特集、その他

ゲーミング座椅子「極坐」を試してみた
~ゲーミングチェアのあの座り心地をリビングにも!~

text by 石川ひさよし

リビングにゲーミング環境を作っちゃおう………ということでゲーミング座椅子「極坐」をご紹介

 ゲーミングチェアのジャンルとして「ゲーミング座椅子」があるのをご存じだろうか?

 「ゲーミングチェア」があるなら、脚がない「ゲーミング座椅子」もあっていい、というのは日本人ならわかる感覚だろうし、実際、座椅子でゲームをしている人も多いだろう。とはいうものの、「ゲーミングチェア」といえば本格派の椅子であり、「本格派の座椅子」というのはちょっとイメージしづらい。

 実際、AKRacingが発売した同社初のゲーミング座椅子「極坐」(ぎょくざ)は実売価格42,800円(税込)で、同社ハイエンドゲーミングチェアと同クラス。「ゲーミング」のつかない「座椅子」は数千円から1万円ほどが一般的だから、この差を埋めるだけの内容があるかどうか、気になる人も入るだろう。

 そこで今回、その「極坐」をお借りして、実際の座り心地からリビングでのレイアウトまで、様々に検討してみた。気になる方は、是非参考にして欲しい。

とりあえず、座り心地はどうなのか?

こんな感じ

 「組み立て式の座椅子」しかも耳慣れない「ゲーミング向け」というと、「ゲームのプレイ感はどうなのか?」「組み立てはどうなのか?」など気になる事も多いと思うが、まずは基本の基本、座り心地から紹介したい。

 極坐は、ほかのゲーミングチェアと同様、自動車シートをベースにデザインされている。いわゆるバケットシートで、座部や背もたれは左右のへりを突き出しホールド性を高めている。スポーツカーに採用されているアレだ。

 ちなみに、レーシングカーのフルバケットシートまでの「本格さ」にしてしまうと、ホールド性最優先となり、リクライニングもできなくなる。極坐は「ゲーム目的」で設計されているため、リラクゼーションが優先。リクライニングは当然できるし、背もたれのへりもレーシングカーほど深くない。ある程度身体を左右に動かせるし、熱もこもりにくい。座部のへりもかなり浅く、上であぐらもかけたりする。

あぐらをかいてもムリがない座部

 座部は「正に自動車シートの感触と同じ」という印象。いわゆるラグジュアリー・カーの「長時間座っても痛くならない」アレだ。

 詳細に書くと、「一般的なスポンジ素材の座椅子よりは硬めだが、表面は柔らかく指で押せば軽く凹み、座ってみればしっかりとした反発力を感じる」といったイメージ。一方、背もたれはやや硬めの感触だ。

 こうした反発力のセッティングは、腰痛持ちにとっては理想的に感じられる。筆者が座椅子を選ぶ際は「腰への負担軽減を第一」に厚みと反発力を重視、検討したが、間違いなく極坐のほうが長時間座った際の負担が少ない感じだ。

 加えて23kgもある全体の重量感からか、背もたれに身体を委ねても倒れ込まない安心感がある。これによって心の底からリラックスできる。筆者は普段、座椅子で睡眠をとることはないが、極坐なら間違いなく睡眠できる。

角度調節は無段ではなく多段。レバーを引いて調節するのは自動車のシートと同じ操作だ
背もたれはほぼフラットの状態まで倒せる。腰当て装着状態ではむしろ海老反りになるくらい

 さて、角度調節は座って右手側にあるレバーを用いる。自動車シートと同じ操作だ。引けばロックが外れ、シートを起こしたり倒し込んだりできる。最大限倒せばほぼフラットで、起こせばほぼ垂直といったところだ。

ベアリングによって回転するため乗り降りは自動車よりもラク
底面もカバーされているため、床を傷つけない

 座部のベース部分は、ボールが仕込んであり回転する。このおかげでかなり乗り降りしやすい。それにベース部分はこれもPUレザーと思われるがカバリングされており、移動させた際に床を痛める心配がない。ここも◎だ。

