ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

お手頃価格だったパナソニックのMSX2+「FS-A1FX」

一目見た瞬間に印象に残る、赤色のラインが特徴的な1台です。本体右上にはMSX2+のロゴと、FDDの大きな文字が誇らしげにプリントされていました。外見がほぼ同じFS-A1WXがシックな印象を与えているのに対して、FS-A1FXはややポップに感じます。

 想い出に残る懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、パナソニックが1988年10月21日に発売したMSX2+規格のパソコン、FS-A1FXを取り上げます。

本体右側面にはジョイスティックポート1と2が設置されていて、上部にはFDDが装備されています。左側面には電源スイッチが用意されていて、押すと電源オンとなりました。

 1983年7月に発表されたMSX(1)規格はその後、1985年3月に登場したMSX2によって最大画面解像度が512×424(インタレース使用時)、最大表示色数が256色になるなど、表現力が一気に豊かになっていきます。そして1988年9月、さらなるMSX2+規格が発表されると、見た目の美しさなどでそれまで以上のパワーアップを実現することとなりました。

 MSX2では64キロバイト以上とされていたビデオRAMの容量が、MSX2+規格では128キロバイトと定められたほか、MSX2ではハードウェア縦スクロールのみだったものも、MSX2+では水平方向のハードウェアスクロールが可能となっています。最大表示色数についても、MSX2では256色だったところMSX2+では大幅に増えて、一気に19,268色となりました。これは、画面表示を受け持つVDP(ビデオ・ディスプレイ・プロセッサ)が、それまでのV9938に代わって新しく開発されたV9958となったことなどから実現したものです。

本体背面は左からCMT端子、RGB出力端子、ビデオ出力端子、音声出力端子、チャンネル切換スイッチ、RF出力端子、プリンタポート、カートリッジスロット2と並んでいます。

 それだけでなく、MSX2まではオプション扱いだった漢字ROMに関しても、MSX2+規格ではJIS第1水準漢字ROMが標準搭載となりました。このおかげで、BASICでも漢字表示が可能になっただけでなく、プログラム中に漢字を混ぜて使うことができるようになっています。一部機種を除けば、BASICからは“CALL KANJI”と入力することでいわゆるFEP(フロントエンドプロセッサ)が起動して、画面下に変換したい文字を入力することで漢字に変換してプログラムなどで使用することができました。

 このような仕様を盛り込んだMSX2+規格に則ったMSX2+パソコンが1988年秋口から登場するのですが、その中でもお手頃な値付けで登場したのが、今回取り上げたパナソニックのFS-A1FXです。この時期に登場したMSX2+マシンの中では一番安く、57,800円で購入することができました。スペックとしては、メインRAMを64キロバイト、ビデオRAMを128キロバイト搭載。カートリッジスロットを上面に1つ、背面に1つ用意していて、右側面にはディスクドライブも1基備えています。

 画面出力はRGBとコンポジットに加えてRF出力も可能で、ジョイスティックポートももちろん2つあります。プリンタポートやCMT端子も備わっているので、これまで使用していたプリンタやカセットテープのソフト、データレコーダを流用することも問題ありません。

本体を真正面から撮影しました。左から連射スライダ、内蔵ソフトの切り離しスイッチ、リセットボタン、そして電源、CAPS、かな、PAUSE、FDD IN USEのインジケータが並んでいます。手前には、囲みの中にPAUSEキーが位置していました。

 キーボードにはCPUを物理的に止めるPAUSEキーが用意されたほか、内蔵ソフトを起動せずに電源オンで即BASIC画面へと移行できる内蔵ソフト切り離しスイッチ、さらには連射スライダもサポートしているので、ゲームに、プログラミングにと便利に利用することができます。特に連射スライダは、スペースキーを連打することなくショットが撃てたりするため、お世話になった人も多いはず。

 ただし、MSX2+規格でオプションとされているFM音源は搭載されていません。これに関しては、別途FMパナアミューズメントカートリッジなどを利用すれば問題ないかと思われます。

 本機に関して大ざっぱな表現で説明するならば、「FS-A1FXと同時に発売されたFS-A1WXからワープロ機能とFM音源を取り去って、キーボードレイアウトを若干変更して価格をやや下げたモデル」と言えるかもしれません。ただし、コストダウン時に一番手を入れられそうなキーボードのキータッチやキーストロークといった質的な部分は、FS-A1WXとほぼ変わらない状態になっています。実際に使ってみてもキーは入力しやすいほか、一番よく使うと思われるカーソルキーの使用感に関しても長時間の運用で手が疲れるようなこともなく、快適に操作出来ました。

これは電波新聞社の『マイコンBASICマガジン』1988年11月号に掲載された広告です。これだけMSX2機種が安く販売されているのを見ると、大は小を兼ねるとはいえMSX2+マシンを買うかどうかで悩んでしまった人もいたかと思います。

 外観は、兄貴分のFS-A1WXがシックで渋い存在感を示しているのに比べると、赤いラインがアクセントとして目立つFS-A1FXはポップな印象を与えてくれるので、見ていて飽きが来ないデザインに仕上がっているのもポイントといえます。ちなみに、このタイミングで第2水準の漢字が印刷できる24ドット印字プリンタFS-PK1も、42,800円で発売されていました。

 MSX2+規格が登場したことでMSX2+専用ソフトも発売されることとなりますが、残念ながら最終的にはわずかな本数にとどまってしまうことになります。代わりに、動作している機種を判別してMSX2ならMSX2の、MSX2+であればMSX2+の挙動をするというソフトが登場していました。

 本機と同日に発売されたFS-A1WXとソニーのHB-F1XDJは69,800円、1ヶ月前に同じくソニーから発売されたMSX2機種・HB-F1XDmk2が49,800円だったため、この時期にMSXパソコンを買おうと考えた人にとってはいずれも魅力的で、どれを選ぶかで非常に悩んだのではないかと思います。57,800円のFS-A1FXにするか、1万円足しててんこ盛りのFS-A1WXにするか、1万円節約してMSX2のHB-F1XDmk2にするか……。それら以外にも同時期の広告を見てみると、FS-A1mkIIがソフト1本付属して29,800円、ソニーのHB-F1IIがジョイパッドとソフト1本同梱で26,800円、三菱のキーボード分離型MSX2のML-G30がソフト1本(イース)とテレビに接続するケーブル付属で79,800円だったとのことで、どこに決め手を置くかで購入するハードが変わっていたかと思います。

 MSX2+規格に則ったMSX2+マシンですが、最終的には三洋電機、ソニー、パナソニックの3社のみしか参入しなかったことなどもあり、MSX(1)やMSX2では見られたキーボード分離型といったバリエーションは登場しませんでした。