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2.5G LANでゲームが有利になる?ASRockのゲーミングマザー「Z390 Phantom Gaming 6」をテスト
2.5GbE対応LANチップ「Dragon RTL8125AG」搭載、12フェーズ電源で上位CPUも安定稼働 text by 坂本はじめ
2018年12月25日 00:01
ASRockは、Intel Z390 チップセット搭載した最新世代のマザーボード製品から、「Phantom Gaming」を冠したゲーミングマザーボードを投入した。
「Phantom Gaming」シリーズはビデオカードが先行して投入されていたが、マザーボードは今期から順次新モデルが投入されていくかたちになる。
今回は、そのPhantom Gaming シリーズから、有線LANの高速規格「2.5GbE」に対応した上位モデル「Z390 Phantom Gaming 6」のレビューをお届けする。
特徴的な機能を有するモデルだが、実売価格は税込約2.5万円とメインストリーム価格帯のモデルだ。手堅いマザーボードとして仕上がっているのかも合わせて見ていきたい。
ASRockのゲーミングブランド「Phantom Gaming」、マザーボードも順次拡充
マザーボード本体の紹介に移る前に、Z390 Phantom Gaming 6が属するASRockのゲーミングブランド「Phantom Gaming シリーズ」について紹介しよう。
Phantom Gaming シリーズは、ASRockがビデオカード市場へ参入する際に立ち上げたゲーミングブランドだ。マザーボードとしてPhantom Gamingを冠するのは、Z390 Phantom Gaming 6を含むIntel Z390 チップセット搭載製品群が初となり、順次ラインナップの拡充が図られるという。
Phantom Gaming シリーズのマザーボードでは、ビデオカードと同様ダークグレーを基調としたカラーリングを採用しており、ブランドを揃えることで統一感のあるPCを構築できる。
また、ZOTAC製ビデオカードを搭載した場合、起動時にPhantom GamingとZOTAC GAMINGのコラボレーションロゴが表示される限定BIOSをリリースするなど、他社のゲーミングブランドとの組み合わせにも積極的なようだ。
12フェーズ電源/2.GbE搭載の上位マザー「Z390 Phantom Gaming 6」
ASRockのZ390 Phantom Gaming 6は、Intel Z390 チップセットを搭載したLGA1151対応ATXマザーボード。
基板サイズはスタンダードな305mm×244mmで、第8世代と第9世代のCore プロセッサに対応している。
Z390 Phantom Gamingシリーズとしては、最上位のZ390 Phantom Gaming 9に次ぐ位置づけの上位モデルであり、Z390 Phantom Gaming 9と同等の「Phantom Gaming 2.5 Gb/s LAN」や「12フェーズのデジタルPWM電源回路」を備えている。
ネットワーク周りや電源周りのデザインが高級仕様となっている点はこのモデルのポイントと言える。
拡張スロットは、CPU直結のPCIe x16スロット×2基と、チップセット接続のPCIe x16スロット×1基、PCIe x1スロット×3基。いずれもPCIe 3.0に対応しており、PCIe x16スロットは全て金属補強されている。また、CPU直結のPCIe x16スロットは、「x16+x0」または「x8+x8」での動作に対応している。
ストレージ接続用のインターフェイスには、8基の6Gbps SATAと、2基のM.2スロットを搭載。M.2スロットはいずれもZ390 チップセットに接続されており、PCIe 3.0 x4または6Gbps SATAでの接続に対応する。
マザーボードの各部にはASRockのLEDイルミネーション機能「Polychrome RGB」に対応したRGB LEDを搭載。発光パターンやカラーを任意に変更できる他、Polychrome RGB認証を取得したデバイスと発光を同期させることができる。
独自ユーティリティでネットワーク帯域を割り振る「Phantom Gaming 2.5 Gb/s LAN」
ASRock Z390 Phantom Gaming 6では、2.5GbE向けのユーティリティとして、ネットワークの帯域幅を優先度に応じてアプリに割り振る「Phantom Gaming 2.5 Gb/s LAN」が用意されている。
Phantom Gaming 2.5 Gb/s LANでは、3つの基本グループ(Game、Strem、Browser)と1~6段階の優先度設定に基づき、自動的にネットワーク帯域を割り振る。これらの設定はアプリケーション単位で行い、各アプリケーションのグループと優先度の設定はユーザーが変更できる。
なお、この機能はPhantom Gaming 2.5 Gb/s LAN専用機能で、Intelチップの1GbE LANでは使用できない。
ネットワーク帯域の割り振りを各アプリの優先度に応じて実行する「Auto」モードの他、対応するグループのアプリケーションを最優先にするモード「Game」、「Strem」、「Browser」、「UserDefine」などが用意されている。
UserDefineは、ユーザーが指定したアプリをUserDefineのグループに分類する機能。また、指定したアプリケーションのネットワークアクセスを遮断するBLOCK機能も用意されている。
