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頂上対決のポイントは「試合開始20分」? FM vs RPG戦の隠れたポイントを紐解く

~試合の流れを徹底解説!Revolレポート~

本記事は、LJLの詳報レポートを掲載するRevolレポート(SANKO Webサイト掲載)を特約の元、転載/編集したものです。

 Season2 FinalとGrand Championshipは共にDetonatioN FocusMe(以下FM)とOzone Rampage(以下RPG)の対決だった。

 結果はSeason2 FinalはRPGが勝ち、Grand ChampionshipはFMが勝ったというものだったが、どちらの対決においても共通したあるデータがある。それは試合時間20分の時点においてGlobal Goldが勝っているチームがその試合に勝利しているというデータだ。

 Season2 Finalの2試合目は差額が200Gold程度なので影響はなかったかもしれないが、それ以外の試合では1,000Goldから2,000Gold以上離れている。両チームとも実力が拮抗しているために中盤の時間帯にさしかかった時点での有利不利が試合の勝敗に直結したのだと思われる。

 ではいかにRPGが20分までに有利を作り出し、そしてそれにFMは対抗したのだろうか。今回はGrand ChampionshipだけでなくSeason2 Finalも含めて調べていきたい。

RPGの有利の作り方

 RPGの有利の作り方は1つの強力なパターンを中心にしている。それはTopのAMUSE選手を活かした集団戦だ。BotのGankにあわせて、もしくはドラゴン戦にあわせてテレポートを使用して集団戦を開始することが多い。RPGはこのパターンで不利を覆したり、有利を作り出している。

 実例をみていこう。まずはSeason2 Finalの1戦目だ。

BotにDoad選手がGankしたタイミングでテレポートを使用
遅れてBonziN選手がテレポートするがRPG側が先手を取っている
BonziN選手はテレポートをキャンセルし、RPGはBotで2killをとった

 TopのAMUSE選手がレーニングの主導権を握りきった段階でBotへGankしている。それにあわせてAMUSE選手がBotへテレポートをし、集団戦を有利な状況で始めることができている。

 AMUSE選手のレーニング能力の高さ、そして集団戦の上手さをチーム全体のアドバンテージにつなげることができている。

 次にGrand Finalの1戦目を確認しよう。この試合ではテレポートを使って不利な状況を覆すことに成功している。

KazuXD選手がMeron選手を捕まえたところから集団戦が開始する
Yutapon選手の方が先にBotへ飛ぶことができたが、AMUSE選手もほぼ同じタイミングで参加している
Yutapon選手とKazuXD選手はかろうじて逃げることに成功する

 集団戦が開始する直前ではFMが3kill、RPGは1killでありGlobal GoldでもRPGは負けている状況だ。今回はFM側のほうが有利な状況で集団戦を開始できているし、さらにはYutapon選手の方がAMUSE選手よりも若干ではあるが先に集団戦に参加できている。ここはSeason2 FinalからのFMの改善点の1つだろう。しかしMeron選手に攻撃を集中できなかったこと、そしてRokenia選手がすぐさま倒されてしまったことが影響してFMは集団戦に勝てなかった。

 RPGは集団戦が終わった段階でKill差を1Kill差に縮め、なおかつGlobal Gold差も1,300Goldから600Goldに縮めている。

 以上がRPGの20分までの有利の作り方だ。それに対しFMはどんな対策をとったのだろうか。ここからはFMを中心にみていこう。

FMの対策

 対策として最初に思い浮かぶのはAMUSE選手よりも先にテレポートをして集団戦に参加することだ。その例をみてみよう。Season2 Finalの3戦目だ。

Rokenia選手とAstarore選手がしかけたタイミングでBonziN選手がテレポートをしている
AMUSEが少し遅れてテレポートを使用
FMが3Killをとり大きな有利を得た

 集団戦が始まる前はGlobal Goldに大きな差はなかったが、TopのBonziN選手とAMUSE選手の間には大きな差があった。AMUSE選手が1Killと48CS上回っており、1,000Gold程勝っていた。それだけBonziN選手が負けていたにも関わらずGlobal Goldが引き離されていなかったのはTop以外は勝っていたからだろう。