 アームレストは、高さおよび角度、そして前後に調節できるので、ちょうどよい位置を見つけることができる。アジャスタブルアームレストと言うらしい。素材は樹脂でできている。なお、若干先を広げるとすると、乗り降りの際、邪魔になりにくい。

アームレストは高さ、前後、首振りとかなり調整自由度が高い
【ベースモデルはPro-X】
ベースモデルである本格ゲーミングチェア「Pro-X」は高橋敏也氏がレビューしているのでそちらも参考にしていただきたい

 このように、極坐はゲーミング「座椅子」ではあるが、一般的な座椅子とはレベルが違う。というか、座ってみてると明確にわかる。価格がだいぶ違うので、当然といえば当然だが、少なくとも、価格差を納得できる作りなのは間違いない。

 ここまでの快適さと腰への優しさを体感してしまうと、筆者としても、本気で導入を検討したくなった。

 ちなみに、この椅子のシート部分は同社のハイエンドモデル「Pro-X」がベースとなっているとのこと。Pro-Xは、ゲーミングチェアを取り扱うショップなどに展示機があるようなので、ご興味のある方は、Pro-Xでその感触を確かめてみるのもよいだろう。

極坐を詳しく見てみる

 では「ハードウェア」としての極坐を写真でざっと紹介しよう。

 組み立て完了した極坐は想像するよりもコンパクト。一般的な座椅子を置けるスペースがあれば極坐の設置も可能だ。写真を見て以来、「大きい」という印象がどうしてもあったので、これは若干意外だが、よくよく考えると重要なポイントだろう。

斜め前から
正面
後ろから
背もたれを限界まで前にしてみた
座面
背もたれ
………とやっていると、さっそくリビングの主のチェックが入る。
合皮(PUレザー)なので物足りない様子。ツメを研がれると痕が付くと思われるが、一方で抜け毛の掃除はカンタンだった

普通の座椅子と比べてみた

【普通の座椅子と比べてみた】
一般的なサイズの座椅子と比べてみた
背もたれは高く、アームレストの分幅広だが、専有面積でみればさほど変わらない

 座り心地を一般的な座椅子とも比較してみた。筆者所有の座椅子はいわゆる腰痛対策品で、座部、背もたれ部とも激安品よりも厚みがあるがデザイン的にはごく普通の座椅子だ。

 まず違いを感じるのが柔らかさだ。普通の座椅子の座部はスポンジがかなり柔らかく、より大きく沈み込む。いわゆる低反発素材の感触だ。また、背もたれ部も普通の座椅子のほうが柔らかい。普通の座椅子はへりのないフラットなデザインなので、沈み込むことでホールド感が高まる。一方で、極坐のほうはたしかに表面は柔らかいのだが沈み込みは小さく、それも身体に合わせて沈み込むわけではない。いわゆる高反発タイプだ。

 この点で「どちらが座り心地がよいか?」というのは好みが分かれるかと思う。筆者は寝具でも低反発より高反発のほうがよいと感じていたが、座椅子も同様、極坐の高反発感のほうが心地よいと感じた。

 寄りかかった時の快適さについては、明らかに極坐のほうがよい。

 理由は3つある。まず1つ目は先にも述べた安定感。二つ目は腰当ての存在だ。座椅子に寄りかかると背筋を伸ばした状態になるが、腰当てがあると背骨の湾曲に合わせたサポートが入るかたちになり、とてもリラックスできる。普通の座椅子にクッションを置いて使っている人も多いと思うが、椅子に合わせた腰当てがベストなのは間違いないだろう。

 そして、三つ目は首への負担だ。極坐は背もたれが高く、首あて枕が付属しており、「高さ」と「枕の存在」の2点で首への負担が軽減されている。今回比較している座椅子も、比較的背もたれが高く、首のサポートを考慮してか、ネック部分の角度調整ができるのだが、角度調整機能よりも首あて枕をバンドで固定する極坐のほうが自分の好みに調節しやすかった。このあたり、座高との関係もあると思うが、一般的に、「普通の座椅子」は首へのサポートまではあまり考えられていない印象だ。

