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Arrow Lakeは空冷でDDR5-10000が回せる!?本社からもゲストが来日した「ASRock Intel Z890マザーボード発売記念イベント」レポート

左からASRock R&D マザーボードシニアディレクター Nick Shin氏、同社取締役兼マザーボード&ゲーミングモニタ事業部長 Chris Lee氏、同社エクストリームプロダクトマーケティング 原口有司氏

 LIFORK秋葉原IIにて11月2日(土)、「ASRock Intel Z890マザーボード発売記念イベント」が開催。ASRock本社からも登壇者が参加する希少なイベントとなった。

会場のLIFORK II
Z890マザーボードが勢揃い

 本稿では、あいにくの雨天ながらも多くの自作erが集まり盛り上がりを見せた同イベントの模様をお伝えしよう。

 なおASRockでは、12月7日(土)に「ASRockファンミーティング 2024 Winter」も開催予定。イベントは事前登録制のクローズドとなっており、未発表製品も披露されるかも?とのこと。

Intel CPUにとっての「転換点」がArrow Lake

インテル株式会社 IA技術本部部長 太田仁彦氏

 最初のセッションでは、インテル株式会社 IA技術本部部長 太田仁彦氏、ASRock原口氏が登壇。

 太田氏は、Arrow LakeことCore Ultraプロセッサー(シリーズ 2)は、従来世代で目指してきた絶対的な性能向上というポイントだけに注力した製品ではなく、より高い性能を高い効率で実行できることを目指した、Intelとしての「転換点」ともいうべき製品になっていると説明。

 Arrow Lakeでは、モバイル向けCPUで培われた様々な機能や設計が盛り込まれたデスクトッププロセッサーであり、第14世代Coreプロセッサーと同等の性能を半分の電力で発揮できる設計できるとアピール。PコアのLion Coveアーキテクチャは前世代(Raptor Cove)比で+9%、EコアのSkymontアーキテクチャでは前世代(Gracemont)から+32%という大幅なIPC向上を実現しているとした。

 実際にゲーム時の消費電力を第14世代Coreと比較すると、同フレームレートで最大165Wを削減。パッケージ温度も平均で13℃低下しており、大幅に改善されているという。

 Arrow Lakeではコンピュートタイルの設計も大幅に刷新され、PコアとEコアが交互に配置されている。太田氏によれば、このデザインによる副次的な利点として、Pコアにワークロードが集中していても以前より熱密度が低下しているという。

 GPUもXe-LPGを搭載し、13TOPSの演算性能を謳うNPUも内蔵するなどエンスージアストに相応しい設計になっているとアピールした。

 太田氏によると、Arrow Lake最大の「転換点」といえるポイントは、「Foveros」3Dパッケージング技術の採用だという。すべてを1つのチップに集約していたモノリシック設計と異なり、CPUやGPU、I/O、SoCといったタイルごとに別のプロセスを使用できるため、機能に応じて最適化した形で設計できるのがポイント。Intel社内のファブだけでなく、社外のファブを使ったタイルを搭載するといった選択が可能となったのも、Foverosによるものと語った。

USB-Cしか載せないロマンあふれる設計の「Z890 Taichi AQUA」

 続いてのセッションでは、ASRock 取締役兼マザーボード&ゲーミングモニタ事業部長のChris Lee氏が登壇。

Chris氏

 Chris氏は、フラッグシップマザーボードとなる「Z890 Taichi AQUA」について、Alphacoolと共同開発した、VRM/M.2 SSD用の本格水冷対応大型ヒートシンクを搭載している点をアピール。

 実際にPCIe 5.0 M.2 SSDを組み込むと、空冷時でも67℃、水冷化で48℃に抑えることができるという。

 またVCore用に28フェーズを配した大容量の電源もポイントとのこと。

 背面I/Oについては、「全USBポートがType-Cコネクタのマザーボードとして世界初」と紹介。またThunderbolt 4ポート×2を備えているのもポイントとした。

Core Ultraプロセッサー(シリーズ 2)のメモリOCは微調整でさらに伸ばせる!

 最後のセッションは、R&D マザーボードシニアディレクターのNick Shin氏によるオーバークロック講座が開催。

 セッションで使われたのが「Z890 Taichi OCF」で、今回のASRock Z890マザーボードの中でもオーバークロックに特化したモデルとなっている。

 Nick氏によると、実際に空冷のデュアルチャンネル環境で、UDIMMで11,066MHz、CUDIMMで10,535MHzを記録できたとのこと。

 Core Ultra 9 285KやCore Ultra 7 265Kでは、前述の通りシングルダイではなくマルチチップの集合体となっている。このため、メモリOCにおいては、メモリコントローラーが存在するSoCタイルが重要となる。

 とくに書き込み速度とレイテンシは、SoC内部のメモリコントローラーとNGU、コンピュートタイルとSoCタイルを繋ぐダイ to ダイ(D2D)の比率値のチューニングによる効果が大きいという。

 実際にUEFIからNGUをx26からx35へ引き上げると、書き込み速度が約23GB/s向上、レイテンシが3.7ns削減と効果がでていることが分かる。

 なおNick氏によれば、Z890 Taichi OCFでの検証で、DDR5-8400キットで9,200MT/s、DDR5-8800なら9,600MT/sまで伸ばせるという。DDR5-9200や9300のモジュールであれば10,000MT/sが十分狙えるとのことだ。

 会場にはDDR5-10001設定のデモPCも展示されており、空冷でDDR5-10000超を安定動作できるという謳い文句通りの動作を見せていた。

DDR5-10001で動作していた展示デモ
CPUはCore Ultra 9 285K
Z890 Taichi OCF
メモリはG.Skill Trident Z5 Royal