 そういった状況でBonziN選手が先にテレポートを使用し、対するAMUSE選手はそれへの対応が遅れてしまった。RPGからすると一番育っているAMUSE選手を活かせず、一方のFMからするとAMUSE選手を潰しつつなおかつ育っているCeros選手とRokenia選手を活かせた形だ。

2つのテレポート

 FMが実行した対策はこれだけではない。Grand Championshipの3戦目で実行した方法だ。彼らはすでに1戦目と2戦目を落としており非常に厳しい立場にたたされていた。そんな中でMidのCeros選手にテレポートを持たせ、TopのYutapon選手も加えた2テレポート体制で試合に臨んだ。

 まずは最初にMidのテレポートが有効活用されたシーンを確認していこう。

 Rokenia選手とKazuXD選手がLv2になった瞬間に仕掛けた。Meron選手とDara選手も同じタイミングでLv2になったので問題なく対処できると思われたが、KazuXD選手のHookがMeron選手にあたりMeron選手は倒されてしまう。しかしその際にRokenia選手が無理をしてしまったためにタワーの攻撃を受けてしまいRokenia選手も倒されてしまう。そしてDoad選手が青バフを無視してすぐさまBotへGankを狙った所から始まっている。

互いのADCが倒された状況にDoad選手がGankをしかける
それに対してAstarore選手とテレポートを持ったCeros選手がカウンター
体力がなくFlashも落としていたDara選手を倒した

 Astarore選手は赤バフを狩ることを選択してしまったためにDoad選手と比べると一手遅かった。そのためカウンターを成功させるにはタイミングを逸したかに思われたが、Ceros選手がテレポートを使ってBotに参戦することで数的同数、さらには体力やサモナースペルでは優位な状況を作り出すことができた。

 MidのCeros選手がテレポートを持つことで最低でも数的同数の状況を作り上げることができる。このシーンはその狙いが発揮されたといえるだろう。そしてさらには試合の早い段階からCeros選手にKillやAssistが入る可能性が高いことも見逃せない。

 次にテレポートを利用した集団戦を確認していこう。

KazuXD選手がDara選手を捕まえ、同じくしてYutapon選手とCeros選手がテレポートを使用
AMUSE選手はまだ到着できていない
テレポートの差を活かした瞬間的な数的優位を活かしてFMが集団戦に勝利する

 2つ目のDragonを見据えた視界の取り合いからこのシーンは始まっている。RPGはMidのタワー前にCeros選手がいることを確認しており、少し油断していたのだろう。それを逃さずKazuXD選手が集団戦の火蓋を切った。

 先手をとったことを活かしてYutapon選手が真っ先にテレポートを使用、ほんの少しだけ遅れてCeros選手も続いた。FMは分断されながらも1人ずつ確実に倒していくことで集団戦を優位に進めていった。一方のRPGは範囲攻撃を複数人に重ねることができず、さらにはMaokaiのULTの範囲内で戦ってしまったことでダメージが伸び悩んでしまった。

 このシーンは1つ目の対策のAMUSE選手よりも先にテレポートをすることと、2つ目の対策である2テレポート体制という2つの対策を同時に実行している。RPGの強みに対抗できているし、FMの核であるCeros選手を活かすこともできている。

Mid-oriented

 次に4戦目で実行した対策だ。FMはCeros選手にAssassinであるFizzを使わせ、さらに早い段階からCeros選手を中心に試合を展開していくことで有利を作り出していった。

 実行されたシーンを確認していこう。Astarore選手がMidへのGankを成功させ、Ceros選手がMidのレーニングの主導権を握った状況から始まる。

Midの有利を活かしてRPGのJungleに侵入していき、Shaft選手にしかけていく
Shaft選手を倒し、さらに今回もAMUSE選手よりも先にYutapon選手がテレポートを使用している
Yutapon選手が戦闘に参加する一方でAMUSE選手はゾーニングされてしまっている
FMはAMUSE選手を倒し、Midのタワーを破壊するところまでつなげていく

