プロダクトレビュー・ショーケース

圧倒的なカスタマイズ性!自分好みの操作感を追求できるワイヤレスゲームパッド「Flydigi VADER 4 PRO」を試す

 ユニークな「テンション調整機構」を備えたスティックを搭載したゲームパッド、Flydigi「VADER4 PRO」が、サイズから発売された。

 発売から数日足らずで品切れ続出という人気ぶりで、ゲームパッドユーザーから大いに注目を集めている製品だ。

 店頭販売価格は8,980円。本稿ではそんな注目デバイスの詳細をご紹介しよう。

人気ワイヤレスゲームパッドの後継モデル

 VADER4 PROは、中国Flydigi製のワイヤレスゲーミングパッドで、同社の人気ゲームパッド「VADER3 PRO」の後継モデルに当たる製品。

 ボタン/スティックレイアウトはXBOXコントローラー準拠で、背面に4つのカスタムボタン(M1~M4)を備えるほか、ABXYボタンの並びにも2つのカスタムボタン(C/Z)を備えるのが特徴。

背面
背面ボタンは左右に各2つ

 ABXYボタンにはマイクロスイッチを採用し、クリック感に優れた感触を備えるほか、Dパッドにもタクタイルスイッチを採用しクリック感のある入力を実現している。

A/B/X/YとC/Zボタン
8方向入力が可能なDパッド

 筐体はすべて樹脂製。グリップ部分のラバー加工なども省かれているが、滑り止めとして機能する細かなテクスチャパターンが配置されている。

 本体重量は公称値280gで、255gのVADER3 PROよりも微増となっているが、実測値では269.7gと公称値より軽く、長時間でも疲れずに持っていられる重さだ。

グリップ部分にはテクスチャパターンが配置されている

 接続インターフェイスは2.4GHz帯ワイヤレス(USBドングル経由)とBluetooth、有線接続に対応。Windowsのほか、Nintendo Switch、Android 10以降/iOS 13.4以降搭載のスマートフォン/タブレットに対応する。

 有線接続と2.4GHz帯ワイヤレスでは、ポーリングレート1,000Hzでの接続に対応するのも特徴。

 パッケージには本体のほか、USBドングルとUSB-Cケーブル、マニュアルが付属する。

主な付属品はドングルとUSB-Cケーブル

各種設定を「Flydigi Space Station」で変更可能

 VADER 4 PROでは、Windows用ユーティリティ「Flydigi Space Station」できめ細かな設定ができる。

 同アプリでは4つのプロファイルを設定可能で、各設定はパッド本体に保持される。あくまで設定変更にのみ必要とされるため、常時動作させる必要がないのは利点だ。

Flydigi Space Station

 ボタン設定では、追加ボタンである背面/C/Zだけでなく、各メインボタンやトリガーにも任意のボタン/キー入力/マウスボタンを割り当てられる。

マクロや連射ボタンも割り当て可能だが、ゲーム等での利用が不正プレイと見なされる場合もあるため注意したい

 VADER 4 PROは6軸ジャイロセンサーも内蔵しており、Flydigi Space Stationからスティックやマウス操作を割り当てられる。

 本体ロゴの下に配置されたV字のRGB LEDライトについても、明るさやエフェクトなどが設定できる。

 その他スティックやトリガー設定などについては後ほど紹介しよう。

LEDライトバー

 本体/ドングルのファームウェアのアップデートツールも組み込まれている。なお本稿では、本体ファームウェアを9月6日配信の「v6.9.3.1」にアップデートの上で検証を実施している。

最新FWでは、スティック操作の遅延など国外発売時に指摘されていたいくつかの不具合が修正されているため要アップデートだ

 検証中に気になった点としては、Microsoft Storeなどへの登録がなくFlydigi公式HPでの配布のみである点や、起動に管理者権限が要求される点が挙げられる。

 前述の通り、ゲーム中などにバックグラウンドで起動しておく必要がある訳ではないが、できればアプリストアへの登録による安全性の担保などの配慮が欲しいところだ。

カスタマイズの余地が広いホールエフェクト式スティック

 本製品の特徴はスティックのカスタマイズ性で、その中でも「テンション調整機構」が最大の特徴だろう。左右のスティックでそれぞれ調整できる。

 ここで言う“テンション”は、スティックを倒すのに必要な力のことを指す。スティック内部には、中心(ニュートラルポジション)にスティックを戻すためのバネが組み込まれているが、VADER4 PROでは、このバネの長さを変化させる機構を搭載することでスティックの固さを調整可能としている。

テンション調整機構搭載のスティック

 スティックの固さを調整することで繊細な操作をしやすくする「エイムリング」などと呼ばれるクッション素材アクセサリーがあるが、このテンション調整機構もエイムリングと同様のメリットが期待できる。

