特集、その他
Z390世代の“神”マザー、MSI「MEG Z390 GODLIKE」を試す
最高のCPUには、最高のマザーを捧げるべきだ!! text by 加藤勝明
2018年10月19日 22:00
第9世代Coreプロセッサの最上位「Core i9-9900K」は8コア16スレッド、ターボブースト時に最大5GHz動作、一つ下の「Core i7-9700K」は8コア8スレッドで最大4.9GHz動作と、Intel製CPUとしては初めての8コアのメインストリームCPU。“今は買い換えの時期ではない”を連呼してきた人も、そろそろ年貢の納め時だろう。そして、第9世代Coreプロセッサで組むなら、マザーはぜひともZ390搭載モデルにしたいところ。従来のZ370マザーも使えるが、Z390ではUSB 3.1 Gen2の統合やIntel純正無線LAN機能(CNVi)が追加され、より使い勝手がよくなっている。
しかしUSB 3.1や無線LANはマザーボードの根幹の機能ではない。さまざまな理由で実装しないマザーもあるし、使わないユーザーもいるだろう。それなのにZ390を推す理由は、高負荷でも安定動作させるというマザーの本質にあるのだ。
前述のとおり第9世代Coreプロセッサの上位2モデルは物理8コアで、しかも高クロック動作。TDPはどちらも95Wとされているが、Intelの言うTDPはあくまでも目安であるのはご存じのとおり。TDP 95WのCPUでも、思い切り負荷をかければCPUによって消費電力が全然違う。8コアCPUを高クロックで全力運転することを考えたら、回路設計のしっかりしたマザーが欲しくなる。
そこで注目したいのがMSIの最新フラグシップマザー「MEG Z390 GODLIKE」だ。今期からMSI製マザーには「MEG」や「MPG」などといった製品のセグメントを表わす接頭辞が名称に付加されているが、MEGとは“Designed withMaximumperformance andExcellentcooling toGuidingthe gaming market”の略だとMSIは言う。すなわち、性能と冷却に力点を置き、ゲーミング市場を牽引する製品セグメント、ということなのだ。
だがこのマザー、実売価格なんと74,000円前後! Core i9-9900Kよりも高価なマザーなのだ。だがこんな(失礼!)マザーを出すからには、しっかりとした理由があるのだ。今回はこのMEG Z390 GODLIKEをじっくりと観察してみたい。
圧巻の16+2フェーズ電源
MEG Z390 GODLIKEの最大の武器は、Z390マザーとしては破格の16+2フェーズ電源と、それをガッツリ冷却するヒートシンクの重厚さだ。前述のとおりCore i9-9900Kのような8コアCPUで増える電力需要に対抗するため、各メーカーともVRM部を以前よりも強化する方向で進化させている。少ないものでも8フェーズ、上位モデルだと12~14フェーズ程度のものが多いが、このMEG Z390 GODLIKEは16+2フェーズ、合計18フェーズ構成。MSI独自の設計技術“Core Boost”のおかげで高速で歪みのない電流をCPUへ正確に伝達することが可能になる。
CPUの電源まわりを堪能したら、今度はDDR4-4300(OC)に対応するメモリスロットの脇に設置された「DYNAMIC DASHBOARD」もチェックだ。これは256×64ドットのOLEDパネルで、起動時にエラーを出したパーツ(CPU/メモリ/ビデオカード)の表示のほかに、Windows起動後はCPU温度やファン回転数など、さまざまな情報をグラフィカルに表示できる。自分で作ったGIFアニメも表示できるので、MOD PCのワンポイントにするのもよいだろう。
フラグシップならではの充実装備
ではマザーとしての使い勝手を観察しておこう。LGA1151の最上位CPUより高価なフラグシップモデルだけに、これでもかとばかりにインターフェースや機能が盛り込まれている。
インターフェース系で注目はUSBポートの多さ。Z390でUSB 3.1 Gen2が6ポート分使えるようになったが、これを背面に4ポート分回し、さらに前面に2ポート分引き出せる。さらにASMediaのUSB 3.0コントローラを2基配置し、背面に2ポート(ASM1042)、前面ピンヘッダに4ポート(ASM1074)、チップセットのUSB 2.0もピンヘッダで4ポート。載せられるものは載せておけという執念が感じられる。
USBがチップセットの機能を十全に活かしているのに対し、ネットワークまわりはあえて使わずにいる。MEG Z390 GODLIKEのネットワーク機能は有線がKiller E2500を使ったギガビットLAN、無線LANはKiller E1550を利用しWi-Fi5(802.11ac)対応となる。
Z390世代のマザーボードでは、一部メーカーが10ギガビットイーサネットや5ギガビットイーサネットなどのより高速な有線LANを搭載する動きもみられたが、MSIはあえてKiller系3系統で固めており、有線はギガビットイーサネットのままであるのがおもしろい。通常のギガビットイーサネット以上の有線LANはハブやケーブルの規格も揃える必要があるため一般ユーザーが恩恵を得にくいというのもあるが、MEG Z390 GODLIKEではネットワークの伝送経路を複数持つことで、ゲームやストリーミングの通信帯域が互いのジャマにならないようにするのが目的だ。
