PCパーツ名勝負数え歌

2万円以下CPU全面対抗戦!6コアで十分?4コアで戦える?ベンチやゲームで徹底比較

【第9戦】ビデオカードはRTX 4060/RTX 4070 SUPERの2種類でテスト text by 芹澤 正芳

 ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第9戦は2024年8月下旬の時点で実売価格が2万円以下のCPUにスポットを当てよう。

 この価格帯だと、旧世代かつ6コアまたは4コアの製品が中心になる。その中で一番“おいしい”CPUはどれなのか。人気CPUや旧世代CPUも交えて、性能、温度、消費電力などをチェックしていきたい。低価格自作を考えているなら参考になるはずだ。

白熱の1万円台CPU一斉比較レポートをライブ配信でも!【8月28日(水)21時より】

 1万円台でもっともお買い得なCPUはどれなのか?Intel、AMDの代表的なモデルを揃えて一斉性能比較した結果をレポートします。ゲームに、クリエイティブに、普段使いにマッチするのはどんな製品か。そもそも1万円台CPUって最新世代じゃないけど実用度はどれほどなのか!? そんな気になる疑問にもお答えします。解説は芹澤正芳さん。

【一番お買い得な1万円台CPUはどれ?っていうか1万円台CPUはどれくらい使い物になるの?】

2万円以下で買える五つのCPUをピックアップ!

 まずは今回テストするCPUを紹介しよう。

 Intelからは第12世代Coreをチョイス。6コア12スレッドの「Core i5-12400F」、4コア8スレッドの「Core i3-12100F」だ。いずれも末尾が「F」なので、内蔵GPUは備えていない。ポイントは、この価格でもPCI Express Gen 5対応であること。現時点ではそこまで重要度は高くなく、かつGen 5のM.2スロットを搭載しているかはマザーボードしだいではあるが、高速なストレージ環境が欲しい(あるいは遠からず導入を考えている)人にはよいだろう。

6コア12スレッドの「Core i5-12400F」。実売価格は19,500円前後
4コア8スレッドの「Core i3-12100F」。実売価格は15,500円前後

 AMDからは、Zen 3アーキテクチャーのRyzen 5000シリーズからピックアップ。6コア12スレッドの「Ryzen 5 5600X」と「Ryzen 5 5600」、4コア8スレッドの「Ryzen 5500」だ。こちらも内蔵GPUは備えておらず、別途ビデオカードが必須となる。それぞれのスペックは以下の表にまとめた。

6コア12スレッドの「Ryzen 5 5600X」。実売価格は20,000円前後
6コア12スレッドの「Ryzen 5 5600」。実売価格は17,000円前後
6コア12スレッドの「Ryzen 5 5500」。実売価格は15,500円前後

 2020年~2022年のCPUが中心だが、以降の世代の同クラスの製品がまだ高値で推移しているうえ、発売時の価格からかなり値下がりしている製品が大部分であるため、発売時点とは“見え方”がかなり違ってくるだろう。その点を念頭に置きつつ、以降の比較を見ていっていただきたい。

【今回検証するCPU】
CPUCore i5-12400FCore i3-12100FRyzen 5 5600XRyzen 5 5600Ryzen 5 5500
発売時期2022年1月2022年1月2020年11月2022年4月2022年4月
発売時価格25,000円前後14,000円前後36,000円前後29,000円前後23,000円前後
実売価格※19,000円前後15,500円前後20,000円前後17,000円前後15,500円前後
アーキテクチャーAlder LakeAlder LakeZen 3Zen 3Zen 3
対応ソケットLGA1700LGA1700AM4AM4AM4
コア数64666
スレッド数128121212
定格クロック2.5GHz3.3GHz3.7GHz3.5GHz3.6GHz
最大ブーストクロック4.4GHz4.3GHz4.6GHz4.4GHz4.2GHz
3次キャッシュ18MB12MB32MB32MB16MB
対応メモリDDR5-4800
DDR4-3200
DDR5-4800
DDR4-3200
DDR4-3200DDR4-3200DDR4-3200
PCI-Express16レーン(Gen5)
+4レーン(Gen 4)
16レーン(Gen5)
+4レーン(Gen 4)
20レーン(Gen 4)20レーン(Gen 4)20レーン(Gen 3)
TDP65W58W65W65W65W
内蔵GPUなしなしなしなしなし
CPUクーラー付属付属付属付属付属

※実売価格は8月26日時点のネット通販主要店の平均的価格。市場動向により急激に変動する可能性がある

 注目したいのは、Core i5-12400FとRyzen 5 5600Xの同価格帯対決。どちらも6コア12スレッドでTDPは65W、スペックも近いだけにどちらがベンチマークの結果が気になるところ。また、Ryzen 5 5600XとRyzen 5 5600はクロックが200MHz違うだけ。それで価格は2,000円の差。コスパという点で注目しておきたい。

 なお、Ryzen 5 5500は6コアCPUとしては低価格だが、5600X/5600とは内部構造が異なっており、3次キャッシュは半分の16MB、PCI ExpressはGen 3までとなる。これが性能にどう影響するか。Core i3-12100Fは今回唯一の4コアだ。6コアCPUにどこまで対抗できるのかも見どころと言える。

