借りてみたらこうだった!
FSPの高コスパ電源がリニューアル、80 PLUS SILVER認証の「RAIDER II 」の実力を試す
旧モデルから静音性も電圧特性も向上、650Wモデルをテスト text by 長畑利博
2018年3月13日 06:05
FSPブランドで販売されていた「RAIDERシリーズ」が久しぶりにモデルチェンジし、「RAIDER II」になって帰ってきた。
IIという名が付いている通り、2013年頃に販売され、その後一度、マイナーチェンジも行われた上で販売されてきたRAIDERシリーズの後継モデルにあたる。
同シリーズのモデルはコストパフォーマンスを重視したエントリークラスではあるものの、効率性なども重視した設計である点なども特徴となっていたが、新モデルでもそういった特徴が引き継がれているのか、仕様や実際の出力特性なども含めて見てみたい。
FSPのエントリーモデルが久々のモデルチェンジ、安定性を向上させる「MIA IC」チップも
RAIDERシリーズは80 PLUS SILVER認証を取得しつつも、FSP製品の中ではエントリークラスに当たる製品。従来のRAIDERシリーズと同じく、定格出力は750Wと650Wの2種類が用意されている。
RAIDERシリーズの大きな特徴としては、FSP独自のカスタムチップである「MIA IC」を引き続き採用していることがある。
RAIDER IIのMIA ICは2種類が搭載されており、電圧を常時コントロールし、交流から直流に変換時にどうしても起きる電力ロスを低減させる「MIA IC-1」と12V・5V・3Vの出力制御を行う「MIA IC-2」という二つのチップが搭載されている。複数の系統の出力を統合的に制御することにより、出力ごとの立ち上がり時の時間差をゼロにしている。これにより安定性を高めているという。
新品交換保証は3年間で電源規格としてはATX 12V Ver.2.3に準拠。 Haswell以降のCPUでは省電力機能の関係でVer.2.4以降が推奨されているので注意が必要だ。本製品のメーカー公式対応CPUはSkylake/Broadwellまでとなっている。ここではは定格出力650Wモデルを旧「RAIDERシリーズと比較しながら紹介していく。
ケーブルはスタンダードな直づけタイプ
では、本体外観からチェックしていこう。エントリーモデルと言うこともあり、ケーブル類はプラグインタイプではなく本体に直づけとなっている。プラグインタイプはケースの配線を最小限にできるというメリットはあるが、使わないケーブルを保存する必要があることなどの面倒な部分もある。
本体の大きさは幅150×奥行き140×高さ86mmと奥行きはコンパクトに抑えられている。コンパクトではあるがファンのサイズは120mmサイズの標準的なタイプが使われている。軸受けのタイプはスリーブベアリングとこちらも価格帯から見ると標準的な仕様となっている。実際の動作音については後ほどの検証で紹介したい。
外観上の旧モデルからの変更点としては、ケーブルが薄い形状のフラットタイプになっていることだろう。折り曲げしやすいフラットケーブルタイプは、裏面配線に対応したケースで配線をする場合でも取り回しがしやすい。
長さはATX24ピンが600mmと十分な長さになっている。対応するケーブルのコネクタ数は、ATX(20+4ピン)×1本、EPS(4+4ピン)×1本、PCI-Express(6+2ピン)×2個、SerialATA×10個、ペリフェラル×3個、FDD4ピン1個という組み合わせだ。こちらのケーブルも一般的なATXケースであれば、配線に十分な長さがある。このケーブルのコネクタ数は定格出力750Wモデル、650Wともに同一となっている。
続いては内部を開けて構造をチェックする。なお、個人での電源分解はメーカーの保証が無くなるので注意したい。大まかなレイアウトは初期モデルのRA-650に似ているが、ぱっと見でも部品点数が増加していることが分かる。とくに入出力周りのノイズ対策が強化されている感がある。基本的な部分の品質向上が図られていることが分かる。
搭載されている保護回路は、短絡保護回路(SCP)、過電圧保護回路(OVP)、過熱保護回路(OTP)、過電流保護(OCP)、過電力保護回路(OPP) 。前述のようにファンは120mm角サイズのものが利用されている。テスト機に搭載されていたのは、ADDA製の「AD1212HS-A71GL」というモデル。パッケージに記載されているデータを見ると、ファン回転数と騒音値によれば、温度条件により600rpmから1,800rpmまで変化する設定になっている。
また、基板上にDC - DC モジュールを搭載した設計になっており、高い電源効率と安定性を実現しているという。
3.3V・5V・12V出力への負荷のかかり方に極端な差が出た場合、動作が不安定になるケースがあるが、DC - DC モジュールを採用したモデルであればそうした問題を解消することができるという。
次に出力周りをチェックしてみよう。
PCではほとんどのパーツが+12V出力を利用して駆動している。今回紹介しているRA2-650のスペック表(本体のファンの反対側にある)を見ると、+12V出力は1系統1系統で出力は54.17A。電力に換算すると12V×54.17で約650Wまでの最大出力を持つ。500W以上の電源が推奨されるハイエンドビデオカードのGeForce GTX 1080も1枚なら問題なく動く性能を持っている。
RA2-650の実力は?
