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小型PC向け最速カード「ZOTAC GeForce GTX 1080 Ti Mini」の性能をチェック

GeForce GTX 1080 Tiの性能そのままに5cmも小型化 text by 石川ひさよし

 ZOTACがCOMPUTEX TAIPEI 2017に合わせて発表した「GeForce GTX 1080 Ti Mini」(型番:ZT-P10810G-10P)は、大きな衝撃だった。

 NVIDIA GeForce GTX 1080 Ti搭載カードでありながら、「Mini」の名にふさわしく長さは21.1cmを実現。ハイエンドGPUカードは巨大で、それを搭載するためにはケースも大きなものを選ぶのがゲーマーの一般常識だったのだがこれが覆る。

 今回はGeForce GTX 1080 Ti Miniを取り寄せ、その小ささや性能をチェックするとともに、本製品を用いたコンパクトゲーミングPCを組み立ててみたので省スペースと高性能を実現させるキーとなるアイテムをぜひ確認してほしい。

リファレンス比で5cm以上のコンパクト化を実現

 NVIDIA GeForce GTX 1080 Tiは、GeForce GTX 10シリーズの最上位GPUであり、リファレンスデザインではカード長が26.7cmある。多くがより高性能化を目指し、巨大化しているのに対してGeForce GTX 1080 Ti MiniはそのGeForce GTX 1080 Tiを搭載しながら、カード長を21.1cmまでコンパクト化した点が最大の特徴である。

 これがどれだけすごいことなのかを説明しておきたい。一般的なGeForce GTX 1080 Tiカードが大きいのは、チップ自体が大きいことに加え、要求するメモリ枚数や電源回路を収めるため、そして250W級の熱量を冷却できるだけのGPUクーラーが要求されるためだ。

 GeForce GTX 1080 Tiカードを小型化するためには、GPUやメモリ、電源回路などをコンパクトに搭載する基板設計と、小さなGPUクーラーできっちり冷やす冷却設計という、二つの技術力が試される。そしてその難題をZOTACは実現してしまった。ZOTACは、これ以前にGeForce GTX 1080/1070カードの「Mini」をリリースしている。しかしさらにGPUが大きく、メモリチップも多く、電源回路も大容量なGeForce GTX 1080 Tiで実現してしまったのは、「まさか」というのが第一の印象。同時に、コンパクトなPCでどこまでパフォーマンスを高めることができるのかという欲求を強く刺激されるものだった。

ギュッと詰まった基板設計に脱帽、クーラーデザインも凝ったものに

 それではGeForce GTX 1080 Ti Miniを製品写真とともに細部まで確認していこう。

 GPUクーラーは、ヒートシンク+ヒートパイプの構造で、ヒートパイプは6mm径が5本。ファンを2基搭載しているが、前後で径を変え、ブラケット寄りが9cm径、カード後部寄りは10cm径となっている。よく見れば前後でブレード形状なども微妙に異なる。ファンカバーはAMP Editionを短く詰めたようなデザインだ。

ファンは前後で口径やブレードを変えている
銅製ヘッドや6mm径ヒートパイプを5本用いるなど、小さなヒートシンクで冷却するための工夫が見られる

 長さについては、実測でもおよそ21.1cm(ブラケット含まず)だ。比較対象のリファレンスデザインカードは26.7cm(ブラケット含まず)。リファレンスデザインカードも、オリジナルクーラー搭載カードと比べると短めであるが、本製品はそこからさらにグッと短い。

リファレンスデザインカードに対して56mm詰めたカード長は数値以上のインパクトがある

 カードの裏面にもバックパネルが装着されている。AMP Editionなどは、基板の裏面に「POWER BOOST」チップを搭載しているが、本製品はそこまでOC幅も大きくないためか、同チップを搭載していない。ZOTACロゴやパンチング穴、カラーリングなど凝っているもののシンプルにまとめられている。なお、SLI用の端子も2基あるので、GeForce GTX 1080 Tiのフル機能が利用できる。

バックプレートを装備したカード裏面。SLI用端子は2基
映像出力端子はDisplayPort×3、HDMI×1、DVI-D×1という標準的な構成

 カード上部には白の単色だがZOTACロゴのLEDを搭載している。色変更ができる「SPECTRA」とは異なり、あくまでアクセント程度の発光なのでハデさは感じられない。補助電源コネクタは8ピン×2基で、ここはリファレンスデザインカードの8+6ピンから強化されている。

ZOTACロゴ部分にはLEDを搭載。補助電源コネクタは8ピン×2基に強化

 基板を見ると、各パーツの配置は大型カードと同様。奥行きが短いぶん高さを若干拡大しているが、それでも電源回路部分は部品と部品の間隔が高密度だ。そしてこの小さな基板に8フェーズの電源回路を搭載していることが確認できる。

