VIDEO CARD LABORATORY

3万円以下のビデオカードでゲームを遊ぶことができるか?GPU 11種類×ゲーム10本で実力を検証する

【新装第3回】端境期の今だからこそ見きわめたい格安カードとの付き合い方 text by “KTU”加藤 勝明

 PCゲームのフレームレートをもっとも左右する要素と言えばビデオカードだ。より高性能なGPUを搭載したビデオカードを使えば、同じシーンでもフレームレートがより高くでき、さらに余裕があれば画質設定を盛ることもできる。無論ビデオカードの用途はゲームだけではない。写真や動画編集、AIといった処理でもビデオカードの性能が重視される。

 現行GPUの横並び比較記事「GPU Round-Robin Benchmark」で上位にあるGPU、たとえばGeForce RTX 4090を手にできれば言うことはないが、その一方で30万円程度の資金が必要になる。WQHDゲーミング想定のGPU(RTX 4070やRX 7700 XT)あたりでも最低7万円の出費が必要になる。

 そこでアンダー3万円、つまり3万円以内で手に入れることのできるGPUに注目する。「フルHD」かつ「画質低〜中」辺りで快適に動けばよし、ゲームの楽しさを味わえる性能が出せるGPUはあるのか? あるとすればどんな組み合わせか? というのが検証の趣旨となる。

今回のレビューを動画でも解説!【YouTube】

【1~3万円GPUを比べてみた。ぶっちゃけ安めのGPUでゲームはどれくらい遊べるのか?】

今選択可能なアンダー3万円GPUは何か?

 今回は7月初頭時点で「新品」が流通しており、「最安モデルが」3万円を切る製品があるもの、という基準でピックアップした。明らかに性能が低いGPUや時間的制約などから除外したGPUもあるが、現時点ではこの10GPUが選択肢に上がってくる。中古に関しては程度も流通量も読めないためこちらも除外した。下記の価格は価格情報サイトでざっくりと調べた最安モデルの価格である。流通在庫が減って若干プレミア価格に片足を突っ込んでしまったGPU(GDDR6版GTX 1650やGTX 1630)は検証に加えるか悩んだが、資料的側面を重視し、あえて残している。

  • NVIDIA GeForce RTX 3050(6GB)……27,000円前後
  • NVIDIA GeForce GTX 1650(GDDR6)……23,000円前後
  • NVIDIA GeForce GTX 1630……25,000円前後
  • AMD Radeon RX 6500 XT(8GB)……30,000円前後
  • AMD Radeon RX 6500 XT(4GB)……23,000円前後
  • AMD Radeon RX 6400……19,000円前後
  • AMD Radeon RX 550……12,000円前後
  • Intel Arc A580……26,000円前後
  • Intel Arc A380……18,000円前後
  • Intel Arc A310……16,000円前後

 上記10GPUの中で、注目しておきたいポイントは以下のとおりだ。

(1) フレーム生成

 CPUがGPUに命じて描画したフレームとフレームの間をGPU側で補完することでフレームレートを激増させる機能。今回列挙したGPUの中では、RX 6500 XT(8GB/4GB)およびRX 6400のみが「AFMF」を通じてフレーム生成機能を利用できる。「サイバーパンク2077」のような処理が重いゲームでは役に立つ一方、「VALORANT」や「Apex Legends」のようにレスポンスが重要なeスポーツ寄りのゲームではAFMFは不利になるという点も覚えておきたい(詳細はこの記事を参照)。

 今回列挙したGeForceやArc Aシリーズにはフレーム生成機能はないが、ゲーム側が「FSR 3」に対応していればこの限りではない。最新のゲームであるほどFSR 3の採用例が多いため、新しいゲームをどんどん試したいという人であれば、AFMFの存在にこだわる必要もないだろう。

(2) ハードウェアエンコーダー

 PCゲームも遊びたいが、動画配信にも挑戦したい、あるいは動画編集もしたい、という場合は、GPU内に動画のハードウェアエンコーダー(NVEnc/VCE/QSV)が載っているかが重要になる。CPU頼みのエンコードにまったくメリットがないわけではないが、処理時間と画質のバランス、処理中の操作性(ゲーム配信時は特に重要)などを考えるとGPUでエンコードさせたほうが得策だ。

 今回列挙した10種類のGPUの中では、RX 6500 XT(8GB/4GB)およびRX 6400はハードウェアエンコーダーを「搭載していない」。ゲームの配信や動画編集を考えているなら、これらのGPUは避けるか、別の手段(単体で録画可能なUSBキャプチャーユニットを利用する、プレイPCと配信PCを分ける、など)を講じる必要がある。

 そしてArc Aシリーズの3モデル(A580/A380/A310)は、今回列挙した中では唯一AV1のエンコード対応だ。より高画質な動画を残したいと考えているなら、Arc Aシリーズも狙い目だ。また、RX 550はハードウェアエンコーダーを持っているが、設計が旧いので画質はよろしくない、という点も覚えておきたい。

