特集、その他

“ゲーム配信者向けデバイス特化”な「Elgato」ってどんなブランド?メーカー担当に聞いてみた

ドイツ生まれのキャプチャデバイスをユーザーに、CORSAIR傘下になり日本でも本格展開 text by 石川ひさよし

CORSAIRの1部門となったElgato。
CORSAIRでElgato Partnership managerを務めるTom Hildreth氏。

 「Elgato」というブランドをご存じだろうか。

 キャプチャ関連製品や、液晶搭載キーを採用するショートカットキーボード「Stream Deck」などで知られるブランドだが、Elgatoのことを詳しく知る国内のユーザーはまだ多くはないだろう。

 Elgatoは2018年6月に米CORSAIRに買収され(正確にはゲーミング部門のElgato Gamingを買収)、現在はCORSAIR傘下の1ブランドになっている。CORSAIR傘下となることで、Elgatoは日本においてもより積極的なアクションをとれるようになり、今後は国内でも積極的に製品の展開やプロモーションを行っていくという。

 今回、CORSAIRの新製品発表会に合わせ、Elgatoブランドを担当するTom Hildreth氏にインタビューを行う機会を得た。Elgatoがどのようなブランドで、どのようなジャンルに注力しているのか、今後の展開なども含め話をうかがった。

ストリーマー向けの機器を作るドイツ発のブランド高画質・高品質な配信機材を提供

Amazonが提供する「Twitch」やYoutubeなど様々なライブストリーミング配信プラットフォームが存在する。
YouTubeではゲーミング関連の動画が2番目に大きなカテゴリーとなっており、毎日2億人が視聴しているという。

――Elgatoとはどのようなブランドなのでしょうか。

[Hildreth氏]Elgatoはドイツのミュンヘンで創業しました。創業以来、コンテンツクリエイター向けのハードウェア/ソフトウェアを開発・販売してきたプロバイダーです。

 ビデオテクノロジーに関しては12年以上のノウハウがあり、取り扱い製品カテゴリにはキャプチャ、コントローラ、クロマキー、そのほか配信者向けのアクセサリと多岐に渡ります。

――今現在、Elgatoが最も力をいれているジャンルはどのような分野なのでしょうか。

[Hildreth氏]現在、ゲームに関する動画配信は一大ジャンルとなっており、弊社はこのジャンルに力を入れて製品を展開しています。なぜこのジャンル注力することになったのか、まずは簡単に背景からご説明します。

 オンラインコンテンツの制作は、2005年にYouTubeがスタートしたことで大きな転機を迎えました。そこから現在に至る、映像配信の市場拡大はご存知のとおりです。

 そして、ここ数年の動きとして、2014年にAmazonがTwitchを買収、2016年にはMicrosoftがBeamを買収と、大手テクノロジー企業がこぞってゲームのストリーミング配信の分野に参入してきていることが挙げられます。

 現在、YouTubeにおいてゲーミングビデオは2番目の大きなカテゴリになっています。視聴されるゲームコンテンツは年間500億時間。毎日ゲームコンテンツを見ているユーザーは2億人。YouTubeやTwitchだけでなく、さまざまな動画投稿・配信プラットフォームがあることを考えると、1ヶ月あたり10億人は視聴者がいるのではないかと見積もっています。

 オンライン映像配信の大手NetflixのCEOが、「我々はHBO(米国における衛星・ケーブルテレビ放送局)ではなくフォートナイト(Fortnite:ゲーム)に敗れた」と述べたように、ゲーミング分野ビデオコンテンツは世界で注目されているのです。


USB 3.0対応の外付けキャプチャ「HD60 S」。
拡張カード型でハードウェアエンコーダ搭載の「HD60 PRO」。
4Kキャプチャをサポートした「4K60 PRO」、PS4 ProやXbox Oneなどに適しているという。

――具体的にはどのような製品を投入してアプローチしているのでしょうか。

[Hildreth氏]現在の配信者が求めているのは、コンテンツのクオリティを高めることができる機材です。

 注目を集めるコンテンツを作るためには、高品質なキャプチャデバイス、手元で配信アプリや機器の操作が効率的に行えるコントローラ、ライティング機器などが必要で、凝った動画を作るのであればクロマキー合成のためのスクリーンが必要になるユーザーもいるでしょう。

