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ASPM対応のNextorage「Gシリーズ ME」で快適に!SurfaceのSSD換装と電源管理/省電力機能の重要性

モダンスタンバイがきちんと機能しているかをチェックしてみた text by 内田 泰仁

 ROG AllyやSteam Deckのようなゲーミング色の強いポータブルPCや、ビジネスシーンでも人気の高いSurface ProなどのタブレットPCの一部製品では、広く普及している一般サイズのSSD、いわゆる“2280”タイプではなく、基盤がもっと短い“2230”タイプが利用されているケースが多い。比較的SSD換装が楽なモデルも多く、たとえばSurface Pro 7+/8以降のモデルあたりは、SSD換装が楽というあたりが中古市場での人気の一端のようだ。

 筆者自身もSurface Pro 8のSSDを大容量モデルに差し替えて仕事に使っているのだが、以前から、この手元の環境の電源回り、具体的にはスリープの挙動に「??」となることがあった。SSDの換装がトリガーになっていたようなので、その顛末を簡単にレポートする。

カバンの中のSurface Pro 8がホカホカ状態、ASPM対応をチェック

 手元のSurface Pro 8は、入手後すぐにSSDを大容量のものに換装。元のSSDで使っていた時間はほぼゼロに近い。そんな使い始めからしばらくして挙動に疑問を感じたのが、「通勤や移動の間に、カバンの中のSurface Pro 8がまあまあホカホカになっていることがたびたびある」ことだ。

Surface Pro 8(2021年モデル)。Surface Pro 7+以降およびSurface Pro XはSSD換装がかなり簡単

 著者のSurface Pro 8は日常的にMicrosoft純正のタイプカバーを付けて運用しているため、席を外したりカバンに入れたりするときにはタイプカバーを閉める=スリープ、という標準設定で運用している。この時の状態は、実際には(すべてが正しく動いていれば)超低電圧のスタンバイ状態になりつつネットワーク接続が維持され通知の受け取りなども可能な“モダンスタンバイ“に入っているので、完全な電源OFF状態とは違うわけだが、「だからと言って、こうもホカホカになるものだろうか?」とは思っていた。

 気になって状況を見てみると、カバンに入れて移動している際、ホカホカになっているときにはバッテリーが減少していることもあり、このことが致命傷になったことこそないものの、すっきりしない感は付きまとっていた。そんなとき、ネタ集めを兼ねてさまざまなPC情報を眺めていると、一部の2230 SSDにおける省電力機能の不足を指摘する記述を見かけた。曰く、PCI Expressデバイスの省電力機能であるASPM(Active State Power Management)に非対応の一部SSDでは、正しくモダンスタンバイに入ることができず、スリープしているように見えてもバッテリーを消耗している、とのこと。筆者の状況はこれにかなり近いようだ。

ある日のバッテリーの推移。バーの並びのうち、右から4本目のバー以降が移動中の時間帯なのだが、タイプカバーを閉じていたのにバッテリーが減少。カバンの中でホカホカになっていた

 SSD(のコントローラー)が持っている機能については、HWiNFO64で確認できるのだが、これによると、この時使用していたSSDはやはりASPMには対応していなかった(コントローラーは格安の中華SSDでよく見かけるMaxio製)。また、モダンスタンバイが機能しているかどうかについてはコマンドプロンプトで「powercfg /a」して確認してみたところ、見た目上は設定されている(=S0 低電力アイドル)ようではある。ただ、実際にはバッテリーは減少しており、他の常駐アプリの可能性なども疑ってみたがどうもはっきりしない。

換装して利用していたSSD。Maxioコントローラーを搭載
換装したSSDのコントローラー情報を見てみると、ASPMのサポートなしの表示。Windows側のパワーマネージメント設定はモダンスタンバイが有効になっていた

