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エントリーCPUクーラーの新定番「DeepCool AK400」【CPUクーラーマニアックス】

DOS/V POWER REPORT 2022年夏号の記事を丸ごと掲載!

エントリーモデルらしからぬ冷えと作りのよさで早くも定番化必至

DeepCool Industries AK400
クーラータイプ:サイドフロー、付属ファン:12cm角×1、取り付け方式:バックプレート
実売価格:4,000円前後※価格は6月上旬時点のもの

低価格でも手抜かりなし

 DeepCoolは、激戦のエントリークラスに新設計のCPUクーラー「AK400」を投入した。同社は空冷CPUクーラー最強との呼び声が高いASSASSINⅢ、コストパフォーマンスの高さが際立っているAS500など、近年の空冷CPUクーラーシーンで大きな存在感を放っている。新製品であるAK400も当然、発売直後から人気商品となっている。

上から
正面から
横から

 ヒートシンクは空気が横向きに流れるサイドフローレイアウト。注目はダイレクトタッチ方式を採用している点。ベース部分のヒートパイプがCPUに直接触れる設計で、低価格モデルでよく見られる構造だ。ヒートパイプの本数は6mm径が4本で、フィンはマトリックスフィンデザインという立体的な独自設計を採用。本体サイズは高さが15.5cmに抑えられているので、ケース側板との干渉のおそれは小さく、ファン込みで奥行き9.7cmとスリムであるためメモリスロットとの干渉もない。

ベースプレート
バッファとなる銅製プレートがないダイレクトタッチ設計。レスポンスに優れる半面冷却力が劣る場合が多いが、低価格帯を中心に採用が多い
ヒートパイプ
ニッケルメッキされた6mm径のヒートパイプを4本搭載。エントリークラスのクーラーで採用例が多いが、ろう付け部分など製造のよしあしが出やすい本数だ
トップカバー
上部には樹脂製のカバーが装着されている。性能には関係ないが、この価格帯らしからぬ高級感を醸し出す

 付属ファンは12cm角で、ファン軸は流体軸受け。PWM対応で回転数は500 〜1,850rpm。最大風量は66.47cfm、静圧は2.04mmAqといったスペックだ。

 リテンションキットの作りはシンプルながらしっかりとしたもので、初心者でも簡単に取り付けられる点も人気を集めているポイントと言えるだろう。

流体軸受け採用の大風量ファン

 付属の12cm角ファンの外観は上位モデルのAK620に付属するFT120に近いデザイン。ただし細かなスペックや細部のデザインが異なっている。回転数は500 〜1,850rpmで最大回転数は高め。軸受けには流体軸受けが採用されており、静音性と耐久性に優れるとうたわれている。回転数を絞れば動作音はかなり静かで、実際に動かしたところ静音性と冷却力がうまく両立されていると感じた。

黒く統一された外観がシック。ブレードのデザインは、先端がシャープで全体的に湾曲が強め。ブレードは9枚羽根となっている
ベアリング
軸音が小さいFDB(Fluid Dynamic Bearing、流体軸受け)を採用
制振用ラバー
四隅には振動を吸収するための制振ラバーが装着されている

周辺との干渉は一切なし

 高さが15.5cmに抑えられているので、ケース側板との干渉も起きにくい。内部空間がタイトな一昔前のケースに使う場合でも問題ないだろう。In WinのA1 PLUSといった横幅のあるMini-ITXケースに組み込むことも可能なので、小型PCで冷却力を強化したい場合にも適している。厚みもファン込みで97mmとスリム。VRMヒートシンクとの干渉はなく、メモリスロットには一切被っていないので、RGB LED搭載メモリを用いる際、見栄えよく組むことができる。

メモリ
ヒートシンクはオフセットなしの設計だが、もっともソケット寄りのスロットにもまったく被っていないところがGOOD
ビデオカード
昨今のマザーボードレイアウトもあるが、PCI Expressスロットとの干渉はない
VRMヒートシンク
電源回路だけでなくヒートシンクとの干渉も抑えられている。ファンをオフセットせずともスペースには余裕がある

