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ノマドな現役エンジニアが、モバイル液晶を使ってみたら「最高」だった
「On-Lap 1305H」仕事場レビュー text by 津村 彰
2019年1月29日 06:05
いきなりだが、「モバイルディスプレイ、最高かよ!」というのが、ノマドワーカーでネットワークエンジニアな筆者が、「On-Lap 1305H」を現場で使ってみた感想だ。
そう、筆者はネットワークエンジニアとして、クライアントの社内ネットワークの整備や、情報システム部門の支援を行なっている。例えば「オフィスのLANの調子が悪い」といった細かなトラブル対応から、企業の情報システム部門に対するアドバイスなど、仕事の内容は多岐にわたる。エンジニアとしてだけでなく、時にはセールスやサポートといった役割を兼ねることもある。
普段使っているのはThinkPad X230。1,366×768ドットの12.5インチ液晶にIntel Core i5を搭載する、コンパクトなサブノートPC。移動して仕事をするノマドな自分にとってこのサイズはメリットでもあるが、ネットワークエンジニアとしてはデメリットでもある。とにかく単純に画面が狭い。多数のウィンドウを開いて作業する必要がある自分のような職業においては、画面の狭さは最大の弱点だ。
その弱点を補うため、せめてデュアルディスプレイにしたい。しかしノマドでは簡単にディスプレイを増設することはかなわない。そこで試してみたのが「On-Lap 1305H」というわけ。持ち運びにも適したこのモバイルディスプレイで、筆者のネットワークエンジニアとしての仕事がどう最高な環境になったのか、紹介しよう。
ノマドには最適、でも画面が狭いサブノートPC……
ネットワークエンジニアってPCでどんなことをしているの?と思う人もいるかもしれない。筆者の場合は、Webブラウザーやターミナルソフト(主にTeraTerm、Poderosa)、Windowsのコマンドプロンプトなどを使って、遠隔に設置されているルーターやネットワークスイッチ等、さまざまな機器の設定作業や動作検証を行なったりしている。また、企業に対する営業提案や講演などでPowerPointのスライドを作成してプレゼンすることもある。当然ながら、どの場面でも複数のアプリケーションを同時に使用するため、12.5インチのThinkPad X230の1画面だけではさすがに窮屈だ。
所属する会社のオフィス内で作業できる仕事ももちろんあるので、その時は据え置きディスプレイでマルチディスプレイ化している。が、クライアントとの打ち合わせも多く、かなりの割合で外出しているため、カフェ、ファミレス、コンビニのイートインスペース、コワーキングスペースといった場所で作業をすることも頻繁にある。そうすると、オフィスでのマルチディスプレイ環境とのギャップもあって、狭い画面で作業することの厳しさが一段と身に染みる。というわけで、そのギャップを少しでも埋められることを期待して「On-Lap 1305H」を導入してみたのだ。
ちなみに、これまではiPadをPCのサブディスプレイにする「Duet Display」というアプリを使用してなんとかしのぐこともあった。
しかし、iPadをサブディスプレイとして使うとバッテリー消費が激しく、外出先での長時間作業に向かない。専用のアプリケーション(ドライバ)をPCにインストールする必要もあって、サブディスプレイとして他の人に緊急的に貸し出すことも気軽にはできなかった。On-Lapは果たしてどうなのだろうか。
結果として、「最高かよ!」という結論になったわけだが、その理由を順に紹介していきたい。
ポイントその1:ノマドにうれしいかさばらないサイズ
今回導入した「On-Lap 1305H」はThinkPadより大きい13.3インチ。フルHD解像度(1,920×1,080ドット)なので精細さもノートPC本体を超えている。それでいて筐体の縦横サイズは320×203mmと、A4サイズとほぼ同等で、ThinkPadともほとんど同じ大きさ。厚み9mm、重量685gというかさばらない薄さと軽さで、PC、On-Lap、書類を1つのカバンで一緒に持ち歩きやすいのがうれしい。
