パワレポ連動企画

Power Supply Unit 診断室「玄人志向 KRPW-GA750W/90+」編

DOS/V POWER REPORT 2021年秋号の記事を丸ごと掲載!

 玄人志向のGold認証電源には、フルプラグイン方式で性能とコストのバランスがよい「GKシリーズ」(2017年発売)がある。定番モデルで「今まさに使っているよ!」という読者の方も多いだろう。そして2021年6月、同じGold認証電源の新モデルとして「GAシリーズ」が登場している。

 GAシリーズは80PLUS Gold認証、フルプラグイン方式を継承。従来モデルより奥行きが1cm拡大して15cmとなった。少し大きくなった筐体には13.5cm角ファンを搭載。GKシリーズの12cm角ファンから大口径化するとともに、ブレードはGKシリーズで採用していた7枚羽根から11枚羽根に増やしている。これにより低回転時でも十分な風量を稼げるようになった。加えて準ファンレスモードも搭載。電源内部の温度が基準より低いときはファンの回転を停止する。

 出力に目を移すと、GKシリーズは550Wと650Wモデルをラインナップしていたが、GAシリーズでは750Wと850Wモデルを展開している。小出力帯は今後もGKシリーズがカバーし、GAシリーズは消費電力が増大傾向にある最新CPU&GPUを搭載するPCをカバーするという方向だろう。GAシリーズこそがGold認証電源の「新定番」の大本命と言える製品だ。

玄人志向 KRPW-GA750W/90+(実売価格:10,000円前後)
規格:ATX、定格出力:750W、ファン:13.5cm角(底面)、80PLUS認証:Gold、ケーブル:フルプラグイン、電源コネクタ:ATX20/24ピン×1、ATX/EPS12V×2、Serial ATA×6、ペリフェラル×3、PCI Express 6+2ピン×4、サイズ(W×D×H):150×150×86mm
Lineup(価格は2021年秋号発売時)
製品名出力奥行き80PLUS認証実売価格
KRPW-GA850W/90+850W15cmGold12,000円前後
KRPW-GA750W/90+750W15cmGold10,000円前後

4年ぶり!玄人志向がGold認証の新モデルを投入

+12Vは62.5A(750W)のシングルレール
+12Vは62.5Aなので750W。+3.3/5VはDC−DCコンバータを介して降圧する。+3.3/5Vはともに20Aなので、+12V出力として利用できるのは実質700W(60A)程度と見積もるのがよい。5Vスタンバイは3Aあり、タブレットの充電なども余裕だ

 奥行きが1cm拡大しているが見た目ではそれほど大きくなった印象はない。フルプラグイン方式やフラットケーブルの採用と相まって、ケース内での収まりや各パーツとの干渉はほとんど生じないだろう(とはいえ、1cm長いので注意!)。ケーブル長は1割程度長くなり、ATX/EPS12Vは70cm、PCI Expressも1段目が70cmの位置にある。電源をケース内底面に置くレイアウトでもケーブル長が届かなくなることは少ないだろう。

ロングケーブル&オールフラット
KRPW-GA750W/90+ではATX24ピンが60cm、EPS12Vが70cm、PCI Expressは1段目が70cmで2段目が85cmなど。Serial ATAは1段目が55mで以降10cm間隔。箱を開けると「ケーブル多くない?」と感じるほどすべてが長めだ

 一つうれしいところは、ケーブル側端子の刻印だ。電源本体側端子横に刻印があるのは一般的だが、GAシリーズではケーブル側端子にもそのケーブルが何であるかが刻印されている。慣れた方なら判別はできたとしても、初めての方が同じ8ピンのEPS12VとPCI Express補助電源を見分けるのは難しい。白い刻印は薄暗いケース内でも識別できるので、作業性も向上する。こうした細かい心遣いがうれしい。

接続箇所の判別がカンタン!本体とケーブル双方の端子に刻印あり
本体端子横に刻印があるプラグイン電源は多いが、ケーブル側端子に刻印がある製品はめずらしい。PC組み立て初心者や老眼(苦笑)にも優しい設計だ

 冷却面では準ファンレスモードが搭載されている。電源投入時のファンは回転停止状態で、負荷をかけてファンが回転を始めても、11枚羽根の13.5cm角ファンの動作音はほとんど聞こえず事実上「無音」だ。

Gold認証の従来モデルと比べ高負荷時の省エネ性能が向上か KRPW-GK650W/90+と比較した。KRPW-GA750W/90+は高負荷時の消費電力が7W少なかった。出力が100W大きいのに消費電力が減っているのは注目だ
準ファンレスモード搭載で故障か?と思うほど静か! 内部の温度が低いときはファンが回転を停止する準ファンレス仕様。電源投入時はファンが回らず違和感を覚えたほど。ファンが回り出しても負荷にかかわらず静か
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 3900XT(12コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX X470-F GAMING(AMD X470)
メモリKingston HyperX Savage DDR4 HX430C15SBK2/16(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX2080(NVIDIA GeForce RTX 2080)
SSDSolid State Storage Technology Plextor M8Se(G)シリーズ PX-512M8SeG[M.2(PCI Express3.0 x4)、240GB]
OSWindows 10 Pro 64bit版
室温29℃
暗騒音32.2dB
アイドル時ベンチマーク終了10分後の値
高負荷時3DMarkを実行中の最大値
動作音測定距離ファンから約15cm
電力計Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

高安定・低ノイズ ビジネスPC〜ゲーミングまで超オールラウンダー電源!

