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Crucialが目指す「光るメモリ」の次は「メーカーコラボメモリ」?メモリの最新事情を聞いてみた

今ゲーム用に買うならDDR4-3000対応品が高コスパ text by 石川ひさよし

 6月5~9日の期間で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2018。これから登場する製品の見本市としての側面以外に、メーカー本国のプロダクトマネージャーや開発者に話を聞くことができるという魅力もある。

 ここ数年恒例となっているが、今年もMicronのCrucialメモリ担当者に、新製品やメモリの昨今の状況などをお聞きする機会を得たので、その模様をお届けしよう。

 なお、MicronはCOMPUTEX TAIPEI 2018の開幕直前に新しいメモリを2製品発表している。一つは「ASUS TUF Alliance
」デザインのDDR4メモリ、もう一つはRGB LEDを搭載し、オリジナルカバーも作成できるユニークなDDR4メモリだ。今回はこの2製品を中心に話をうかがった。

コラボレーションメモリが今後増える?ASUS TUF Gamingモデルが登場DDR4-3000対応で高コスパな「Ballistix Sport AT for ASUS TUF」

「Ballistix Sport AT for ASUS TUF」、新デザインのOCメモリだ。
MicronでDRAM Product Marketing ManagerをつとめるRyan Jacobson氏。

――:「Ballistix Sport AT for ASUS TUF」はASUSのTUFマザーボードとコラボレーションした「TUF Alliance」の製品ですね

[Jacobson氏]:そのとおりです。「TUF Alliance」は、すでに発表済みですからご存知かもしれませんが、簡単にしますとASUSの「TUF Gaming」マザーボードにマッチするデザインを採用したPCパーツ製品群になります。

我々を含め、メーカー各社がそれぞれに製品を展開していますが、組み合わせた際には統一されたデザインのPCが組み上げるコラボレーション企画です。

――:製品の位置付やラインナップについて教えてください。

[Jacobson氏]:Ballistixでは、グッド、ベター、ベストと3段階にグレードを分け、それぞれSport、Tactical、Eliteという3つのラインで製品を展開しています。

今回はエントリーゲーマー向けにグッドな選択を提供するSportラインのモデルです。容量は1モジュールあたり8GBと16GBの2種。動作クロックはDDR4-2666とDDR4-3000。メモリ1枚の単品、2枚セット、4枚セットを用意し、最大で合計64GBまでのパッケージを用意しています。

「TUF Alliance」に参加するメーカーは製品ジャンルを問わず増えつつある。
会場には「TUF Alliance」デザインのパーツで構成したPCも展示されていた。

――:「TUF Alliance」デザインの感触はいかがでしょうか。

[Jacobson氏]:なかなかよいデザインだと思います。それに、TUF Gamingマザーボードはラインナップも豊富ですので、多くの人に手に取ってもらうにはちょうどよいと思います。

――:ポジション的にはゲーミングモデルになると思うのですが、光りませんよね?

[Jacobson氏]:イルミネーション機能は備えていません。TUF Gamingマザーボードの想定ユーザーがエントリーゲーマーですので、このモデルに関しては、高速であることと、導入コストを抑えられる点を重視した製品になります。

もちろん遊び心も重要ですが、エントリーユーザーがまず求めるのは安定性、そして互換性ではないでしょうか。

――:DDR4-3000というスピードについてはいかがでしょうか。

[Jacobson氏]:これもエントリーゲーマーを想定したものです。先にも申し上げたとおり、コスト、安定性、互換性といった点で、現時点でもっとも最適なクロックではないでしょうか。

BallistixのラインナップとしてもSportラインがエントリーゲーマーをターゲットにしておりますが、そのSportラインの中ではもっとも高クロックの設定です。

もちろん、より上位にあたるTacticalやEliteではより高クロックを狙ったモデルになりますが、手軽に入手できる価格かつ高性能となると、DDR4-3000はバランスの良い性能だと思います。