(3) VRAMの搭載量

 最近のゲームはVRAMが足らないと画質やフレームレートに影響が出ることがある。VALORANTや「原神」のように描画負荷が軽いゲームなら4GBでもまったく問題がないが、描画負荷がゲーム(サイバーパンク2077が代表例)を高画質設定で攻めたいとなると、6GBでも怪しくなる。VRAM量に注目するならば、RX 6500 XT(8GB)、もしくはArc A580一択だ。逆に「私はVALORANTしか遊ばない!」と決めているなら、RX 6400とかArc A380といったVRAM 4GB〜6GBのGPUが選択肢になり得る。

(4) 補助電源コネクター

 旧世代PCをベースにビデオカードだけ強化したいと考えているときは、ビデオカードが必要とする補助電源ケーブルの構成にも注意が必要だ。今回チョイスしたアンダー3万円GPUの場合、8ピンないし6ピンケーブルを1本必要とする製品もあるが、補助電源ケーブルがなくても動作するカードもある。

 補助電源ケーブルなしという観点で見るなら、最高のパフォーマンスが出せるGPUはRTX 3050(6GB)一択だ。ハードウェアエンコーダーを搭載し、ゲームではDLSSが、クリエイティブ系アプリではCUDAが利用できるというバランスのよい構成となっている。ただRTX 3050(6GB)のすべてが補助電源なしで動作するわけではないため、購入時はスペックを十分に確認しよう。

(5) 旧世代PCとの相性(Resizable BAR/Smart Access Memory)

 Arc Aシリーズに関しては、マザーのBIOSで「Resizable BAR」を有効にしておかないと性能がフルに発揮できないことが知られている。Intel製CPUなら第10世代(Core ix-10xxx)以降、AMD製CPUならG付き以外のRyzen 3000シリーズ(Ryzen x 3xxx)以降であればCPU側は問題ないが、マザーボードのBIOSがResizable BAR対応に更新されている必要がある。BIOS画面で「Resizable BAR」の設定項目があるか確認しておこう。

 ただこれから新規でPCを組む、あるいは2年くらいの間に買ったばかりという場合は、すでにResizable BAR対応になっていることが多い(ただBIOSで設定は確認しておきたい)。だが旧世代PCに装着したいがBIOSって何? BIOS更新って何? という知識レベルであれば、Arc Aシリーズは避けておいたほうがよいだろう。

検証環境は?

 今回の検証環境は以下のとおりだ。CPUは安価なビデオカードを使う=低予算であるという想定から、8コアのRyzen 7 5700Xとした。6コアのRyzen 5 5600Xなどでも問題はないだろうが、CPUの負荷が高いゲーム対策として8コアが今回のGPU検証には妥当と判断した。ビデオカードは前述の10モデルに加え、2019年頃にアンダー3万円で出回ったGTX 1060も検証に追加。

 またその一方で、RX 6500 XT(8GB)を性能・装備ともに上回るRX 6600に関しては流通量が少なく、かつ最安モデルが3万円オーバーであるという理由から除外している。厳密に言うと検証に加えたASRock製RX 6500 XT(8GB)も3万2,000円程度なのだが、RX 6500 XT(8GB)の最安が3万円切りということでご了承いただきたい。

 検証にあたってはResizable BARやセキュアブート、メモリ整合性やHDRは一通り有効とした。またGPUドライバは検証時点(6月末〜7月初頭)で最新のもの、すなわちGeForceはGameReady 555.99、RadeonはAdrenalin 24.5.1および24.3.1(RX 550のみ)、Arcは31.0.0101.5593である。

検証に使用したビデオカード

  1. Palit GeForce RTX 3050 StormX 6GB
  2. ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 OC GDDR6
  3. ZOTAC GAMING GeForce GTX 1630
  4. NVIDIA GeForce GTX 1060 Founders Edition
  5. ASRock Radeon RX 6500 XT Phantom Gaming 8GB
  6. Sapphire PULSE AMD RADEON RX 6500 XT GAMING OC 4GB GDDR6 HDMI/DP
  7. 玄人志向 RD-RX550-E4GB/LP
  8. ASRock Intel Arc A580 Challenger 8GB OC
  9. ASRock Intel Arc A380 Challenger ITX 6GB OC
  10. Sparkle Intel Arc A310 Eco
2022年登場のZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1630」。Turing世代のエントリークラス製品のテスト機材をこのためにZOTACにわざわざ出していただいた
ASRock「Intel Arc A580 Challenger 8GB OC」。上位のArc A770/A750や下位のArc A380から1年ほど遅れて登場したArc Aシリーズのミドルレンジ
【検証環境(ビデオカード以外)】
CPUAMD Ryzen 7 5700X
(8コア/16スレッド、最大4.6GHz)、
マザーボードASRock X570 Taichi Razer Edition
(AMD X570、BIOS L5.61)
メモリG.Skill Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
ストレージMicron Crucial P5 Plus CT2000P5PSSD8JP
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]
CPUクーラーNZXT Kraken Elite 360(簡易水冷、36cmクラス)
電源ユニットSuper Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK
(1,000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(23H2)

3DMarkではがぜん元気なA580だが……

 では定番「3DMark」から検証を始めよう。アンダー3万円GPUの性能を考えるとFire Strike/Steel Nomad系のテストだけで十分と言えるが、一応レイトレーシング性能もみるPort Royal/Speed Wayも実行した。