まずは定番ベンチマークで力比べ

 それでは性能チェックに移ろう。テスト環境は以下のとおりだ。比較対象として低価格8コア16スレッドCPUとして大人気の「Ryzen 7 5700X」(実売価格23,000円前後)、旧世代のハイエンドモデル代表として4コア8スレッド「Core i7-6700K」を加えた。数千円の上乗せで性能がどう変わるのか、旧世代CPUからの乗り換えとして2万円以下のCPUはどうなのかを合わせてチェックしていきたい。

 なお、CPUのパワーリミットやメモリのクロックはすべて定格に設定している。組み合わせるビデオカードは基本RTX 4060だが、後半ではRTX 4070 SUPERに交換した場合の結果も掲載する。

【LGA1700検証環境】
マザーボードASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5
(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
【AM4検証環境】
マザーボードMSI MPG B550 GAMING PLUS(AMD B550)
メモリMicron Crucial DDR4 Pro CP2K16G4DFRA32A
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
【LGA1151検証環境】
マザーボードASUS PRIME Z270-A(Intel Z270)
メモリMicron Crucial DDR4 Pro CP2K16G4DFRA32A
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
【共通検証環境】
ビデオカードMSI GeForce RTX 4060
VENTUS 2X BLACK 8G OC
(NVIDIA GeForce RTX 4060)、
NVIDIA GeForce RTX 4070 SUPER
Founders Edition
システムSSDMicron Crucial T500 CT2000T500SSD8JP
(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラーDeepCool AK400(12cm角×1、サイドフロー)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W
(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(23H2)
※LGA1151環境のみWindows 10 Pro

 まずはCGレンダリングでシンプルにCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」とPCの一般的な処理をシミュレートして基本性能を測定する「PCMark 10」を試しておこう。

Cinebench 2024の測定結果
PCMark 10 Standardの測定結果

 Cinebench 2024はCPUの全コアに100%負荷をかけるテストだけに、マルチコアの結果はコア数が大きく影響する。6コアCPUの中ではCore i5-12400Fが優秀、4コアのCore i3-12100Fは厳しい結果だ。ただ、同じ4コアでもCore i7-6700Kよりスコアは高い。6世代も変われば、Core i3でもCore i7を上回るということだ。Ryzen 7 5700Xは、この中で唯一の8コアなので強いのは当然と言える。

 PCMark 10はRyzen 5 5500以外はほぼ横並び。Webブラウザーやオフィスアプリなどの一般的な用途の処理ならば、Core i3-12100Fで十分こなせると見てよいだろう。Ryzen 5 5500はPCMark 10の中では重い処理になるDigital Content Creationが伸び悩んだ。ブーストクロックが低く、3次キャッシュ量も少ないのが影響したか。

 続いて、定番3Dベンチマークの「3DMark」を試そう。DirectX 11ベースのFire Strike、DirectX 12ベースのSteel Nomad、DirectX 12 UltimateベースのSpeed Wayを実行した。

3DMarkの測定結果

 Steel NomadとSpeed WayはGPU依存度の高いテストなのでCPUによる影響が小さく、どれも誤差レベルだ。その一方でFire StrikeはCPU性能を測るテストも含まれているため傾向が異なる。Ryzen 5 5600X/5600が強く、以下、Core i5-12400F、Ryzen 5 5500と続き、Core i3-12100Fが最下位だった。4コアという点が響いているようだ。それでもCore i7-6700Kは上回っている。

RTX 4060との組み合わせで実ゲームはどうなる?

 実際のゲームも試してみよう。まずは、人気FPSから「Apex Legends」と「オーバーウォッチ2」を実行する。Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定した。オーバーウォッチ2に関しては、GPU負荷を減らして、CPUの影響を大きくするため、画質を下げたパターンでもテストを行っている。

Apex Legendsの測定結果
オーバーウォッチ2、画質“エピック”の測定結果
オーバーウォッチ2、画質“低”の測定結果

 Ryzen 5 5500以外のフレームレートはほぼ拮抗。8コアのRyzen 7 5700Xとも変わらない結果となった。4コアのCore i3-12100Fはかなり奮闘していると言ってよいだろう。Ryzen 5 5500は、ブーストクロックの低さに加えて、ビデオカードの接続がGen 3になってしまう点が影響していると考えられる。

 オーバーウォッチ2の画質“エピック”もApex Legendsとほぼ同じ傾向だ。その一方で、画質“低”にすると3DMarkのFire Strikeに近い力関係に変化する。Ryzen 5 5600X/5600、Core i5-12400Fのフレームレートが高く、Core i3-12100F、Ryzen 5 5500はガクッと下がる。高リフレッシュレート液晶と組み合わせるためにフレームレートを絞り出したいということなら、Ryzen 5 5600X/5600、Core i5-12400Fから選びたいところ。

 続いて、オープンワールド系のゲームから「Ghost of Tsushima Director's Cut」と「サイバーパンク2077」を試す。Ghost of Tsushima Director's Cutは旅人の宿場周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定。サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用した。

