プロダクトレビュー・ショーケース

サイキョーのサブモニター兼ゲーミングキーボード、サンコー「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」を試す

モバイルモニター愛好家納得の便利な2 in 1ガジェット text by 竹内 亮介

サンコー「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」(型番:KWSD25CBK)

 小型で持ち運べる「モバイルモニター」を便利に使っている人は多いようだ。名前にもあるとおり「モバイル」用途は当然として、サイズ感を活かした各種サーバーPCの監視モニター、SNSやメッセンジャーアプリなど更新頻度の高いウィンドウを常時表示しておくサブモニターなど、さまざまな使い方がある。

 そしてこのモバイルモニターにキーボードが付いてたら、もっと便利になるんじゃないの? ということは昔から思っていた。そしてこれを実際に、しかもかなりのハイレベルでやってのけた製品が、今回紹介するサンコーの「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」である(型番:KWSD25CBK)。これは、10型のモバイルモニターに、本格的なメカニカルキーボードを組み合わせた「モニター&キーボード」だ。今回はこの変わり種ガジェットの使い勝手を検証していこう。

重量感のあるキーボードが液晶モニター部分をしっかり支える

 「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」は、10型のモバイル液晶モニターに、本格的なメカニカルタイプのキーボードを一体化した機器である。キーボード部分は底板も厚く重量感があり、液晶モニター部分をしっかり支えてくれる。

重さのあるキーボード部分で液晶モニター部分を支える構造だ

 また本機とPCはUSB 3.2 Gen 1対応ケーブル1本で接続するだけでよいため、キーボードと液晶モニターにそれぞれケーブルを接続したり、ポートを用意する必要がない。マウス機能は液晶モニター部分が備えるタッチ操作で補えるので、PCの入出力機能を一手に引き受けられる便利なガジェットだ。価格は直販サイトで69,800円。

【主なスペック】
パネルサイズ10型
解像度1,920x720ドット
表示色数1,670万色
視野角水平85°/垂直85°
コントラスト比1,200:1
リフレッシュレート60Hz
キー数84キー
サイズ(折りたたみ時)幅320×奥行140×高さ40mm
重さ約1.5kg

 発売当初は早々に売り切れてしまい、検証機材が入手できない状態だった。今回は、再入荷したモデルで検証している。届いた箱から出してみると、しっかりとした造作でがたつく部分もなく、高級感があるものだった。底面には薄いゴム足が四隅にあり、約1.5kgとそれなりに重いこともあって、机の上でずれたり滑ったりすることはなく、安定して設置および使用できた。

キーボードの裏には滑り止めのゴム足を装備
液晶モニター部分を閉じるとコンパクトキーボードにカバーを付けたような感じになる

 画面サイズは製品名通り10インチだが、解像度は1,920x720ドットとちょっと横長のタイプだ。液晶パネルは10点マルチタッチ操作に対応している。左右の枠はそれなりにあるが、特に気になるレベルではない。モニター部分のヒンジはかなりしっかりしており、揺れたり後ろに倒れてしまうこともなかった。

液晶モニター部分は大きく開き、ヒンジは固く安定している

 キーボードはキーキャップが着脱できる青軸スイッチを採用しており、LEDで美しいイルミネーションが楽しめるなど、昨今のゲーミングキーボードのスタイル。スッと深めに押し込むと「チッ」とクリック音が鳴る、青軸スイッチらしい気持ちのよいキーボードだった。個人的には一番好きなタイプだ。

 キー配列は6段の84キータイプ、おかしな配置になっているキーはなく、数字キーとファンクションキーが独立しているので操作に迷うことはない。普段からテンキーレスのコンパクトキーボードを使っているユーザーなら、特に違和感なく使えるだろう。ただ、英語配列なので、日本語配列を使っているユーザーは慣れが必要な場面もある。

キーボードは英語配列の84キータイプ。キーピッチは実測値で約19mmと広めなので快適にタイプできる
キーボードの底面にLEDが組み込まれており、さまざまなイルミネーションが楽しめる
キーキャップを外して交換できる

ドライバのインストールは必要なし、サインイン時も利用可能

 ここからは実際にPCと接続し、液晶モニター部分の使い勝手を見ていこう。背面にはType-Cコネクターを2基搭載する。一つはPCと接続してディスプレイの表示やキーボードを利用できるようにするポートだ。もう一つは、USBケーブル1本だと供給電力が足りないときの補助的な電源供給コネクターだ。

