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奇をてらわない手堅さ、MSI製ゲーミングデバイスの入門モデルを試してみた
MSIのPCパーツとはイルミネーション連動も可能 text by 石川ひさよし
2019年3月6日 06:05
自作PCに詳しければ、MSIには“GAMINGなメーカー”というイメージがあるのではないだろうか。ビデオカード、マザーボード、そしてゲーミングノート/デスクトップ/液晶ディスプレイと、ゲーミングにフォーカスした幅広い製品を取り扱っている。
今回はそのMSI製品の中から、ゲーミング仕様のマウスとキーボード、ヘッドセットの3点を紹介する。
中でもマウスの「CLUTCH GM50」と「VIGOR GK60」は、スタンダードなデザインながら作りがしっかりしたモデルなので、手堅いゲーミングデバイスを探しているユーザーは是非チェックして欲しい。
PCパーツともイルミネーションを連携、MSI製品で一式揃えるメリット
MSIのゲーミングデバイスは、同社のPCパーツと比べればまだ存在感が薄いかもしれない。この分野には、古くから専業で関わり名を馳せているメーカーも多い。
しかし、今時のゲーミングPCは、イルミネーションの連携機能など付加価値の部分も大きく注目されている。
内蔵PCパーツも広く展開するMSIなら、ゲーミングデバイスを含めすべてのLEDを単一のユーティリティから連携させることが可能で、MSI製品でかためれば統一感のあるPC環境を構築できる。ここにMSI製ゲーミングデバイスを選ぶ価値があるとも言えるだろう。
トータルソリューションとしての魅力も大事だが、実際に自分に合うかどうかという点もゲーミングデバイスは重要だ。秋葉原のショップではMSI製ゲーミングデバイスのデモを行っているショップもあるので、購入前には是非店頭で使用感を確認することをお勧めする。
軽量・軽快なスタンダードタイプのゲーミングマウス「CLUTCH GM50」
まずはゲーミングマウスから紹介しよう。MSIは、現在「CLUTCH」シリーズのゲーミングマウスを展開している。今回試したのはエントリーモデルの「CLUTCH GM50」で、実売価格は税込7,500円前後だ。
有線接続モデルで、同社製のマウスの中でも形状はかなり癖の無いものになっており、万人向けを意識したデザインになっている。
右利き用のデザインで、6ボタン仕様のうち2ボタンが左側面に設けられている。残るもう一つのボタンはホイールの手前で主に解像度切り替え用となる。外観デザインでは、左右中央、中腹をえぐりその部分にラバーをのせているのが特徴。左右クリックボタンのキースイッチはオムロン製で、2,000万回のクリックに耐えるゲーミングスペックとされている。
センサーは光学式のPixart PMW-3330。ミドルレンジモデルでよく採用されているセンサーだ。
解像度は最大7,200dpi。解像度切り替え用のボタンには初期設定として400/800/1,600/3,200/6,400dpiの5段階がプリセットされているが、マザーボードやビデオカードを含めたMSI製品共通のユーティリティ「Gaming Center」を用いれば5段階100dpi単位での調節が可能になる。
ゲーミングと言えばLEDイルミネーション。本製品は3箇所にRGB LEDを搭載している。ホイール、本体後部、そしてロゴ部分だ。
ホイールは右サイドと中央が光る仕組みになっており、あえて左右対称を外したデザインがニクい感じだ。本体後部はUの字にクリアパーツを用いてその中にRGB LEDを搭載している。
「CLUTCH GM50」の最大の特徴と言えるのが軽さだ。メーカー公称の重量は100gを切る87g(ケーブル除く)。滑りのよいソールと合わせ、軽快な操作が可能だ。サイズは120×67×42mm。ケーブル長は約2m。
軽量マウスが好みのユーザーにお勧め、つまみ持ちでもかぶせ持ちでも使える!