On-Lapを接続する際は、電力供給と映像出力を兼ねた二又の専用ケーブル1本で済むのもありがたい。PCのACアダプターとともに束ねてカバンに入れられるし、外出先で実際にOn-Lapを使用するときにケーブルが占めるスペースを最小限に抑えられるのは、ノマドワーカーにとってはわりと重要なポイントだ。おかげで出先で落ち着いて「腰を据えた作業」が可能になる。
ポイントその2:低消費電力でノートPCの稼働時間低下は最小限
モバイルで重要なのはバッテリーの持ちだが、「モバイル液晶」であるOn-Lapは、消費電力が少ないのもメリットだ。「二又のケーブル1本を接続するだけで済む」と説明したとおり、ノートPCのUSBポートから電力供給して使うことが多いのだが、ノートPCをバッテリーで動作させた状態でも、On-Lapの有無で稼働時間が大幅に変わる感じはなかった。
試しに手持ちの簡易テスターで測ったところ、動作中でも電流は500mA以下。もちろんモバイルバッテリーでも十分に稼働するので、電源が確保できない場所でも全く問題なくいつも通り作業できる。
ポイントその3:縦置きでも使いやすい設計
また、On-Lap 1305Hでは、付属のカバーを兼ねたスタンドを調節することで縦置きでも使える。ケーブル接続後、Windowsのディスプレイ設定で「縦(反対向き)」を選ぶだけ。スタンドのマグネットの固定位置を変えると、ディスプレイの角度を段階的に変えられるのも便利な点だ。
というのも、出先のテーブルや椅子の高さ(座る場所)はまちまちで、それによって視点が上下するため、ディスプレイの角度を変えられないと正面から見られないことになる。場所によって使いやすい角度に設定できるのはノマドには必須の機能と言えるだろう。
縦置きにすると、WordやPDFなどのA4文書も扱いやすい。
一般的にネットワーク機器などのマニュアル類は縦向きA4サイズのPDFで配布されていて、13.3インチのOn-Lap 1305Hは縦置きするとちょうどこのサイズに近いのだ。1ページをほとんど原寸で見渡すことができるので内容をすぐに把握できるし、Word形式で納品ドキュメントを作成する時、文書の全体的な体裁を確認しながら作成できるのも大きなメリットとなっている。
ポイントその4:PowerPointの効率が大幅にアップ!
筆者は営業でプレゼンしたり、講演を行なったりすることもあって、必然的にPowerPointでスライドを作成する機会も多い。
こうしたスライド作成の際は、PowerPointだけでなく、スライドに貼り付ける画像素材のフォルダを表示し、参考情報を確認するためにWebブラウザーも常に起動している。筆者の場合、ノートPCの横画面でPowerPointを表示しておき、On-Lapを縦置きにして上下2分割、Webブラウザーと素材保存先のフォルダを表示させる、というのが基本スタイルになった。場合によってはPhotoshopなどの写真加工用のツールも同時に使用する。
On-Lap導入前、出先でどうしてもスライド作成しなければならなかった時は、(シングルディスプレイなので)ウィンドウの切り替えが頻繁になり、その煩雑な操作で集中力が途切れてしまうことも少なくなかったが、On-Lapがあれば「スライド作成用」と「素材表示用」で画面を使い分けることができ、ウィンドウの切り替えが激減して作業のの効率が大きく上がった。ウィンドウを半自動的にサイズ調整してくれるWindows 10のスナップ機能と組み合わせることで、ウィンドウ操作の煩わしさはさらに軽減。作業のスピードアップはもちろんのこと、モチベーション維持にも貢献してくれる。
ポイントその5:コードレビューがどこにいても可能に
開発などを行なう際、エンジニア1人だけでは作業の量や質にどうしても限界がある。そういう場合、ペアとなるエンジニアがいると心強い。自分では見逃しがちなちょっとした間違いを発見できたり、時間的に余裕のないときに作業を分担してフォローしてくれることもある。これらを「レビュー作業」もしくは「ペアプログラミング」と呼んでいる。