 このような感じで、休日などゲーム三昧をしようとすれば極坐のほうがダンゼン快適だった。まあ、自動車シートってよく考えられているんだなあと。

「ゲーム向け」としてどうなのか?~あるいは「極坐のあるリビングについて」~

「ゲーミング座椅子」のあるリビング
普通の座椅子のあるリビング

 さて、「座椅子としてかなり高品質」というのは伝わったかと思うが、次に気になるのは「ゲーミング」としてどうなのか、またリビングに合うのか?という点だろう。

 そこで、一人暮らしの筆者の自宅リビングにゲーミング座椅子を運び入れ、色々試してみることにした。

 それが右写真の状況だ。

 テレビが壁寄せスタンドに置いてあるため、一般的なテレビ台の環境とは若干違うが、だいたいのイメージにはなるだろう。ちなみに、この環境では非常に快適。首あて枕によるリラックスした体勢からテレビを見ることになり、首にかかる負担もかなり軽く感じた。

 なお、今回のテレビのサイズは42型だ。このくらいのサイズなら、コタツ、極坐と合わせて3~4.5畳のスペースにすべての環境が収まると思われる。つまり、リビングでなく、プライベートルームに設置する、というのもできそうだ。

ミニマムなら3畳ほどでゲーミングスペースを作れそう

 なお、テーブル代わりにコタツを置いているが、写真のとおり若干テレビに寄せている。これは写真映りを考慮したこともあるが、テレビの画面サイズと距離を合わせた意味もある。撮影してみて気付いたが、おそらく42型テレビなら奥行きの狭めのセンターテーブルと合わせたほうが落ち着くだろう。

ヘリがせり出しているだけでなく、座面自体も一般的な座椅子と比べて高い。そのため、低いテーブルの場合、太ももが収まらないのだ
筆者オススメの足ポジション

 なお、コタツやテーブルと合わせる場合は、極坐の高さに注意したい。

 というのも、極坐は一般的な座椅子よりも座面が高いため、コタツの下に脚を投げ出そうとすると若干窮屈さが出る。使えないような狭さではないのだが、他が快適になるだけに、相対的に気になりやすいところだと思うので、「コタツ派」の方は個々人でベストな体勢を探していただくのがいいかと思う。なお、筆者的には、気持ち体育座り風に座る写真のようなポジションがイチバン落ち着いた。

 なお、例に挙げたテーブルは高さ40cm前後のものだが、カフェテーブルというジャンルのなかに、ちょうど50~60cmの高さのものがあるようなので、この位置にテーブルを置くのであれば、そうしたテーブルを使うのもいいかもしれない。

 また、いっそテーブルを取り払うのもアリと思うが、さすがに普段まで「テーブルなし」は不便なので、必要に応じて移動させたり、折りたたみテーブルのように収納できるものと組み合わせれば、より快適ではないかと思われる。

【足の置き方いろいろ】
あぐら
投げ出してみた
試行錯誤中
サイドテーブルでマウスを使う、という手もある

 ちなみに、このデバイスと特に相性がいいのはゲームパッドだ。リラックスした姿勢でそのまま操作できるので、かなり快適な操作感になる。試したなかではPS4のワイヤレスコントローラが、プレイ姿勢的にも、ケーブルに悩まされることもなくイチバン快適だった。

 おそらくは、ガチのFPSやアクションのようにキーボード&マウス操作が主となるタイトルを楽しむならチェア、MOBAやシミュレーションのようにコントローラで楽しめるタイトル、あるいはマウスのみで操作できるタイトル、コンシューマー向けゲーム機で楽しむなら座椅子でも構わないといった感じだろうか。

