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“最小”クラス GeForce RTX 2070搭載カードは性能も侮れない!

速度、温度、動作音を検証 text by 加藤勝明

小型PCや旧環境での乗せ換えに最適

 “AMP Extreme”のように、極めて高いパフォーマンスを目指すビデオカードは、冷却をガッチリ強化するため、製品が大型化してしまう。だが大型化すれば物理的制約も増えてくる。小型のPCケースだと、フレームやドライブベイなどに干渉しやすくなるし、肉厚なクーラーだと拡張スロットの使用に制約が出てくる。今主流のフロントにベイのないPCケースや拡張性の高いATXマザーを使っていれば、干渉の心配は少なくなるが、小型ケースや旧世代のATXケースに組み込む場合は、カードのサイズが問題になることが多い。

 こういう場合は「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 Mini」がベストチョイスとなる。カード長は211mmと、GeForce RTX 20シリーズ搭載カードとしては最小クラス。クーラーの厚みも2スロット占有なので、他パーツとの干渉は同クラスのカードとしては最少クラスだろう。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 Mini
基板はクーラー部よりさらに短く、実にコンパクトな仕上げ。消費電力180WのGPUなので補助電源は8ピン1系統。電源回路のフェーズ数も8フェーズとシンプルだ

 低ランクGPUであれば、Mini-ITXマザーと同じ全長170mmクラスのものもあるが、最新世代のGPUではこのカードがもっとも凝縮度が高い。クロック設定もOC仕様になっており、小型化のために性能が大幅に犠牲にされているわけでもない。サイズも性能も妥協したくない人に最適な1枚だ。

RTX 2070 MiniをPCケース内に組み込んでみた。Mini-ITXマザーと組み合わせても、後ろに40mm程度張り出すだけですむので、奥行きのないPCケースに組み込みやすい。AMP Extremeを組み込むには、ケース内に十分なスペースが必要だ
RTX 2070 AMP Extremeと比較すると、RTX 2070 Miniのカード長の短さがよくわかる。このコンパクトさが最大の武器だ

小さくても性能に妥協なし!

 ここではGeForce RTX 2070 FEと対比させつつ性能を検証してみよう。GeForce RTX 2070は「フォートナイト」や「レインボーシックス シージ」などのeスポーツ性の強いゲームでのコスパが抜群だ。ブーストクロックは1,620MHzで、クーラーが小さいためFEよりもやや抑制気味のOCセッティング。そのため、テスト結果はGeForce RTX 2070 FEがわずかに上回る。しかしどのゲームでもフルHDで高fpsが叩き出し、描画のとくに軽いレインボーシックス シージでは4Kでも平均100fps以上出すなど、実効上は極めて高レベル。レイトレーシングを効かせた「Battlefield V」でもフルHDでなら最高画質設定で平均60fps以上は出せるなど、基本性能は十分だ。

 また、クーラーがコンパクトになった関係で、高負荷時の動作音はFEに比べごくわずかに大きくなっている。とはいえノイズレベルは非常に低く、むしろCPUクーラーやケースファンのノイズにかき消されるレベルだ。小型カードのわりには高負荷時でGPU温度は70℃未満と低い。PCケースのエアフローはしっかり確保したいところだが、小型PCケースに組み込んでも安心して使えるだろう。

GPU温度の推移
RTX 2070 MiniはFEよりもクーラーが小さいものの、温度は3℃ほど低い
GPUクロックの推移
クーラーが小さい分GPUクロックのブーストは抑えめ
動作音比較
クーラーが小さい分ファン回転数が上がるため、FEよりも動作音はわずかに大きい
3DMarkのテスト結果
FEのほうがブースト時のクロックが伸びるためスコアも伸びるが、その差はわずか
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(1,920×1,080ドット)
フルHDなら高速液晶の利用が視野に入るレベル。GTX 1080と同水準だ
「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(3,840×2,160ドット)
このまま4Kで遊ぶのは少々キツいが、画質を落とせば改善可能
「フォートナイト」(1,920×1,080ドット)
負荷が十分軽いものではFEと大差ない性能が出る
「フォートナイト」(3,840×2,160ドット)
「レインボーシックス シージ」(1,920×1,080ドット)
描画がきわめて軽いので、高リフレッシュレート液晶の性能をフルに活かせる
「レインボーシックス シージ」(3,840×2,160ドット)
全長211mmのカードでも、4Kで非常に快適にプレイできる

【検証環境】

CPU:Intel Core i9-9900K(3.6GHz)
マザーボード:GIGA-BYTE Z390 AORUS MASTER(rev. 1.0)(Intel Z390)
メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※PC4-21300で動作)
システムSSD:Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
データSSD:Micron Crucial MX300 CT1050MX300SSD4/JP[M.2(Serial ATA 3.0)、1.05TB]
電源:SilverStone Strider Platinum ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
GPU温度の推移:Battlefield Vを15分プレイした際の温度変化をHWiNFOで記録、動作音測定距離:ビデオカード直上、マザーボードから40cm、PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS:マップ“Erangel”におけるリプレイデータを再生し、その際のフレームレートをOCATで測定、フォートナイト:リプレイデータを再生し、その際のフレームレートをOCATで測定、レインボーシックス シージ:内蔵ベンチマーク機能を利用して測定

生まれ変わった専用ユーティリティ活用、ZOTAC GAMINGシリーズの性能をさらに引き出せ!

 ZOTAC GAMINGのビデオカードには、便利な専用ユーティリティも用意されている。ここでは、そんなユーティリティについても触れておこう。

 GeForce RTX 20シリーズの性能を限界まで絞り出したいなら、(自己責任となるが)GPUのさらなるオーバークロックに挑戦してみるのも一手だ。ZOTAC製カードなら、デザインが一新された同社製ユーティリティ「ZOTAC GAMING FIRESTORM」を使うのが一番だ。FIRESTORMではGPUやビデオメモリのOCのほか、ファン回転数の調整など、これ一つでパフォーマンスの微調整や細かな挙動の制御を行うことができる。さらにGPU温度のチェックやファン回転数の監視、そして一部モデルに搭載されているRGB LEDのカスタマイズもできるので、OCをしない人でもインストールしておくべきツールと言えるだろう。

デザインが一新された「FIRESTORM」。画面左端の中段に設けられたのは新機能「OC SCANNER」ボタンで、ワンクリックで自動OC機能が実行できる。手動でOC設定を行う際は、画面右側のつまみをそれぞれ調整。OC設定を上げるときは少しずつ、ベンチやゲームで動作確認を必ず行なうようにしよう

 OCを行なうにはGPUやメモリの設定を手動で上げる方法が一般的だが、設定項目が多く、不用意な値を入れると即座にフリーズする危険性もあることは覚悟しておこう。一気に上げるのではなく、少しずつ上げてはAPPLYボタンで設定をカードに転送し、ゲームなどが正しく描画されているか、とくに画面上にゴミが表示されるなどの描画不良が発生しないかをチェックしよう。発生したらクロックは下げるのが得策だ。

 また、クロックを高い値に設定するほどGPU温度や消費電力が上昇する。とくに前者は動作の安定性にも関係するため、必要に応じてファンの回転数を上げる調整を施すとよい。ベストの設定を見付け出したら、ウィンドウ下部の「Save」ボタンでプロファイルに登録するのも忘れてはならない。こうしないと再起動で消えてしまうのだ。

[制作協力:ZOTAC]