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CORSAIR傘下のレースシムデバイスメーカーFanatecが日本市場へ参入、ZENKAIRACINGと提携し製品を展開
2025年8月5日 09:05
7月29日、レーシングシムデバイスを開発するFanatec(ファナテック)と、レーシングシムビルダーのZENKAIRACINGがパートナーシップを締結したことを記念し、都内でメディア・関係者向けのイベントが開催された。
イベントには国内四輪レーストップカテゴリーのスーパーフォーミュラで活躍する大湯都史樹選手らプロドライバーも駆けつけ、Fanatecのレーシングシム筐体を用いたエキシビジョンマッチを実施、来場者向けの体験会も行なわれた。
Fanatecとの提携で幅広い層にレーシングシムを提供可能に
Fanatecはレーシングシムデバイスのトップブランドの1つ。近年になって財政的な問題が顕在化し、ちょうど1年前の2024年7月に破産申請したが、その後、PCパーツでおなじみのCORSAIRが買収し再スタートを切った。
今回、そのFanatecとZENKAIRACINGが代理店契約を締結したのを受け、記念イベントを開催することとなった。
ZENKAIRACINGは、日本国内でレーシングシムやeモータースポーツに関わる事業を多面的に展開する企業。レーシングシムビルダーとして早くから取り組んできたほか、ECサイトを通じた関連製品の販売、eモータースポーツイベントの運営、リアルレースへの参戦や選手へのサポートなどを積極的に行なっている。同社が製作を手がけたレーシングシムの導入施設は全国各地に多数あり、墨田区には誰でも体験可能なショールーム(ファクトリー)も設置している。
同社自らのレース参戦によって獲得できるノウハウに加え、サポートドライバーやレースチームなどとの長年にわたる協力関係から得られた膨大な車両データ・走行データをレーシングシムの製作に活かせるのが、他にはないZENKAIRACINGならではの強み。ハードウェアのセットアップ・カスタマイズから、シミュレーターソフトのMOD作成、細部のパラメーター調整に至るまで、ユーザーニーズに応じてきめ細かく対応しているという。
今回のFanatecとの代理店契約の締結により、同社はFanatec製品の国内販売を担うことになる。一般ユーザー向けにはデバイス単体の販売だけでなく、複数のFanatec製品をセットにしたパッケージの開発・販売、サポートの強化が可能になるとしたほか、法人向けには大量導入や独自カスタマイズを施したパッケージの提供なども行なえるとしている。
イベントで登壇したZENKAIRACING代表取締役の林氏は、「Fanatec製品はライトユーザー向けというイメージもあるが、今後ホイールベース(モーター)やステアリング、ペダルなどのデバイスが拡充されると聞いている。我々は今までハイエンドユーザー向けを強みとしていたが、ミドルエンドやローエンドも含め、幅広い層に製品提供できるようになる」と協業の意義を語った。
一方、Fanatecのシニアディレクター トビアス・ステルツァー氏は、ZENKAIRACINGとのパートナーシップについて「今まではWebからしかFanatec製品を購入できなかったが、ZENKAIRACINGとの提携により、これまでとは異なるターゲット層にリーチできるようになる」と期待感を口にした。
それを全面的に支援してくれているのがCORSAIRだとしたうえで、「我々と一緒に世界中の多くのユーザーに製品を届けるという明確な戦略があり、市場ごと、大陸ごとに段階的に展開していく。欧米ではすでに強固な基盤を築いているが、今後はアジア、とりわけ大きな可能性がある日本の市場を開拓していきたい」と述べた。
エキシビジョンマッチの勝負の行方勝者はスーパーフォーミュラドライバーか、グランツーリスモ出身者か
会場にはFanatecのレーシングシムデバイスが装着された筐体「ClubSport GT Cockpit」が5台設置されており、イベントの後半はその筐体を使ったプロレーシングドライバーによるグランツーリスモ7のエキシビジョンマッチと、来場者向けの体験会が実施された。
エキシビジョンマッチに名乗りを挙げたのは、スーパーフォーミュラおよびSUPER GTのGT500クラスで活躍する大湯都史樹選手、同じくスーパーフォーミュラとGT300クラスに参戦するイゴール・オオムラ・フラガ選手、そしてGT300クラスの冨林勇佑選手。
3選手ともZENKAIRACINGがサポートするドライバーだが、イゴール選手と冨林選手については、もともとカーシミュレーターのグランツーリスモで頭角を現し、それをきっかけに実車レースへ活動の場を移すという「バーチャルからリアル」を体現したことでも知られる。レーシングシムが単なるゲームではなく、プロレーシングドライバーへの登竜門にもなりうることを身をもって証明した2人だ。
エキシビジョンマッチは富士スピードウェイをスーパーフォーミュラマシンで2周するという内容で争われた。スーパーフォーミュラドライバーである大湯選手とイゴール選手に有利に働くのか、はたまたグランツーリスモ世界大会優勝経験者である冨林選手が意地を見せるのか、注目が集まった。
レースは、抜きつ抜かれつのデッドヒートが終始繰り広げられる展開に。2周目の中盤まで3台がほとんどひとかたまりになっていたものの、後半に入りイゴール選手がトップに立つと、追いすがる他2台を巧みなマシンコントロールで抑え、トップでチェッカーを受けた。
イゴール選手は、「グランツーリスモ出身なので負けられないという思いが強く出た」としつつ、実際に体験したFanatecの筐体に関しては「自分が使っている機材に似ているので乗りやすかった」とのこと。「剛性感もあって操作性も良く、自分の乗りたいポジションにアジャストできる」点もいいところだと話した。
惜しくも2位となった冨林選手は、「(スーパーフォーミュラに)乗っていない僕でも、2人とバトルできるのはこの筐体のおかげ。自分に合わない筐体だとうまく運転できないが、自分の感性が行き届くような筐体だったので素晴らしい」とした。
大湯選手もフFanatecの筐体の高精度さをポイントとして挙げ、「グランツーリスモは(シミュレーター環境として)誰の手にも届きやすいので、いろいろな人が挑戦してほしい」と話していた。