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80PLUSの違いは性能に出るのか?GAMDIASの650W電源3種類を比較してみた

安価モデルでもRGB LEDの美しさが存分に楽しめる、ゲーミング電源「ASTRAPE」 text by 長畑 利博

 ゲーム周辺機器ブランドとしても認知度を高めている「GAMDIAS(ガンディアス)」。6月にはPC用電源や水冷クーラーなども投入され、PC関連製品にも力を入れだしている新興ブランドだ。

 そんなGAMDIASの製品の中から、今回は電源の「ASTRAPE」シリーズのレビューをお届けしよう。GAMDIASの電源は、下位モデルも含め全てがイルミネーション機能を備えており、コストを抑えつつ鮮やかなゲーミングPCを組みたいユーザーには注目すべきモデルもラインナップされている。

 また、80PLUSのランクが異なる複数の650W電源のテストを行うことができたので、80PLUSの違いや作り込みの違いで性能に差が出るのかといった部分も見ていきたい。

2012年から活動を開始したGAMDIASLEDライティングに力を注ぐゲーミングブランド

ブランドの成り立ち。

 GAMDIASのことを知らないユーザーもいると思われるので、製品紹介に入る前に簡単に解説しておこう。

 GAMDIASは、PC関連製品などを販売する台湾企業「KWorld Computer」のゲーミングブランドだ。ブランド名はギリシャ神話からとられており、製品も神話からとられたものが多い。KWorldと聞くと、古い自作ユーザーなら、テレビチューナーやキャプチャカードなどの製品を覚えている人もいるだろう。

 GAMDIASとしての活動は、2012年にゲーミングマウスを発表したのが始まりで、現在ではゲーム向けマウスやキーボードだけでなく、7.1chサラウンドヘッドフォンやゲーミングチェアなど、取り扱い製品は多岐に及ぶ。今後はゲーミングチェアやPCデスクなどの展開も予定されている。

 いずれの製品もLEDによるライティングに力を入れた仕様になっており、これが同社の製品の特徴にもなっている。

製品ラインナップ、ケースからゲーミングチェアまで多岐にわたる。

3種類ある650Wモデルをチェック、ASTRAPEシリーズの実力を見る

今回検証を行った650Wモデルの3種類。

 それでは電源ユニットの紹介に入ろう。同社の電源は大きく分けると「CYCLOPS」と「ASTRAPE」の2シリーズがある。ASTRAPEはさらにP1、M1、E1の3種類があり、容量や80PLUS認証のランク違いで系6製品がラインナップされている。

 中でも売れ筋である650Wでは3製品あり、最も安価な80PLUS Standardモデルの「ASTRAPE M1-650W」、中堅どころの80PLUS Bronze認証の「ASTRAPE M1-650B」、シリーズ上位の80PLUS Gold認証の「ASTRAPE P1-650G」が用意されている。今回はこの650Wモデル3製品について検証を行ってみた。

変換効率ケーブル実売価格(税込)
ASTRAPE M1-650W80PLUS Standard直付け7,000円前後
ASTRAPE M1-650B80PLUS Bronze直付け8,800円前後
ASTRAPE P1-650G80PLUS Goldフルプラグイン16,000円前後

ゲーミングPCのデコレーションに強い!26種類の発光パターンが楽しめるLEDライティング機能、静音モード切替スイッチも搭載

ASTRAPE M1/ASTRAPE P1シリーズともに、合計で26パターンの発光パターンが楽しめる。
背面。上からP1-650G、M1-650BとM1-650W。機能は同一だがP1-650Gのみ配列が異なる。メイン電源スイッチのほか、プッシュするたびにファンの色が変わるRGBLightingボタンとファン速度の切り替えができるSilent Modeボタンが用意されている。

 同社の電源に共通する特徴は、LEDライティング機能の豊富さだ。

 自作PCパーツ界では、LEDで光らせるライトアップPCというジャンルが定着している。ASTRAPEシリーズはその点が特に強化されており、ネオンフレックスRGBという機能が搭載されている。これは、電源の背面側に用意されたファンクションスイッチを押すとファンの光や音が切り替わっていくという仕組み。

