PCパーツ名勝負数え歌

予算10万円のゲーミングPC自作にチャレンジ!人気ゲームをしっかり遊べる仕上がりに!?

【第11戦】Core i5-12400FとGeForce RTX 4060の組み合わせで実現可能 text by 芹澤 正芳

 ウィー! どうも芹澤正芳です。2024年11月7日に発売されるPS5 Proの価格が11万9,800円ということもあって、10万から12万円のゲーミングPC自作プランの立案がなにかと話題になっている。だったら実際にやってみようじゃないか!

 というわけで「PCパーツ名勝負数え歌」の第11戦は「予算10万円のゲーミングPC自作」にチャレンジする。この予算でどこまで性能を出せるのか、見た目や使い勝手にもこだわれるのか。いざ勝負。

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【10万円ゲーミングPC自作の回答!こんなに速い!こんなに使える!】

CPU予算2万円、ビデオカード予算4万円でプランを練る

 今回は、OSを含めない“予算10万円”でゲーミングPCプランを考え、実際に完成させて人気ゲームで性能をテストしていく。予算は当然ながらビデオカードに一番割り振る。とはいえ、ほかのパーツとのバランスを考えると4万円前後が限界だ。そこで性能が可能な限り高いものになると、GeForce RTX 4060搭載のカードが筆頭になる。

 今回はその中でも最安値クラスの玄人志向「GALAKURO GAMING GG-RTX4060-E8GB/SF」をチョイスした。シングルファンでカード長15.7cmとコンパクトなので扱いやすい。

GeForce RTX 4060を搭載する玄人志向の「GALAKURO GAMING GG-RTX4060-E8GB/SF」。実売価格は4万円前後
補助電源は8ピン×1だ
出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1a×1の4系統

 CPUの予算は2万円前後とした。プランを立てた2024年9月中旬ではCore 5-12400Fがベストと言える。1万9,000円前後で6コア12スレッドのCPUはほかの選択肢が少ないからだ。Ryzen 5 5600XやRyzen 5 5600の実売価格が2万円を切っていた時期もあったが、2024年9月中旬は2万円台半ばから後半になってしまった(が、原稿を書いている間にも変動しているので、最近は結構気が気ではない……)。

 Core 5-12400Fは内蔵GPUを備えていないが、今回はビデオカードがあるので問題なし。CPUクーラーも付属しているので、低価格自作にピッタリと言える。

CPUは6コア12スレッドのIntel「Core i5-12400F」を選んだ。実売価格は1万9,000円前後
プッシュピンで固定するトップフローのCPUクーラーが付属する

 マザーボードはB760チップセット搭載のモデルから選ぶことにした。H610チップセット搭載モデルなら1万円以下も多いが、PCI Express 3.0までの対応になるため、PCI Express 4.0対応のビデオカードやNVMe SSDの性能が最大限発揮できない可能性があるからだ。その点、B760はPCI Express 4.0対応なので心配不要となる。

 今回はmicroATXサイズのASRock「B760M PG Lightning/D4」を選択した。安価なDDR4メモリが使えること、低価格だが1基のM.2スロットにヒートシンクを搭載と冷却対策がしっかりとあることが決め手だ。

マザーボードはB760チップセット搭載のASRock「B760M PG Lightning/D4」。microATXサイズで実売価格は1万2,000円前後
M.2スロットは2基。どちらもGen 4対応だ。Wi-Fiカード用のM.2スロット(Key E)も用意されている

 メモリは予算を切り詰めることを重視してDDR4-3200で8GB×2枚セットにすることに。定番のMicron「Crucial CT2K8G4DFRA32A」を選んだ。4,000円プラスすれば16GB×2枚セットに変更が可能だ。ストレージはゲーム用途なら1TBはほしいところ。Gen 4対応で容量1TBのMicron「Crucial P3 Plus CT1000P3PSSD8JP」をチョイスした。

