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ATXケースの選び方 2015年版

10年使えるATXケース徹底紹介(1)

DOS/V POWER REPORT 2015年3月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集記事をほぼまるごと紹介するこのコーナー、今回は2015年3月号の特集記事「10年使えるATXケース徹底特集」を掲載する。

 規格品ゆえ使い回しされることが多く、他のパーツに比べ交換頻度の低いATXケースにスポットを当て、進化した最新のATXケース事情を解説。さらに注目のATXケース18台を順次紹介する。

 なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年3月号は全国書店、ネット通販にて絶賛発売中。3月号では本特集のほか、今話題の低価格タブレットPCを筆頭にその魅力に迫る「2万円からのフル機能激安PC選び」、用途・予算に合わせて選ぶ「低価格CPU大全」、髙橋敏也氏による連載記事「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」など、多数の記事を掲載。

 今号の特別付録は「使えるPC小物&周辺機器大カタログ」。ちょっと欲しい!今すぐ欲しい!がいっぱい!!の内容だ。


- ATXケースの選び方 2015年版 -
10年使えるATXケース徹底紹介(1)


10年使えるATXケースはこう選べ!

 ATXケースは今やバランス型が主流。内部構造の進化により、組み込む構成が制限されることも減った。パーツの選択肢の豊富な、長く付き合えるPCケースが増えている。

 毎年のように世代が変わり、機能や性能が向上するCPUやビデオカードとは異なり、PCケースの進化は緩やかだ。拡張ベイにパーツを追加したり、ファンを交換したりすることで延命しやすいこともあり、10年前のものを使い続けているユーザーも少なくない。

 しかし、ここ1、2年で発売されたPCケースには、そうした古いPCケースを使い続けているユーザーにこそオススメしたい、さまざまな進化のポイントが凝縮されている。

 たとえば最近主流のバランス型PCケースでは、非常に静かなPCが作れる。しかし各所にファンを追加すれば冷却性能を向上できるので、高性能なパーツを組み込んだゲームPCに仕立て上げることも可能だ。

 3.5インチシャドーベイや5インチベイを取り外し、内部構造を大きく変更できるPCケースも登場した。ベイを外すことで、水冷用のラジエータや大型CPUクーラー、高性能なビデオカードを干渉なしに取り付けられるようになる。今は使わないとしても、必要になったときには対応できる。そんな「懐の深さ」を感じさせるPCケースが増えている。

 今回の特集では、今後10年でもメインで使い続けられそうな最新ATX対応ケースを紹介する。今まで使ってきた古いPCケースでは味わえなかった自由さと懐の深さに、きっと驚くだろう。

【ここ数年でとくに進化した機能や機構】

バランス型なら冷却強化も容易
水冷ラジエータへの対応を強化
バランス型の基本構造は密閉型だが、各所に防音カバーで覆われたファンマウンタを搭載する。ファンを追加すれば簡単に冷却性能を強化できる
ミドルタワークラスながらも、天板や底面、前面のファンマウンタを利用し、24cm以上の超大型水冷ラジエータが組み込めるものが増えている
不要なベイは取り外せる
大型ビデオカードも組み込める
3.5/2.5インチシャドーベイや、5インチベイを取り外せる機能も一般的になった。前面や天板を大型水冷ラジエータ用のスペースとして活用できる
シャドーベイをユニット化して外したり、構造を変更したりすることで、長さ40cm以上のビデオカードを組み込めるようにしたものが一般化

2015年版!ATXケースのチェックポイント

冷却と静音を強化する仕掛け
重要度★★★

 冷却性能を判断する一番のポイントは、ファンのサイズと搭載(可能)数だ。ファンの風量は、同じ回転数ならサイズが大きいほど多くなり、ファンの数が多ければケースの内部に冷たい外気を取り込みやすくなる。前面や天板に多数の小さな穴があいた「メッシュ構造」も、外気を取り込みやすくするための工夫であり、冷却性能の向上に貢献する。

 静音性を重視したい場合は、筐体の密閉性が高いこと、側板や天板に防音材が貼ってあること、前面扉を搭載することなどに注目したい。ファンの回転数を調整するファンコントローラも有効な装備だが、これはマザーボードのユーティリティで代用できる。

【冷却力アップ!】

ファンの風量はサイズと回転数に依存する。同じ回転数なら8cm角より12cm 角、12cm角より14cm角のほうが冷却性能が高い
C P Uクーラーの冷却を強化したいなら天板、ビデオカードの冷却を強化したいなら側板か底面など、発熱源に近い位置にファンを増設できるかも重要だ

