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反撃の狼煙を上げるGIGABYTE、「ビデオカード部門とマザーボード部門の統合」で何が変わるのか?

日本法人も改革、新社長は「日本市場を熟知」 text by 石川 ひさよし

 COMPUTEXに合わせて、担当者に話をお伺いするこの企画。GIGABYTEには例年、ビデオカードチームのインタビューをしてきたが、今年は「GIGABYTEそのもの」に大きな動きがあった。

 それは、これまで「マザーボード部門」「ビデオカード部門」と分かれていたチームが1つに統合されたこと、そして、日本ギガバイトの新社長就任だ。

 新社長はともかく、「組織の統合って、何の意味があるんだろう?」と思う人もいると思うが、組織構造を変えることで、柔軟な動きが可能になったり、意思決定が迅速化した、というのはよくある話。GIGABYTEでも、統合の効果が早くも表れ、意思決定が迅速化、さらに「シェアも回復してきた」(同社)という。

 また、日本ギガバイトの新社長も大きなポイント。新社長は、10年ぶりに復帰した林宏宇氏で、日本市場を熟知し、本社とのパイプも太いことから「非常に動きやすくなってきた」(日本ギガバイト SHEN WEI氏)という。

 日本市場でのGIGABYTEは、正直言って、存在感が落ち気味だった。それも「代理店変更による余波で、大手量販店での取り扱いが一時なくなる」(2016年末)といった、製品以外での失点が目立ち、それだけに残念に思っている読者も多いと思う。

 しかし、改革された今のGIGABYTEは「ワールドワイドでも日本市場でも、とても動きやすくなり、また、ユーザーの声をとてもよく活かせる体制になってきた」(同氏)という。

 まさに「反攻の狼煙をあげた」といえるGIGABYTEに、今の状況と、今後さらに推していくというゲーミングブランド「AORUS」(オーラス)などの最新情報を聞いてみた。

 お話をお伺いしたのは、日本ギガバイト マーケティング担当のSHEN WEI氏とテクニカルマーケティング担当の渡辺 隆之氏だ。

マザーボードチームとビデオカードチームが統合、「すべてがスピーディーに」

日本ギガバイト マーケティング担当 SHEN WEI氏
日本ギガバイト テクニカルマーケティング担当 渡辺 隆之氏

――:統合の経緯を教えてください

[SHEN氏]:はい。今回の統合は、昨年GIGABYTE本社の副社長に就任した、Eddie Linの考えによるものです。

 彼はもともとビデオカードチームに所属していたのですが、マザーボードチームとビデオカードチームが分かれていることで、一体的な動きが難しかったこと、特に小規模なマーケットやリージョンでは悪影響が顕著に出ていることに問題意識を持っていました。

 そこで、副社長に就任した際に、これを融合、AORUSなども含め「チャネルソリューショングループ」にしたというわけです。

 これは重要なことです。ゲーミングマザーボードをアピールするにも、そこにはビデオカードが必要です。チームが分かれていた時はうまく連携ができていませんでしたが、今後は、イベントやキャンペーンなど、トータルの提案ができるようになりますし、製品にも反映されていくでしょう。

 また、日本でもそれに合わせた統合がありました。今まで別のオフィスだった、マザーボードチームとビデオカードチームが一つのオフィスに集まるようになり、業務レベルでも再分配を行いました。組織としてもシンプルになり、すべてがスピーディーに動くようになりました。

 そして、このタイミングで日本ギガバイトに新社長が就任したのですが、これも大きな変革です。

マザーボード部門とビデオカード部門が統合

「日本を熟知する社長」が日本ギガバイトに復帰

――:どういうことでしょうか?