メモリはDDR4-3200で8GB×2枚セットのMicron「Crucial CT2K8G4DFRA32A」。実売価格は5,000円前後
ストレージはM.2 SSDのMicron「Crucial P3 Plus CT1000P3PSSD8JP」。Gen 4対応で容量は1TBだ。実売価格は1万円前後

 電源ユニットは、GeForce RTX 4060の推奨が550W以上なので、余裕を見て650Wで価格が安めのMSI「MAG A650BNL」。PCケースは、microATXサイズのZALMAN「T3 PLUS」とした。低価格ながら、側面がガラス仕様、前後に12cm角ファンを搭載と見た目も冷却面もしっかりしているのがポイントだ。

電源ユニットは650WのMSI「MAG A650BNL」。ケーブルはすべて本体につながっているタイプ。16ピンの12VHPWR電源コネクターは備えていない。実売価格は7,000円前後
PCケースはmicroATXサイズのZALMAN「T3 PLUS」。実売価格は4,000円前後と低価格だが前後に12cm角ファンを搭載とエアフローは確保されてる

 今回のプランをまとめたのが以下の表だ。

【今回の構成のまとめ】
カテゴリーメーカー名・製品名実売価格
CPUIntel Core i5-12400F(6コア12スレッド)19,000円前後
マザーボードASRock B760M PG Lightning/D4
(Intel B760、microATX)
12,000円前後
メモリMicron Crucial CT8G4DFRA32A
(DDR4-3200 8GB×2)
5,000円前後
ビデオカード玄人志向 GALAKURO GAMING GG-RTX4060-E8GB/SF
(NVIDIA GeForce RTX 4060)
40,000円前後
ストレージMicron Crucial P3 Plus CT1000P3PSSD8JP
(PCI Express 4.0 x4、1TB)
10,000円前後
CPUクーラーCPU付属
PCケースZALMAN T3 PLUS(microATX)4,000円前後
電源ユニットMSI MAG A650BNL(650W、80PLUS Bronze)7,000円前後
合計金額99,000円前後
※実売価格は2024年9月中旬時点のもの

低価格でも組み立てやすいPCケースに注目

 パーツが決まったところで組み立てだ。今回のPCケース「T3 PLUS」は、自作初心者にもオススメと言える。

 まず注目が、天板側のスペースに余裕があるのでEPS12V電源コネクターが挿しやすいこと。マザーボードと天板の隙間が狭いPCケースでは挿しにくいポイントだけに、とてもナイスな構造だ。

 次に、PCケース前後にある12cm角ファンは最初から二つの電源コネクターを一つにまとめる分岐ケーブルが取り付けられていること。マザーボードへのファンコネクター接続は一カ所ですむのが便利だ。そして、裏面からケーブルを出すための穴が比較的大きく、配線をまとめやすいこと。配線をそれほど苦労なくスッキリできるのはとてもよい。

マザーボードと天板の隙間が広いのでEPS12V電源コネクターに挿しやすいのは非常によいポイント
2基あるケースファンの電源ケーブルはあらかじめ分岐ケーブルで一つにまとめられている
拡張スロットはカバーを折って空けるタイプ。今回のビデオカードでは上二つを折る必要がある
各ケーブルを表側に通しやすく、裏面配線をスッキリさせやすいのもナイスなところ
左側面から内部を見たところ。ケーブルをスッキリできるので、エアフローの確保もラクだ
完成型。ちょっとブラックの入ったガラスでさりげなく中が見えるのもグッド

基本性能や温度、動作音をチェックする

 実際に動かして性能などをチェックしていこう。CPUの動作はUEFIのデフォルト設定を採用している。今回のマザーボードでは、PL1=65W/Tau=28s/PL2=117Wに設定された。まずは、CGレンダリングでCPUパワーをシンプルに測定する「Cinebench 2024」とオフィスワークなど一般的な処理を中心に実行してPCの基本性能を測定する「PCMark 10」を試そう。