【静音性アップ!】

バランス型ケースでは、天板や側板、前面扉に防音シートが貼られていることが多い。内部からの音漏れを防ぐための工夫だ
ファンコントローラでファンの回転数を低くすれば、動作音を小さくできる。ただし冷却性能はいくぶん低下するので、利用シーンによって使い分けたい

大型パーツの収納力
重要度★★★

 最近は静音性と冷却性能の両立を狙ったCPUクーラーやビデオカードの大型化が目立つ。干渉なしで搭載可能であるかをしっかりとチェックしておく必要がある。幸いこの二つに関しては、PCケースのスペック表に対応サイズが記載されることが増え、購入後に悲鳴を上げるようなことは少なくなった。

 1,000Wクラスの電源ユニットには、奥行き18cm以上と大型のモデルもあるが、一般的なATX対応PCケースなら問題になることは少ない。ただ底面ファン用のスペースに干渉しやすいことは覚えておこう。

 ATXケースは短辺が約24cmの一般的なATX対応マザーボードに合わせて設計されているが、奥行きが短いPCケースの場合、5インチドライブやHDDと、マザーボードやビデオカードなどとの隙間に余裕がないことがある。写真や実物で確認しておきたい。

何cmのビデオカードに対応?
電源ユニットはほぼ問題なし
最近ではほぼすべてのPCケースで、組み込み可能なビデオカードの長さをスペック表に明記している。購入前に確認しておこう
奥行きが18cm以上あるような大型電源でも、底面配置の一般的なATX対応PCケースなら干渉はまず発生しない(写真は16cmのもの)
マザーボードと拡張ベイの距離
CPUクーラーは高さに注目
奥行きの短いPCケースの場合、マザーボードの端と拡張ベイとの距離が近く、写真のように干渉してしまうことも
CPUクーラーの高さが、PCケースが許容するものより大きい場合、側板が閉じられなくなってしまう。双方ともに事前のチェックが重要だ

拡張ベイまわり
重要度★★★

 3.5インチシャドーベイの数は、サーバーPCなど多数の3.5インチHDDを組み込みたい場合には重点的にチェックしたいポイントだ。5インチベイに組み込むアダプタもあるが、ケーブルの取り回しを考えるなら、シャドーベイだけで配線できるほうが便利だ。

 最近は各ベイをユニット化し、脱着できるPCケースが増えている。大型ビデオカードや水冷ラジエータを組み込んでゲームPCを作りたいなら、積極的に検討したい。 なお、すべてのベイを外せるPCケースでは、ケース底部やマザーボードベースの裏側に2.5インチシャドーベイを装備することが多い。ベイユニットがなくても、大容量SSDを1、2台くらいなら組み込めるのだ。

組み込むHDDの数を事前に確認
通常の5インチベイは消滅する?
多数の大容量HDDを組み込むサーバーPCでは、3.5インチシャドーベイの数が重要になる。ベイの近くにファンがあるかどうかも確認したい
ケース内部でそれなりの容積を占める通常サイズの5インチベイを外せるものや、スリムドライブのみの対応というPCケースが増えた
ビデオカードの冷却にも
SSDなら組み込み可能
シャドーベイを外すことで、ビデオカード周辺に前面ファンの風が届きやすくなる。冷却効果を高めたい場合にも有効なギミックだ
内部ベイをすべて外しても、2.5インチシャドーベイが利用できるというものが増えた。大容量SSDをシステムドライブとして活用しよう

パーツの組み込みやすさ
重要度★★☆

 最近のATXケースは、大型のCPUクーラーやビデオカードに対応するため、大型化が進んでいる。そのため内部はかなり広く、今回取り上げた製品なら、組み込み時にパーツ同士が干渉する可能性はほぼない。

 組み込みをラクにしてくれるギミックも一般化した。「ツールレス機構」は、光学ドライブや3.5インチHDDをネジなしで組み込める機能だ。大きめの「メンテナンスホール」を備える場合は、バックパネルを利用するCPUクーラーを、マザーボードを外さなくても脱着できる。側板をネジ止めなしで脱着できるPCケースも増えた。

 ただ、天板とマザーボード上端の隙間が狭いPCケースに、大型のCPUクーラーを組み込むと、マザーボードのATX/EPS12Vコネクタに、電源ケーブルが挿しにくいことがある。ムリに挿そうとすると、ヒートシンクのフィンでケガすることもあるので、延長ケーブルで対処するほうが安全だ。

CPUクーラーの着脱がラクに
ネジ止めナシで側板を脱着
マザーボードベースに設けた穴から、マザーボード裏面にアクセスできるメンテナンスホール。大型CPUクーラーの脱着時に便利
メンテナンスや拡張作業時など、側板を外す機会は多い。いちいちネジを付けたり外したりしなくてもよい製品だと、作業が楽になる