 単純に色が変わるだけではなく、複数の色を使ったグラデーションが用意されており、合計で26パターンものライティングが楽しめるのが特徴だ。といっても言葉では色が変わるだけか、と思うかもしれない。しかし、実際に動くところを見れば一目瞭然。動画で撮影してみたので見て欲しい。

 もう一つの特徴としてはファンモードの切り換えが行える点。背面ボタンを切り換えることにより、冷却性能重視の通常モードとファンの回転数を落として静音性を高めるSilent Modeが用意されている。

 これらの機能は下位モデルから上位モデルまで全てに搭載されており、下位モデルだからギミックを楽しめないといったことは無い。付加価値の部分は高級機のみに搭載されがちだが、エントリーモデルでも楽しめるようになっているのがGAMDIAS電源の特徴と言える。

ASTRAPEシリーズの発光パターンテスト

下位の2モデルはほぼ共通仕様、スタンダードなASTRAPE M1

ASTRAPE M1シリーズ。今回取り上げるモデルは80PLUS Standardと80PLUS Bronzeの違いはあるが、見た目などは同じだ。

 では、それぞれの製品を個別に紹介して行こう。

 ASTRAPE M1-650WとASTRAPE M1-650Bについては、大きさや外観についてはほぼ同一で幅150×奥行き140×高さ86mmとなっている。電源ユニットとして奥行きがはかなり短いことから取り付けるケースを選ばない。コンパクトなケースでライトアップPCを作成したい場合に向いている。

 この二つについては、ATX24ピンやPCI-E8ピン、SATAなどのケーブル類は本体から直接生えているスタンダードな構造となっている。3製品のケーブル本数などを表にまとめてみたが、ASTRAPE M1-650WとASTRAPE M1-650Bについてはケーブル本数についても同一となっている。

M1-650WM1-650BP1-650W-G
メインパワー(20+4 Pin)コネクタ1個1個1個
EPS(4+4 Pin)コネクタ1個1個2個
PCI-Express(6+2 Pin)コネクタ2個2個4個
SATAコネクタ5個5個9個
ペリフェラルコネクタ2個2個3個
フロッピー(4 Pin)コネクタ1個1個1個
上がASTRAPE M1-650W、下がASTRAPE M1-650B。外観はラベル以外の部分はほぼ共通で、奥行き140mmとコンパクトなので、スモールサイズPCにも適している。
一般的な電源と異なり本体の冷却穴はパンチングで加工されている。本体のサイド部分も同様に穴が開けられている。このあたりは冷却性能よりはLEDが点灯しているときのインパクトを狙ったものかもしれない。
背面。一般的な電源よりもボタン数が多いのが特徴。RGBLightingボタンはプッシュするたびに本体に内蔵されたファンの色が変わっていく。Silent Modeボタンはファン回転数を切り換えるボタン。静音電源として使う場合はこのサイレントモードを選択する。
ケーブルは直付けタイプ。ATX24ピンケーブルは約500mm、SATA電源ケーブルはSATAだけのものとペリフェラルやFDD混在の2本に分かれている。FDDコネクタも変換コネクタを使うタイプではなく独立した端子が用意されている。PCI-Express補助電源ケーブルが2個用意されておりマルチGPU環境も構築可能だ。

 それでは内部を開けて構造をチェックしてみよう。記事では分解しているが、個人での電源分解はメーカーの保証が無くなること、感電などのリスクが存在するので注意したい。

 ASTRAPE M1-650WとASTRAPE M1-650Bは、外観と同様に内部についてもほぼ類似している。コンデンサについても一次平滑回路側はTEAPO製、二次平滑回路側には安価なJunFu製のものが多用されている点は同一。性能における違いについてはベンチマークテストで検証していきたい。

使われている基板のレイアウトはほぼ同一の内容となっている
ASTRAPE M1-650Bの内部。取り付けられている角度の関係でコンデンサの型番などが読み取れないが、一次平滑回路側のTEAPO製コンデンサのみ違うものが使われている可能性がある
同じくASTRAPE M1-650Wの内部。使用されているコンデンサは一次平滑回路側はTEAPO製、二次平滑回路側には安価なJunFu製
ファンのサイズは120mm角タイプが搭載されている。両製品ともにPY-1225H12Sが使用されている。

