借りてみたらこうだった!

NVMe SSDが超高速USBストレージに、手軽に1GB/s超が可能な外付けケースを試す

「AOK-M2NVME-U31G2」にWD Black NVMe SSDを組み込んでみた text by 石川ひさよし

(10/6)一部追加計測を行い、その旨を反映し本文を訂正しました。
(9/22)記事初出時に記載したテスト環境に誤りがあったため訂正しました。

 M.2 NVMe SSDを外付け化するUSB接続のケースが各社から登場しているが、今回はその中からアイティプロテックが販売するAOTECH製の外付けケース「AOK-M2NVME-U31G2」のレビューをお届けする。

 SATA接続M.2 SSDに対応したUSB外付けケースは以前から販売されていたが、速度はSATAインターフェース上限値である6Gbpsが限界となっており、速度の面では2.5インチSSDを外付け化するのと変わり無かった。

 しかし、今回のモデルは最大32GbpsのNVMe SSDが利用できるので、SATA SSDを使用した時よりも大きな速度向上が期待できる。「速さ」を求めるユーザーにとっては待望の製品だ。

 アイティプロテックによると「M.2用外付けケースとしては、初めてリード・ライトともに1,000MB/sオーバーを計測したモデル」とのことなので、その実力を検証してみよう。

パッケージには工具やマニュアルも付属、本体の長さはM.2 SSDよりもちょっと大きい程度

 今回紹介する「AOK-M2NVME-U31G2」は、税込5,400円前後で販売されている。

 2.5インチドライブ用のUSB外付けケースと比べると高価ではあるが、これはM.2 NVMe SSDに対応するUSB変換チップがまだ出始めであることが大きな理由だ。もっとも、より高速なストレージを求めるユーザーに向けた製品なので、5千円前後で入手できるならターゲットユーザー的にも許容範囲の価格と言ったところだろう。

付属品もしっかりしていて、専用ケーブルに専用工具(ドライバー)も入っている

 キットの中には、本体と接続ケーブル、マニュアル、(+)ドライバー、そしてデータ復旧ソフトの体験版と復旧サービスのパンフレットが同梱されていた。

 本製品はUSB Type-C接続だが、Type-C - Type-A変換タイプのUSBケーブルが付属するため、Type-CコネクタのないPCでもとりあえず利用できる。なお、付属のケーブルは10Gbps対応品とのことで、USB 3.1 Gen2対応のUSB Type-Aコネクタを備える機器であれば速度を引き出すことができる。

 また、ドライバーも付属するので、追加の工具も不要だ。データ復旧ソフト体験版については、PCで利用していたM.2 NVMe SSDが壊れてしまった時、本製品でUSB外付け化し、別のPCで復旧を試みるといったシナリオ向けだ。

万が一に備える体験版のデータ復旧ソフト
日本語マニュアル

 本体サイズは幅47mm、奥行き105mm、高さ11mm。とくに幅と奥行きに関してはM.2 SSDに対しても一回り大きな程度だ。本体素材はアルミ製。これは現行のM.2 NVMe SSDの発熱が大きいため、その放熱効果を狙っているのだろう。

外観はオーソドックスなM.2 SSDポータブルケース。角をカットしてあるのでその部分が金属光沢を放っている
M.2 SSDとサイズを比較してもこのとおり。コンパクトで持ち運びもラク

 インターフェースは前述のとおりUSB Type-C。USB 3.1 Gen2に対応しており、理論上最大10Gbpsの帯域を持つ。PCI Express 3.0 x4接続のM.2 SSDの理論上の帯域は32Gbpsなのでこれをカバーできるほどではないが、USB 3.0(またはUSB 3.1 Gen1)の5Gbpsと比べると2倍の帯域幅である。

インターフェースはUSB 3.1 Gen2対応のType-C
そのほかにインターフェースはない

SSDの搭載はかなり簡単、ネジ止めも3ヶ所だけ

 AOK-M2NVME-U31G2が対応するのは、M.2 SSDのなかでもPCI Express接続でNVMeに対応するものに限られる。SATA接続のものには対応しておらず、PCI Express接続でもAHCI対応のものは使用できない。