3DMark: ラスタライズ系テストのスコア
3DMark: レイトレーシング系テストのスコア

 どちらのグラフでもA580がほかのGPUを圧倒している点が印象的だが、Arc Aシリーズは3DMark「では」張り切るタイプなので、まだ安心はできない。A380とA310はGTX 1650(GDDR6)〜GTX 1630程度にまでスコアを落としているが、これはA500番台とA300番台では内部の設計(回路規模やメモリバス幅)に大きな差が付いているためだ。

 Radeonの中ではRX 6500 XTの2モデルが高スコアを上げているが、Fire StrikeとSteel Nomad Lightでは8GBも4GBもほぼ差がない(OC設定の差程度)。一方で、描画負荷の高いSteel Nomadでは8GB版が4GB版に大差を付けている点に注目。RX 550は今回の最安モデルだが、根本の設計も旧いためFire Strikeでもフレームレートを出すのは厳しい。

 また、GeForce勢の中ではRTX 3050(6GB)とGTX 1060の差に注目。Fire Strikeではほぼ同等どころかGTX 1060のほうが僅差で勝利しているだが、より今風の処理で構成されているSteel Nomad Lightでは、RTX 3050(6GB)のほうが有利だ。より新しい世代のGPUは、新しいゲームとの相性がよい、といった理解でよいだろう。

 では、3DMarkのSteel Nomad Lightを実行しているときに、どの程度の電力が消費されているかHWBusters「Powenetics v2」で計測した。ビデオカード単体の消費電力とは補助電源ケーブルとPCI Express X16スロットに流れた電力の実測値、システム全体の消費電力とはATXメインパワーとEPS12V(2系統)ケーブルを流れる電力の実測値に、前述のビデオカード単体の実測値を合計したものである。高負荷時(Steel Nomad Light実行時)の値は平均・99パーセンタイル点・最大値を、アイドル時の消費電力は3分間の平均値を採用している。

システム全体の消費電力
ビデオカード単体の消費電力

 3DMarkで突出したスコアを叩き出していたA580は、消費電力においてもほかを圧倒。GPUの世界では電力を食うことと性能は往々にしてリンクするので当たり前とも言えるが、アイドル時の消費電力も大きいし消費電力を気にする人にとってA580はやや避けたいGPUと言えるだろう。またA580の高負荷時の消費電力が高いといっても、GPU全体の話として驚くほど高いわけではない、という点も覚えておきたい。

 また、RX 6500 XTに注目すると、システム全体では4GB版が8GB版より平均値で30W程度よぶんに電力を消費している一方で、ビデオカード単体では8GB版のほうが4GB版より6W上回っている。これはRX 6500 XT 8GB版のレビューで観測されたデータを補強するものだ。

 なぜこのような逆転が起こったかについては、VRAM 4GB版のRX 6500 XTではVRAMの遣り繰りに苦心しなんらかの形でCPU負荷増、おそらくはメインメモリのアクセスが増えた結果システム全体の消費電力増につながったと考えられる。VRAM 8GB版だとCPU側がよけいに働く必要がないため全体の消費電力は下がるが、GPUの性能は高いため(検証に使ったRX 6500 XT(8GB)はファクトリーOCモデルである)、ビデオカード単体の消費電力が増えている、という塩梅だろう。

 先日のRX 6500 XT(8GB)レビュー時よりもRX 6500 XT(4GB)の消費電力増が激しい点については、先日のレビューでは3D V-Cacheを搭載したCPU(Ryzen 7 7800X3D)を使っている関係でメモリアクセスが抑制されたため、と考えることもできる。

ゲームで“使えるGPU”ラインは画質設定で大きく変わる

 ここから先は実ゲームでの検証だ。ビデオカード検証の際は負荷を高くしてどこで音を上げるのか見るのが筆者の定石だが、本稿では次のような条件でテストを組み立てた。

  1. 画質は最高設定と最低設定の2パターン
  2. 解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)のみ
  3. レイトレーシングは使用しない
  4. DLSS/FSR/XeSSは積極的に利用。その際設定は“バランス”、あるいはレンダースケール58%とする

 1.の画質に関しては、画質よりもフレームレートが重要、という人向けの内容だ。ハイパワーGPUを使えば画質もフレームレートも維持できるが、アンダー3万円GPUではそうもいかない。家族に「○○が遊べるビデオカードが欲しい」と最高画質設定だけのフレームレートとお高いビデオカードを提示されたときに、本稿のデータが役に立つことを祈っている。

ファイナルファンタジー XIV: 黄金の遺産

 まずはファイナルファンタジーXIV: 黄金の遺産 公式ベンチマーク(v1.1)で検証する。画質は“最高品質”および“標準品質(ノートPC)”とし、アップスケーラーはFSR、レンダースケール(RS)は100%に設定したほか、標準品質(ノートPC用)設定で有効になる動的解像度変更はオフとした。フレームレートはレポートで出力された値をそのまま採用している。

ファイナルファンタジー XIVベンチ: 解像度1,920×1,080ドット、画質設定ごとのスコア。
ファイナルファンタジー XIVベンチ: 解像度1,920×1,080ドット、画質“最高品質”時のフレームレート
ファイナルファンタジー XIVベンチ: 解像度1,920×1,080ドット、画質“標準品質(ノートPC用)”時のフレームレート