Ghost of Tsushima Director's Cutの測定結果
サイバーパンク2077の測定結果

 Ghost of Tsushima Director's Cutは、なぜかCore i5-12400F/i3-12100Fが優れたフレームレートを出した。設定がおかしいのかと見直して何度かテストしたが同じ傾向だ。こういうゲームもある、ということだろう。そのほかのRyzen系CPUはどれもほぼ変わらないという結果になった。

 サイバーパンク2077は、Ryzen 5 5600X/5600のフレームレートが優秀だった。ここでもRyzen 5 5500がちょっとフレームレートが下がってしまう。やはり、クロックの低さ、Gen 3接続の影響がありそうだ。

ビデオカードをRTX 4070 SUPERに変更してテストしてみる

 RTX 4060では、CPUがフレームレートに影響を与える前にGPUの性能限界にぶつかってしまうことが多い。では、GPUを上位のRTX 4070 SUPERに変更したらどうなるのか試してみたい。まずは、3DMarkから。

3DMarkの測定結果

 Steel NomadとSpeed WayはGPU依存度が高いのでCPUによる差はほとんど出ていない。その一方で、Fire Strikeでは力関係の差がRTX 4060よりも際立つ。たとえば、Ryzen 5 5600XとCore i3-12100Fでは、約21%もスコア差がある。そして、やっぱりRyzen 7 5700Xは強い。

 では、オーバーウォッチ2ではどうだろうか。同じく、botマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。画質もエピックと低の2パターンでテストしている。

オーバーウォッチ2、画質“エピック”の測定結果
オーバーウォッチ2、画質“低”の測定結果

 RTX 4060では、画質“エピック”だとCPUによるフレームレートの差は小さかった。しかし、RTX 4070 SUPERではGPU負荷が100%にならないため、CPUの影響が大きくなる。Core i5-12400FとCore i3-12100FのフルHDを見ると約16%の差が生まれている。さらに古い世代のCore i7-6700Kでは、RTX 4070 SUPERを使うには力不足と言ってよいだろう。

 画質“低”でも同じ傾向だが、こちらではRyzen 5 5600X/5600が優秀だ。フレームレートをできる限り伸ばしたいなら、やっぱり少しでも上位のCPUを選んだほうがよい、という分かりやすい結果。

クロック、温度、消費電力の推移をチェックする

 最後にCinebench 2024を10分間連続で実行時のCPU温度と動作クロックの推移を「HWiNFO Pro」で測定した。Intel系は、温度が「CPU Package」、クロックが「Core 0 T0 Effective Clock」、消費電力が「CPU Package Power」の値。AMD系は、温度が「CPU (Tctl/Tdie)」、クロックが「Core 0 T0 Effective Clock」、消費電力が「CPU Package Power」の値を追ったものだ。

CPUの温度推移
CPUのクロック推移
CPUの消費電力推移

 クロックに関しては、意外にもCinebench 2024のマルチコアのスコアが一番高かったCore i5-12400Fが4GHz前後と一番下。Ryzen 5 5600Xが4.5GHz前後でトップとなった。CPU温度は、今回CPUクーラーの低価格サイドフローの超定番「AK400」を使用しているが、どのCPUもまったく問題なく冷えている。なかでもCore i5-12400Fは、平均54.8度と非常に低かった。一番高かったのはRyzen 5 5600Xの65.7度だ。クロックの高さと同じと言える。

 CPU単体の消費電力では、4コアということもあり、Core i3-12100Fが平均47.4Wで一番小さかった。Ryzen 5 5600X/5600はTDPは65Wだが、電力リミット(PPT)は76Wなので、平均77Wとほぼその上限に貼り付いて動作していた。Core i5-12400Fは、平均64.7WとほぼTDPの65Wどおりと言える。

Core i5-12400F、Ryzen 5 5600X、Ryzen 5 5600の3強

 今回のテストで安定した強さを見せたのはRyzen 5 5600Xだ。オーバーウォッチ2の低画質設定でのフレームレートの伸びもよく、ゲーミング用途では筆頭と言える。だが、Ryzen 5 5600もクロックが200MHz低いだけなので、実力が拮抗するシーンも多く2,000円前後安いのは予算をなるべく抑えたい場合には魅力的だ。

 Core i5-12400Fもまんべんなく強く、低画質設定でのフレームレートの伸びはRyzen 5 5600Xに若干負けるものの、低発熱で低消費電力なのが強み。それぞれ一長一短がある。Core i3-12100FとRyzen 5 5500の15,000円前後対決は、前者に軍配を上げたい。Ryzen 5 5500は6コアあってもパワー不足が目立つシーンが多いためだ。この結果が、CPUの予算を2万円以下に抑えたいと考えている人の参考になれば幸いだ。

 ちなみに、久々にチョイ前のメインストリームCPU勢をいろいろテストしていた筆者は、今となっては懐かしい新日本プロレス対UWFインターナショナル全面対抗戦の気分であった。テスト中はずっとUWFのテーマ曲が頭の中で鳴り響いていたのである……。