 とくにPCI Express接続のM.2 SSDが登場した当初はNVMeではなくAHCIにしか対応していない製品がいくつかあったので要注意だ。

 それでは手順の説明としてWestern DigitalのWD Black NVMe SSD(M.2 2280サイズ、PCI Express 3.0x4接続、NVMe対応)を組み込んで見よう。

 先の写真のとおり、本製品は前後に2つずつネジがある。組み込み時に外す必要があるのはインターフェース側の2つのネジだ。ネジを外すと、内部はガイドに沿って基板が入っているのでこれを引き出せばよい。

付属ドライバーでインターフェース側の2つのネジを外して基板を取り出す
基板はUSB Type-C端子とスロット、固定具とシンプル

 基板上にはType-C端子とM.2スロット、そして各サイズのM.2 SSDを固定するための穴と固定具がある。基板の左右端はエッチングしてあるようで、これはGNDかあるいはガイドに接触することでケース本体に熱を逃がすための設計だろう。

基板裏にUSB 3.1Gen2 - PCI Express NVMe変換を行なうチップや電源回路を実装
変換チップはJMicron Technologyの「JMS583」

 M.2 SSDのサイズは最大でM.2 2280までとなる。より小さなほうでは2260や2242、まず目にすることはないが2230にも対応する一方で、M.2 22110のような長さのあるSSDには対応していない。

 また、M.2 SSDの固定方法は少しユニークだった。マザーボード上のM.2スロットを利用する場合は、M.2 SSDを斜めに挿し込み、それを倒してネジ止めする。本製品ではそのネジ部分が天地逆になっている。ネジ受け側に彫り込みがあり、そこにM.2カードの半円形の切り欠きを差し込んで固定する。こう記述すると難しいが、詳しくは写真を参考にしていただきたい。

少しユニークな固定方法だが難しくはない。おそらく製造工程が少なくて済むのだろう

 基板にM.2 SSDを固定したらケースに戻すだけ。つまり、ネジ2本でケースから基板を取り出し、ネジ1本でM.2 SSDを固定し、基板を戻してネジ2本でケースを閉じるといった工程だ。分解から組み立てまでドライバーを使うのも5回だけだ。

M.2 SSDを固定したらケースに戻すだけ。基板の上下も決まっているので、収める時に逆にしてしまう恐れもない

速度を活かすならかならずUSB 3.1 Gen2対応環境で、ケーブルと接続コネクタに注意

 それではPCに接続して動作をチェックしてみよう。PC上で認識されたら、一般的なUSBストレージと同様、初期化してフォーマットすれば使用できる。このあたりはNVMe対応モデルでも変わりない。

CrystalDiskInfoで見ると、型番は搭載するM.2 SSDのもので、インターフェースはUASP(NVM Express)となっていた
Type-Cインターフェース横にアクセスLEDがある
計測にはマウスコンピューターのゲーミングPC「NEXTGEAR i680」を使用した。

 続いてはパフォーマンス。計測ソフトはCrystalDiskMark 6.0.1を使用している。PC本体はマウスコンピューターのゲーミングPC「NEXTGEAR i680」を使用した。

 なお、USBコントローラは、USB 3.1 Gen2(10Gbps)がASmedia製コントローラ、USB 3.1 Gen1(5Gbps)がIntelチップセット内蔵コントローラとなっている。最高速だけでなく、規格の違いでどれだけ速度に差が出るのかも参考にしてもらいたい。どちらもコネクタはType-Aだ。

USB 3.1 Gen1(5Gbps)のUSB Type-A端子に接続した際のパフォーマンス
USB 3.1 Gen2(10Gbps)のUSB Type-A端子に接続した際のパフォーマンス

 ベンチマーク結果だが、USB 3.1 Gen1(USB 3.0)接続時は帯域が5Gbpsに制限されるため、シーケンシャルリード/ライトは430MB/s台となっている。これならSATA接続のSSDでも大差ない。

 一方、USB 3.1 Gen2接続時は10Gbpsの帯域があるのでシーケンシャルリードは一気に1GB/s台に向上、ライトも998.5MB/sに達した。これは確実にSATA接続のSSDよりも高速だ。もちろん、M.2 NVMe SSD本来のパフォーマンス(32Gbps)からは1/3程度になる。ただし、USB接続のポータブルSSDとしてなら、既存の製品を超える爆速であることに間違いはない。