 平均60fpsを出せるか否かで考えると、最高品質設定ではA580のみ、標準品質設定ではGTX 1630/RX 550/A310といった各陣営のローエンドGPU以外であれば達成できている。最高品質設定では画面上にエフェクトがドカンと炸裂するようなシーンでフレームレートが大きく下がってしまうため、アンダー3万円GPUでカクつきを減らしたいなら、標準品質設定で攻めるしかない。ここでもA580が平均フレームレートでは強いが、最低フレームレートの落ち込み方を考えると、RTX 3050(6GB)やRX 6500 XTも選択肢として浮上してくる。

Apex Legends

 続いてはApex Legendsでの検証だ。APIはDirectX 12、フレームレート画質は全項目を最高としたものと、最低としたものの二通りとしたが、アンチエイリアスのみTSAAで共通化している。また動的ストリーミングや適応解像度の類はすべてオフとしている。射撃訓訓練場において一定の行動をとった際のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。eスポーツ性の高いゲームであるため、AFMFは使用していない(以降同様)。

Apex Legends: 1,920×1,080ドット、画質最高設定におけるフレームレート

 最高画質設定ではVRAM搭載量の多いA580とRX 6500 XT(8GB)がトップ2だが、特にA580のフレームレートはほかを圧倒している。リフレッシュレート144Hz液晶で144fps張り付き、というわけにはいかないが最高画質設定でここまで出るなら、A580はかなりお買い得感の高い選択と言える。RX 6500 XT(4GB)のフレームレートと比較すると、VRAM消費量の多いシチュエーションで8GB版であるメリットが光っている(実際にはクロックや電力まわりのチューニング差もフレームレートに影響している)。

Apex Legends: 1,920×1,080ドット、画質最低設定におけるフレームレート

 一方最低画質にすると“使える”GPUの選択は一気に増える。A580が一番強いのはここでも変わらないが、4GB版のRX 6500 XTやRTX 3050(6GB)も選択肢に入ってくる。ただ最低フレームレートの落ち込み方がA580などより激しいので、カクつきがイヤだ! という人は黙ってA580を選ぶことをオススメしたい。その一方で少々カクついても十分遊べるフレームレートが出ていればよいと判断するなら、RX 6400あたりもよい選択かもしれない。

 ここでおもしろいのは、FF14であれだけRTX 3050(6GB)を煽っていたGTX 1060のフレームレートが、Apex LegendsではGTX 1630以下である、という点だ。これは3DMarkのSteel Nomad LightとFire Strikeの違いと同様に、今のApex Legends(DirectX 12)の描画処理は設計が新しいGPUでないと性能が出ない、ということである。古いGPUはこういうシチュエーションでつらいのだ。

 さて、最高画質設定と最低画質設定でApex Legendsの画面表示はどう変化するのだろうか? GTX 1650(GDDR6)環境(以降すべて同じ)でスクリーンショットを撮影した結果を比較してみよう。

Apex Legends: 最高画質設定でのスクリーンショット
Apex Legends: 最低画質設定でのスクリーンショット

 画面右手上方から入射する光線の描写があるほか、遠景の山や砲台のディテールに差が出る。ただ最高画質設定では一部テクスチャーの鮮明度が明確に劣っている点にも注目したい(標的の十字)。これはVRAM 4GBのGTX 1650(GDDR6)環境ではVRAMが足りないからだ。実際にもっとVRAM搭載量の多いRTX 4070 Tiで試すと、しっかり描写される。アンダー3万円GPUの場合は何も考えずに画質を盛り過ぎると視認性が犠牲になるのだ。

Apex Legends: VRAM 12GBのRTX 4070 Ti環境における最高画質設定でのスクリーンショット

Counter-Strike 2

 Counter-Strike 2では画質“最高”と“低”の2設定を準備。フレームレート制限は上限一杯の1000fpsとした。ワークショップマップ「CS2 FPS BENCHMARK」再生中のフレームレートをCapFrameXで計測した。

Counter-Strike 2: 1,920×1,080ドット、画質“最高”設定におけるフレームレート

 画質最高設定ではA580の1人勝ち、ほかのGPUは平均100fpsを割り込む感じで今一つ。GTX 1630/RX 6400/RX 550/A380/A310といった2万円前後の低価格GPU勢はどれもプレイに適するフレームレートが出せるとは言えない。

Counter-Strike 2: 1,920×1,080ドット、画質“低”設定におけるフレームレート

 しかし画質を最低にまで下げると実用ラインは劇的に変化する。RX 550はかなり厳しいものの、そのほかのGPUは平均144fpsを大幅に上回っており、A380やA310ですら120fps以上のフレームレートを維持できるようになった。画質を最低にすることでA580をRX 6500 XTやRTX 3050(6GB)が上回った、という点もおもしろい。特にRX 6500 XTに関しては8GBと4GB版で大差がなく、VRAMへのプレッシャーが弱いシチュエーションではRX 6500 XTの4GB版でも十分戦えることを示している。

 次はCS2 FPS BENCHMARKでも使用しているマップ“Dust II”におけるスクリーンショット比較だ。

Counter-Strike 2: 画質“最高”設定でのスクリーンショット
Counter-Strike 2: 画質“低”設定でのスクリーンショット

 最高設定では各部の影表現やエッジの鮮明感において優秀だが、最低画質にしても全体の雰囲気はほとんど変わらない。昔のゲームだと画質を下げると本当に素っ気ないグラフィックスになったものだが、今のゲームはちゃんと見られるグラフィックスのまま、負荷を下げてくれる。ただ最低画質にするとフルHDでも若干ドット感が出てしまう(FSR 2の処理が介入するため)。これにより遠方にいる敵の視認性が落ちる可能性があるが、気に入らないのであればFSR 2の設定を画質寄りにすれば解決できるだろう。