実際にゲームで試した印象としては、本製品はやはり軽さを重視する方におすすめする。軽い力で動くので、手への負担が少ない。
かぶせ持ちで腕を軸に操作をしても軽く、つまみ持ちで掌底をマウスパッドに置いて指先だけで操作をしても十分に繊細な操作ができる印象だ。
ただし、軽量がゆえに機敏すぎると感じるところもある。エイムを合わせる際に敏感すぎる面もあるので、FPSゲーム等をする際はdpiやそのほか設定を煮詰める必要がありそうだ。上位モデルのGM60/GM70は本体重量が180g前後あるので、重いマウスが好みの場合はこれらを選択するのも良いだろう。
ゲーミングマウス全般論としては、側面ボタンの活用が鍵だ。多くのゲームでプリセットされていることも多いが、リロードなど特定のアクションを側面ボタンに割り当てることで、簡単かつ素早く行なえる。
ゲームパッドからキーボード&マウスに移行するようなユーザーでは、キーボードのW/A/S/Dはともかく、「R」キーなどを瞬時に操作できるようになるまでには慣れを要するかもしれない。そうしたキーをマウスの側面ボタンに割り当てることで、キーボード操作に不慣れでもゲームを有利に導いてくれることに繋がるだろう。
握り方やポジションにもよるが、「CLUTCH GM50」のサイドボタンはしっかりクリック感のあるものになっているので、押し心地も悪くない。
実用性重視のキーボード「VIGOR GK60」、高剛性に赤色LED搭載のゲーミングモデル
現在のMSI製ゲーミングキーボードは、「VIGOR」シリーズを中心に展開されている。
今回試した「VIGOR GK60」の実売価格は税込で約13,000円前後。配列は日本語109キーで、赤色LEDを搭載。メカニカルキースイッチを採用し、Nキーロールオーバー対応と、ゲーミングキーボードの基本部分を抑えたモデルだ。
キースイッチはCherry MXの赤軸。押下圧は約45gとCherry MXのなかでは軽い。茶軸や青軸のようにカチッとしたクリック感はなく、リニアな動作だ。5,000万回の打鍵に耐える耐久性は、特定のキーに打鍵が集中しがちなゲーム用途では必須と言える。
上位の「VIGOR GK70 SILVER」や「VIGOR GK80 SILVER」といったRGB LED搭載モデルと比べるとハデさは抑えられているが、組み合わせる機器がRGB LED搭載モデルの場合、色のグラデーションなどで同期をとることができないので、イルミネーション機能にこだわる場合は上位モデルを選択した方が良いだろう。
ずっしりとした重量感、操作時の安定性はかなり高め
使用してみてまず好感触なのが重量とそこからくる安定感だ。重量の公称値は1,050gと1kgオーバーで、底面のゴム脚の机上への吸着感も良い。多少乱暴に打鍵した程度では動じることも無く、なかなか好印象だ。
配列もクセは少なく、オーソドックスな日本語配列だが、特徴的なのがスペースキー。短めの左寄りになっており、W/A/S/Dキーをホームとして手を置いた際に、押しやすいように工夫されている。手が小さめのユーザーはスペースキーを押す際に親指をかなり伸ばさなければならなかったりするが、この配置であればよりしっかりとスイッチを押せる。
なお、普段のテキスト入力でF/Jキーをホームとした場合、右手でスペースキーを押す際に気持ち右手親指を伸ばして押すことになる。このあたりは各個人の指の長さで感触が異なるので、なるべく実機を触ってみてもらいたい。
このように、キーボードの機能としてはゲーム中心に考えられたものになっている。キースイッチの感触やレイアウトについては個人の感覚にマッチするかどうかが鍵になるが、フィーリングが合えば良い選択肢になるはずだ。
標準で付けられているシルバーのW/A/S/Dキーキャップには、それぞれヘリに目印があるため、ゲーム中にわざわざ視認しなくてもホームポジションが判別できる。通常のタイピングでは、刻印がないところが気になるが、ある程度タッチ・タイピングできるユーザーなら問題ないだろう。
LED制御については、本製品が単色LEDなのでそこまで複雑ではない。どのキーを発光させるのかや、全てを発光させるならアニメーションのパターンを決めるだけだ。
簡易のイルミネーション制御であれば「Gaming Center」、「Mystic Light」のどちらのユーティリティからも可能だが、キー設定などを行う際は「Gaming Center」、より細かいイルミネーション制御を行うなら「Mystic Light」と機能が分けられている。
