VIDEO CARD LABORATORY

Radeon環境のフレームレートを激増させる「AFMF」を深掘りする~後編:レイテンシーに着目する。ハマれば効果は絶大!そのメリットとデメリットを徹底検証

【VIDEO CARD LABORATORY 新装第1回“後編”】 text by 加藤 勝明

 Radeonの価値を一気に高めた「AFMF」こと「AMD Fluid Motion Frames」。4月現在のAFMFを深堀する本稿の前編パートでは、主に“ゲームのフレームレート向上における効果”を細かくチェックしてみた。ゲームや使用GPUによっては数倍ものフレームレート向上を実現しており、“直近2世代のRadeonで幅広く動作”、“ゲーム側の対応は不要”というAFMFの特徴がハッタリではないことがお判りいただけたと思う。

 AFMFはこれまでプレイをあきらめる、あるいは画質を大幅に落とさざるを得ないRadeonでも、最新重量級ゲームを高画質設定で楽しめるようになる素晴らしい技術だ。しかしAFMFは完全無欠の技術ではない。ここからは“AFMF最大の弱点”について検証していく。

とはいえAFMFには大きな弱点もある

 AFMFの弱点とは、生成されるフレームは2フレーム分の情報が必要になるため、AFMF OFFのときよりも画面表示により時間が必要になるということだ。つまりゲーム画面上の情報を見てプレイヤーが何か操作をしたとき、それが画面に反映されるタイミングがより遅くなる。いわゆる“入力遅延”、もう少し専門的な用語を使えば“E-E(End-to-End)システムレイテンシー”の増大である。

NVIDIAによるE-Eシステムレイテンシーの解説。左端のマウス操作から右端のディスプレイのドットが点灯するまでに、さまざまな場所でさまざまな遅延が発生、積み重なっていった結果がこのE-Eシステムレイテンシーである。クリックしてから画面が発光する(光が出る)までの時間なので“Click-to-Photonレイテンシー”と呼ばれることもある。ゲームの設計やハードの性能により、おのおのの箱の大きさ(=レイテンシ―の大きさ)はより長くなったり短くなったりする

 AFMFをONにすると同時にAnti-LagもONになるが、これはAFMFによる遅延を少しでも抑えるためのものだ。この遅延に関してはDLSS FGでも同様であり、DLSS FG対応ゲームの場合“Reflex”と呼ばれる遅延短縮機能が同時にONになる。

↑AMD Software:Adrenalin EditionでAFMFをONにすると自動的にAnti-LagもONになるが、これはフレーム生成する際に不可避となるE-Eシステムレイテンシー増大を緩和するためのものだ

 そこでここからは、NVIDIAのE-Eシステムレイテンシー計測ツール「LDAT 2」を利用し、AFMFの有無によりどの程度E-Eシステムレイテンシーが変化するのかを検証してゆく。E-Eシステムレイテンシーが問題になるのは競技性の高い(eスポーツ成分の高い)ゲームであるため、本稿では「Apex Legends」を使用した。使用するGPUはRX 6600 XTのみ(GPUが非力なほうがE-Eシステムレイテンシーの差異が出やすい)とし、ASUSの360Hz対応ゲーミング液晶「ROG Swift PG25QNR」と組み合わせた。

NVIDIAはReflexを実装してもらうために、ゲーム開発者が実際にE-Eシステムレイテンシーを計測できる仕組をいくつか考案した。その一つがLDATであり、LDAT 2はその2世代目にあたる。 切手サイズの小さな箱にカメラとUSBインターフェース、さらにマウスボタンを外部から操作するための専用端子が搭載されている
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 7800X3D(8コア16スレッド)
マザーボードASUS ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI
(AMD X670E、BIOS 1905)
メモリMicron Crucial Pro CP2K16G56C46U5
DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
ビデオカードASRock AMD Radeon RX 6600 XT
Phantom Gaming D 8GB OC
SSDMicron Crucial T700 2TB
[M.2(PCI Express 5.0 x4)、2TB]
CPUクーラーNZXT Kraken Elite 360(簡易水冷、36cmクラス)
電源ユニットSuper Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK
(1000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(23H2)
E-EシステムレイテンシーのテストにはASRock「AMD Radeon RX 6600 XT Phantom Gaming D 8GB OC」を使用。1世代前のミドルレンジGPU搭載機で、効果の差異を見るにはちょうどいいぐらいの性能

 計測方法はシンプルで、射撃訓練場において手に入る武器のうち、LMG“スピットファイア”を1発ずつ射撃し、マウスクリックから画面にマズルフラッシュが出るまでの時間を計測する、というもの。ただ10発程度では誤差か変動か判別が付かないため、スピットファイアの35発入りマガジン17個を打ち切る、つまり525発射撃した際のE-Eシステムレイテンシーを計測した。

 Apex LegendsはDirectX 12モードで起動し、画質は最高設定および最低設定(ただしアンチエイリアスはTAAで統一)とし、それぞれAFMFのON/OFFした状態で計測した。つまり合計2,100発の射撃結果からE-Eシステムレイテンシーの傾向を見いだそう、というわけである。