 FMはMidでCeros選手が主導権を握ったことを活かして積極的にRPGのJungle内へ侵入していった。それに合わせてYutapon選手もテレポートを使用している。ここが仕掛けどころと決断したのだろう。それに対しRPGはいなす選択をするのではなく、立ち向かってしまった。育っているFizz、そしてこの時間帯に非常に強いRumbleが相手にいるにも関わらず、だ。その結果、Shaft選手から順に1人ずつ倒されていってしまった。一方のFMはCeros選手とAstarore選手が作り出した有利をチーム全体に波及させることに成功している。さらには今回もYutapon選手がAMUSE選手に先んじてテレポートを使用している。

 Yutapon選手がAMUSE選手に対抗しつつFMの核となっているCeros選手を活かすという構図は変わらないが、方法が2テレポートからMid中心へと変化している。Ceros選手が扱えるチャンピオンの豊富さがこの変化を可能にしたと言っても良いだろう。

ADC-oriented

 そして5戦目は今までとは構図が変わっている。さきほどまではCeros選手だったが、この試合ではRokenia選手を中心に有利を作り出していった。

Midの有利を活かしてRPGのJungleに侵入していき、Shaft選手にしかけていく
Shaft選手を倒し、さらに今回もAMUSE選手よりも先にYutapon選手がテレポートを使用している
FMはAMUSE選手を倒し、Midのタワーを破壊するところまでつなげていく
なんとか倒されることは免れる

 Dara選手がMidからTopにかけての視界を確保しようと動いているタイミングでMeron選手は前に出てしまった。KazuXD選手も同じように視界確保に動いていると予想したのだろう。だがその判断は間違いだった。

 Rokenia選手がほぼ無傷でMeron選手を倒したことでテレポートでBotへやってきたAMUSE選手を難なくいなすことに成功している。RPGはADCが凹まされ、なおかつ逆襲の手段であるテレポートもしばらく使えなくなってしまった。

またもMeron選手の判断ミスをKazuXD選手が狙いうつ
Rokenia選手がその動きにあわせてMeron選手を倒す
次はAMUSE選手の判断ミスを咎めていく
今回もRokenia選手はしっかりと連動してダメージを出している

 その後もFMはRokenia選手を中心に有利を広げていく。AMUSE選手のテレポートがクールダウンであるうちにBotをどんどん押し込んでいき、Meron選手をまたも倒していく。このシーンの直前にDoad選手はMidへGankしていたためにFMの動きに対してカウンターをすることはできない状況だった。

 そしてFMはBotのタワーを折るとTopへローテーションし、AMUSE選手を狙っていく。AMUSE選手は1度はかわすことに成功するが、再度捕まってしまう。明らかな判断ミスであり、疲労が感じられたシーンだった。その判断ミスをFMが逃すはずもなく、Rokenia選手の装備の糧としていった。

 Rokenia選手がすぐさまMeron選手を倒すことで、テレポートでAMUSE選手が参加しても数的優位な状況を維持できている。さらにはAMUSE選手を倒すことによってRPGの2人のダメージディーラーの影響力を削ぐことにもつなげていった。

Conclusion

 FMはTopにYutapon選手を置くことでAMUSE選手に対抗しようとした。それは成功したと言って良いだろう。テレポートに関しては常に先んじていたし、レーニングは試合を重ねるごとに改善されていった。1試合目は20分の時点で56CS差もつけられていたにもかかわらず、5試合目では3CS差に抑えている。

 Rokenia選手のADCへのコンバートも成功と言って良いだろう。安定したレーニングと集団戦の能力で大きな脅威となっていた。3戦目のペンタキルや、5戦目のGravesの積極的なプレイイングは勝利の要因となっていた。

 2人のコンバートが成功し、そのうえでCeros選手が早い時間帯から試合に関わっていくことでFMは3試合目と4試合目でRPGに勝った。最後の5試合目は一転してRokenia選手を中心に試合を動かしていくことで有利を作り出していった。

 FMは最後の最後で最も優れたチームバランスを見つけ出したのかもしれない。そしてRPGに対して複数の有利を作り出す方法を実践していた。失敗しながらも勝利をもぎ取ろうと何度も試行錯誤を繰り返したことが引き出しの多さにつながったのだろう。FMは優れたチームバランスと幅広い戦略性で日本一に輝いたのだ。

[写真提供:SANKO]

編集部より

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