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カラオケボックスにVR環境を持ち込め!HTC「Vive」をカラオケボックスに持ち込むとどうなるか?

text by 加藤勝明

待望の日本語版Vive購入ページがオープン。日本での販売は株式会社デジカが行っている

 ホットなキーワードとして盛り上がるのはいいが、肝心の製品が出回っている気配がしないものといえば「VR」。これまで日本からは海外からの直接購入しか手がない上に高価であるため、注文フォームを見ただけで気力が萎えてしまう人も少なくないはず。

 だが、HTC製のVRHMD『Vive』の日本国内での購入ページ(http://www.htcvive.com/jp/)がようやく開設された。価格が10万円以上(107,800円)と高価なのは変わらずだが、株式会社デジカが国内販売の窓口となることで、サポートもぐっと受けやすくなる。何よりうれしいのは追加料金(9,800円)で設置サービスも用意されているという点だ。

 しかしオサイフ的には設置サービスをなるべく使わずに済ませたいもの。Viveの設置はPCの周辺機器としては複雑な方だが、基本構造さえ見えてしまえば設置自体は簡単だ。

 それよりも問題となりそうなのは、Viveの楽しさを満喫するためのスペースの確保だろう。ViveはOculus『Rift』やRazer『OSVR』(こちらは開発者向けキットだが……)等と同じように“立って(座って)楽しむ”ほかに、部屋全体をVR空間にする「ルームスケールVR」にも対応する。

Viveの運用法は立位(座位)のほかに「ルームスケール」という一定の空間内を歩き回れるモードも利用できる。ルームスケールVR前提のVRゲームを楽しみたいなら、場所の確保が何より重要だ

 ルームスケールVRを楽しむには、最低2メートル×1.5メートルのスペースが必要だが、筆者宅でそんなスペースを確保しようものなら、恐ろしいバッシングが待っている。ゲームに熱が入って激しく動き回れば、階下の住人から苦情も来るだろう。

 そんなVR難民にこそオススメしたいのが「カラオケボックスVR」。少々動きまわっても苦情は出ないし、声を出しても咎める家人はいない。機材をどう持ち込むとかいろいろ考えることはありそうだが、まずはルームスケールVRで思い切り遊んでみてから反省することにしよう。

 なお、PCのスペックについては、別の記事を掲載しているので、気になる方はそちらも合わせて参照いただきたい。

カラオケボックスにVR環境を持ち込め!

カラオケボックスに持ち込んだVR用のPC。持ち運ぶことを前提にLian-Liの岡持ち型ケース「PC-TU300」を選んでドヤ顔しようと企んだが、外装に傷がつくのを恐れるあまり、手提げ袋に入れてしまうという詰めの甘さを露呈してしまった。だがアルミ製ケースなので非常に軽くできた点は自分を褒めてやりたい

 前置きが長くなったが、今回はカラオケルーム「カラオケ本舗 まねきねこ」立川北口店にご協力いただき「カラオケボックスVR」にチャレンジしてみた。Vive設置ノウハウが少ない状態だが、とりあえず自作PC本体にViveのパッケージ等をかき集めて突撃。装備の取捨選択をしなかったために、荷物は恐ろしい量になってしまった。

 今考えると、Viveの箱をそのまま持ち込んだのは愚行以外の何物でもなかったし、PCもATXベースでなくMini-ITXベースで組むべきだった……。

編集部にあった必要な機材をかき集めて「まねきねこ」立川北口店へ。なお、事前に「部屋のテーブルを移動してよいか(戻してから帰る)」「PCやVRHMDを持ち込んでよいか」等の了解をとった上で訪問している
ミニタワー型のPCにViveの全パーツ、さらに後述するベースステーション設置用の一脚等をまとめたら荷物がえらい量になってしまった。後から考えるとあと3割は荷物を減らせたはず。ただかさばるだけで重量はそれほどでもない
ある程度の広さが確保するために「イベントルーム」の2番目に大きい14号室をチョイス。15~16人は入りそうな大きめの部屋だ。大きめのTVもある(HDMI入力利用可能)ため、PCのディスプレイを持ち込まなくてもよいのが助かった

