借りてみたらこうだった!
ゲーム機サイズなのに6コアCore i7+GeForce GTX 1070を搭載、ゲーミングPC「Vortex G25」を試す
VRやWindows MRにも最適なMSIの薄型モデル text 石川ひさよし
2017年11月28日 13:50
VR関連ではかなり早い段階から対応機器などを投入し、積極的に活動しているMSI。バックパック型PCや、ハイエンドノートPCなど尖ったモデルもラインナップしている。
そのMSIから、“コンパクトさ”を追求したVR向けの薄型ゲーミングPC「Vortex G25」(8RE-007JP)が登場した。本体サイズは家庭用ゲーム機と同等ながら、その省スペース筐体に6コア12スレッドのCore i7-8700とGeForce GTX 1070を搭載するというかなり攻めたモデルだ。
今回は「Vortex G25」の実機をお借りする機会を得たので、試用レポートをお送りする。
筐体サイズはPS4と同等クラス、バッグに収めて持ち運べる高性能PC
Vortex G25はデスクトップPCではあるが、かなりコンパクト。本体サイズは約279×43×331mmで、PlayStation 4と同クラスのサイズ感だ。
VR対応のPCというと、デスクトップの大型ケースに高性能ビデオカードを組み込む形が一般的で、設置には大きなスペースが必要となるが、Vortex G25ならコンシューマーゲーム機と同じくらいのスペースがあれば置ける。VRをリビングで楽しみたい場合も、本製品なら設置がラクだ。
なお、縦置きにも対応しているので、最小設置スペースをさらに小さくすることも可能。高性能PCとなるためACアダプタがやや大きいが、その置き場所さえ工夫すれば大丈夫だ。
筐体デザインは、中央が少しふくらんだ独特のデザイン。側面や天板部では吸排気のスリットを兼ねた赤いラインが印象的。底面は排気用とみられるメッシュ部分から内部の赤い光が漏れて見える。
また、天板部にはゲーミングドラゴンのエンブレムが、底面にはカーボン素材の上にゲーミングドラゴンロゴをあしらっている。高性能PCをここまでコンパクトにしているため、熱処理のための吸排気口は多めだ。縦置き時には付属の専用スタンドを用いる。
搭載するインターフェースはVRを強く意識したものである。HDMI端子は前面・背面ともに装備。背面はディスプレイに、前面はVRヘッドセット用に用いることが想定された設計だ。
VRヘッドセットではUSB端子も必要となるが、本製品の前面にも2基搭載している。そのほか前面にはヘッドセット用のオーディオ入出力端子と、USB Type-C端子を備えている。背面にもLANや光オーディオ出力端子、DCジャックおよびセキュリティロックスロットが搭載されている。
スペック的には、ハイエンドゲーミングノートPCからディスプレイを取り除いたもの、というイメージ。それゆえ本体重量も約2.5kgと、通常のゲーミングデスクトップやゲーミングノートよりかなり軽い。PlayStation 4 Proが3.3kg、初代PlayStation 4が2.8kgなので、大体の重量感を想像してもらえるだろう。
付属のACアダプタもそれなりの重量はあるが、それでも家庭内で部屋と部屋の間を持ち運ぶのもそれほどツラくないし、友人宅に持ち込むことだって可能だ。PCゲームでパーティというのも現実的になる。
なお、同じMSIで同じVR向けの小型PCには「Trident 3」もあるが、後発の本製品のほうがスペックは新しく、サイズも本製品のほうが一回り小さく薄い。ただし、デスクトップ向けの長さの短いビデオカードを採用するTrident 3は、場合によってはビデオカードのアップグレードが可能だが、本製品はビデオカード固定であるため、アップグレードは不可能となっている。
ゲーム機サイズの筐体に6コア12スレッドのCore i7とGeForce GTX 1070を搭載
VRを快適に楽しむためには高いPCスペックが求められる。とくに重要なのはCPUとGPUだ。
まず、CPUはIntel Core i7-8700(ベース3.20GHz・最大4.60GHz)を搭載。これは本来デスクトップ向けのCPUで、しかも最新の6コア12スレッドCPU「Coffee Lake-S」となる。TDPはデスクトップ向けとしては中くらいの65Wとなるが、小型筐体に搭載するには高めの値。しかし、これをしっかり冷やすクーラー「Cooler Boost Titan」が組み合わされている。