 さらにエイムリングではシャフトとリング部にクッションを間に挟む関係上、最大までスティックを倒すのが困難になるというデメリットがあるが、本機構ではそのデメリットも回避できる点もポイントだ。

 テンション調整はスティック外周のリング部分がダイヤルになっており、40~100gfの固さから調整できる。

リング部分が調整ダイヤルになっている

 注意点として、L3/R3ボタンを押すのに必要な固さもスティックのテンションに連動してしているため、スティック押し込み操作がしにくくなる、あるいは軽すぎて誤クリックしてしまう可能性が上がることは留意しておくべきだろう。

 なお、スティック上部は着脱可能な構造となっており、別売のシャフト長さが異なるスティックと交換が可能だ。

別売のアクセサリーとして販売されている、シャフト長さの異なるスティックと交換できる

 スティック本体はホールエフェクト式のセンサーを採用。従来のポテンショメーター式のスティックと比べてドリフト現象が発生しにくく、デッドゾーンも小さいとアピールされている。

 さらにFlydigi Space Stationからは、インナー/アウターデッドゾーンの設定、感度曲線、真円度補正の有無などを設定できる。

 キーボード入力やマウスカーソル移動の割り当ても可能だ。

 またVADER4 PROでは、「ジョイスティックデバウンス」や「自動キャリブレーション」、「ジョイスティックの精度」、「ジョイスティックポーリングレート」、「ジョイスティック中央感度」、「リバウンスアルゴリズム」が、「機能設定」画面から設定できる。

 「ジョイスティックデバウンス」は、スティックニュートラル時の非常に小さい入力の揺れ(0.001~0.002など)を抑えてくれる機能だ。

 「自動キャリブレーション」は、3秒間スティックの無操作状態が続くと、キャリブレーションを行い、センタリングポジションをリセットしてくれる機能。なお自動キャリブレーションは、ジョイスティックデバウンス有効時にのみ使用できる。

 「ジョイスティックの精度」では、ホールエフェクトセンサーの読み取り解像度を変更できる。設定項目として用意されているのは珍しいが、簡単に言うと、どのくらい細かなスティック操作を検知させるかを選択できる。

 項目は8/9/10/11/12bitの5段階で、それぞれスティックの上下左右の各方向を128/256/512/1,024/2,048段階刻みで検知する設定となる。

 「ジョイスティックポーリングレート」はジョイスティックのポーリングレートを設定できる。「ジョイスティック中央感度」はスティック入力を線形(リニア)で扱うか指数で扱うかを選択できる項目だ。

 「リバウンスアルゴリズム」は、倒したスティックから指を離した際に、戻るバネの勢いでニュートラルを超えて反対方向の入力が入ってしまうのをフィルタして削除する機能。左右移動の切り返し操作が必要な場合には、フィルタに引っかかってしまう場合があるため、シューティングゲームなどではオフ推奨とされている。

 なお「機能設定」の各項目については、プロファイル単位ではなくゲームパッドで共通の設定となる。

トリガーストップ機構搭載のホールエフェクト式トリガー

 スティックだけでなく、LT/RTトリガーもホールエフェクトセンサーを採用。耐摩耗性に優れ、高精度の入力が可能だ。

 またVADER3 PROと同様、アナログトリガーとボタン動作を切り替えられるトリガーストップ機構も左右それぞれに搭載。マイクロスイッチを備えた物理的な切り替え式で、カチカチとしたクリック感のある入力で明確な操作感が得られるのがポイントだ。

トリガーストップの切り替えスイッチ
押していない状態
トリガーストップ無効時
トリガーストップ有効時

 またグリップ部と別に、トリガー内部にも振動モーターが搭載されている。

 Flydigi Space Stationからはデッドゾーンの設定や、トリガー振動モーターの強さなどが設定可能だ。

設定通りに動作する高い精度

 ここまでは機能について詳細に触れてきたが、実際の動作はどうだろうか?

 まずはGamepad Testerでにてスティックの動作を検証してみよう。

 真円度テストでは、矩形設定(補正なし)時で左右ともに約9%、円形設定(補正あり)時で0.1%となった。

 スティック中央のドリフトについては、センターデッドゾーン0/円形補正なし/ジョイスティックデバウンス オフ/キャリブレーション オフの設定で、-0.00002~0.0078前後に収まった。

 各種補正を切った素のスティック状態でもドリフトは小さく、公称通りゼロデッドゾーンであることも確認できた。

 続いてはGamepadlaを用いて、ポーリングレートについても検証してみた結果が以下だ。

ポーリングレートの計測結果 ※レイテンシの項目についてはレポートレート間隔を表記したもので、実際の入力遅延とは異なるため注意

 有線接続時では実測947.55Hzを記録。2.4GHzワイヤレスでは942.45Hzとなり、いずれも1,000Hzポーリングでの接続を確認できた。

 なお、SwitchモードでBluetoothにて接続した場合は実測約477Hzを記録し、500Hzポーリングでの接続となっていることがわかる。

ゲームプレイでも感じられるカスタマイズ要素の価値

 実際のゲームプレイではどうだろうか?バトルロイヤルFPS『Apex Legends』を使って動作を検証してみよう。

Apex Legends (C)Electronic Arts Inc.