今回の検証環境では、付属のUSBケーブル1本でPCと接続するだけで動作した
背面には2基のType-Cコネクターを装備する。向かって右のキーボードのアイコンがあるポートがPCと接続するポート、左側が電源供給用のポート
左側面にはモニターの輝度を制御するシーソースイッチ、電源ボタン、そしてマウスなどを接続できるUSBポートがある

 今回は、ACEMAGICの「F3A」、MINISFORUMの「UM890 Pro」という2台のミニPCで試用してみたが、どちらのPCでも付属ケーブル1本の接続だけで、タッチ操作も含めて問題なく利用できた。デバイスドライバのインストールは必要なく、自動で最適なものがインストールされる。

 付属ケーブルは、一方がType-C、もう一方がType-Aのコネクターとなっており、Type-Cは「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」に、Type-AはPCに接続する。つまり、映像入力はDisplayPort Alt Mode経由ではなく、昔ながらのUSB接続のディスプレイアダプターを利用しているのだ。

デバイスマネージャを見ると、ディスプレイアダプターの欄に「Racer-Tech」というメーカーのUSBディスプレイアダプターが登録されていた

 この仕組みはモバイルモニターの黎明期(20年くらい前だろうか)によく見かけたタイプ。そのため、当時の記憶や経験から「画面描画が遅いのでは?」とも思ったのだが、実際に使ってみると描画が遅れるような印象は特にない。ミニPCでプレイできる比較的軽めの3Dゲームやコンシューマーゲーム機から移植されたレトロな2Dゲームは違和感なく遊べた。実際に3DMarkでScoreを計測しても、HDMIなどで一般的な液晶モニターに接続したときと変わらなかった。

左が「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」に接続した時、右が一般的な液晶モニターに接続した時の3DMarkのFire StrikeのScoreで、大きな違いはなかった。テストに使用したPCはUM890 Pro

 ちょっと不思議だったのでメーカーに確認してみると、本機ではPC側のGPUでレンダリングした画面を圧縮・転送・解凍して表示しているため、描画遅延や画質劣化が起こる可能性はある。しかしCPUの処理性能が十分に高い場合は、このような劣化が少なくなると考えられるとのことだった。こうしたコメントから推察すると、ミドルレンジ以上のミニPCやデスクトップPCなら、本機を快適に使えると考えてよさそうだ。

 「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」だけを接続した状態でも、サインイン待機画面が表示されて普通にデスクトップ画面を表示できるため、冒頭でも述べたサーバーPCの監視用としても問題なく利用できる。ただ、ディスプレイの設定画面を呼び出しても、解像度の変更、テキストやアイコンの拡大・縮小機能は利用できなかった。

解像度やスケーリングの設定はグレーアウトしており、変更できない
「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」のみを接続した状態でも、Windows 11の起動やサインインは可能

 アイコンのサイズは実測値で約5mm四方、テキストサイズも筆者のような老眼ユーザーからすると小さめに感じるため、スケーリングが使えないのは少々痛い。とはいえ、一般的な液晶モニターと違ってパネル自体が近い位置に来るため、アプリ側で多少文字サイズを大きくしてやれば対応は可能と言ってよいだろう。

作業環境の使い勝手を大きく高めてくれるガジェット

 今回取り上げた「モニター兼キーボード」というタイプのガジェットは、実はAmazon.co.jpやAliExpressではいくつか販売されており、本機より安いものもある。ただそうしたガジェットは「ノートPCの中身がないタイプ」が多く、キーボードはメンブレンタイプ、外装もプラスチッキーないかにも安そうな仕上げなど、こだわりを感じないものが目立つ。

 しかしこの「10インチモニター搭載メカニカルキーボード」は、本格的なゲーミングキーボードを組み合わせることで使い勝手を大きく向上し、またタッチ機能を利用できるようにすることでポインティングデバイスも不要。“刺さるユーザー”を確実に鷲掴みにしてきている感がある。

 もちろん、日常的にこれだけを使って作業しろと言われるとキツイ。しかし青軸キーボードの快適さとともに「手元に置くサブモニター」の利便性を考えれば、メインの液晶モニターを補完する役割を担うガジェットとして、かなり魅力的と感じる。冒頭で紹介したサブPCやサーバーPCの監視用モニター的な使い方だけだと、ちょっともったいないなと思ったくらいだ。

 今後の要望としては、Type-CポートがDisplayPort Alt Modeに対応してくれるとうれしい。そうすれば解像度の変更、文字やアイコンのスケーリングが可能になるはずなので、筆者のような老眼ユーザーにもっと優しくなるのではなかろうか。