借りてみたらこうだった!
PCIeカード型SSDはよく冷える、Plextorの新型NVMe SSD「M8Se」をテスト
高負荷時でも動作温度を51℃に抑制、TLC採用の普及モデル text by 加藤勝明
2017年5月23日 08:00
東芝製TLC NANDフラッシュメモリを搭載したPlextorの最新NVMe SSD「M8Se」。メインストリーム向けに位置づけられるモデルで、MLC NANDフラッシュメモリを使用した同社の「M8Pe」の下位にあたるモデルだ。
今回のレビューでは、この「M8Se」のファーストインプレションをお届けする。TLCというと何かと拒否反応を示す人もいるが、大容量化とコストダウンが求められるメインストリーム帯のSSDにはデファクトスタンダードともいえる選択であり、どの程度のパフォーマンスを持っているのか検証してみたい。
また、NVMe SSDは動作時の発熱の部分が注目されており、速度を活かすには動作温度を低く保つ必要がある。M8SeはPCIeカード型も用意されており、これがなかなかの冷却効果を発揮していたので、その模様も紹介しよう。
今回使用する製品はM8Seの512GBモデルで、M.2版(デスクトップ・ノートPC用)とPCIeカード版の2タイプをテストした。なお、発売は近日予定とされている。
コントローラはMarvell製「88SS1093」、NANDは東芝製TLC NANDPCIeカード型の中身はM.2 SSDだがキャッシュメモリが違う?
M8SeはPCI-Express Gen3 x4接続のNVMe SSDである。コントローラはMarvell製「88SS1093」、NANDフラッシュは東芝製の超高性能TLC NANDフラッシュメモリとされている。
バリエーションは上位に位置するM8Peと同じく、PCIeカード型SSDのM8SeYシリーズ、ヒートシンク付きM.2 SSDのM8SeGシリーズ、SSD単体のM8SeGNシリーズの3種となっている。今回テストするのはM8SeYとM8SeGNの2モデルだ。
発熱については後ほど検証するが、チップむき出しのM8SeGNシリーズは別途市販のM.2用ヒートシンクを用意した方がよいだろう。
シーケンシャルリードは2.5GB/sec弱。TLCらしい性能特性も確認
今回テストを行ったベンチマーク環境は以下の通りだ。テスト対象のSSDはデータドライブとし、M.2版はPCHに近い側のM.2スロットに、PCIeカード版はCPUから最も遠いPCI-Express x16スロットに接続して計測した。
【検証環境】
CPU:Intel Core i7-7700K(4.2GHz、最大4.5GHz)
マザーボード:ASUSTeK PRIME Z270-A(Intel Z270)
メモリ:Corsair CMU16GX4M2A2666C16R(DDR4-2666 8GB×2)
グラフィック:ASUSTeK ROG-STRIX-GTX1080Ti-O11G-GAMING(GeForce GTX 1080Ti)
ストレージ(OS起動用):Intel SSDPEKKW512G7X1(NVMe M.2 SSD、512GB)
電源ユニット:オウルテック AU-850PRO(850W、80PLUS Gold)
OS:Windows 10 Pro 64bit版(Creators Uptade)
まずは「CrystalDiskMark」の結果をチェックする。テスト条件はデフォルトの1GiB×5&ランダムデータを使用した。
シーケンシャルリードが2.5GB/secをやや割る速度はNVMe接続SSDとしては最速といえないが、SATA接続のSSDに比べれば非常に高速である。
512GBモデルならOS起動用ドライブとして使用しても、アプリやデータ用に十分な容量を確保することができる。スピードの速さを活かし、動画編集などに使うと快適に使えるはずだ。
次に「ATTO Benchmark」を使用する。Total Lengthはデフォルトの256MBでテストした。
こちらもCrystalDiskMarkと同様の傾向。シーケンシャルライトが遅いのはCrystalDiskMarkでも確認できた特性といえる。巨大なファイルを書き込む頻度が高い運用だと、MLCを採用した上位モデルの方が(若干だが)快適に使えるかもしれない。
冷えるPCIeカード版の方が速度は遅くなりにくい、発熱が速度に及ぼす影響をチェック
続いては「HDTune」で様々な側面からM8Seのパフォーマンスを確認してみよう。