GPUはCUDAコアが2048基のモバイル向けGeForce GTX 1070を採用。デスクトップ版よりも多いCUDAコア数でクロックを抑えつつ性能を維持し、消費電力を抑える設計となる。デスクトップ版に匹敵するパフォーマンスを持っており、大容量8GBのGDDR5メモリを搭載しているので、高解像度・高画質に強い。
ストレージは2基搭載されており、1台はシステム用としてSSDを、もう1台はデータ用のHDDを組み合わせ、速度と容量を両立。SSD側の容量は256GBで、6Gbps SATA接続のM.2 SSDを採用。HDDは容量が1TBで2.5インチの6Gbps SATA接続だ。
オーディオ関連では、DACに「ESS SABRE Hi-Fi DAC」を採用しハイレゾにも対応。バーチャルサラウンド機能の「Nahimic 2+」も利用可能で、ゲーム中の音についても本体側でできる範囲で高音質を狙っている。
ネットワーク機能は、有線と無線双方備えているので、背面端子の有線LANは必ずしも必要というわけではない。有線側は同社のゲーミングマザーボードでもよく採用されているKiller E2500(1000BASE-T)。無線側はKiller Wireless-AC 1435(IEEE802.11ac、2×2)を採用。
Bluetooth 4.1にも対応しているので、キーボードやマウスなどのデバイスはもちろん、Bluetoothのゲームコントローラーなどの接続にも追加機材なしに対応できる。
最新のAssassin's Creed Originsも最高画質60fpsで遊べる!高いゲーム性能を発揮
それではパフォーマンスを見ていこう。
PCMark 10は総合スコアが6098。Essentialsが9,609、DigitalContentCreationが5,093、Productivityが6,139、Gamingが12,446といった結果だ。GamingはさすがにGeForce GTX 1070を搭載するだけあって高く、それ以外もハイエンドクラスのスコアだ。6コア12スレッドのCPU性能も高く、Productivityスコアにそのあたりが現れている。
PCMark 10 Extended Score | 6,098 |
Essentials Score | 9,609 |
Digital Content Creation Score | 5,093 |
Productivity Score | 6,139 |
Gaming Score | 1,2446 |
CINEBENCH R15はCPUスコアが1,203、CPU(Single Core)が197。CPUスコアで1,000を超えてくるのは6コア12スレッドCPUのパフォーマンスの高さが現れている。Single Coreも200にわずかに届かなかったが、間違いなくクロックの高いCore i7ならではのパフォーマンスである。
3DMarkは、Fire Strikeが14,767とかなり高く、4KのFire Strike Ultraはやや落ちて4,011。DirectX 12のTime Spyが4,011とこちらはまずまずだ。フルHDであればかなり高画質であっても大丈夫だが、解像度を上げる場合は画質を調節する必要がありそうだ。
Fire Strike | 14,767 |
Fire Strike Extreme | 7,579 |
Fire Strike Ultra | 4,011 |
Time Spy | 5,554 |
Time Spy Ultra | 2,532 |
3DMarkのスコアを見たところで実際のゲームベンチマークを見てみよう。まずファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、画質を最高品質とした場合、フルHDの場合で15,651ポイントの「非常に快適」評価、4Kでは5,003ポイントの「とても快適」評価だ。どちらもプレイする上では十分で、フルHD時は105.507fpsとかなり高フレームレート、4Kは少々ギリギリな感もあるが33.322fpsだった。
Assassin's Creed Originsでは、フルHDならUltra High画質で平均74fps、「Very High」評価だ。4KはLow画質に落としても60fpsを満たせず「Stable」評価までだった。このクラスのゲームで4Kで画質を極めるにはGeForce GTX 1080 TiクラスのGPUを求められるので、GTX 1070の本製品にはムリがある。ただ、ここまで見たように、フルHDなら最新タイトルを最高画質で存分に楽しめるだけのパフォーマンスがある。