ノートPCのUSB 3.1 Gen2(10Gbps)のUSB Type-C端子に接続した際のパフォーマンス

 また、USB Tyue-C - USB Type-Cケーブルを別途用意し、環境を変えてノートPCでもテストしてみた。使用したノートPCはThinkpad X1 Carbon 2017。

 結果は右側の画像の通りだが、リード・ライトともに880MB/s台となった。USB 3.1 Gen2の速度を引き出すには、USBコントローラの性能のほか、CPUパワーやケーブルの品質なども影響してくる。規格上、10Gbps転送が可能なのはケーブル長1mまでとされており、速度が出る分ケーブル品質の影響を受けやすい規格である点も意識しておきたい。

 なお、アイティプロテックは日本ギガバイトと協力して検証を行っており、そちらの結果ではリード・ライトともに1GB/sを超える性能を発揮している。環境さえ整えれば、10Gbpsの帯域を使い切る速度を引き出すことができる。

アイティプロテックが行った検証では1GB/sを超える性能を発揮している。(検証結果へのリンク)

 もう一点、温度の関してもチェックしておきたい。M.2 NVMe SSDでは発熱が大きいと前述した。SATA接続のSSDなどと比べるとかなり高温となるので、外付け化した祭に問題ないのかも見ておこう。

 なお、ステータス監視ソフトでは、USB外付け化したSSD内の温度センサーは利用できなかった。唯一表示できたのがCrystalDiskInfoのみ。SSD内部温度はこちらで確認し、本製品外装の温度はFLIR ONEを用いて計測した。

SSD上のセンサー情報では63℃に達した。危険域ではないが熱いは熱い
外装は47.8℃。指で触れて熱いと感じる温度だ

 CrystalDiskMark実行中の温度を見ると、CrystalDiskInfoの温度センサー情報では63℃に達していた。WD Black NVMe SSDは、M.2 NVMe SSDとしては比較的発熱が小さい部類だが、SATA SSDなどを使用した際よりも高温となることは考慮しておきたい。

 また、外装の温度は47.8℃に達していた。内部のチップより15℃以上冷えているのはアルミ製筐体の効果もあるだろう。まずまず冷えていると言えるが、それでも外装に触れると温かいではなく熱いと感じる。動作自体に問題は無い点は安心だが、熱がなるべく籠もらないように使用したい。

 発熱が小さめのSSDでもこのような具合なので、現状、本製品と組み合わせるM.2 NVMe SSDはできるだけ発熱の小さなものがよい。そうでないと、サーマルスロットリングが生じてパフォーマンスが低下する可能性もある。

 どちらかと言えば本製品の問題というよりも、現在のM.2 NVMe SSDのコントローラチップやNAND型フラッシュメモリの発熱が大きすぎるほうが問題なのだが、ちょっと前のM.2 SSDなどを使用する場合などは注意した方が良いだろう。

超高速なポータブルストレージが手軽に作成可能、M.2 SSDの発熱にのみ注意

 このように、AOK-M2NVME-U31G2を使えば超高速なUSBポータブルストレージを入手できる。組み込みもほとんど手間がかからないので、気軽にチャレンジして欲しい。

 逆に気にしなければならないのは温度管理だ。やはりM.2 NVMe SSDは発熱が大きい。SSDにとって熱は大敵であるので、古いPCのM.2 NVMe SSDを再利用しようという方はここに注意しよう。組み合わせるM.2 NVMe SSDを、WD Black NVMe SSDのように低発熱なモデルにするなど、少し注意する必要がある。

 誰でも扱えるという状況になるまではしばらく時間が必要になるだろうが、これまで1GB/sを超えるようなポータブルストレージはかなり高価なモデルに限定されていたので、こうしてユーザーが手軽に扱えるようになりつつあることは大いに歓迎したい。

※記事初出時、テスト環境機材の記載に誤りがありましたため、その旨訂正しました。関係者ならびに読者のみなさまにはお詫び申し上げます。

[制作協力:アイティプロテック]