筆者のようなリモートワーク中心のノマドワーカーの場合、そんなエンジニアが常に隣にいるとは限らない。意思疎通の効率を考えると、相手エンジニアのところに出向いた方が確実だった。が、On-Lapでどんな場所でもマルチディスプレイ環境を構築できるようになったことで、その状況は大きく変わった。ボイスチャットとOn-Lapの画面を駆使することで、直接会わなくともお互いの画面を共有でき、リモートにいても隣で一緒に作業をするようにレビューが可能になる。
よくとる方法は、「サブディスプレイとなるOn-Lapに相手側の画面を表示し、メインとなるノートPCの画面で自身の作業を行なう」というもの。相手にも自分のメインディスプレイの内容を共有することで、相互に作業内容を確認しながらレビューを進めることができる。遠隔でも互いにフォローでき、物理的な場所や時間の制約が取り払われたのは一番の収穫だ。
ポイントその6:用途に応じて最適な接続方法で使える
また、On-Lapの場合、ノートPCのHDMIポートや(変換コネクタを使用して)DisplayPortから映像出力するのが基本となるが、USB-HDMI変換アダプターを使用して接続することも可能だ。このUSB-HDMI変換アダプターは、いわば「USB接続の外付けグラフィックカード」で、ノートPCでは2つ以上の外部ディスプレイを接続したいときに役に立つ。ただし描画処理をCPUで行なうことから、画面が広くなるほどCPU負荷も増えてしまうのが注意したいところだ。
USB-HDMI変換アダプターと複数台のOn-Lapを用意してトリプルディスプレイ以上にするのは魅力的だし、コンパクトなOn-Lapなら2枚持ち歩くのもそれほど苦にならなそうだ。でも、それによってCPU負荷がどれくらい増えるのかは気になる。そこで、DisplayPortから出力した場合と、USB-HDMI変換アダプター(DL-3000)を使用した場合の両方で、フルHD動画の全画面再生時にどれくらいCPU負荷があるのかを計測してみたのが以下のグラフだ。
DisplayPortから出力した場合は、CPU使用率が平均で17%程度であったのに対し、USB-HDMI変換アダプター使用時は同41%と、大きな差がついた。USB-HDMI変換アダプターだと、大きな画面書き換えが発生していなくてもCPU負荷が高い。バッテリーの消費量が増える可能性もあり、電源を確保できない場所では少し不安だが、プレゼンテーションやサーバーの監視など、画面書き換えの少ない用途であれば実用性は高いだろう。
サーバーメンテナンスにも活用できる、現場利用に即したモバイルディスプレイ
今回は筆者の主なワークスタイルであるノマド環境での用途に絞って紹介したが、低消費電力でUSBによる電力供給で動作することから、サーバーメンテナンスにも都合が良さそうだ。
近頃は企業の社内サーバーに自作PCやMac mini、Raspberry Piといったマシンが使用されていることも多く、その場合はHDMI入力できるOn-Lapのようなディスプレイが接続しやすいからだ。
データーセンターのサーバーを扱うこともあるが、それらはアナログVGA接続が基本で、サーバールームに事前にディスプレイが用意されていることが多い。ただ、データセンターで稼働していた自作PCサーバーをメンテナンスした際は、HDMIしか出力が無く、対応ディスプレイが用意できなかった。そのときは、急きょアナログVGA端子のあるビデオカードを増設することで難を逃れたが、On-Lapがあればそんな手間は不要だっただろう。
On-Lap 1305Hは、シンプルなモバイルディスプレイだが、ノマドでの使いやすさも含め、そういった「実際の現場での利用」を想定して設計されたのではないかと強く感じるアイテムだ。必要となるスタンド・ケーブルもあらかじめセットになっていて、価格(実売3万円前後)も、セットアップにかかる時間的なコストも低い。外出先でサブディスプレイとしてすぐに使い始められ、オフィスのマルチディスプレイ環境と変わらない高精細な画面で作業できる。
その上、低消費電力で、ノートPCのバッテリー動作でも稼働時間が削られないから、仕事の“質”が損なわれることもない。ノマドなエンジニアが出先でマルチディスプレイ環境を手軽に構築し、作業の質も上げたいなら、是非とも、モバイルディスプレイの導入を検討してみてほしい。
[制作協力:GeChic]