 まずはキャプチャデバイスから紹介しますが、現在5タイプの製品を展開しています。

 「HD60 S」はUSB 3.0に対応した外付けタイプのモデルです。USB Type-Cにも対応し、主にXbox One、PS4、Nitendo Switchといったゲームコンソール向けとして、1080/60pに対応した製品です。

 「HD60 PRO」は拡張カード型モデルです。H.264エンコーダを搭載したよりパワフルな製品です。

 「4K60 PRO」はHD60 PROをさらにパワーアップしたモデルです。4Kキャプチャをサポートし、PS4 ProやXbox Oneなど4K出力対応コンソールでの利用に適しています。加えて、4K60 PROはPCからPCへのキャプチャも可能です。

 ゲーム実況の際、1台のPCをプレイ用に、もう1台をキャプチャ用にと分けることで、PCの負荷を分散したり、編集を専任のスタッフに任せたりするようなことができます。これら3製品がオーソドックスなタイプのキャプチャデバイスになります。


USBスティック型のHDMIキャプチャ「Cam Link 4K」。一眼レフカメラなどの接続するためのモデルになる。
iOS向けのキャプチャアプリ「Screen Link」、最長15分間キャプチャができるトライアル版は無料で配信、録画時間制限の無いPro版も用意されている。

――これらのアプローチとは異なるキャプチャデバイスも投入しているのでしょうか。

[Hildreth氏]高画質なカメラを直接接続するための「Cam Link 4K」という製品もラインナップしています。HDMI入力搭載し、一眼レフなどHDMI出力端子を備えた高品質カメラを繋いで一つ上の画質のキャプチャを実現します。

 ゲームの動画だけでなく、人物も高画質にキャプチャしたいというニーズも高まっています。HDMI出力端子を備えていれば、一眼レフカメラをはじめ、カムコーダーやアクションカメラなど、様々な機器で利用できます。

 また、一眼レフカメラを接続した際には、カンタンに接続設定できるプロファイルも設けています。

 大きく毛色が異なるものとしては、iOSデバイス向けのキャプチャアプリ「Screen Link」もラインナップしています。

 iOS上でプレイするゲームを配信する際、iPhoneやiPadにカメラを向けてそれを配信するようなこともよくありますが、iOS上でScreen Linkを起動することでiOS上のゲームプレイ映像を無線LAN経由でPC/Macに転送することができます。

 PC/Mac上では専用ソフトを起動することで転送された映像をキャプチャ可能なほか、プラグインをインストールすることで、XSplitやOBS Studioなどといった配信ソフトに直接映像ソースとして入力することも可能です。

 Screen Linkは、無料でお試しいただけるトライアル版には最長15分間の利用制限時間を設けていますが、Pro版は時間制限無しで使用可能です。

Elgatoの代名詞といえる液晶付きコントローラ「Stream Deck」LEDライトやスクリーンなども配信者が使用しやすいモデルを投入

15個のキーを搭載する「Stream Deck」。専用ソフトを用い、各キーに任意の機能を割り当てることができる。
好みの角度に調節できるスタンドも付属している。

――Elgatoといえば「Stream Deck」が登場時に話題となりましたが、改めて解説していただけないでしょうか。

[Hildreth氏]Stream Deck」はElgatoの代名詞とも言えるコントローラ製品です。

 現在、「Stream Deck」と小型の「Stream Deck Mini」を展開しています。Stream Deckは我々が3年前に市場に投入し、コンテンツ制作者向けに革命をもたらしたとまで言われた製品で、昨年のAmazon Prime Dayでは、エレクトリック分野の製品で3番目の人気を達成しています。

 Stream Deckは、液晶画面付きのスイッチを備えたコントローラで、これらのスイッチは配信サイト、配信アプリや機器の制御を直感的に行うことが可能で、プリセットによって設定を呼び出すこともできます。

 こうしたデバイスは、テレビの映像制作の現場などではスイッチャーと呼ばれていますが、それらは膨大な数のスイッチを備え、とても高価な製品です。

 我々が目指したのは、小型でスペースをとらず、片手で即座に操作ができるデバイスです。Stream Deckはゲームプレイの配信用に特化させることで、スイッチ数を抑えつつニーズに合わせた高いカスタマイズ性を備える製品になっています。