レイアウトは大きな変更はないが、電源回路の密度はすごい

ユーティリティ「FIRESTORM」でビデオカードを自分好みにチューニング

「FIRESTORM」はZOTACのビデオカード用ユーティリティで、インストールすればGPUクロックやファンの回転数などのステータスを確認したり、OCやファンの回転数の調節をしたりといったことが可能になる。

ZOTACのGPUユーティリティ「FIRESTORM」が利用できる

 FIRESTORMのメインインターフェースは3分割で、中央部分と、アナログメーター風の左右の部分に分かれている。

 中央部分は各種クロックや電圧、Power Targetなどの設定項目で、OCの際に利用する。南京錠マークはその部分が注意の必要な設定項目である証。とはいえバラック状態で試した限りでは多少のOCも可能だった。

OC例、設定と3DMark。GPUクロックを50MHz、電圧を5%、Power Targetを105%、そしてGPU温度のターゲットを85℃に設定してみたが、この程度なら問題なく3DMarkをパスした。

 左はリアルタイムのGPUとメモリのクロックを示すメーターと、その下にはマルチGPU時に対象を切り替えるためのボタンと、3つのプロファイルを設定、切り替えるためのボタンが用意されている。後ほど言及するが、本製品は小型なぶん多少クセがある。通常時やゲーム時と、プロファイルを設定し切り替えることで、そうしたクセをいくぶん解消できる。

 右はGPU温度とファンの回転数を示すメーターと、その下にファンの回転数を設定するボタン、そしてその下にはより詳細なステータスを表示する「MONITOR」ボタン、各種設定を行う「SETTINGS」、そして「HELP」ボタンがある。ファン回転数の設定は、GPU温度に応じて回転数をパーセンテージで指定できる「ADVANCED」と、常に一定のパーセンテージで動作させる「MANUAL」がある。一般的にはADVANCEDを用いることになるだろう。ADVANCEDをうまく調節することでも本製品のクセを弱めることができる。

MONITORはメイン画面よりも多くの情報をリアルタイムで把握することができる
SETTINGSではWindows起動時に常駐させるかなどの設定ができる
ADVANCEDではGPU温度に応じたファン回転数が設定可能。10℃、10%刻みだ

 なお、中央上部に「SPECTRA」ボタンもあるが、本製品のLEDはSPECTRA非対応なのでクリックしても反応はない。

 本製品はそこまで高クロックの設定ではないが、動作クロックにも触れておこう。

 GeForce GTX 1080 Tiのリファレンスクロックが1,480MHz、ブーストクロックが1,582MHz、メモリが11GHzであるのに対し、本製品は1,506MHz、1,620MHz、11GHzとなっている。この程度であれば、多少リファレンスクロックモデルよりも高いスコアがでることもあるが、体感上大きく変わるものでもないだろう。

性能はGeForce GTX 1080 Tiそのもの、4Kゲーミングの世界の扉を開こう

 GeForce GTX 1080 Ti Miniのパフォーマンスは、NVIDIAのリファレンスデザインカードとほぼ同等だ。

 3DMarkでは、Fire Strikeのように標準的な負荷であれば100ポイントほどの差で本製品のほうが高いスコアを出している。また、4K解像度のFire Strike Ultraや、DirectX 12のTime Spyでも50ポイント程度は高いスコアを示していた。

3DMark

 VRパフォーマンスを測るVRMarkでは、Orange Room、Blue Roomとも、リファレンスデザインカードとほぼ同等、わずかに高いスコアだった。GeForce GTX 1080 Ti自体、かなり高いVRパフォーマンスなので、その点でVR目的での導入も問題ない。

VRMark

 ここからは実ゲームタイトルのフレームレートを見ていこう。

 ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク、Fallout 4の2タイトルは、最高画質で4Kプレイが十分に視野に入る。

 PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDSは、最高画質では4K時にやや60fpsを下回るので、4K未満の解像度でプレイするか、1、2段程度画質を抑えるとよい。

 Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsは、この中では負荷が重い部類であるため、3つのプリセットを試した。フルHDではウルトラ画質でも楽しめ、あるいは高画質を選んで120Hzの高リフレッシュレート液晶と組み合わせてもよい。一方で4Kは高画質に抑えなければ60fpsの維持は難しい。

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(スコア)
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(フレームレート)
Fallout4
PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands

 ここまで見てきたように、リファレンスデザインカードと比較すると、わずかに上回るフレームレートを示すものが多いが、一部は下回ることもある。ただしいずれにせよ誤差の範囲内だ。本製品は、現行の人気&最新タイトルを、最高画質かつ4Kを視野に入れた環境を小型PCで楽しみたかったという人には待望のアイテムといえるだろう。

・テスト環境
 CPU Intel Core i7-7700K
 マザーボード ASRock Fatal1ty Z270 Gaming-ITX/ac
 メモリ Crucial CT2K8G4DFD8213(PC4-17000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
 ストレージ Western Digital WD Green SSD WDS240G1G0B(M.2/6Gbps SATA/240GB
 電源ユニット SilverStone Strider Platinum series ST55F-PT(550W/80PLUS Platinum)
 OS 日本マイクロソフト Windows 10 Pro 64bit

ケースに入れた際の温度や動作音もチェック、小型ケースに組み込む際はクリアランスに注意

Core V1のビデオカード搭載例
Core V1は、キューブPCとしてはやや大型ではあるが、ハイエンドGPUのGeForce GTX 1080 Ti Miniにとってちょうどよいサイズ感でもある印象だ。

 では実際に、コンパクトなPCの作例を紹介していこう。用意したケースはThermaltakeの「Core V1」。そもそもリファレンスデザインカードが入ってしまうので、GeForce GTX 1080 Ti Miniが搭載できることに何ら不安はない。

 実際に組み込んでみても、本製品なら装着時からすでに余裕がある。リファレンスデザインカードの場合は、ケースの全面カバーを一度取り外し、ビデオカード用に開けられた穴を利用して装着するのだが、本製品はその手間がない。ケースの天板、側面板を外すだけで装着することができる。

Core V1のビデオカード搭載例
Core V1ならカード後部にも十分なスペースができる。

 さて、本製品をCore V1に搭載した状態でのGPU温度、動作音、消費電力などを紹介しよう。

 GPU温度については、ギリギリ動作に支障がない範囲ではあるが、高負荷時に80℃をやや超えた。この点はカード長とのトレードオフと言える。

 もう一つのトレードオフが動作音だ。実際に聞いた印象ではリファレンスデザインカードと同じ程度だが、数値を見るとそれを上回っていた。窒息系ケースで動作音を閉じ込めるにはGPU温度が気になるので、どちらかと言えば今回用いたような通気性のよい開放系ケースで、できるだけGPU温度の上昇を抑えてファンの回転数を抑えたほうがよさそうだ。

GPU温度変動
Power Targetの設定値と消費電力
電力効率(スコア÷消費電力)
GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionを100%とした場合のスコアと消費電力

 最後に、おそらく、このビデオカードを搭載可能なPCケースとしては最小だと思われるCoolerMasterの「Elite 110 Cube」にも合わせてみた。

 こちらは対応するビデオカードの長さが21cmとされている。スペック上ではビデオカード側が1mmオーバーしてしまっているが、実際のところ装着することは可能だった。とはいえ、ほかの21cmまで対応するケースで本製品が搭載できる保証はない。また、本当にギリギリでありメンテナンス性は悪い。コンパクトなゲーミングPCを組もうとする際は、コンパクトさと同時にメンテナンス性のバランスも重視するのがよいだろう。

Elite 110 Cubeのビデオカード搭載例
Elite 110 Cubeは斜めに挿入するなど工夫をすればギリギリ入るといった状況。マザーボードの拡張スロット周辺の部品の高さによっては干渉して入らない場合もある。

Mini-ITXだけでなくmicroATX環境にもオススメ、最速の小型ハイエンドビデオカード

 ZOTACのGeForce GTX 1080 Ti Miniを用いれば、コンパクトでGeForce GTX 1080 Tiクラスのパフォーマンスを持つゲーミングPCが構築できる。

 熱と動作音を押さえ込むためには多少、工夫と言うかケース選びが重要となるが、そうした目利きとテクニックも自作PCの醍醐味と言える。小さいPCであれば、リビングの大画面テレビでゲームを楽しむ際に、家族から冷たい目で見られる心配も減る。あるいは、プライベートルームに置くとしても、スペースを有効に活用できる。そうした意味で、チャレンジしがいのあるカードと言えるだろう。

 最後に本製品とリファレンスデザインカードをmicroATXマザーボードに装着してみた。microATXでSLIをする場合は、通常、二枚のカードが密着しGPUクーラーが吸気をする隙間がなくなってしまうが、カード長の異なる二枚を組み合わせれば、一番目のx16スロットに挿したカードの吸気効率が上がる。Mini-ITXだけでなく、microATXユーザーにも検討していただきたい一品だ。

[制作協力:ZOTAC]

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