 まずテンション調整機構については、わかりやすく操作の快適度がアップする。

 テンションを固くするのか軽くするのかは個人の好みが分かれるポイントだが、指先で自然に動かせる固さにすることで、スムーズなスティック操作が行えるようになる。

 普段はゲームパッドでシューティングゲームをプレイしておらず、スティック操作の練度が高いとは言えない筆者だが、そんな初心者でも、Xbox Oneコントローラーなどその他のゲームパッドと比べて、明らかにターゲットの追跡やリコイルコントロールのしやすさを実感できた。

動くダミー相手でもしっかり追える
マウス操作時と大差ないリコイルコントロールが可能で驚いた

 繊細なスティック操作への影響が大きいのが、ジョイスティック精度の設定だ。

 高bitの設定であるほど細かな操作を反映できるのだが、ほんのわずかな動きでも検知するため、プレイするゲームや好みによっては、必ずしも高ければ良いというわけでもない。

 実際にApex Legendsをプレイしてみても、最大の12bitよりも10bit程度に抑えた方がエイムしやすい印象を受けた。

 Flydigi Space Stationのヘルプによれば、PS5標準のDualSenseコントローラーが8bit、Xbox Seriesコントローラーは9bitとされており、操作感を合わせたい場合には参考にすると良いだろう。

Stick Analyzer 1.6.4の各解像度設定の測定結果
8bit
9bit
10bit
11bit
12bit

 続いては、アクションRPG『黒神話: 悟空』での操作感を検証。シビアな入力タイミングが必要とされる高難度のタイトルだが、マイクロスイッチボタンの明快なクリック感により、意図したタイミングでの回避動作や攻撃が行える。

黒神話: 悟空 (C)GAME SCIENCE INTERACTIVE TECHNOLOGY CO.,LTD. All Rights Reserved.

 連打ではなくジャスト回避のボタン入力が重要な同タイトルにおいて、本製品の“ボタン入力の明快さ”は特に高く評価したいポイントだ。

 VADER4 PROを繋いで、オープンワールドアクションRPG『鳴潮』もプレイしてみた。こちらも黒神話: 悟空と同様に正確な入力が必要とされ、戦闘のテンポが速くキャラクターを切り替えての攻撃コンボやパリィなど複雑な入力操作が要求される。

鳴潮 (C)KURO GAMES. ALL RIGHTS RESERVED.

 こちらもマイクロスイッチボタンにより、狙ったタイミングで正確に入力が可能で、Dパッドも非常に明快な入力で操作ミスなく快適なプレイが可能だった。

 レーシングゲームの例として『Forza Horizon 5』もプレイ。

Forza Horizon 5 (C)Microsoft

 テンション調整は、左スティックのテンションを固めに設定することで細かなハンドル操作がしやすくなり、効果のほども分かりやすい。

 スティックのテンション調整のみならず、ホールエフェクトセンサー式のトリガーによる細かなアクセル/ブレークワークの反映や、路面状況やグリップ感のわかりやすいインパルストリガーも、レーシングゲームでのプレイのしやすさと没入感を高めてくれる。

豊富なスティックカスタマイズ機能を備えたゲームパッド

 紹介してきたように、VADER4 PROは高いカスタマイズ性を備えたワイヤレスゲームパッドだ。

 とくにスティックのカスタマイズ要素は幅広く、数あるゲームパッドのなかでも頭一つ抜けており、シューティングゲームなど操作性が勝敗を分ける用途において、自分好みの操作感になるよう追い込める要素が盛りだくさんというのは高く評価できるポイントだ。

 表側2個+裏側4個の追加ボタンを備え、ボタン割り当ての自由度も高いため、アクションゲームにも使いやすい。2025年発売予定の『モンスターハンターワイルズ』に向けて購入するにもオススメできる。

 ここまでの機能を備えながら、1万円を切る価格というコストパフォーマンスの高さも光る。

 発売から即完売となった人気ぶりも納得の1台と言える。ゲームパッドの購入を検討しているなら、筆頭候補として考えるに値する完成度だ。