上位モデルはやはり別物、設計も採用パーツ一気にグレードが上がるASTRAPE P1

ASTRAPE P1

 80PLUS Gold認証の「ASTRAPE P1-650G」については、ほかの2種類の製品とは大きく異なる仕様になっている。

 一見して分かるのはプラグインコネクタを採用していることだ。各ケーブルの種類については前述のケーブル表に記載しているのでそちらを参考にしていただきたい。一見して分かるようにほかの2機種と同容量の製品でありながら、コネクタ数も多めになっている。とくにPCI-Express補助電源は4系統用意されているため、容量さえ足りればという条件付きではあるが、マルチGPU環境の構築も可能となっている。

 本体サイズは幅150×奥行き163×高さ86mmと奥行きが約23mmほど大きくなっている。ケーブル類は曲げやすく配線のしやすいフラットタイプが採用され、狭いケースでも配線のしやすい用に配慮されている。

 内部構造についてもほかの2製品は電解コンデンサ中心であったのに対し、一次平滑回路側にニチコン製の105℃品が使われているほか、二次平滑回路側に固体コンデンサが多用されているなど明確なグレードの差が存在している。

必要に応じてコネクタの追加や不要なコネクタが取り外しのできるプラグインコネクタ方式を採用。ブランドロゴが入っている点もほかと異なる
ケーブルは取り回しの良いフラットケーブルになっている。各ケーブルの長さはATX24ピンケーブルでは650mm、Serial ATAでは多少の差はあるが約750mmほどの長さになっている。
上がP1-650Gで下がM1-650W。ほかの2製品と異なり奥行きが長くなっている。
ファンサイズもほかの製品が120mmなのに対して135mmと大型化ものが搭載されている。ファンの製品名はBDM14025S
内部。ほかの2製品とは明らかに違うレイアウト。一次側のコンデンサはニチコン製105℃品が使われている。
二次側には固体コンデンサが多用されている。固体コンデンサはパナソニック製のものが多いようだ。

製品の質は80PLUSのグレード通り、電圧変化や消費電力、静音性をベンチマークで比べてみた

 最後にベンチマークテストを行って性能をチェックしてみた。

 テスト内容は僚誌DOS/V POWER REPORTで行っているものに準じている。出力電圧変動テストでは、マザーボードのATX24ピン、EPS12V、PCI Express 6ピンの各コネクタに三和電気計器製のデジタルマルチメータリスト「PC20」を装着。+12Vの電圧変化を計測している。グラフについては赤いch1がATX24の出力、青いch2がPCI-E6ピン、茶色のCh3がEPS12Vの変化である。

 システム負荷をかけるソフトに関しては電力変化の大きなビデオカード側に負荷がかかるようにベンチマークソフト3DMarkを利用した。バッチプログラムを使用し、Fire Strike Ultra、SkyDiverなどの各種テストを連続して動かしている。

 静音性についてはサウンドレベルメーター「SL-1370」を電源のファン上方15cmの位置に置き測定、消費電力については詳細な測定の行なえる「Watts Up? PRO power meter」を利用し、起動からベンチマーク負荷時、ベンチマーク終了10分放置後までの最大、最小の数値を記載している。

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-8700K(ベース3.70 GHz/TB4.70GHz)
マザーボード:ASUS ROG STRIX Z370-E GAMING(Intel Z370)
メモリ:TEAM NIGHT HAWK RGB DDR4 TF2D416G3000HC16CDC01(DDR4-3000MHz 8GB×2)
ビデオカード:ASUSTeK ROG-STRIX-GTX1070TI-A8G-GAMING(NVIDIA GeForce GTX 1070 Ti)
SSD:CFD販売 CSSD-S6T240NMGL(250GB)
OS:Microsoft Windows 10 Pro 64bit
暗騒音:33.8db(A)
室温:31℃

 まずはASTRAPE M1-650WとASTRAPE M1-650Bの2製品の電圧グラフから見てみよう。内部が類似していることもあり、電圧の変化も似た傾向にある。