Cinebench 2024の計測結果
PCMark 10 Standardの計測結果

 Cinebench 2024はMulti Coreが655pts、Single Coreが99ptsとCore i5-12400Fの性能を問題なく引き出せていると言ってよい結果だ。PCMark 10も総合スコアが7,515とこちらもCore i5-12400FとGeForce RTX 4060の組み合わせとして平均的だ。予算を絞っての構成だが、パーツの性能はしっかり発揮できている。

 CPU/GPUの温度や動作音はどうだろうか。CPU/GPU温度は、Cinebench 2024(Multi Core)とサイバーパンク2077を10分間動作させたときの推移を「HWiNFO Pro」で測定した。動作音はPCケースの正面10cmと天板10cmの位置に騒音計を設定して測定している。

Cinebench 2024(Multi Core)実行中のCPU/GPUの温度推移
サイバーパンク2077実行中のCPU/GPUの温度推移

 Cinebench 2024(Multi Core)はGPUに負荷がかからないテストなので、CPU温度だけが高くなっている。それでも最大80℃前後。Core i5-12400Fは基本TDP 65W動作なので、全コアに100%負荷がかかるテストでも付属クーラーで問題なく冷却できている。サイバーパンク2077は、CPUとGPUの両方に負荷がかかる。とくにGPU負荷が高いが、それでも80℃前後。今回のビデオカードはシングルファンだが冷却力はしっかり確保されている。

動作音

 その一方で、CPU付属クーラーとシングルファンのビデオカードの組み合わせだと動作音は大きめだ。とくにサイバーパンク2077は、両方のファンがガッツリと回るので結構気になる動作音になる。静音性を重視するならCPUクーラーの交換やビデオカードをデュアルファンのタイプに変更などを考えたほうがよいだろう。

Radeon RX 6600を加えて9本のゲームで性能を確かめる!

 ここからは、一番気になるゲーム性能を確かめていく。比較対象として、10万円ゲーミングPC自作ならば、候補に入ってくるであろうRadeon RX 6600搭載ビデオカードを加えた。Radeon RX 6600ならば、実売価格で3万前後から購入が可能。現状では流通量があまり多くないのが泣き所だが、予算をより減らしたいという人にとっては気になる存在のハズだ。

 用意したゲームは9本。基本的に画質は最高設定、重量級のゲームでアップスケーラーやフレーム生成に対応しているものは有効化している。ミドルレンジのGPUなので、4K解像度でのプレイは厳しいと判断し、フルHDとWQHDの2種類でテストした。各ゲームのテスト方法は以下のとおりだ。

  • Apex Legends
    最高画質で、トレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • オーバーウォッチ2
    画質“エピック”で、botマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • ストリートファイター6
    画質“HIGHEST”で、CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • エルデンリング
    画質“最高”で、リムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • Call of Duty: Modern Warfare 3
    画質“極限”で、ゲーム内のベンチマーク機能を利用
  • Ghost of Tsushima Director's Cut
    画質“非常に高い”で、旅人の宿場周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」
  • 黒神話:悟空
    ベンチマークツールを画質“最高”、サンプリング解像度“55”、レイトレーシングはOFFで実行
  • Starfield
    画質“ウルトラ”で、ジェミソンのロッジ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • サイバーパンク2077
    画質“レイトレーシング:ウルトラ”で、ゲーム内のベンチマーク機能を利用

 まずは、アップスケーラーやフレーム生成を使っていないテストの結果から。

フルHD(最高画質設定、平均)のテスト結果
WQHD(最高画質設定、平均)のテスト結果

 Apex Legendsやオーバーウォッチ2の結果を見ると、Radeon RX 6600はGeForce RTX 4060よりも3割程度性能が低いと言える。高リフレッシュレートのゲーミング液晶と組み合わせてヌルヌルとして描画を楽しみたいならRTX 4060だろう。平均60fpsあれば十分と考えるなら、RX 6600もアリだ。

 その一方で、ストリートファイター6やエルデンリングなどフレームレートが最大60fpsのゲームでは、どちらのGPUでもWQHDまでほぼ平均60fpsに到達。十分快適に遊べるパワーがある。