組み立てやすくがっしりとした作り

 リテンションキットはこれまでのDeepCool製品とは異なる新設計のものが付属する。スペーサは樹脂製に変更されているものの、バックプレートやリテンションプレートは金属製。クーラーを正規トルクで固定してもマザーボードが反りにくい。Intelマザーボード用にはマルチソケット対応のバックプレートが付属し、AMDマザーボードでは純正バックプレートを利用するようになっている。どちらも組み立ては簡単。ただしツールフリー設計ではなく、リテンションプレート固定時にプラスドライバーが必要だ。

付属品は各リテンションキットのほか増設用のファンクリップが付属。リテンションキットのスペーサはIntel用が黒、AMD用がオレンジになっている

 高さが15.5cmに抑えられているので、ケース側板との干渉も起きにくい。内部空間がタイトな一昔前のケースに使う場合でも問題ないだろう。In WinのA1 PLUSといった横幅のあるMini-ITXケースに組み込むことも可能なので、小型PCで冷却力を強化したい場合にも適している。厚みもファン込みで97mmとスリム。VRMヒートシンクとの干渉はなく、メモリスロットには一切被っていないので、RGB LED搭載メモリを用いる際、見栄えよく組むことができる。

バックプレートはIntelマザーボード用のバックプレートはマルチソケット対応のもの。金属製で折り返しによる補強も加わり、LGA1700で問題になるマザーボードの反りも抑制する
樹脂製のスペーサを採用。おそらくコストカットのためだが、プラットフォーム名が刻印されているなど作りが細かい
リテンションプレートは左右2枚のバーを用いる方法ではなく、外周がつながった1枚のプレートを用いる方式を採用。強度もあり変形しにくい

BENCHMARK TEST

冷却力も静音性もエントリークラス最高峰

 冷却力と動作音のテストはCore i7-12700Kを用いて行なった。電力制限は無制限に設定し、動作クロックが下がらないようにしている。アイドル時のCPU温度は28℃とライバル製品のKOTETSU MarkⅡ Rev.Bよりも4℃低く、CINEBENCH R23のマルチスレッドテストを10分間連続実行する高負荷テスト時の温度は1℃低い値を記録。半面、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(以下FF14ベンチマーク)中は64℃と、1℃高い結果だった。

 動作音はアイドル時に27.8dB、高負荷時に48.4dBと優秀。高負荷時は比較製品よりも1℃低い程度だったが、動作音は体感上でも圧倒的に静かだ。また、ファンの回転数が約15%のアイドル状態は耳を近付けてやっと聞こえるレベル。アイドル時、高負荷時とも静音性はエントリークラス中トップレベルと言える。AK400のブレード形状は、静音性において評価の高いAK620のものに近く、これが効いている可能性がある。

 ユーザー視点からAK400を評価すれば、これまでエントリーモデルの指標だったKOTETSU MarkⅡ Rev.Bの完全上位互換とも言える仕上がりだ。早速売れ筋の仲間入りしていることにもうなずける検証結果だった。

ついに登場したエントリーCPUクーラーの新チャンプ

  • クラス最強と言える冷却性能
  • 全域で見ても優れた静音性
  • 剛性や細部の作り、見た目でもお値段以上

 人気製品がひしめき合うエントリークラスで最高峰の冷却力と静音性。発売後にすぐ完売してしまったのも納得の仕上がりで、「迷ったらAK400」と人に勧められる製品だ。組み立てやすさやヒートシンクの仕上げのよさもこのクラスではずば抜けた存在だ。

【検証環境】
CPUIntel Core i7-12700K(12コア20スレッド)
マザーボードMSI MAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4(Intel Z690)
メモリMicron Crucial CT2K8G4DFS832A(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 3060 Ti GAMING X TRIO(NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti)
SSDWestern Digital WD Blue SN570 NVMe WDS500G3B0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、500GB]
電源MSI MPG A850GF(850W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro
グリス親和産業 OC Master SMZ-01R
室温25℃
暗騒音30dB以下
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時CINEBENCH R23 Multi Coreを10分間連続実行した際の最大値
CPU温度HWiNFOのCPU Packageの値
そのほかの温度HWiNFOの値
動作音測定距離ファンから20cm

[TEXT:清水貴裕]

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