 PSUの性能だけでなく寿命も左右するコンデンサには、「ドヤッ!」と言わんばかりに、すべて国内メーカーの耐熱105℃タイプを使っている。アルミ固体コンデンサも主要部分に多用し、これらも国内産または日本メーカーの海外生産品だ。

【藤山の注目ポイント】
何と言っても最大の特徴は見たことのないレイアウトだ。トランスを端に置くのは最近見かけるが、1次側コンデンサ、DC−DCコンバータ、5Vスタンバイの電源回路の位置がおもしろい。熱源にファンのエアフローがしっかり当たる設計だ。新たに回路を起こした玄人志向の「よいものを作る」という開発スタンスがここに現われている。
Active PFC回路。メイントランスを退け中央に鎮座する1次側は青がまぶしい日立製の耐熱105℃タイプの電解コンデンサ。一般的な電源と比べても大容量の560μF
メイントランス。枯れた回路も多いGold認証電源だが、本製品はイチから回路を起こしているようだ。風量の少ない中心部に1次側コンデンサ、その周囲の風量が大きい部分に熱源を配置するコンセプトと思われる
2次側平滑回路。平滑回路の主要どころはニチコン製2,200μF×3本。大容量の電解コンデンサに加え大容量の固体コンデンサを併用している。そのほかもすべて国内メーカー製コンデンサだ

これまでに見たことのないレイアウト!

 中を見てまず驚かされるのは、これまでに見たことのないレイアウト。Active PFC回路近くの端にレイアウトされるべき1次側の電解コンデンサが、本製品では基板中央に鎮座している。そして通常ならコンデンサがある場所には、5Vスタンバイ用の回路がある。本電源は5Vスタンバイが3Aと一般的な電源に比べ高くなっているが、一回り大きなトランスが使えるようになったためだろう。

 またファン軸の直下となる1次側コンデンサの周囲には、パワートランジスタなどが配置されている。普通に考えればコンデンサを熱源でサンドイッチするのは禁忌。しかし本製品では大型ファンのブレード直下に熱源を配置し、冷却効果を高めているようだ。

 2次側平滑回路には電解・固体コンデンサを配置。時折大きなノイズが出るものの、これらコンデンサが功を奏して全体的に見れば低ノイズだ。また安定性も特筆ものだ。EPS12VだけでなくPCI Expressも負荷を検知し昇圧する機能を設けているようで、振れ幅は+0.1 〜−0.2Vに抑えられている。ATX24ピンにいたっては0.1Vの降下と驚くべき安定性だ。GAシリーズがGold認証フルプラグイン電源の新定番となることは明白だ。

基準電圧は3系統とも12.1Vと理想的。ATX24ピンの安定性は抜群で最大でも0.1Vの降下に抑えられている。EPS12Vは負荷を感知し昇圧するタイプで+0.2V〜−0.2Vと安定。さらにPCI Expressも負荷検知型で+0.1V。ハンパない安定感だ
回路を新規に起こした電源はノイズが大きくなりがちだが本製品は違う。従来モデルと比べてスパイクは目立つがそのほかは山が小さく低ノイズ。2次側コンデンサが功を奏しているようだ
長周期で見ると大きなうねりもなく交流成分はまったく見られないが、±50mV程度のノイズは見られた。とはいえ一般的なレベルなのでマイナス要素と言うほどではない
【検証環境】
電圧計測方法三和電気計器 PC-20を3台使用し、各コネクタの電圧を計測
リプル計測方法Pico Technology PicoScope2204を使用しアイドル時に計測

診断票:価格、サイズ、安定性さまざまなPCにとってちょうどイイ電源

 「さすが玄人志向!」と賛えたい電源だ。負荷検知型の昇圧機能をEPS12VだけではなくPCI Expressにも搭載して安定感は抜群。ATX24ピンもド安定だ。長周期ではちらほら出る大きなノイズがあるものの、全体的には低ノイズ。静音性や熱対策、コネクタの刻印までよく考えられており素晴らしい。本電源を一言で表わすなら「どんなマシンに使ってもちょうどイイ」だ。

[TEXT:藤山哲人、検証協力:長畑利博(アイティースリー)]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2021年秋号」の記事をまるごと掲載しています。

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