なお、動作音も比較的静かだった。ゲームあるいはベンチマークを音声なしで実行してみるとファンの音は聞こえるが、ゲームの音声をオンにすれば紛れるレベルで、ファンノイズがプレイのジャマをするようなことはなかった。
CrystalDiskMarkでストレージの性能も確認しておこう。
CドライブのSSDは、シーケンシャルリードが546.7MB/s、同ライトが518.3MB/sとどちらも500MB/sを超えてきた。また、4KパフォーマンスもQ8T8では300〜400MB/s台、Q32T1も300〜200MB/s台で速く、Q1T1もリードが40MB/s近く出ていて、ライトは116.6MB/sとこちらも速かった。
HDDはさすがにシーケンシャルリードが133.1MB/s、同ライトが122.5MB/sと2.5インチHDDなりの性能だ。本製品は2つのドライブともに6Gbps SATA接続であるし、DドライブはHDDなのでそこまで突き抜けたストレージ性能はない。ただ、OSやアプリケーションの起動はSSDによってレスポンスが速く、HDD側も1TBあれば大量のゲームデータを保存しておける。
VR用途でも十分なパフォーマンス、Windows MRヘッドセットもすんなりセットアップ可能
本製品が用途の中心に掲げているVRパフォーマンスもチェックしておこう。
まずはSteam VR Performance Test。平均忠実度は10.5の「非常に高い」評価で、フレームが90fps以下に落ちることはなかった。もちろん「VRレディ」である。
もう一つ、VRMarkも試してみた。こちらはOrange Roomが9,386、Blue Roomが1,650だ。Orange Roomについてはターゲットの109fpsを十分に満たす204.62fpsだ。Blue Roomについては、これを満たすPCは現状ほとんどないが、参考までに数値を挙げると35.98fpsだった。まあ、当面の間はVRのソフトを使用している際にパフォーマンス不足を感じる場面はあまりないだろう。
実際にVRヘッドセットのWindows MR(Windows Mixed Reality)接続して使用してみたが、セットアップも簡単に済み、快適に使用できた。
VRヘッドセットは、このほかにもOcculusやHTC VIVEをはじめ、様々なモデルがある。現在発売されているヘッドセットは必要な端子がHDMI×1、USB×1が主流なので、本製品の前面インターフェースで事足りる。
Windows MRは、ヘッドセットを接続したところでセットアッププロセスが起動するので、その指示に従って設定していくが、途中でモーションコントローラの設定がある。聞くところによると、Bluetooth接続であるモーションコントローラの認識において稀に問題が生じることがあるとのことだが、本製品ではなんら問題なく行うことができた。
ここまでコンパクトなのにゲームもVRも十分こなせるパフォーマンス
Vortex G25の魅力は、まずこれだけコンパクトな筐体でありながら高いゲーミングパフォーマンスを詰め込んだ所にある。
通常サイズのデスクトップPCのように、ウルトラハイエンドGPUを搭載するようなことはできないが、最新タイトルのAssassin's Creed Originsが、フルHD/最高画質で60fpsに対して余裕をもったフレームレートが出せているのは好印象だ。
また、本体がこれだけ小さいと、リビングはもちろん、プライベートルームに置くことも簡単。縦置きもVESAマウントも可能だが、リビングルームであればコンシューマーゲーム機のように平置きでもそこまで場所をとらずに設置できるだろう。
VRについても十分なパフォーマンスと充実した前面インターフェースで対応できることが確認できた。
唯一のネックが実売で税込27万円前後という価格だが、サイズとのトレードオフ部分でありコンパクトさに価値の重きを置くのであれば納得できるだろう。実際、Vortex G25と同等のデスクトップPCを組もうとすれば、筐体サイズは数倍になり、広い設置スペースも必要になる。それを考えると、本製品のサイズは驚異的と言える。
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