また、MEG Z390 GODLIKEの無線LANは“Killer xTend”と呼ばれるモードを有効にすることで、それ自体を無線LANの中継ポイントとして使うことができる。つまりスマホなどの無線LANをMEG Z390 GODLIKEの無線LANにつなぎ、MEG Z390 GODLIKEの有線LANからルーターへデータを流すことが可能になる。
ストレージまわりもガッツリ濃い目の味付けだ。M.2スロットは3系統あるが、すべてヒートシンク(M.2 Shield Frozr)付き。これ自体はそれほどめずらしくもないが、ポイント同社の旧世代マザーに採用されていたM.2 Shieldは薄い金属板+サーマルパッドだったものを、MEG Z390 GODLIKEでは肉厚なヒートシンクとサーマルパッドにグレードアップ。さらにサーマルパッドをSSDの下にも敷くことで、SSDの表と裏から熱を奪う周到な仕掛けだ。
試しに、IntelのSSD 600p(SSDPEKKW512G7X1)を起動ドライブとして使用し、
(1) SSD 600pにM.2 Shield Frozrを装着して運用
(2) 本マザー付属の拡張カード「M.2 Xpander-Z」にSSD 600pだけを装着し、廉価版マザーにおけるM.2スロットに近い状態(=M.2 SSDヒートシンクなしの状態)を再現して運用
という2パターンの運用法で、SSDの温度に差が出るか検証してみた。
普及初期の製品であるSSD 600pは、大きなファイルを書き込もうとすると激しく熱を発するため、適切な熱対策をしていない場合、最悪の場合HDDよりも速度が落ちることさえあり得る。今回は大小さまざまなデータの入った容量40GBのフォルダをSSD 600p上で複製し、その際の温度変化を「HWiNFO」で追跡した。CPUはCore i7-8700K、OSはWindows 10 Pro 64bit版を使用している。
肉厚のヒートシンクの効果は大きい。普通にSSDを装着した状態を模した環境では負荷をかけて1分程度で70℃まで上昇してしまうが、M.2 Shield Frozrを装着するとほとんど温度は変化しない。2分少々の負荷でも温度は39℃以上になることはなかった。SSDの発熱が気になる人、あるいはM.2 SSDで大容量のRAIDアレイを組みたい人は、MEG Z390 GODLIKEはかなり魅力的と言える。
サウンドと配信にも強い
オンボードサウンドの質がよい、というのは今やゲーミングマザーの必要条件と言ってよいだろう。オーディオグレードのコンデンサやデジタルとアナログを分離した回路、高S/Nを誇るサウンドチップやアンプ搭載はもはやあって当たり前だ。
そんな中、MEG Z390 GODLIKEはオンボードサウンドをハイレゾ対応に仕上げてきた。マザーボードとしては世界初のハイレゾ認証取得製品とのことで、背面のみならずPCケース前面用のオーディオ出力にもハイレゾ対応のオーディオプロセッサを配置するほか、ESS製のスタジオ級オーディオDACなどを搭載。さらにバックパネルには600Ω対応の標準Phoneジャックも備える。これらの装備は1ランク下のモデル(MEG Z390 ACE)では一部カットされているので、オンボードサウンドでもよい音を聞きたいならMEG Z390 GODLIKEを狙おう。
付属品も豪華なこのMEG Z390 GODLIKEだが、このほかにも「Streaming Boost」なるPCI Express x1接続の拡張カードが同梱されている。これは1080p@60fps対応のHDMIキャプチャカードで、USB 2.0接続のキャプチャIC「EJ511」が使われている。
市販のキャプチャカードのように高性能なハードウェアエンコーダは入っていないのでCPU頼みとなるが、Core i9-9900Kのようなコア数の多いCPUにはうってつけのオプションだ。Windows 10なら「OBS Studio」などのストリーミング配信用ツールからは映像キャプチャデバイスとして認識される。ちょっと家庭用ゲーム機などのキャプチャをしたいが、市販のキャプチャユニットを買うほどではないなら使ってみるとよいだろう。
頭から尾まで濃厚な味わい。LEDや監視機能をチェック
MSIのハイエンドマザーと言えば、RGB LEDに対する熱いこだわりを避けては通れないが、本製品でとくに注目したいのはバックパネルカバーの小窓部分だ。ここにはLEDテープが仕込まれているのだが、小窓のハーフミラー効果が加わることで一段とハデな演出となる。この部分はもちろんチップセットクーラーにいたるまで基板上のRGB LEDはアドレサブルなのもグッド。光らせ方に関しては、現時点で流通しているマザーの中で一番ミステリアスな味わいがある。
もちろんPCの温度監視や簡易OC用のツールも標準で提供される。第9世代Coreを定格でゆるゆると使うもよし、性能のギリギリまで攻めるもよし。使い手を選ばずに最高のパフォーマンスが期待できる製品に仕上がっている。
まとめ:値段に見合う満足度。最強マザーで最強CPUを迎えたい人に
以上が、Z390チップセット搭載製品でもっともリッチなマザー、MEG Z390 GODLIKEの全貌だ。Core Xシリーズならまだしも、メインストリームのCoreシリーズに高価なマザーは必要か? と思うかもしれない。だが、味わいはご覧のとおり極めて濃厚で重厚。細部にいたるまでよく練られた製品といった印象だ。とくに8コアCPUを高負荷でガンガン回したいなら、このマザーはうってつけ。どのように伸ばしていっても楽しめる1枚と言えるだろう。
[制作協力:MSI]