VALORANT

 超軽量FPSと言えば「VALORANT」も避けて通ることはできない。画質は最高設定と最低設定の二通りを用意したが、最高設定ではアンチエイリアス“MSAA 4x”かつ異方性フィルタリング16x、最低設定ではアンチエイリアス“FXAA”かつ異方性フィルタリング1xとしている。マルチスレッドレンダリングはどちらも有効とした。マップ“ロータス”内をぐるりと一周するコースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測した。

VALORANT: 1,920×1,080ドット、最高設定におけるフレームレート

 さすがVALORANT、画質を盛ってもほとんどのGPUで高フレームレートが期待できる。さすがにRX 550やGTX 1630、A310といった各陣営のローエンドモデルでは厳しさが出るものの、一つランクを上げるだけで144Hz液晶のポテンシャルをキッチリ使ってくれそうな結果だ。

VALORANT: 1,920×1,080ドット、最低設定におけるフレームレート

 さらに画質を最低まで下げればRX 550でも200fpsオーバーのフレームレートが出せる。戦闘中のテストではないため実戦ではもう少し低くなる可能性はあるにせよ、アンダー3万円どころか1万円強GPUで十分機能することが分かる。もし「VALORANTがプレイしたいんだ!」とRTX 4070を要求された場合は、黙ってこのグラフを見せてGPU予算を削る交渉をするとよいだろう。

 続いてはスクリーンショットの比較だ。マップ“ロータス”におけるスポーン地点での比較となる。

VALORANT: 画質“最高”設定でのスクリーンショット
VALORANT: 画質“低”設定でのスクリーンショット

 もともと描画があっさりしているゲームだが、画質を最低まで下げるとよけいなディテール(床のタイルの乱れなど)が省略され、陰影表現もよりフラットな印象になる。寂しいと感じるかもしれないが、よけいな書き込みがあるとムダな情報量が増える=不利になると考える人もいる。これはゲームにどう向き合うか(勝利に関係ないものを許容するか否か)によって変わってくるだろう。

フォートナイト

 続いてはフォートナイトで検証する。最高画質設定ではAPIはDirectX 12、Nanite仮想化ジオメトリを有効、アップスケーラーは“TSR最高”かつ“バランス(レンダースケール58%)”とした。画質関係はすべて最高に設定しているが、GIは“アンビエントオクルージョン”、反射は“スクリーンスペース”とし、レイトレーシングやLumenは使用しない設定とした。一方低画質設定ではAPIを“パフォーマンス - 低グラフィック忠実度”とし、描画距離とテクスチャーのみ最高設定とした。レンダースケールは57%設定(ゲーム側のデフォルト値)としている。

 テストはプレイヤーが一定のコースを強制的に周回させられるマップ“Benchmark End Game fps Test(6016-0463-0988)”を使用。2分間の周回時におけるフレームレートをCapFrameXで計測した。

フォートナイト: 1,920×1,080ドット、最高設定におけるフレームレート

 フォートナイトは描画の軽いゲームではあるが、画質を盛るとアンダー3万円GPUではかなり厳しい。このクラス最速の一角であるA580ですら60fpsキープは難しい。テストに使ったマップでは、始終どこかで爆発のようなエフェクトが炸裂している(ゆえにEnd Game)ためそれが重いとも言えるが、対戦終盤のヒリつく展開時に負けないGPUとなると、最高画質設定前提なら、アンダー3万円GPUでは厳しい。

フォートナイト: 1,920×1,080ドット、低設定におけるフレームレート

 一方パフォーマンス重視のAPIにすると状況は大きく変化する。画面表示はかなりドット感が出てしまうものの、どのGPUにおいても平均144fpsを大きく上回るどころか、240fpsを越えるものもめずらしくない。今回集めたGPUの中では、GeForceとArc Aシリーズのフレームレートが安定して高く、Radeonは画質を絞っても明確にフレームレートが1ランク以上下となった。RTX 3050(6GB)〜GTX 1060までほぼ平均フレームレートに差が出ていないのは、おそらくCPUの処理性能が律速になり、GPUに仕事が回っていない可能性がある。

 次はスクリーンショット比較だが、フレームレート検証に使ったマップは画質比較に向いていないため、別のマップで撮影している。

フォートナイト: 最高設定でのスクリーンショット
フォートナイト: 低設定でのスクリーンショット

 画質の違いは画面中のいたる所に現われている。地面やオブジェクトのテクスチャー、ライティングに大きな差が出ているほか、低設定ではキャラの輪郭にジャギーが出ている。これはレンダースケールを下げて負荷を下げると同時に、スムージングを省略することで描画負荷を下げているためである。

原神

 ここまでeスポーツ系タイトルが続いたので、60fpsを越えるフレームレートが出ない設計の原神で試してみよう。画質は“高”または“最低”に設定。フレームレート制限は60fps、キャラクターの動的解像度はいずれもオフとしている。“星落ちの谷”からモンド城門にいたる一定のコースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測した。ちなみにAFMFは今回の検証環境では動作が少々怪しかったため検証に加えていない。