LED照明機器「Key Light」
省スペースで照らすことができる。照明もLEDを使用しているため発熱が少ないという。

――会場にはLEDライトなども展示されていましたが、こういった製品にも力を入れているのでしょうか。

[Hildreth氏]照明機器やスクリーンなどはプロユースのモデルが多く、ストリーマーに使い勝手の良い小回りが効く製品は多くありません。

 よりよい映像を作るためにはライティングの要素は重要であり、こうしたユーザーのニーズに応えられる製品も投入していきたいと考えています。

 弊社は「Key Light」を販売していますが、これは小型でスペースを取らず設置可能なLED照明機器です。

 三脚を用いた大きな照明機器を利用している方も多くいらっしゃいますが、自宅の部屋で使うにはスペース的に難しかったり、そもそも設置できないケースも存在します。

 その点、Key Lightはクランプによって机の端に挟んで固定し、机の前に座る配信者を照らし出すことができます。そしてLEDなので発熱が少なく暑くなることもありません。個人ユーザーの扱いやすさを最大限考慮したモデルです。

折りたたみ式クロマキー背景布「Green Screen」
使用しない場合はコンパクトに収納することが可能。

 クロマキー用のスクリーンとしては、「Green Screen」という製品をご用意しています。

 こうした背景スクリーンも、三脚で支える大型のものが主流ですが、スタジオなどでに利用を想定した製品がほとんどなので、個人ユーザーが扱うのに適しているとは言えません。

 Green Screenはその点、部屋に置ける小型サイズになっており、スクリーン自体も10秒程度ですばやく展開できる設計の製品です。使わない時には部屋の隅やベッドの下に置いておけるコンパクトさもポイントです。

 Elgatoでは、映像の品質を向上するために、プロが使うような機器を配信者が自宅の部屋で使いやすいようアレンジし、製品に仕上げて投入しています。現在のストリーマーにフィットする製品に注力しているのがElgato製品の特長にもなっています。

アジア圏でも人気メーカーのポジションを狙うElgatoゲーム実況だけでなくより幅広い配信者向けに製品を提供

――Elgatoブランドの製品は、世界ではどのくらいのシェアを持っているのでしょうか。

[Hildreth氏]適当なデータが手元になく申し訳ないのですが、例えばドイツ語圏のストリーミングデバイスの売上を例に挙げると、常に3番以内におります。

 Twitterのフォロワー数をストリーミングデバイスメーカーの中で比較しますと、Elgato(英語)がおよそ100万人で1位です。ライバルメーカーに対して大きく差をつけていますので、注目度という点ではリードしているのがお分かりいただけると思います。

 アジア圏でみた場合はまだ後発といえる状況で、台湾や中国に拠点をおくメーカーに遅れを取っているのが実情です。しかし、CORSAIRグループの一員となったことで、アジア圏のユーザーにも積極的にアピールしていきたいと考えています。

――CORSAIRグループになったことでなにか変わったところはありますか。

[Hildreth氏]ElgatoとCORSAIRは親密に行動していまして、ゴールを共有しています。ゲーミング向けの周辺機器を扱うCORSAIRと一体となったことで、Elgatoは様々なプランを持っています。

 今後よりElgatoとCORSAIRの融合が進んだ製品が投入されていく予定です。

――説明会では主にゲーマーの配信者をターゲットとした製品という印象を受けました。しかし、Elgatoの製品はより幅広く配信分野のユーザーにも利用できるのではないでしょうか。

[Hildreth氏]我々がゲーミングに特化した製品を展開していることは確かですが、ご指摘の通り、ゲーミングだけではなく、ライフ、ビューティなど幅広いストリーミングニーズにおいて利用されています。

 ゲーム分野の配信がもっとも成長していますが、動画配信全体で見ても、個人ユーザーが扱いやすい高画質・高品質な製品はニーズが高まってきています。こうしたニーズに応えられる製品を今後も投入していく予定です。

――日本のユーザーに向けて一つオススメの製品があればアピールいただけますか

[Hildreth氏]我々のハードウェアはどれもユニークでゲーム配信を行なう方にオススメですが、とくに一つ挙げるとしたら無料で試すことができる「Screen Link」からElgatoを試してみてはいかがでしょうか。

 Elgatoはさまざまな製品を展開しているので、気に入って頂ければ他のデバイスや機器も手に取ってもらえればと思います。

――ありがとうございました。

[制作協力:CORSAIR]