 M1-650Wから見てみると、無負荷時の電圧はATX規格の中心である12V前後になっている。システム負荷が掛かると赤いラインのATX24ピンと青いラインのPCI Express 8ピンの電圧が下がるようで、ATX24ピン、PCI EXpress 8ピンともに11.2V近くまで低下している。80PLUS認証を正式に取得しているモデルなので、製品として一定以上の品質はあると思われるが、ATX電源の規格では+12Vラインの許容誤差は±5%とされているので、気になる部分ではある。80PLUS Standardの電源に今回のような上位グレードのパーツを組み合わせることは無いと思うが、ハイエンドパーツと組み合わせて常時高負荷をかけるような用途にはお勧めしない。

 M1-650BはATX24ピン、PCI EXpress 8ピンの電圧の下がり方がやや緩いものの、傾向としては非常に似通っている。

ASTRAPE M1-650Wの電圧変化グラフ
ASTRAPE M1-650Bの電圧変化グラフ

 続いてASTRAPE P1-650Gを見てみよう。

 無負荷時の電圧がATX規格の中心である12V前後である点は同じ。こちらも高負荷時にATX24ピンとPCI Express 8ピンの電圧が低下する傾向にはあるが、下限11.6Vと変化幅も少なく安定度も高い。さすが上位機種といったところだ。

ASTRAPE P1-650Gの電圧変化グラフ

 ベンチマーク時の消費電力と動作音を見てみよう。

 消費電力については80PLUS認証に準じた内容になっている。とはいえ、M1-650WとM1-650Bの2製品の消費電力については内部構造も似ていることもあり、ほぼ誤差の範疇と言える。

 80PLUS Goldに準拠したP1-650Gについてはやはり電力消費が少なくなっている。

システム全体の消費電力
高負荷時アイドル時
ASTRAPE M1-650W295W39.5W
ASTRAPE M1-650B293W38.1W
ASTRAPE P1-650G287W32.8W

 次は動作音について触れていきたい。

 前述したように、今回紹介している3製品ではファン速度の切り替えができるSilent Modeボタンが用意されている。M1-650WとM1-650Bは動作音に関してもほぼ同じ傾向だ。Silent ModeをOFFにした状態だと動作音はほぼ39db(A)になる。冷却性能を重視するならこのモードがオススメだ。

 なお、高負荷時には若干ノイズが増えるが、実質的には回転数は固定されていると考えて良いだろう。Silent Modeにすると36db(A)と大幅に動作音が減り、一般的な静音電源と並ぶレベルになっている。

 P1-650Gは大口径ファンを搭載していることもあり、Silent Modeにした状態では高負荷時でも35.4db(A)、低負荷時では35.3db(A)とやや動作音が抑えられているSilent ModeOFF時はこちらもほぼ固定回転で高負荷時37.8db(A)とほかの2機種よりも動作音は控えめだ。

動作音(Silent Mode)動作音(Silent Mode OFF)
高負荷時アイドル時高負荷時アイドル時
ASTRAPE M1-650W36.1db(A)35.9db(A)38.9db(A)38.7db(A)
ASTRAPE M1-650B36.6db(A)35.9db(A)39db(A)38.8db(A)
ASTRAPE P1-650G35.4db(A)35.3db(A)37.8db(A)37.6db(A)

多才なLEDライティングはかなりの魅力!コスパ派にも品質派にもこらえられる製品をラインナップ

 GAMDIAS電源の魅力はなんといっても豊富な色を選択できるLEDライティング機能に尽きる。

 動画を見てもらうと分かるように、切り換えても切り換えても別の発光パターンが出てくるLEDライティングのインパクトはとても大きい。ハイエンド構成には不向きだが、LEDライティングをできるだけ安価に楽しみたいというのであれば、80PLUS StandardモデルであるM1-650Wがオススメだ。

 テストデータや本体内部を見ても、80PLUS StandardのM1-650Wと80PLUS BronzeモデルのM1-650Bの差は少なく、割り切ってコストパフォーマンスを優先するならば十分に有りだ。

 とはいえ、電源ユニットとしての完成度としては、やはり最上位機種であるP1-650Gが優れている。ほかの2製品と比べると価格は高いものの、LEDライティングを備え、安定した製品が欲しいというのであればP1-650Gを購入することをお勧めしたい。

※(7/29)電源検証の節の品質の説明に関し、誤解を招く表記があったため訂正いたしました。

[制作協力:GAMDIAS]