 次はアップスケーラーやフレーム生成を有効化したテストだ。

フルHD(最高画質設定、平均)のテスト結果
WQHD(最高画質設定、平均)のテスト結果

 RTX 4060はDLSS 3、RX 6600はFSR 3を利用している。これも同じ傾向だが、RX 6600は、黒神話:悟空ではフルHD/WQHDとも平均60fpsには到達できず、サイバーパンク2077はWQHDだと平均37.3fpsと、超重量級ゲームだとパワー不足が目立ってくる。レイトレーシングをふんだんに使うなど、美麗なゲームを存分に味わいたい人はRTX 4060のほうがよいだろう。

 ちなみに、Ghost of Tsushima Director's Cutは唯一RX 6600が優勢だが、RTX 4060でもFSR 3を利用すればほぼ同じフレームレートを出せる。FSR 3のほうが効果的なゲームのようだ。

 最後のシステム全体の消費電力をチェックしておこう。OS起動10分後をアイドル時とし、Cinebench 2024実行時、サイバーパンク2077実行時の最大値を計測した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。

システム全体の消費電力

 消費電力はどちらのビデオカードではあまり差はなかった。性能から考えると、RTX 4060のほうがワットパフォーマンスは優秀と言ってよいだろう。

CPUクーラーを交換すると温度や動作音はどうなる?

 今度は、CPUクーラーを付属から交換するとどうなるのか試してみたい。ここで注意したいのは、今回のPCケース「T3 PLUS」は対応するCPUクーラーの高さが最大150mmであること。人気の空冷クーラーであるDeepCoolのAK400は155mm、サイズの虎徹 MARK3は154mmと高さ制限に引っかかる。実際にAK400を取り付けてみたが、やはり側面のガラスパネルが閉まらなかった。12cm角ファンを使用するサイドフローのクーラーを使うのは厳しそうだ。

 そこで今回は9cm角ファンを採用するクーラーからZALMANの「CNPS4X BLACK」をチョイスした。実売価格は2,200円前後と手頃な価格で付属クーラーから乗り換えやすい。高さは135mmなので余裕で組み込み可能だ。

9cm角のファンを備えるZALMANの「CNPS4X BLACK」。高さは135mmで実売価格は2,200円前後
今回のPCケースに問題なく組み込めた

 Cinebench 2024(Multi Core)を10分間動作させたときの温度と動作音をチェックしよう。温度と動作音の測定方法は前述と同様だ。

Cinebench 2024(Multi Core)実行時の動作音
Cinebench 2024(Multi Core)実行時のCPU温度

 動作音はCPUファンの音がほとんど気にならなくなるほど小さくなる。PCケースに思いっきり耳を近付けてようやくファンの音がハッキリと聞こえるレベルだ。温度も平均で15℃も下がった。静音性や冷却力を高めたいなら導入をオススメする。

予算10万円でも人気ゲームが快適に楽しめるPCが作れる!

パ ーツをうまく選べば、予算10万円でも多くの人気ゲームを高画質でもフルHDなら確実に、WQHDでも多くのタイトルが快適に遊べるパワーを持つゲーミングPCを自作可能だ。PCケースも見た目にも組み立てやすさでも満足できるものになっている。そして、OSにWindows 11 Homeを追加しても11万円台に収まるだろう。これから自作PCにチャレンジしてみたいという人にもオススメの構成に仕上がっている。

 プランを立てる前には「悪くはないけどそれほどでも……」くらいになるかとちょっと不安があったが、実際にじっくりとパーツを選んで組み立ててみたら完成度が高くて、筆者自身も驚いた。そこで思い出されたのが1994年SUPER J-CUPの準決勝、獣神サンダー・ライガー対ザ・グレート・サスケの1戦。プロレス史に残る熱戦で最後の最後にサスケが番狂わせと言える勝利を勝ち取るあの試合を。