原神: 1,920×1,080ドット、画質“高”設定におけるフレームレート
原神: 1,920×1,080ドット、画質“低”設定におけるフレームレート

 高設定ではRX 550の1人負けといった状況だが、画質を落とせばどのGPUでも60fpsのリミットに阻まれる。低設定でもA310やRX 550といったローエンドモデルでは若干カクつきが強くなるが、それ以外のGPUは五十歩百歩。最低フレームレートに差異があるが、誤差程度と言える。

 ではスクリーンショットを比較しよう。モンド城門からスタート地点を眺めた際のスクリーンショットで比較する。

原神: 画質“高”設定でのスクリーンショット
原神: 画質“最低”設定でのスクリーンショット

 画質を下げると遠景のテクスチャーが簡素化されるほか、自キャラの輪郭にジャギーが出現するなど、見た目に分かりやすい変化があらわれる。

ELDEN RING

 ELDEN RINGも60fps制限がかかっているゲームだが、原神よりも描画負荷は高めである。画質は“最高”または“低”に設定し、レイトレーシングや自働描画調整はオフとした。マップ“リムグレイブ”で一定のコースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測した。このタイトルはAFMFによるフレーム生成時の性能も検証するが、その際のフレームレート計測はCapFrameXではなく、Radeon Softwareの計測機能を利用し、フレームタイムからフレームレートを導出している。

ELDEN RING: 1,920×1,080ドット、画質“最高”設定におけるフレームレート
ELDEN RING: 1,920×1,080ドット、画質“低”設定におけるフレームレート

 AFMFのデータは一旦脇に置いておくと、最高設定ではA580やRX 6500 XTあたりが60fpsの限界に張り付く時間が長い一方で、RX 6400、A380といった廉価版GPUではフレームレート維持が厳しい。だが画質を下げることで大半のGPUで60fpsほぼ張り付きにできるだろう。

 ここでAFMFを併用したRadeonのデータに目を向けると、RX 6500 XTの強さが際立っているように“見える”。ただこのゲームにおいては、AFMFの恩恵が実際に体感できるかは怪しい。ELDEN RINGの場合画質を下げていても移動中に描画が突然カクつくことは避けられないが、AFMFを利用していてもカクつきがそのまま残る印象だ。AFMFは一応効いているものの、このゲームにおいてはAFMFがビジュアル体験の改善に貢献しない、といったところか。

 続いてはスクリーンショットによる画質設定比較だ。

ELDEN RING: 画質“最高”設定でのスクリーンショット
ELDEN RING: 画質“低”設定でのスクリーンショット

 遠景の雰囲気は同じだが、プレイヤーキャラのまとっているマントの質感や影の付き方に大きな差が出ているほか、樹木が地面に落とす影の描写が大きく違っている。画質低設定だと影が巨大なブロック単位で計算されるようになるため、影の影響を受ける部分がチラチラして見づらくなる。60fpsに近付けようとして画質を下げるのはよいが、影の表現だけは少し持ち上げ気味にするとよいかもしれない。

サイバーパンク2077

 これまでeスポーツ系〜60fps限定ゲームと続いたので、ここからは描写の濃厚な重量級ゲームで試すことにしよう。まずは重量級ゲームの筆頭格「サイバーパンク2077」で試してみる。

 画質設定はレイトレーシングを使用しない“ウルトラ”または“低”設定とし、FSR 2は明示的に“バランス”設定としたが、RTX 3050(6GB)ではDLSS、Arc AシリーズではXeSSを選択した(こちらもバランス設定)。固有のアップスケーラーを持たないGTX 1650(GDDR6)/GTX 1630/RX 550に関してはFSR 2としている。ゲーム内ベンチマークを再生中のフレームレートをCapFrameXで計測した。このゲームにおいてもAFMF併用時のデータも計測している。

サイバーパンク2077: 1,920×1,080ドット、画質“ウルトラ”設定におけるフレームレート

 AFMFがなければA580の1人勝ちで終わるところだったが、AFMFを効かせたRX 6500 XT(8GB)はウルトラ設定でも十分戦えることを示した。一方GPUコアが同じRX 6500 XT(4GB) はAFMFを利用してもさほどフレームレートが上がらない(AFMFなしに比べると劇的に伸びているが)どころか、最低フレームレートがまったく伸びない。サイバーパンク2077のようなVRAM消費量の多いゲームでは、もうVRAM 4GB環境では厳しいのである。

サイバーパンク2077: 1,920×1,080ドット、画質“低”設定におけるフレームレート

 一方画質を低設定にすると、RTX 3050(6GB)もよい選択になるし、A380も辛うじてプレイできるかな、という感じになる。だがここでもAFMFの効果はすさまじく、RX 6400クラスも十分使えそうだ。ただ最低フレームレートのことを考えると、VRAM 8GBを搭載したRX 6500 XT(8GB)やA580、RTX 3050(6GB)が手堅い選択と言えるだろう。