上はM.2版のリード時の転送レート。最初にテストを仕掛けた時は左図のようにどの領域を読み込んでもほぼ横一線の性能を示すが、他のテストを実施しドライブが暖まってからだと右図のようになる。少し時間をおけば左図の状態に戻る。
左はM.2版のライト時の転送レート。このグラフが意味するところは、書き込み処理が長く続くとパフォーマンスが落ちることを示している。ただ200GB~325GBあたりで一度下がり、また上がって下がるという特性になっている理由は不明だ。
こちらはM.2版の500MBのファイル転送時のリード&ライト速度の推移(青:リード、橙:ライト)。リードはほぼ一定だがライトが心電図のように脈動している。
M.2版のランダムアクセス性能(左:リード、右:ライト)。上のグラフにプロットされている点が高いほどアクセスタイムが長い(遅い)ことになるが、PCIeカード版と比べてみよう。
PCIeカード版のリード時の転送レート。M.2版と同様に一度高い負荷をかける前は左図のように安定、高い負荷をかけた後の高温時にテストすると右図のように転送レートが荒れる。
PCIeカード版のライト時の転送レート。最初が高く、その後低くなるのは同じだが、PCIeカード版の方が転送レートの下がりかたがM.2版より抑えられている。ヒートシンクによる差だと思われるが、搭載チップの違いによる差も考えられる。
PCIeカード版の500MBファイル転送時のリード&ライト速度の推移。ややライト速度がM.2版より荒れている印象を受けるが、リード速度はどちらも2GB/secで頭打ちである。
PCIeカード版のランダムアクセス性能(左:リード、右:ライト)。リードのアクセスタイムの分布がM.2版より下に寄っていることがひと目でわかる。平均アクセスタイムも平均速度もPCIeカード版の方が優秀である。
放熱性に優れるPCIeカードタイプ、高負荷時でも動作温度を51℃に抑制
最後に温度を測定してみた。温度計測は「CrystalDiskInfo」の読みをそのまま採用している。“アイドル時”とはアイドル状態で10分放置した状態、“高負荷時”とは、M8Seに対し50GBのフォルダを延々とコピーし、3分経過した時点を意味する。
形状からして当然というべきか、M.2版の温度はかなり高い。コントローラの上に小さなチップ用ヒートシンクを載せておくだけで、ヒートシンクがかなりの熱を持つ。他社製品と同様に、M.2版を使う際は市販のヒートシンクを組み合わせるべきだろう。
ついでにアイドル時と高負荷時の表面温度を「FLIR ONE」で撮影してみた。アングルが完璧に同じでないのはご容赦頂きたい。
M.2版はアイドル時でも90℃近く、高負荷時では100℃を超える一方で、ヒートシンク装着済のPCIeカード型は非常に低い温度で安定している。
HDTuneのベンチマークからもわかった通り、PCIeカード版のヒートシンクの効果で熱ダレを起こさず安定したパフォーマンスが出ている。動画編集のようにヘビーな読み書きをする前提なら、絶対にPCIeカード型の方がオススメだ。
なお、Plextorによると、PCIeカード型モデルに採用されているヒートシンクは、iF Design Award 2017を受賞しているとのことだ。スタイリッシュな青と黒のカラーリングに加え、高い熱伝導機能を備えることから、PCI Express 3.0 ×4接続SSDの高速性を最大限発揮できるという。
手軽さならM.2版、がっつりヘビーに使うならPCIeカード版がオススメ
M8Seの検証は以上となる。M.2版の発熱が非常に気になるところだが、これは他社製のM.2 NVMeでもほぼ共通して持っている欠点であり、「Kryo M.2」に代表されるヒートシンク付きPCI-Express変換カード、あるいは長尾製作所「SS-M2S-HS02」のような直付けタイプのヒートシンクなどを適宜利用すれば(ある程度は)カバーできる。
手軽さ重視、あるいはベーシックな性能だけでよいなら断然M.2版だが、読み書き頻度が高く、安定したパフォーマンスを希望するならPCIeカード版がオススメだ。
ただ、Ryzen環境の場合は装着するスロットによってGen2、あるいはGen3でもビデオカードへの帯域が半減してしまうため、M.2版の方が制約を気にせず使えるだろう。
なお、今回レビューを行ったM8Seは、5月24日(水)に放送予定の「髙橋敏也責任無編集 本ナマ!改造バカ」でも紹介するので、気になるユーザーは是非視聴して欲しい。
[制作協力:Plextor]
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