 一方、キーボードを使う場合は、「膝上に置く」「前かがみになる」のどちらか、マウスを使う場合は「前かがみになる」といった対応が必要になる。

 これについては、筆者も色々試行錯誤したが、結論としては、サイドテーブルを用意するのが最も便利。サイドテーブルはマウスを置くにはちょうどよく、キーボードを膝置きすれば、前屈みになる必要もない。

キーボード使用時は前かがみになるか、あるいは膝上に置くかという選択になりそう
【サイドテーブルと組み合わせるとこんな感じ】
【サイドテーブルあり・テーブルなしだとこんな感じ】

心地よさは抜群。ゲームがしたくなる座椅子

比較的長期間借用できたので、筆者が模索するなか行き着いたゲーミング環境をご紹介。テレビにゲームを映しつつ、PCのマルチディスプレイ機能を使ってコタツ上にサブディスプレイを置き、ここに攻略情報やコミュニケーションツールを表示してみた。その際、20型オーバーのデスクトップ用ディスプレイは大きすぎるので、モバイルディスプレイがちょうどよかった

こんな具合で、ゲーミング環境をリビングに構築することをシミュレーションしてみた。今回、インパクトのあるレッドを用いたために多少、筆者宅の地味なリビングの配色からは浮いた印象だが、ブラックモデルもあるのでそちらならもう少し落ち着くハズ。余裕があれば極坐に合わせて調度品側をアレンジするのもよいだろう。

座ってみれば、あらためて自動車のシートってよく考えられているんだなあと考えさせられる。お金があれば購入に踏み切っていただろう。もし宝くじがあたったら3面3座くらい揃えたいくらいだ。まあ、そのくらい本格的で快適な座り心地ということがお伝えできれば幸いだ。

さて、撮影のためしばらくコタツから布団を外していたため、そろそろ彼女がスネだした。もう少しこの感触を味わっていたいなと余韻にふけるも、AKRacingに向けて渋々ドナドナの準備取りにかかるのであった。

【組み立てはこんな感じ】

 今回は組み立てからレビューを行ったので、組み立ての模様も軽く紹介したい。

 極坐は組み立て式だが、必要な工具は付属しており、組み立ても簡単だ。パーツは、座部、背もたれ、そして3箇所ほどのカバー、腰当て、首あて枕に分かれている。

 組立作業は基本的に座部と背もたれを繋げるのみ。背もたれにある4本のボルトを外し、座部から伸びている金具に通して締め直す。別途付属するボルトはカバーを装着するためのものだ。座部から伸びる左右の金具と、ヒンジの金属パーツ部分に樹脂製カバーを装着してひとまず完了する。

極坐の内容物(写真は製品前サンプルのもの)。座部は底面の回転座から肘当てまで完成済み状態なので、意外とパーツ点数は少ない
極坐の梱包。製品前サンプルだが、中身はぎっしりなので、製品版も似たようなものになるだろう。サイズはざっくり90×50×70cmほどで、重量は……できれば2人で運んだ方がいい(製品重量は23kg)。普通の座椅子の梱包と比べたら3~4座ぶんはあるだろう。
おそらく分かりやすくするためと思われるが、背もたれ部分のボルトは左右4本装着済みだった
4本のボルトを一旦外し、背もたれを合わせて再度締める
背もたれ部分のサポートにカバーを装着
ヒンジ部分にもカバーを装着し、これで金属部品の露出がなくなる

 ひとつポイントを挙げるならば、座部と背もたれの装着時は、正面から向かって左の、角度調節レバーのある側から先に取り付ければラクだ。右側の金具はフリーになっているので後からでも調節しやすい。また、壁面などに背もたれをもたれさせて角度を固定しておくと装着しやすかった。搬入は二人がかりが理想だが、組み立ては独りでも問題ない。

腰当て、首あて枕は必要に応じて装着する。装着方法は腰当てがヒモ、首あて枕がゴムバンドだ。自動車用レーシングシートにこれら小物が付属することはないと思われるが、ゲーミング座椅子(あるいはチェア)としてはアリだ。装着したほうがよりリラックスできるように感じられる。

[制作協力:AKRacing]