また、キーボード側にあらかじめ設定済みのプリセットがある程度用意されており、Fnキー+Insキーで発光パターンを切り替えることもできる。
単色の「VIGOR GK60」は、キーボードのみ光らせたいような場合には適しており、ハデすぎず実用面に全フリすることができる。実用性を求めるユーザーにはバランスの良いモデルと言えるだろう。
なお、節の冒頭でも述べたが、色が流れるようなRGB LEDイルミネーションを連動させて楽しみたい場合、再現できない単色LEDの本機はマッチしない部分が出てくる。イルミネーション機能をフルに楽しみたい場合は上位モデルをお勧めしたい。
1万円以下で機能満載のヘッドセット「IMMERSE GH70」、仮想7.1chやハイレゾをサポート
ヘッドセットで取り上げるのは「IMMERSE GH70」。実売価格は税込で約9,500円前後。ハイレゾ認定がウリで、仮想7.1chサラウンドにも対応している。ドライバーユニットは50mmでなかなか大きい。
PCとの接続はUSB。ケーブルは全長で約2m。途中にコントローラを設け、ここでボリュームやマイクのミュート、仮想7.1chのON/OFFが切り替えられる。
ハウジング部にRGB LEDを搭載し、ほかの同社製品同様、Gaming CenterやMystic Lightで設定できる。イコライザーや各種機能に関してはGaming Center側で設定を行なうため、こちらの使用頻度が高いだろう。
マイクは左のイヤーカップ脇から必要に応じて伸ばして使う。フレキシブルな軸を用いているので、口元に合わせて曲げることができる。
ヘッドバンドはステンレス製。交換用イヤーパッドも付属し、標準付属がレザー、交換用が布製となっている。直接触れる部分なので、好みの素材を選べるのはポイントになるだろう。
若干頭の大きい人向けのサイズ感、音の定位や聞き分けは十分なレベル
まずサイズ感だが、ヘッドセットは頭の大きさや顔の大きさでフィット感がかなり異なる。快適かどうかと言う点は個人差が非常に大きい。
「IMMERSE GH70」の場合、若干大きめな作りとなっているのが気になった。頭の小さい(ヘルメットでXSまたはSサイズ)筆者としてはアジャスタを最小にしても若干大きく感じ、イヤーカップが完全にはフィットしなかった。頭の大きいユーザーであれば問題ないと思うが、購入前には自分にフィットするのか試してもらいたい。
音質に関しては集中して試すため、操作の必要が無いShadow of the Tomb Raiderのベンチマークモードでテストしてみた。
ゲームの音で確認する限り、音質はチープではないし、広がりや重厚感もそれなりに楽しめる。仮想7.1chに関しては、Shadow of the Tomb Raiderのジャングルシーンで、飛び交う鳥の位置が分かるくらいの効果はあるので、実際のゲームにおいてもどちらから音が鳴っているのか聞き分けが可能だろう。もちろん、リアルな7.1chには及ばないので、あくまで仮想7.1chという範囲の効果ではある。
なお、LED搭載製品ではノイズの混入などが問題となることも多いが、今回試した個体ではそうしたことはなかった。
MSIで揃えればトータルでのLED制御が可能、統一感のある環境を整えたいユーザーへ
入門クラスのモデルを中心にMSIのゲーミングデバイス3種紹介したが、やはりMSI製品でPC環境を揃えた際に同社のユーティリティで一括制御できるのがポイントになるだろう。
イルミネーションを連携させたり、複数デバイスの設定を同じユーティリティで管理できるのは利便性が高い。現状、「Gaming Center」と「Mystic Light」の二つのユーティリティを使う必要があるのが惜しい点だが、これまでのMSIのユーティリティの進化を見ている限り、おそらく今後統合される方向に進むのではないだろうか。
コストパフォーマンスという視点で見れば、同タイプの製品と比較した際に若干安い印象もある。ラインナップもシンプルで、上位モデルとエントリーモデルと言った感じで意図的にわかりやすく整理されており、選ぶ際に迷わない。
組み合わせとしては、MSIのマザーボードやビデオカードを使用しているPCと相性が良いが、今回紹介しているキーボードとマウスは万人向けに手堅く作られているので、一度手に取ってフィーリングを確かめてもらいたい。
[制作協力:MSI]