 PCとVive一式の他には、Sinvitron製のカメラ用の一脚+1/2インチネジのついた自由雲台を2セット、さらに電源ケーブルやテーブルタップ等を持ち込んだ。後にも解説するが、結論から言えば一脚+自由雲台のセットはなくても十分ルームスケールVRを設置できる。今回使った設置方法はViveのマニュアルが推奨する“ベースステーションを高い位置に設置する”ためのものだ。

 設置の模様をお見せする前にViveのパーツの構成をチェックしておこう。必要なパーツの事前吟味は今回とても重要だと感じた。

ノートPCと比べてもかなり巨大なViveの箱
Viveの内容物を並べた状態。小物まで含めるとかなりの量になる
一番大きいのがVive本体。付属しているヘッドフォンは“ないよりマシ”なので自分の好きなタイプのヘッドフォン等を持ち込もう
ViveでVR世界を認識するための“灯台”的な働きをするベースステーションに、それぞれACアダプタが1基ずつ。ベースステーションは1基だけでも運用できるが、身体等で影になった部分の動きが認識できなくなるため、ルームスケールでは2基運用するのが望ましい。右端のパーツは壁面設置用なので今回のようなケースでは不要
Vive本体とPCを仲介するリンクボックスと、それ用のACアダプタ。USBケーブルは両側がBコネクタの特殊なものなので、必ず付属のものを持参しよう。右上のケーブルの束はリンクケーブルといい、ベースステーション同士の同期を確実にしたい時に使用する
Viveの最大の強みといえる専用コントローラ。充電器が2基付いているがこれはスマホ用充電器やモバイルバッテリー等で代用できる。充電用のケーブルは普通のマイクロUSBケーブルだが、マイクロB側のプラグ部がスリムなケーブルでないと装着できない
ベースステーションを頭上に設置する目的で持ち込んだSinvitron製のカメラ一脚(2本)。5段階に展開でき、最大191cmまで展開できる。ベースステーションを傾けて装着するために頭頂部にハクバ製の自由雲台を付けておいた
テーブルタップやPCを操作するミニキーボードや無線マウス、距離を計測するためのメジャー(5m測れるもの)等を準備。HDMI出力はVive側に取られるため、カラオケボックスのTVにPCを接続するためのDVI→HDMIケーブルも準備した
テーブルや丸椅子を壁によせ、Viveのプレイエリアを確保する。予めカラオケボックス側にテーブルを片付けてよいのか、そもそも片付けられるテーブルなのか等を確認しておきたい
Vive推奨の方法とは、ベースステーションを2メートル以上の高さでやや下に向けて設置するというもの。これが意外と難物だ

 カラオケボックス内の片付けが終了したら、いよいよViveのベースステーションの設置だ。ベースステーションを頭上に設置しやや下に向け、プレイエリアの対角になるよう設置するのが理想だが、そのためにはカメラ用三脚や今回筆者が準備したような一脚が必要になる。あえて一脚を選択したのは、接地面積の狭さを評価した結果だ。ただ結論から言うと、ベースステーションは重みがあるうえに内部でモーターが回転するため、一脚だと少しの衝撃で倒れる可能性がある。三脚やライトスタンドを使うのが確実だ。

 なお、今回はプレイヤーが腕を伸ばしたときにベースステーション間の視線が切れることを勘案し、ベースステーション同士を同梱のリンクケーブルで連結しているが、ベースステーション間に障害物(照明や家具など)がなければ設置する必要はない。

一脚の上にベースステーションを設置。ベースステーション底部には1/4インチのネジ穴が切ってあるため、それを利用する。やや下向きに設置し、これを2本対角線上に配置する。対角5メートル以内になるように設置しよう。リンクケーブルは邪魔にならないようスペースの外を這わせる
リンクボックスはオレンジ色のコネクタがある面と、そうでない面がある。オレンジ色側は全てVive本体側、そうでない側は全てPC側に接続する(ACアダプタ含む)と覚えれば混乱することもない
ここまでくればもう終盤。リンクボックスとPC+ACアダプタ、リンクボックスとVive本体を接続する
カラオケボックス据え付けのTVをPCのディスプレイにすれば、プレイヤー以外の人も何をやっているかチェックできる