[SHEN氏]:以前の日本ギガバイトは、社長が日本に常駐しておらず、実質上、GIGABYTE本社の指示で動いていたのですが、日本なりのニーズや商慣習を本社に理解してもらい、日本市場にあった動きをする、というのはなかなか厳しい状況でした。そしてその結果、本社の動きも、欧米や中国など、マーケットの大きなリージョンの意見が強く反映されていました。

 しかし今回、日本に常駐する新社長が就任したことで、これらが大きく変わりました。

 実は、新社長は、10年前に日本ギガバイトの社長をしていた林宏宇です。日本の商慣習やマーケット、ユーザーニーズなども熟知していますから、「こうしなきゃいけない」という所はしっかり押さえられますし、現場の声を反映し、本社と対話が出来るようになりました。本社からの指示に対しても日本市場に即した回答ができる状態になり、日本の発言力も増したと感じています。

 また、これらの結果、代理店や販売店からの信頼に繋がってきたとも感じています。


――:本社の新体制、日本ギガバイトの新社長に期待をよせている印象ですね。

[SHEN氏]:はい、我々は手ごたえを感じています。実は昨年末、日本市場でのGIGABYTEのマザーボードシェアは最悪時で4%にまで落ちていました。これは、我々にとってとてもつらい数字なのですが、様々な改革をした結果、既に10%近くまで回復しました。ビデオカードのシェアも、現在は5~8%ほどとなっています。我々はさらにシェアを回復させ、年内にはマザーボードのシェアで15%まで回復させたいと思っています。

――:シェアを回復していくためには何が必要だと考えていますか。

[SHEN氏]:現状の認識としては、流通の混乱で、店頭での取り扱いが減少。結果、「“欲しい”と思うユーザーさんがいても、製品を買いにくくさせてしまった」という要素がとても強いと感じています。

 ですから、まず、販売店さんに信頼していただき、安心してGIGABYTE製品を扱ってもらえるような流通体制を確立、ユーザーのみなさまにとって「GIGABYTE製品が欲しくなっても、すぐに買いやすい」状況にするところが第一歩と考えています。

 また、当然ですが、日本の意見を反映した製品やマーケティングもとても重要です。これについても、新体制のもと、しっかりやっていきます。

――:代理店や販売チャネルに変更はありますか。

[SHEN氏]:現在、3社の代理店と取り引きをしていますがこれに変わりはありません。

ゲーミングブランド「AORUS」は統合でさらに強化、「一貫性のあるAORUS」へ

――:統合が実際の製品になにか影響を与えましたか。

[SHEN氏]:統合されてからの期間がまだ短いこともあり、製品レベルでの変化はありません。しかし今後は、様々な変化が出てくるのではないかと思っています。

 製品そのものではないですが、これまでは「マザーボードとビデオカードを組み合わせて魅力を伝える」といったことも簡単ではなかったのですが、今はそうしたことも容易にできるようになりました。

 また、現在、マザーボードは「AORUS Gaming」、ビデオカードは「AORUS」といったように、微妙に表現が変わっていたりするのですが、これも、次のチップセットのあたりから統一していく方向ですし、LED制御ユーティリティの「RGB FUSION」もAORUSブランドのものとして改善していく予定です。少し時間がかかるかもしれませんが、「一貫性のあるAORUS」として集約していく予定です。

RGB FUSIONも“AORUS”として集約予定

――:マザーボードやビデオカード以外のAORUS製品についてはいかがでしょうか。

[SHEN氏]:グローバルで見れば、AORUSブランドの認知度は上がってきました。CPUクーラーや電源、ケース、キーボード&マウスやヘッドセット、そしてチェア。今年はSSDとメモリが追加されました。キーボード&マウスも拡充し、ディスプレイも投入する予定です。AORUSのコンセプトは「ゲーミングのトータルソリューション」ですから、PC DIYに関するあらゆる製品、より多くの製品で展開していきたいです。

 AORUSの周辺機器については、日本市場では少し出遅れていますが、今後信頼関係を回復していくなかで、AORUSブランドも浸透させていきたいと考えています。日本市場でもSSDとメモリは投入予定があり、電源はタイミングを見て投入していきたいです。


