機能と10インチカラーブラウン管ディスプレイを、外見サイズ奥行き34×幅28×高さ33.5cmという中に詰め込み、重量約13.8kgを実現していました。HDDは内部スペースの都合上、内蔵することができなかったため、必要であればユーザー自身がSASIやSCSIカードなどを利用して外部で増設する必要があります。
天面にはMacintoshと同じく放熱板と、手を入れて持ち運ぶための取っ手が用意されていて、10kg以上ある重量のわりには手軽に持ち運べました。コードも、この当時はネットワークへの接続ということはほとんど無かったので、特に何も増設していなければ繋ぐのは電源コード1本だけで済んだこともあり、設置場所を机やコタツの上などへ気軽に移動させて使うこともできます。
背面には拡張スロットが2つ用意されているので、EMSメモリを増設するといったことも簡単にでき、小型ながら拡張性もそれなりに備えていました。残念ながら、外部へ出力するディスプレイコネクタは設置されていないので、内蔵したカラーブラウン管モニタが故障したり寿命が尽きてしまうと、使い続けることが困難になるのは弱点かもしれません。
キーボードは、右上に“PC-9801C”というロゴが入ったモデルが付属していて、カラーリングも他機種と違い本体色のやや明るいグレーになっていました。もちろん、PC-9801UやPC-9801Vのキーボードも使えるため、使用するだけならその辺に転がっている(笑)PC-9801対応キーボードで問題ありません。なお、本体カラーは経年劣化でくすんできてしまうため、現在ではかなり黒ずんだグレーになっています。
この時期の専門誌などを見てみると、PC-9801CV21を大きく取り上げている雑誌はほとんど無く、同時期に登場したPC-9801LV21やPC-88VA2/3にページを割いていることが分かりました。1988年といえば、エプソンが既にPC-98互換パソコンを市場へと送り込んでいた時期で、NECのPC-9801LV21よりも早くラップトップパソコン・PC-286Lを投入していたということもあり、NEC純正ラップトップがいかほどの完成度なのかという面で注目を集めていました。そのことを考慮に入れると、当時はPC-9801CV21やPC-9801UV11への注目度が低く、そしてPC-9801LV21への関心が高かったというのは分かる気がします。
PC-9801CV21は1モデルがリリースされただけで、表舞台からは早々に姿を消してしまいます。後継機種は、1991年に登場する12インチカラーブラウン管モニタ一体型98、PC-9801CSまで待たなければなりませんでした。