――:今回はASUSの「TUF Gaming」とコラボしましたが、ASUSには「ROG」もありますし、ほかのマザーボードメーカーもそれぞれにゲーミングブランドを抱えています。それらとコラボレーションする予定はありますか

[Jacobson氏]:もちろん検討していますよ。メーカーを問わず、様々な可能性を模索しているところです。

デザインやコンセプトを統一するアプローチは非常に良いと思いますし、業界をあげて、より多くのベンダーが参加すればするほどアライアンスの魅力も増していくのではないでしょうか。

特定のブランドやモデルに合わせてデザインするので、ターゲットとするユーザーが限定される面もありますが、デザインを統一することで新たに注目してくれる新規ユーザーも生まれるので、メーカーとしてはうまく活用していきたいですね。

――:Ballistix Sport AT for ASUS TUFの発売日はいつをご予定していますか。

[Jacobson氏]:このモデルは全世界同時発売を予定しており、7月10日から販売の予定となっています。

――:間もなくですね。

[Jacobson氏]:是非ご期待ください。

3Dプリンタ対応でRGB LED搭載のDDR4メモリがついに製品化外装を自作できる「Ballistix Tactical Tracer RGB DDR4」

「Ballistix Tactical Tracer RGB DDR4」、画像は国内発表会時のもの。
ライトバー部分のCADデータは公開されており、3Dプリンタなどで好みのデザインの物を自作可能だ。

――:それではBallistix Tactical Tracer RGBに移りましょう。この製品は昨年紹介いただき、先日正式に発表されました。1年というのは長く感じましたが、その間、どのような作業をされていたのでしょうか。

[Jacobson氏]:主に互換性や安定性の面に時間を要しました。我々はRGB LEDの制御、マザーボードとのLED同期にケーブルを用いたくなかったのです。

イルミネーション部分を独立させ、ケーブルで接続するタイプにすれば短時間で製品化も可能ですが、それはスマートではありませんし、ユーザーが本当に求める物ではない製品になってしまいます。

また、LEDを搭載するPCパーツは、各社が異なる規格や制御方法用いて製品化しております。これをメモリバスに挿すだけで制御し、多くのマザーボードメーカーのモデルとの互換性を実現するというのはチャレンジングなことでした。

――:とくに難しかったのはどのような点でしょうか。

[Jacobson氏]:LEDのゾーン制御です。これを開発するのはとくに時間を要しました。

――:製品版での互換性はいかがでしょうか。

[Jacobson氏]:最初は弊社のRGB LED制御ユーティリティの「M.O.D」による対応になりますが、互換性のフィードバックが2~3週のうちにとれる見込みですので、そのデータが整い次第、各マザーボードメーカーのユーティリティで制御可能になる見込みです。

イルミネーション機能は現在はメーカーのユーティリティから制御可能。今後格マザーボードメーカーのユーティリティからも制御可能になる予定だ。
COMPUTEX時には特別にデザインしたカラーバーのモデルが展示されていた。

――:RGB LEDの搭載とともに、3Dデータの公表、ユーザー自身で3Dプリンタによるカバーの造形が可能なも製品の特徴ですね。

[Jacobson氏]:3Dプリンタによるカバーのデザインは、RGB LED搭載と並ぶこの製品のもう一つの特徴です。アメリカなどでは3Dプリンタがかなり普及してきており、手軽に出力できるようになってきました。

日本でも、出力を請け負うショップが増えてきたと聞いております。それにプリンタ本体の価格も当初と比べればかなり手頃なものになってきました。この「カスタマイズできる楽しみ方」を、より多くのユーザーに知っていただけたらと思います。

合わせて、LEDのカスタマイズの楽しさにも是非触れてみてもらいたいです。日本人はクリエイティビティが高いので、ユーザーがどのようにカスタムして使用するのか、反響を楽しみにしています。我々もあっと言わせるような、面白いカスタマイズを見せていただけたら嬉しいですね。

近い将来はDDR4-2933が標準化予定、Ryzenユーザーには高コスパメモリが人気次世代のDDR5が製品化される日は近い?

