プロダクトレビュー・ショーケース

旅行中も重いノートPCを持ち運ぶのはもうイヤだ!「AYANEO Pocket EVO」で業務とゲームを両立できるかを試す

できることの幅は思ったより広く期待以上の満足感!? text by 竹内 亮介

ゲーミング・モバイル端末で旅行時の機材をリニューアル

 筆者はライターと編集者を兼ねていることもあって、旅行など事務所を離れる際にも画面が大きめなノートPCや、仕事で使う周辺機器を持ち歩くことが多かった。もちろん旅行前に仕事を全部終えればそんな必要はないのだが、なかなかそううまくもいかないので……。ただ今は仕事の量も控えめ(婉曲表現)になり、旅行先でも仕事に追われるということは少ない。

 なら、これを機会に持ち運ぶ機材をダイエットしてもいいんじゃないか? と考えて、
新たに旅行・外出時のマシンを選定、実際に購入してみた。

普段プレイしているゲームを考えてAndroid搭載モデルを選択

 そんなわけで、今回購入したのがAYANEO「AYANEO Pocket EVO」(以降、Pocket EVO)である。7型の有機ELディスプレイやAndroid 13を採用し、両サイドにコントローラを装備するゲーミング端末だ。「Snapdragon G3x Gen2」をSoCに搭載しており、ほかのAndroidゲーム機と比べるとゲーミング性能は高い。

AYANEO「AYANEO Pocket EVO」。7型モニターの両脇にコントローラが付いたゲーム機らしいスタイルだ

 もちろんこうしたゲーム機が、ノートPCの代わりになるハズはない。しかし旅先で細かく手間のかかる作業をしなくなった今、残る小さな業務をこうした大画面のゲーム機、常時携帯するタブレット、スマホなどに集約できるのではないか? と言い訳をしながら購入したのが今回のPocket EVOということなのだ。まあ、端的に言うと欲しかったんです……。

 最近は、今回購入したPocket EVOのようなゲーミング用途向けのハンドヘルドPCが増えている。Android搭載モデルだけではなく、Windows 11を搭載したモデルも多く、どちらを選ぶかは最後までかなり迷った。Windows 11搭載モデルならノートPCで使っていたアプリもそのまま使えるし、今までの業務内容をそのまま引き継ぐことも不可能ではないだろう。

下は今まで持ち歩いていたのはLenovoの「ThinkPad T14 Gen 4 AMD」で、重さは実測値で約1.3kg。天板の上に乗っているのがPocket EVOで、重さは478g

 ただWindows 11搭載モデルだと本体重量が重く、ベッドで寝っ転がってプレイする筆者のようなスタイルだと、腕にかなりの負担がかかる。またAndroid搭載モデルに比べればバッテリー駆動時間も短めだ。なにより普段プレイするゲームはAndroid上でも動作するものが多めなので、Steamで購入したWindows向けのゲームは、Steam Linkを使って自宅で楽しむ方向で考えよう。ウルトラモバイルPCとトラベルルータを使う、という手もあるわけだし。

天面には指紋認証機能を組み込んだ電源ボタン、パフォーマンスモード切り替えボタン、排気口などを備える
底面には充電用のType-Cポート、microSDメモリカードスロットなどを備える

 今回購入したのは、メモリが12GBでストレージが256GBの中位モデルだ。メモリが8GBでストレージが128GBの下位モデルは最近のゲームが必要とする保存容量を考えると論外だが、メモリが16GBでストレージが512GBの上位モデルはちょっと高い。ストレージ容量は、512GBのmicroSDメモリーカードで補えばいいだろう。購入したのはAmazon.co.jpで価格は81,691円。購入時はスプリングセール中で2万円以上の割引があったが、現在は通常価格で104、800円。

【主な仕様】
製品名AYANEO Pocket EVO
OSAndroid 13
CPUQualcomm Snapdragon G3x Gen2
搭載メモリLPDDR5 12GB
ストレージ256GB(UFS 4.0)
通信機能IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/be、Bluetooth v5.3
主なインターフェースType-C 1基(充電と画面出力に対応)
本体サイズ(W×D×H)260.5×100×17~33.9mm
重量(実測値)478g
購入時価格(セール価格)81,691円(税込)

 届いたPocket EVOは横幅が約26cmあり、なかなかにでかい。7型モニターの両脇にそれなりのサイズのコントローラが付いているため、結構ゆったりと腕を広げて構える感じになる。ただ持ち方としては自然であり、手のひらが当たる部分に大きなふくらみがあり、ここでしっかりと本体をつかめる。

 大きいのは大きいが、腕に余計な力が入ることもなく、肩が凝ったり指が攣ったりする心配はない。3~4型モニターを採用する超小型タイプや縦型タイプは、宙に浮いた状態の薬指や小指が痛くなることもあり、長時間遊ぶならコントローラのフィット感が勝る横長タイプが個人的には好みだ。

実際に握ってみると、人差し指や中指が自然とLRボタンにかかる位置に来る
グリップ部分はかなり大きく、手のひらでしっかり支えられる
ジョイスティックは非接触型で壊れにくく、ドリフト現象が発生しにくい「ホールセンサー」タイプ