前面インターフェース
重要度★☆☆

 フロントポートのUSB 3.0対応は、激安ケースも含めてほぼ完了しており、あまり悩む要素はない。天板手前などポートが上向きのタイプは、内部にホコリがたまりやすいので、フタで隠せると故障しにくい。前面に装備するタイプだと、そういったトラブルに悩まされる可能性は少ない。

保護カバー付きのポートも
側面に装備するタイプも
ポートが上向きだとホコリがたまりやすいので、カバーで保護できるものがよい。ただ使うたびにカバーを脱着するのはちょっとめんどうかも
デザインを優先し、天板や前面パネルにインターフェースを装備しないPCケースも登場してきた。PCケースの置き場所を選ぶ上、正直ちょっと使いにくいレイアウトのものもある

裏配線対応ギミック
重要度★★☆

 電源ケーブルをマザーボードベースの裏に回して整理し、メインパーツを組み込む側から見せないようにする「裏面配線」機能も、多くのPCケースで利用できるようになった。しかし利用できるスペースの広さや、ケーブル整理のしやすさには違いが見られる。

 スペースが広ければ、厚みが出ないようにケーブル同士を束ねる必要がなくなるため、整理の難易度は下がる。右側板がボコッと膨らんだタイプも、実質的にはスペースが広いPCケースと同じだ。

 最近では、ケーブルがバンドで整理済みのPCケースも登場している。どこにどのケーブルをどう通すか、といったことを考えなくてもよいので、作業が格段に楽になる。

スペースは広い方がよい
整理済みのPCケースも登場
マザーボードベース裏面のスペースが広いと、各種ケーブル類を薄くまとめなくてもよいため、配線の難易度が下がる
PCケースのピンヘッダケーブルが、バンドなどで整理済みの製品も登場した。追加の電源ケーブルなどをまとめ直すだけでよいのでラクだ
右側板の膨らみにも注目
ケーブル通し穴が大きいと便利
右側板が大きく膨らんでいるPCケースの場合、ここを使ってケーブルを遊ばせることが可能だ
裏面配線側に回す電源ケーブルはコネクタが大きく、ケーブル自体も太いものが多い。通し穴が大きめだと作業がしやすくなる

清掃のしやすさ
重要度★★☆

 最初は気が付きにくいが、「防塵フィルタの清掃のしやすさ」は、長く安定して使うためには非常に重要だ。ホコリがCPUクーラーやビデオカードのフィンやファンに付着すると、空気の通りが悪くなり、冷却性能が低下する。そのため吸気ファンの手前に防塵フィルタを搭載することが多いのだが、当然だがここにはホコリがたまりやすい。清掃せずに放置すると、外気を効率的に取り込めなくなるので、冷却性能が低下する。

 まずはPCケースが搭載する吸気ファンの位置を確かめ、そこに防塵フィルタを搭載するか、防塵フィルタは取り出しやすい構造かどうかを確認したい。前面側から簡単に外せる構造だと、清掃もしやすいだろう。

 電源が底面配置で、ファンを底面に向けるタイプなら、底面の防塵フィルタの取り出しやすさにも注目しよう。最近は、底面フィルタも前面から引き出して清掃できるPCケースが登場している。

前面から簡単に外せるとラク
底面フィルタの外し方にも注目
一般的には前面ファンが吸気ファンとして機能する。前面ファンの手前にある防塵フィルタの外しやすさに注目しよう
長く使っていると、底面の防塵フィルタにもかなりホコリがたまる。フィルタは背面から外せるようになっているのが一般的

前面扉の仕様
重要度★☆☆

 前面扉の開く方向は、設置場所を決定する重要なポイントだ。ヒンジが左なら自分の左側に設置しないと使いにくいし、逆なら右側に設置したい。その意味で、ヒンジを付け換えることで開く方向を変更できる、あるいは両開きに対応するPCケースは、置き場所を選ばず使えるのが便利だ。

前面扉の開く方向を変更
ヒンジの固定場所を左右両方に装備し、前面扉が開く方向を変更できるPCケースは、置き場所を選ばないので便利

[Text by 竹内亮介]



DOS/V POWER REPORT 2015年3月号は2015年1月29日(木)発売】

★第一特集「10年使えるATXケースを買う」
★第二特集「2万円からのフル機能激安PC選び」
★特別企画「低価格CPU大全」「スマホから使える多機能リモコン」「ブラウザゲーム群雄割拠」
★連載「最新自作計画」「POWER REPORT PLUS」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

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(AKIBA PC Hotline!編集部)