機材の設置はわずか15分! あとはルームスケールVRを立ち上げるだけ

画面の指示に従いルームスケールVRで使うプレイエリアを設定。コントローラのトリガーを引きながらエリア外縁を歩くだけでよい

 ここまでのハード設置作業はわずか15分。全くViveを知らない状態だとかなり難しい話だが、どこに何を付ける、という情報をしっかり整理しておけば意外と単純なのだ。ACアダプタが3個もある点で怖気づくかもしれないが、ケーブルが細い1基がリンクボックス、そうでない2基はベースステーションと覚えてしまえば楽勝だ。

 あとはソフト的なセットアップで終了だがカラオケボックスVRで重要なのは、Viveのセットアップ用アプリの導入と、Vive用ゲームの導入は済ませた状態で持ち込むことだ。初回のViveセットアップにはSteamVRシステム一式のダウンロードが必須になるし、ゲームもそれなりにサイズが大きい。カラオケボックス内で使える無線LAN(あれば、だが)やモバイルルーターの帯域ではセットアップだけで時間切れになってしまう。SteamとViveの連携も事前に済ませておきたい。

ルームスケールVRのセットアップは、画面の指示に従って歩くだけの簡単なもの。5分程度で終了する
あとはひたすらVRゲームを遊ぶだけ。Vive(SteamVR)対応アプリなら、VRのゴーグルをかけたままでゲームを起動・終了できるのだ

自室でやりたい&手間をかけたくない人向けのヒント

 カラオケボックスのようにスペースのとれる場所なら理想的な設置にしやすいが、自室に設置する、あるいは三脚のような機材を買い込みたくない、という人もいるだろう。そういう場合に使える機材やテクニックを最後に紹介しておきたい。

 まず自室に設置するなら、三脚よりも家具や棚にベースステーションを固定するための器具を探す方が得策。ストロボや小型カメラを固定するためのクリップやクランプに自由雲台を組み合わせるのがベストだ。ベースステーション同士の間に障害物がなければ、リンクケーブルで接続する必要はない。

ストロボや小型カメラを本棚やワイヤーシェルフに固定するための器具はそのままベースステーション設置用のアイテムに転用できる。ただし1/4インチネジを備え、首振りができるよう雲台を備えていることをチェックしよう。使用中にズリ落ちないよう耐荷重も確認すべし
わざわざ一脚や三脚を買いたくない! という場合は、床の上にベースステーションをやや斜め上に向けて設置する手も使える。ただしリンクケーブルの連結とベースステーションの安定が必須となる

 また三脚を設置するスペースがないとか、三脚を2台買うなんて……という人はベースステーションの床置きを試してみよう。

 この場合プレイヤーでベースステーション同士の視線が遮られるため、リンクケーブルで接続しておかないとプレイ中にステーションを見失う可能性がある。歩行時の振動を拾うような床(特に和室)には向かないが、一番手軽に設置できる。

 どの方法をとるにせよ“プレイエリア内にベースステーションの視線が通らない場所を作らない”という配置を考えれば、ステーションの高さを少々違えてもしっかり認識する。

意外に楽だった「カラオケボックスVR」

今回のカラオケボックス代は約2,600円(平日昼間フリータイム、ドリンクバー付き)。音を出せて大型TV付きスペースを借りられると思えばレンタル会議室よりずっと安い
※注:料金は取材時(4月中旬)のものです。また、店舗により料金体系、サービス内容が異なります

 いい年こいたオッサン(+編集者)がカラオケボックスに行ってViveのゲームを楽しんできた訳だが、Viveの設置は思ったより簡単。もちろんパーツの組み合わせ方を一度予習し、Viveアプリもセットアップ済の状態で取材へ赴いたのだが、この記事を読めばほぼぶっつけ本番でも間違いなく組めることだろう。

 PCゲームは液晶の前に座って楽しむもの、という常識をViveは大きく変えてしまう可能性を秘めている。確かに我が国の住宅事情はViveにとって厳しいが、工夫すればいくらでもViveのルームスケールVRを満喫できる余地はあるのだ。

 なお、Viveで体験できるゲームなどについては「VR Watch」などで紹介している。こちらも合わせて参考にして欲しい。

【カラオケボックスにHTC Viveを設置するまで~】
HTC Viveをカラオケボックスに設置、動作するまで。随時早送りでお届けします。