 不思議なもので筆者のようなレトロゲーマーからすると、こうしたコントローラを使うだけでゲームがかなり操作しやくなる。その意味で言えば、常時持ち歩いている8型タブレットにXBOXコントローラなどをつないでもいいのだが、それだとプレイする時の姿勢がつらいのだ。ベッドにうつ伏せになって画面を見つめてプレイすることが多いため、個人的にはこのスタイルのゲーム機が一番楽に感じる。

LAVIE Tab T9にXBOXワイヤレスコントローラを接続してプレイしていた頃もあるが、ベッドの上だとちょっと姿勢が苦しかった

重いゲームもスムーズ、Steam Linkのプレイ感も上々

 高性能なSoCや12GBという余裕のあるメインメモリのおかげもあり、動作はかなり快適だ。普段からプレイしているゲームも普通にサクサク動作するし、負荷が高めの「原神」でグラフィックス設定を「最高」にしても、コマ落ちもなくスムーズに動作した。

 あまり細かくベンチマークで検証する記事でもないのでGeekBench 6のみとするが、Gameモードに設定したときのCPUのScoreはシングルコアが1,910、マルチコアが5,070で、GPUのScoreは9,072。最新のSnapdragon 8 Gen 3搭載機と比べれば若干劣るが、かなりレベルは高い。少なくとも手持ちのAndroid搭載機の中では一番高いScoreだった。

パフォーマンス設定などを調整できるウィジェットを使ってみる。右ジョイスティックの下にある横長の「AYASPACE」ボタンを押すと――
するとCPUやファンの動作モードなどを変更できるAYASPACEウィジェットが右からニュッと表示される。基本はBalanceモードだが、重いゲームの時はGameモードに変更、などの操作は容易

 また、有機ELだけあってモニター画面は本当に美しい。最近はスマートフォンなどのモバイル端末でも有機ELパネルを採用する製品が増えているが、そうした高性能モデルと比べても遜色のない表示だ。また輝度やコントラストも高く、はっきりとした黒や鮮烈な光を表現できる。これは液晶モニタータイプでは味わえない快感だ。

 自宅でSteamのゲームをプレイする時に利用するSteam Linkは、プレイ画面をスマホやタブレット側に配信するアプリなので、画面表示のラグや操作の遅延が気になるところだろう。ただ、Wi-Fi 6対応ブロードバンドルータをベースに構築している筆者の環境でプレイする限り、そうした遅延を感じることはなかった。

Steam Linkに接続中の画面。実際にプレイしているときの感覚は、メインPCでプレイしているときとあまり変わらない印象

 そもそも筆者がプレイしたいのは「逆転裁判」や「世界樹の迷宮」など、リメイクされたレトロゲームが主体なので、遅延があってもわかりにくいと言うことはある。最近のゲームとしては珍しく400時間以上プレイしている「パルワールド」でも、普段PCに接続しているXboxワイヤレスコントローラとほぼ同じ感覚でプレイできた。

パルワールドのような3DゲームのグラフィックスもPocket EVO上で精細に表示される

 ただ音源との相性なのか、ごく稀にBGMや効果音が濁った感じになるゲームもあった。また「Neo ATLAS 1469」や「Civilization」シリーズなど、マウス操作が基本のゲームだとコントローラでは思う通りの操作は難しい。Pocket EVOとSteam Linkでのプレイには向いていないゲームも一部存在する、と考えてよいだろう。

軽作業は問題なし、高さ調整機能付きのスタンドはあった方がよい

 ゲームの話をしているとキリがないので(結局ゲームがしたいだけか?)、ぐっとこらえて、出先で仕事をする話に移るとしよう。想定しているのはWebブラウズの情報収集と原稿の修正、追加くらいなものだろうか。写真やPDFの確認くらいはするかもしれないが、いずれもAndroid用のアプリがあるので、それらをインストールするだけでよい。

 愛用している日本語入力用の「ATOK」もAndroid用アプリが用意されているので、Bluetoothの薄型キーボードを追加すればそうした軽い業務は充分こなせる。ファイルのやりとりについては、普段から進行中の仕事についてはグーグルドライブに保存しているので、USBメモリなど外部ストレージの利用は考えなくてもよい。

 Pocket EVOは自立する仕組みがないので、スタンドは欲しい。ただテーブルに本体を直置きするタイプだと、目線が下に向くのでちょっと疲れそうだ。以前別の企画で、本体を置く場所の高さを調整できるスタンドを購入しており、これを組み合わせれば問題はないだろう。実際にスタンドとPocket EVOを組み合わせると、ちょうどいい感じだった。

今回のスタンドにPocket EVOを置くとこんな感じになる。高さを目線に合わせて調整しよう
携帯時は折りたたんでコンパクトに収納できる
キーボードは使い慣れたThinkPadのキー配列で利用できるLenovoの「トラックポイントキーボードII」にしよう

 ……実際のところ、こうした作業は電子書籍用に普段から持ち歩いている8型タブレットでも代行可能だ。ムリにPocket EVOを使う必要もないので、旅行期間や仕事内容に合わせて使い分ける方向で考えたほうがよさそうではある。ともあれPocket EVOを購入することでゲーム環境は大きく改善し、1.4kg前後のノートPCを持ち運ぶ必要もあまりなくなった。個人的には満足できる買い物と言える。