 標準装備のSSDに戻して確認したところ、こちらはASPMには対応、モダンスタンバイも設定済み、という状況。とはいえ、これはこれで容量が少ないので(256GB)、ホカホカが解消したとしても実用上のストレスがちと高い。

Surface Pro 8にもともと搭載されていたSSD。SK Hynix製でASPMサポート。モダンスタンバイも有効

そんなタイミングで入手したのが、Nextorage初の2230 SSD「Gシリーズ ME」だ。詳しいスペックはこちらに譲るが、NextorageのSSDは、ゲーミングPCを意識したSSD製品で実績があり、コントローラーもPhison製ということで安心感も高い。

Nextorage「Gシリーズ ME」

 実際に換装してHWiNFO64とpowercfgコマンドで確認したところ、ASPMに対応(L1)しており、モダンスタンバイも設定状態ということが確認できた。あとはこのまま、しばらくは日常通り運用してみてどうなるか、というところだ。

この画面ではコントローラーのメーカー名が表示されていないがPhison製で、ASPMはサポート。モダンスタンバイも有効のまま
ちなみにSurface Pro 8のSSD換装はかなり簡単。キックスタンドを広げるとSSDのフタが見えるので、小さな穴にピンを挿してこれを外す。その後、SSDを交換してフタを閉めて戻せばOK。念のため換装するSSDには熱伝導シートを貼ってある

再換装の効果はアリ、ちょっと贅沢すぎる高速仕様だけど……

 その後、通勤や取材外出などでSurface Pro 8を持ち歩くこと数週間が経過しているが、以前たびたび遭遇していた「カバンから取り出したらホカホカ状態」ということが発生することは皆無。また、移動中にバッテリーが消耗しているということもない。この間に導入済みのアプリ構成が変わったということもないので、おそらくはSSDのASPMサポートの有無が原因と見てよいだろう。

換装後、Surface Pro 8を持って移動したとある日のバッテリー推移。右側のほうにAC電源から切り離された移動時間が含まれているが、パッと見てわかるようなバッテリーの減少や本体のホカホカ症状は発生しなかった。このあとも何度も持って外出しているが特に問題は生じていない

 軽くCrystalDiskMarkを回してみたが、カタログスペックどおりの高い性能。正直、オフィスアプリ+テキストエディタとWebサービス各種、それに一部のAdobe系アプリの軽作業程度の使い方である筆者のSurface Pro 8にはちょっと贅沢すぎる性能ではある。ゲームが遊べたりクリエイティブワークにバリバリ使えたりするスペックのPC向き。初代ROG Allyなどにオススメしたい。

換装前(左)と換装後(右)のCrystalDiskMarkの計測結果。シーケンシャル、ランダムともに大幅に高速化する

 筆者の場合は、移動時間が長くてもせいぜい2時間程度だったので、移動中にバッテリーがゼロになっていた、というほどの緊急事態には陥ってないが、それでも熱を持ったりバッテリーが減っていたりするのはモバイル端末としては気になるポイント。もし、同様の状況に遭遇している人がいたら、電力設定回りの確認、使用中のSSDのASPMサポートを確認してみていただきたい。また、これからモバイルPC用のSSD換装用に2230タイプの製品を探す場合には、仕様表などでASPMサポートを公表しているもの、事前の口コミチェックなどでASPMサポートが確認できているものを選ぶ、という視点もアリだろう。

 ただ、ASPM未サポートのSSDであっても、リードやライトの性能にマイナスがあるというわけではない。実際にしばらく使っていたSSDもベンチ結果自体はカタログ仕様に即したものだったので、PCの用途、SSDの使い方しだいではまったく問題なし、ということもある。気付いたらホカホカ状態を避けたければ、極端な話、PCの電源をOFFにしてしまうのも手だ(かつてのPCに比べれば起動は圧倒的に速いし……)。大容量の2230 SSDとなると価格もそれなりの額になる。用途とコスパを天秤にかけつつ、賢いお買い物と換装にチャレンジしてみてはいかがだろうか。