スタンダードなメモリは16GBモジュール/DDR4-2666対応が標準に、来年はDDR4-2933対応?
Ballistixメモリのデザインサンプル。

――:Ballistixメモリでより高いクロックのモデルをリリースする予定はありますか。

[Jacobson氏]:市場を見渡せばDDR4-3700から高クロックのものではDDR4-5000までリリースされる動きがあります。ただし、Micron、そしてBallistixの使命としては、パフォーマンスの高いメモリモジュールをより多くのユーザーに届けなくてはなりません。高クロックで動作するチップはボリュームがとれるようになった段階でリリースしていくことになるでしょう。

もちろん、そうした高クロックのモデルはEliteラインが担うことになります。現在、EliteならDDR4-3466まで開発しており、さらなる高クロックモデルも検討しているので、ご期待いただければと思います。

――:現在、AMD Ryzenが好調です。Ryzen向けにパフォーマンス・チューニングしたメモリモジュールの展開はお考えでしょうか。

[Jacobson氏]:AMD Ryzenでは互換性が課題となる場合があり、ここはAMDとも話し合いを進めています。当然、現在販売しているメモリはRyzenでも動作するようにしています。

AMDのCPUはコストパフォーマンス重視、ゲーミング重視といった傾向があるので、BallistixのSportラインのメモリがマッチしていると思います。いずれにせよ、AMDのマーケットシェアは伸びていますので、我々も注目しています。

――:CrucialとBallistixの現在の立ち位置を教えてください。

[Jacobson氏]:Crucialと、そこからゲーマー向けにブランチしたBallistixですが、ボリュームという点ではもちろんスタンダードメモリのCrucialのほうが多いです。それには容量やニーズなどの違いもあります。

一方、Ballistixはここ数年の活動として、eSportsのプロモーションも積極的に行なっており、ゲーミングコミュニティのなかではブランドの知名度も十分に高まってきていると実感しています。ゲーマーに関して言えば、CrucialのスタンダードなDDR4-2666よりも、BallistixのOCメモリを選んでいただけるようになってきているのではないでしょうか。

それに、ヒートシンクデザインにもこだわっています。Crucialメモリがスタンダードなら、Ballistixメモリは「エクセレントなクオリティ」です。

――:RGB LED搭載モデルはまだ1製品のみですが、今後拡大していく予定はありますか。

[Jacobson氏]:今回最初の製品をローンチできたことによって、いずれほかの製品でも応用されていくと思います。現時点で具体的な計画などはありませんが、この技術は応用して行ければと考えています。

CrucialといえばSSDも有名だが、今回のタイミングでは新製品の発表などは無かった。ただし、こちらも継続して力を入れているとのこと。

――:現在、DDR4-2666が標準化されていますが、今後、DDR4-2933対応品がスタンダードメモリとしてCrucialから販売される予定はあるのでしょうか?

[Jacobson氏]:現在、JEDECにDDR4-2933が標準化されるように働きかけています。おそらく、そう遠くないうちにDDR4-2933が標準化され登場すると思いますよ。その際、CrucialブランドのモデルからDDR4-2933対応メモリが発売されるはずです。

――:次世代のメモリとして考えている製品などはありますか。

[Jacobson氏]:具体的な計画を出せる物はありませんが、DDR5メモリは研究しています。技術的な課題などもありますが、夢のように叶わないというものではなく、遠くない未来に販売できる製品として完成させたいですね。また、多くのユーザーがDDR5メモリの性能を享受できるようにするのがメーカーの目標でもあります。

――:最後に日本のユーザーに向けてメッセージをいただけますか。

[Jacobson氏]:今後も、新規のゲーマーからハイエンドゲーマーまで、Ballistixでは幅広いゲームユーザーを対象に製品を展開していく予定です。常にプロダクトの拡大を図っておりますので、是非とも目的にあったグッド、ベター、ベストなメモリをお選びください。

[制作協力:マイクロン ジャパン株式会社]