基本的にはゲームに対してネットワークの帯域を割り当てることで、バックグラウンドのネットワークトラフィックに起因するゲーム中の「引っかかり」を抑制するためのユーティリティだが、大容量のダウンロードを実行しながらの動画視聴やブラウジング、ゲームプレイのライブ配信などでも効果が期待できる。
フォートナイトで2.5GbEのパフォーマンスをチェック、1Gbps環境でもPingは有利に
ASRockによれば、Z390 Phantom Gaming 6に搭載された2.5GbEは1Gbps接続環境においても、ゲームなどで多用される小パケット通信で高いパフォーマンスを発揮するとしている。
実際にどの程度の効果があるのか、バトルロワイヤルゲーム「フォートナイト」において、2.5GbE(Dragon RTL8125AG)利用時と1GbE(Intel I219V)利用時のPingを比較してみた。
なお、2.5GbE(Dragon RTL8125AG)と1GbE(Intel I219V)でテストの条件を揃えるため、前説で紹介したユーティリティソフトはオフの状態でテストしている。
今回の測定においては、ほぼ同じシーンにおいて1GbEが12msであったのに対し、2.5GbEは9msと若干高速な結果が得られた。実際のゲーム中におけるPingは1~数十msの間で絶え間なく変化するが、数値を見ている限りでは若干2.5GbEの方が小さい値で推移しているようだった。
メーカーによると、2.5GbEに採用しているDragon RTL8125AGチップは、より小さいパケットの処理能力に優れるとのことで、ランダムアクセスなどに強い特性があるという。ゲームでの性能差はこうした部分が影響していると思われる。
Webサイトにアクセスする際のレスポンスも2.5GbEで改善される?ページが表示されるまでの時間を比較
ゲームでは2.5GbE(Dragon RTL8125AG)が若干優位となったが、Webサイトへのアクセスでも差が出るのか、2.5GbE(Dragon RTL8125AG)と1GbE(Intel I219V)で比較してみた。ルーターを介してアクセスするので、1Gbps接続環境でのテストになる。
アクセスするのはZ390 Phantom Gaming 6の製品ページで、これが完全に表示されるまでの時間を計測してみた。なお、ゲームと同じくユーティリティソフトはオフの同条件で比較している。
以下がZ390 Phantom Gaming 6の製品ページへ10回アクセスした際の結果だ。回線状況などにより若干上下したりはするが、おおむね2.5GbE(Dragon RTL8125AG)の方が高速なようだ。
わずかではあるが、Webサイトへのアクセス速度でも2.5GbE(Dragon RTL8125AG)の方が高性能となり、ゲーム以外にも有効であることが確認できた。
最高296MB/s、NASとの接続で2.5GbEのパフォーマンスをチェック
2.5GbEは対応機器さえ揃えれば、1GbEの2.5倍の帯域幅を実現することが可能だ。そこで、2.5GbEでの接続が可能なNASを用いて、2.5GbEと1GbEのパフォーマンス差を測定してみることにした。
今回用意したNASは「Synology DiskStation DS1618+」。これにIntel製の10GbE NIC「Intel X550-T2」を追加することで2.5GbE接続を可能とした。ストレージにはCrucial MX500シリーズの1TB SSD「CT1000MX500SSD1」を利用した。
Z390 Phantom Gaming 6とNASの10GbEを直結して実行したCrystalDiskMarkの実行結果を見ると、2.5GbEがシーケンシャルアクセスで290MB/s前後の転送速度を記録している。これは、1Gbpsの118MB/s前後に対して約2.5倍であり、ほぼ規格の通りに差がついた。
参考までに、1Gbps対応ルーターを経由してNASにアクセスした際のパフォーマンスについても確認してみた。
どちらも同じ1Gbpsという帯域幅で接続されることになるため、ここでは2.5GbEも1GbEも大きな差がついていないように見えるが、2.5GbEは「4KiB Q1T1」のリードにおいて、1GbEの17.74MB/sを約27.6%上回る22.64MB/sを記録している。
マザーボード側のNIC以外が同一の条件においてより多くのIOアクセスを処理できたというこの結果は、小パケット通信で強いとされる2.5GbEの性能が発揮されたものと言えるだろう。
“2.5GbE”という新たな武器を備えたZ390世代のゲーミングマザーボード
ゲーミングモデル「Phantom Gaming」を冠するZ390 Phantom Gaming 6は、2.5GbE LANという新たな武器を備えた新世代のゲーミングマザーボードだ。
数多くのゲームで2.5GbE LANの方がゲームで有利となるのであれば、今後ゲーミングマザーボードに2.5GbE LANを搭載する動きがトレンドとなる可能性もある。もちろん、ネットワークの速度はLANチップ以外の要素も大きく影響するものではあるが、ゲーマーは2.5GbEを注視しておいても良いかもしれない。
LAN以外の基本的な機能や装備も充実しており、12フェーズのデジタルPWM電源回路は、世界最高のゲーム用CPUとうたわれる8コアCPU「Core i9-9900K」を安心して使うことができる。
高性能なハイエンドGPUを使い、本格来なゲーミングPCを構築したいと望むユーザーにとって、Z390 Phantom Gaming 6は大変魅力的なマザーボードだ。特に、第9世代Coreプロセッサーの8コアモデルとGeForce RTX 20シリーズを使った自作を考えているユーザーなら、ぜひとも候補に加えて欲しい。
[制作協力:ASRock]