 続いてはスクリーンショット比較だ。ゲーム内蔵ベンチマークではなく、通常プレイ中の様子をキャプチャーしている。

サイバーパンク2077: 画質“ウルトラ”設定でのスクリーンショット
サイバーパンク2077: 画質“低”設定でのスクリーンショット

 画質を思い切り下げても印象はあまり変わらないが、低設定では影の処理が甘くなり、画面周辺部のレンズ歪みや色収差処理がオミットされている。また、このシーンでは表現されていないが群衆密度に関してもウルトラ設定のほうが高く設定されるという違いがある。

Ghost of Tsushima Director's Cut

 続いてはGhost of Tsushima Director's Cutでの検証だ。画質は“非常に高い”および“非常に低い”モードとし、アップスケーラーはFSR 3“バランス”で統一、FSR 3のフレーム生成も有効とした(ゆえにAFMFは使わない)。マップ“日吉の湯”における一定のコースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測した。

Ghost of Tsushima Director's Cut: 1,920×1,080ドット、画質“非常に高い”設定におけるフレームレート

 FSR 3のフレーム生成はRadeon以外のGPUでも使えるよう設計されているため、GeForceやArc Aシリーズにおいてもフレーム生成されている、というのが上のグラフを見る上での重要なポイントだ。しかし画質が非常に高い設定では、VRAM搭載量が多いA580とRX 6500 XT(8GB)しかまともに戦えるパフォーマンスは出ない。RTX 3050(6GB)が当落ボーダーといったところだ。

Ghost of Tsushima Director's Cut: 1,920×1,080ドット、画質“非常に低い”設定におけるフレームレート

 だが画質を非常に低いまで落とすとGTX 1650(GDDR6)やRX 6500 XT(4GB)やRX 6400も戦えるラインに上がってくる。その一方でA380やA310は画質を下げFSR 3を利用しても今一つ。この辺は基本スペックの違いと、Arc Aシリーズとゲームへの最適化度の問題と考えることができる。

 続いてはスクリーンショット比較だが、検証に使用したシーンは暗くて見づらいため、別のマップ(黄金寺)で撮影している。

Ghost of Tsushima Director's Cut: 画質“非常に高い”設定でのスクリーンショット
Ghost of Tsushima Director's Cut: 画質“非常に低い”設定でのスクリーンショット

 露出過多なのはHDRの影響だが、非常に高い設定では遠景の物体の表示が精細になり、テクスチャーの解像度も精細になる。ただ画質を非常に低いまで下げても全体の雰囲気は劇的に損なわれるわけではない。ただ煙や霞の表現がそれなりにオミットされるため、風景を堪能したい人は上位GPUで画質を盛ることをオススメする。

Starfield

 ゲーム検証最後を務めるのはStarfieldだ。画質は“ウルトラ”および“低”の二通りとし、アップスケーラーはFSR 3かつフレーム生成も有効とした。また画面のレンダースケール(RS)は“バランス”相当の58%とし、ダイナミックレゾリューションはオフとしている。都市マップ“ニューアトランティス”のMAST地区を移動する際のフレームレートをCapFrameXで計測した。

Starfield: 1,920×1,080ドット、画質“ウルトラ”設定におけるフレームレート

 ウルトラ設定ではRTX 3050(6GB)とRX 6500 XT(8GB)、A580の3GPUがほぼ横並びだが、A580は最低フレームレートの落ち込み方が激しく、カクつきがより目立つ。またウルトラ設定ではVRAM搭載量の少ないRX 6500 XT(4GB)やGTX 1630といったGPUはFSR 3を使ったとしても戦うのは厳しい。これは画質を下げても大きく変化しないというのがStarfieldのおもしろいところだ。

Starfield: 1,920×1,080ドット、画質“低”設定におけるフレームレート

 と同時に、低設定にするとRTX 3050(6GB)とRX 6500 XT(8GB)のフレームレートがウルトラ設定に比して大きく伸びる一方で、A580のフレームレートは伸びが悪い。Arc AシリーズがStarfieldの推奨環境に一つも入っていないことから、ArcのドライバがStarfieldと相性がよろしくないことを示している。

 スクリーンショット比較は、今回のベンチマークに使用したシーンで撮影している。

Starfield: 画質“ウルトラ”設定でのスクリーンショット
Starfield: 画質“低”設定でのスクリーンショット

 画質を下げても全体の雰囲気は変わっていない。画質低設定では電柱やNPCが地面に落とす影の表現が雑になっていたり、ライティング処理が大胆にオミットされていたりと、それなりに省力化されていることが分かる。ウルトラ設定だと遠景のアンテナが消えかかっている部分があるが、これはアンテナの細さを表現しようとした結果である。

アンダー3万円GPUにおける電源ユニット選び

 ここまでの検証で、各GPUにおけるおおよその描画性能が把握できた。では今回の検証環境で運用した場合、どの程度の電源ユニットが必要なのであろうか? FF14ベンチを除く9本のゲームではすべてCapFrameXフレームレートを計測しているが、同時にPowenetics v2を通じベンチマーク中にどの程度の電力が消費されたかも記録している。以下の表はすべて実測値であり、ベンチマーク中に観測された消費電力の平均値である。