LDAT 2はROG Swift PG25QNRの表面に密着させ、スピットファイアの銃口のすぐ横に固定する。LDAT 2には検証用PCに接続されたマウスの左ボタンとつながっており、LDAT 2がボタンの回路を閉じると、このマウスを通じて検証用PC上で動作するApex Legendsに伝わる
LDAT 2制御用のPCは別に用意。射撃をするたびにLDAT 2に内蔵されたカメラが画面の輝度変化をとらえ、そのタイムラグがミリ秒単位で記録される。射撃と射撃の間隔は0.7秒とした

 まずは各条件525発の射撃で得られたE-Eシステムレイテンシーが、どのような感じで分布しているのかチェックしよう。以下のグラフは横軸が射撃回数(右へいくほど増)、縦軸がE-Eシステムレイテンシー(上へいくほど増)となる。

RX 6600 XT環境で得られたE-Eシステムレイテンシーを散布図(横軸:発射回数、縦軸:E-Eシステムレイテンシー)としたもの

 上のグラフが示す事実は実にシンプルだ。画質を上げるとE-Eレイテンシーはより長くなるが、AFMFを有効にするとさらにE-Eシステムレイテンシーが増大する。また、時間経過(横軸)とE-Eシステムレイテンシーはあまり関係なく、常にバラ付いていることも分かる。

各条件ごとにE-Eシステムレイテンシーを箱ひげ図化したもの。箱ひげ図の見方については割愛するが、中央の箱の中には全体の50%のデータが入り、箱の中ごろにある数値は平均値を示す

 先の散布図のデータを箱ひげ図にまとめると、E-Eシステムレイテンシーの変化がよく分かる。RX 6600 XT環境では最高画質かつAFMF OFFの状態では平均21.28msのE-Eシステムレイテンシーだったものが、最高画質かつAFMFをONにすると平均36.07msとなる。その差は約15msだが、これは60fps換算で約1フレームの遅延がAFMFにより発生するということだ。

先の散布図のデータをもとに、どの程度のE-Eシステムレイテンシーがどんな頻度で出ているかをヒストグラム化した。これは最高画質設定かつAFMF OFF時のもの
最高画質設定でAFMFをONにすると、山の出方が一気に右(=E-Eシステムレイテンシーが大きくなる)へ動く
最低画質設定かつAFMF OFF時のヒストグラム
最低画質設定でAFMF ON時のヒストグラム

 AFMFを利用することによりE-Eシステムレイテンシーが増大するだけでなく、ばらつきもより大きくなる。画質を下げれば山の位置も全体に左に寄るが、RX 6600 XT環境では最低画質+AFMF ON時のE-Eシステムレイテンシーは最高画質+AFMF OFF時のそれを下回ることはできない。AFMF ONの場合のE-Eシステムレイテンシーは最低画質にすることでかなり緩和できるが、それでもベストケースで25ms、平均では28.8msの遅延が発生する。

 これがどの程度大きいかと論じる前に、今回のテスト条件におけるフレームレートを見てみよう。射撃訓練場において一定の行動をとった際のフレームレートは以下のとおりだ。

Apex Legends:1,920×1,080ドット時のフレームレート

 もともと軽いゲームであるためAFMFを使わなくても割と高いフレームレートが得られるが、AFMFを利用することでフレームレートはほぼ倍になる(この検証ではRadeon Super Resolution/RSRを使っていない)。

 超高リフレッシュレートの液晶を持っているならAFMFを利用してフレームレートを上げた方が良いと思うかもしれないが、平均460fpsの時点でフレームタイムは約2.16ms(最低fps基準だと約5ms)。最低画質+AFMFオン時のE-Eシステムレイテンシーが平均28.8msなので、この時間内に平均で5〜15フレーム程度の遅れを出しながらゲームをしていることになる(CPUフレームタイムを考慮しないざっくりとした計算だが)。

 一方最低画質+AFMF OFF時のGPUフレームタイムは平均fpsでいえば3.42ms、最低fpsなら4.78msとなり、こちらの場合4〜5フレーム程度に収まる。この遅れるフレーム量はゲームやPCスペックでも変わる可能性があるが、AFMFをONにした際の違和感を感じるなら、この遅延を感じ取っていることになる。

AFMFはゲームを快適にするスパイスとして利用すべき?

 以上でAFMFの検証は終了とする。前半ではAFMFとFSR 2の併用によりRX 6000シリーズでも十分戦えるようになると示した一方で、後半ではAFMFによりE-Eシステムレイテンシーが無視できないほど大きくなることを示した。AFMFは競技性の高いゲーム、あるいはゲームシステムにおける時間的猶予が少ないゲーム(いわゆる“音ゲー”の類)には、AFMFは向かない、と言ってよいだろう。

 しかしその一方で、フレームレートが無料で向上するという点においては、AFMFが今のRadeon(RX 6000シリーズ以降に限られるものの)を輝かせているというのは過言ではないだろう。E-Eシステムレイテンシーが足かせにならない状況であればどんどんAFMFを利用して損はない。自分がどんなゲームと、どう向かいあいたいのかしだいだ。

 しかし本稿では、RX 6600 XTよりもパワーのあるRadeonを使った場合については検証できていない。もっと強力なRX 7700 XTやRX 7900 XTを使った場合、AFMF使用時のE-Eシステムレイテンシー増大はどの程度緩和されるのだろうか――これに関しては後進の検証に委ねたい。

今回の検証の解説を動画でお届け!PAD生配信アーカイブはこちら

【フレームレート爆上げ技術「AFMF」大研究!効果、使い方、仕組からデメリットまで!これでRadeonの価値も爆上がり!!】