ユニークなアイデアを盛り込んだAORUSブランドのメモリも投入予定
GIGABYTEブランドのSSDも投入


国内展開もされているAORUSのキーボードやマウス、ゲーミングチェア

――:AORUSをよりいっそう浸透させるためには何が必要とお考えですか。


マザーボードとビデオカードに加え、CPUクーラーやメモリもRGB FUSIONで制御

[SHEN氏]:おかげさまでブラック×オレンジ、ワンポイントでホワイトというイメージカラーはかっこいいというフィードバックもいただいております。

 一方で現行のAORUS製品のカラーボックスは、単調ではないかという考えもあります。AORUSロゴがメインで、型番違いのほかは分かりにくい印象です。このカラーボックスのバリエーションを増やしていきたい考えはあります。ただ、これもデザインチームに考えがあってのことでして、いきなりバリエーションを増やすとAORUSブランド側が定着しなくなる恐れもあります。まずはAORUSブランドを定着させて、そしてバリエーションを増やしていきたいと思います。

 AORUSブランドとして考えているのは、RGB FUSIONで周辺機器を含めてコントロールできること。また、それがユニークで個性的なこと。トータルでの魅せ方に注力しています。それの浸透が目標です。それが実現できたら、次のステップを目指していきたいです。

マザーの電源回路に再び脚光、進化していく「Ultra Durable」

ここからは渡辺氏に製品レベルでの今後を伺った
X399 AORUS XTREMEのヒートシンクは確かにビデオカード上のヒートシンクのように薄いフィンを高密度に用いている

――:ここからは製品レベルで今のトレンドについてお聞きしていきます。GIGABYTEは以前から「Ultra Durable」を掲げてきましたが、最近はそこをプッシュする声が小さくなったような気がします。

[渡辺氏]:実は省電力CPUの登場で一時期減少傾向だったマザーボードのフェーズ数が今になって復活傾向にあります。ふたたび高品質部品や高信頼回路の重要性も高まってくるわけです。同時に、VRMを積極的に冷やしていく必要性も高まりました。

 今年のCOMPUTEXで展示したX399 AORUS XTREMEには「スタック・フィン・テクノロジー」を採用しました。ビデオカードの放熱板のように、薄いフィンを重ねることで放熱面積を増しており、冷却効率に優れたデザインです。Ultra Durableに関わるところで、MOSFETなど部品レベルでの高耐久化は積極的に取り入れて参ります。

――:Thunderbolt 3の扱いはどうなりますか。

[渡辺氏]:以前までは積極的にマザーボード上にチップを実装することでThunderbolt 3を実現していましたが、最近の製品では拡張カード「GC-ALPINE RIDGE」で対応する形に改めました。GC-ALPINE RIDGEなら、AORUSシリーズのマザーボードはすべて対応しております。

 また、外付けGPUボックスも、先日バリエーションを増やしましたとおり積極的に展開しています。こちらの製品に関しましては、ワコムの液晶ペンタブレットとの動作確認も積極的に進めております。

Thunderbolt 3はMacとの接続やワコムの液晶ペンタブレットとの接続など、積極的に展開していくがデスクトップマザーボードではカードによる提供へ

――:今回GPUの発表がありませんでしたが、ビデオカードは今後どのように進化していくのでしょうか。

[渡辺氏]:昨今、高解像度で高リフレッシュレートの液晶ディスプレイが登場してきました。こうしたデータ転送量の多いディスプレイとの接続は、HDMIでは帯域が足りずDisplayPortが要求されます。DisplayPortを今後重視していくと思います。

 DisplayPort over USB Type-Cについては、現時点でなにも計画はありません。端子が小さいことはメリットですが、デスクトップPCとしては抜けやすいことがデメリットに挙げられます。クーラーのデザイン面では、もっと光らせたいと思っています。

GIGABYTE復活の鍵はユーザーを大切にすること

――:インタビューの最後に、日本のユーザーに向けたメッセージをいただけますか。

[渡辺氏]:今回のマザーボードチームとビデオカードチームの融合は、「何がユーザーにとってよいのか?」という問いに対するアクションでもあります。これからもユーザーのことを大事に、物事を進めていきたいと思っております。そしてAORUS。ゲーミングブランドである「AORUS」を、今後もっと魅力的なものとする施策も考えています。新体制となったGIGABYTEに、ぜひご期待ください。

――:ありがとうございました

[制作協力:GIGABYTE]