最後にベンチマークテストを利用した性能検証をしてみる。
テスト内容は以前と同じく、僚誌DOS/V POWER REPORTで行っているものに準じている。出力電圧変動テストでは、マザーボードのATX24ピン、EPS12V、PCI Express 6ピンの各コネクタに三和電気計器製のデジタルマルチメータリスト「PC20」を装着。+12Vの電圧変化を計測している。
システム負荷をかけるソフトに関しては電力変化の大きなビデオカード側に負荷がかかるようにベンチマークソフト3DMarkを利用した。バッチプログラムを使用し、Fire Strike Ultra、SkyDiverなどの各種テストを連続して動かしている。静音性についてはサウンドレベルメーター「SL-1370」を電源のファン上方15cmの位置に置き測定、消費電力については詳細な測定の行なえる「Watts Up? PRO power meter」を利用し、起動からベンチマーク負荷時、ベンチマーク終了10分放置後までの最大、最小の数値を記載している。
【テスト環境】
CPU: Intel Core i7-4770K(3.90 GHz)
マザーボード: ASUS H97-PRO(Intel H97)
メモリ: TEAMジャパン TED-316G1600C11DC-AS PC3-12800(DDR3-1,600MHz DDR3 SDRAM 8GB×2)
ビデオカード: STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5(NVIDIA GeForce GTX 970)
ストレージ: Intel SSD 330(250GB)
OS: Windows 10 Pro 64bit版
暗騒音:33.6db(A)
室温:18℃
それでは実際に650Wモデルの「RA-650」を使用し、電圧の変化を見てみよう。
無負荷時の電圧はATX、EPS、PCI-Eともに12.1~12.2VとほぼATX規格中心値の12V周辺で安定している。ベンチマークテストによる負荷でも、赤いラインのATX24ピンと青いラインのPCI EXpress 8ピンが11.9Vに若干低下するものの、安定性は十分に維持されている。
テスト環境や条件は異なるため単純比較はできないものの(DOS/V POWER REPORT2014年8月号参照)、旧モデルであるRA-650ではATX24ピンが下限ギリギリまで電圧が低下することもあったことから、本製品の安定性が大きく改善されていることが分かる。
ベンチマーク時の消費電力については低負荷時37.2W、高負荷時は235Wという結果になった。80 PLUS SILVER認証モデルとしてはかなり良好な部類といえる。
動作音についても旧モデルであるRA-650から比べると雲泥の差がある。前述の電圧グラフと同様に動作環境は異なるが、RA-650では低負荷時が44.5db(A)、高負荷時44.8db(A)とかなりファンノイズが目立つ結果であったのに対し、RA2-650では、低負荷時では35.9db(A)、高負荷時では36.2db(A)と現在の標準的な静音電源と同等レベルの動作音に落ち着いている。
旧モデルと比べて動作音や電圧特性は大きく改善、優秀なスタンダードモデル
テスト結果を見てもらうと分かるとおり、初期の「RAIDERシリーズ」と比べると電圧や動作音なども改善され、品質が大きく向上していることが分かる。
消費電力に関しても比較的優秀な部類に入り、これは内部パーツの品質改善がテスト結果に出たものと思われる。その分、本体価格はやや高くなったものの、650Wモデルも750Wモデルも1万円を大きく割り込む価格で購入できるので、旧モデル同様にコストパフォーマンス面で魅力ある製品と言えるだろう。
本製品ならではの特殊な機能といった個性的な面でのアピールは無いが、新たなスタンダード電源として定番製品になる素質は十分にある。
[制作協力:FSP]
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