ベンチマーク中に観測されたシステム全体の消費電力の平均値。高設定や低設定は画質の設定を示しているが、これは前掲のテスト条件と同じものである

 こうして見ると消費電力がもっとも大きいのはA580。3DMarkを利用した比較データと同じ傾向だが、実ゲームの消費電力は若干おとなしい。逆にもっとも省電力だったのはRX 550で、ゲームによっては100Wを割り込むこともあるが、これはCPU負荷もそうとうに低いことを示している。ただ消費電力と性能はリンクしているので、省エネだからと言ってゲーム体験がよい訳ではない。また、原神は画質を高設定にしたときと低設定にしたときの消費電力に大きな差があり、平均100W以下で動作しているGPUも複数見られた。スマートホンやタブレットなどにも展開しているゲームならではのチューニングと言えるだろう。

 これらの数値はすべて平均値であるため、2倍の安全率を乗じた場合、出力650Wの電源があればA580でも十分養えるだろう、という推測が導きだせる。将来もっとハイパワーGPUを載せたビデオカードに買い換えることを考えたら800Wあたりがよいという考えもあるが、コストを抑えるという観点で考えるとA580でも650Wで十分ではないだろうか。ただしCPUやストレージの選択が異なれば、この推測は当てはまらない可能性も十分にある。

動画エンコードやRAW現像の性能は?

 ビデオカードが役に立つのはゲームだけではない。最近は生成AIが世間の注目を集めているが、今回ピックアップしたアンダー3万円GPUでは、辛うじてA580かRTX 3050(6GB)がAIのお試し用には使えるかな? という程度。GTX 16シリーズやRX 6000シリーズ、ArcのA380より下のモデルはオススメできるものではない。

 そこでここではもっと一般的な、動画エンコードやRAW現像といった用途におけるパフォーマンスを比較する。まずは「Premiere Pro」を実際に動かして動画エンコード性能を比較する「UL Procyon」の“Video Editing Benchmark”を利用する。フルHD(H.264)と4K(H.265)の動画をそれぞれ2本ずつエンコードし、4本のエンコード時間からスコアを算出する。

UL Procyon: Video Editing Benchmarkのスコア。バーが長いほど高性能
UL Procyon: Video Editing Benchmarkにおける各エンコード時間。バーが短いほど高性能

 GTX 1630/RX 6500 XT/RX 6400といったハードウェアエンコーダーを持っていないGeForce/RadeonはエンコードでCPUに頼るようになるため時間がかかり、総合スコアも低くなる。18,000ポイント以上出せているのはRTX 3050(6GB)を筆頭としたNVEnc搭載GeForceと、強力なGPUパワーとQSVを搭載したA580だけだ。特にA580の処理速度は群を抜いて短い。A380やA310にもハードウェアエンコーダーは搭載されているが、GPU設計が廉価仕様になっているためか、Premiere Proのエンコードではあまり通用しない。

 またエンコード時間では総合スコアで18,000ポイント以上出せている/出せないGPUはH.265の処理時間に大きな違いが出ている、という点にも注目したい。

 続いては「Lightroom Classic」を利用した処理時間の比較だ。すでに調整を加えた100枚のDNG画像(61メガピクセル)を用意し、これを最高画質のJPEGに書き出す時間を計測する。その際シャープネス処理(スクリーン向け、適用量は標準)も追加している。シャープネス処理はほぼCPUの負荷となるが、それ以外の高低はGPUもある程度使われる。特にこのテスト条件ではVRAM搭載量がカギとなることが分かっている。

Lightroom Classic: DNG→JPEG書き出し時間

 11種類のGPUのうち、ほとんどのGPUが300秒あたりに集中しているが、これはGPU側にボトルネックが発生しているためだ。この300秒集団から抜け出せていると断言できるのはRX 6500 XT(8GB)とA580のみ。VRAM搭載量の差がここで出ている。特にA580のパフォーマンスがよいのは、RX 6500 XTは低コスト志向ゆえにGPU⇔VRAM間のバス幅を絞っているためと考えられる。

まとめ: どんなゲームにどう向き合うかで選択は変わる

 今回の検証では安定して強いのはRX 6500 XT(8GB)とA580の2モデルだが、画質を下げることでA380やRX 6400あたりも十分使えることが分かった。ただ2万円以下の製品を使う場合は、描画負荷の軽いゲームで画質も潔く下げるのが大前提となる。基本プレイ無料系の軽いゲームしか遊ばない、さらに画質を最低に下げてもフレームレートが欲しいという人であれば低価格ビデオカードでも十分な武器となるだろう。特にVALORANTでは、今時のゲームでは話にならないRX 550ですら戦える点は覚えておきたい。要はどんなゲームに、どう向き合いたいかでGPUの選択は変わるのだ。

 ただし最初のほうで解説したとおり、ゲーム配信や動画編集にまで視野を広げた場合、ハードウェアエンコーダーを持たないRX 6500 XTやRX 6400は適さない選択と言える(設計の古さ的にRX 550も選外としたい)。A580は若干クセが強いが、アンダー3万円GPUの中ではよい感じにバランスがよい。この記事を執筆中に、A770が3万円を切る特価で出てきたので、そちらを選ぶのもよいだろう。

7月7日時点にAmazonで売られているパーツから、アンダー3万円GPU向けのパーツを見繕ってみた。これにビデオカードを加えれば完成だ。もっとよい、もっと安いパーツもあるだろうが、OS込み12万円以内で収まりそうだ。また、今組むのであればメモリは32GBを強く推しておく