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デスクトップPCの乗り換えで仕事が4倍高速に?!ゲーミング性能を業務に活用
Intel CPUを第1世代から第9世代に、「G-Tune」の最新PCを導入してみた text by 日沼諭史
2019年5月28日 06:05
2010年に自作したPCから9年の時を経て、マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」の「NEXTGEAR i690GA4」に乗り換えた筆者。
前回レポートした通り、ゲーミング性能としては驚異の100倍超に達し(最大でだけど)、さすがにIntel Core iシリーズの第1世代と第9世代の間には文字通り隔世の感があると思った次第。
ただ、筆者にとってゲームは専門分野ではなく、趣味のほんの一部、もしくは仕事上ベンチマークなどのためにある程度プレーするだけで(本当だぞ!)、仕事のメインは執筆である。単に原稿を書くだけなのになぜゲーミングPCが必要なのか、と疑問に思われるのももっともだ。
よし、ならばここでその理由を並べ立てようではないか!新旧PCでどれだけ仕事周りの快適さがかわるのか見てみよう。
マウスコンピューター G-Tune NEXTGEAR i690GA4のスペック
CPU:第9世代 Intel Core i7-9700K 3.60GHz(8コア・8スレッド)
メモリ:16GB(DDR4 2400、8GB×2)
ストレージ:SSD 256GB(NVMe M.2)/HDD 1TB(SATA)
GPU:NVIDIA GeForce RTX 2070
9年前に自作したPCのスペック
CPU:第1世代 Intel Core i3 530 2.93GHz(2コア・4スレッド)
メモリ:4GB(DDR3 1333、2GB×2)
ストレージ:SSD 120GB/HDD 1TB・320GB・250GB(全てSATA)
GPU:AMD Radeon HD 5450
M/B:GIGABYTE GA-P55A-UD3R(rev. 1.0)
新型PCへ乗り換えで仕事効率は4倍になるかも!?PCの総合性能を測るベンチマークで新旧PCを比較
9年前に自作したPCをリプレースしようと考えた理由については、「さすがにあまりに古すぎ、遅すぎて、仕事にならない場面が増えてきたから」ということを前回お伝えした。
最近のゲームがまともに動かなかったのも理由としては大きいが、仕事上の特に決定的な出来事だったのが、巨大なデータのコピーすら満足にできなかったという部分もある。
とある案件で外部ストレージから数十GB規模のデータを自作PCのHDDにUSBポート経由でコピーしようとしたところ、USB 2.0(480Mbps)の仕様よりはるかに低い速度でしか通信できず困ったことがあった。その案件の締め切りが迫るなか、絶望的な遅さにもなすすべなく、ただただ泣きながらPCの前でデータ転送が完了するまで座り込んでいた。あのときはホントにヤバかった……。
なお、旧自作PCで使用しているGIGABYTE GA-P55A-UD3RはUSB 3.0ポートも搭載している。しかし、USB 3.0が世に出てきたばかりのタイミングで発売された製品だったこともあり、どうも手持ちの周辺機器と相性が悪く、USB 2.0ポートをメインに使わざるを得ない状況が続いていた。
業務に直接関係のない作業で時間を取られることほどストレスが溜まることはないので、この部分は常々PCを買い換えたくなる部分ではあった。
また、その一方でゲームも急速に進化し、AMD Radeon HD 5450なんかでは全く太刀打ちできなくなり、Windows 10の通常動作ですら重く感じるようになった。
エクスプローラが開くのに10秒くらいかかっていたこともある。応急処置でシステムドライブをSSD化して少しは改善したが、今やノートPCでも少ない4GBというメモリ容量もいろいろと限界。総合的なパフォーマンス不足は明らかだった。
そんな状態で旧自作PCにはいろいろ不満があったわけだけど、PCの総合性能を測る「PCMark 10」を実行して9年前の自作PCとG-Tuneとで比較してみるとどうだろう。性能差を見てみた。
結果としては4倍以上の差。自作PCの“時代遅れ感”は自覚していたつもりだけれど、実用シーンにおけるパフォーマンスで4倍以上というのは想像を超える。
これでシンプルに仕事が4倍早くなるわけではないが、仕事上のボトルネックをPCのせいにすることは、これで間違いなくできなくなった。仕事を速くするには、あとは人間のボトルネックをどうにかするしかない!(その当ては全くないのだけれども……)。
仕事でも「GPU」は必要、画像/動画加工はGPUでの処理が中心になってきている!
さて、筆者は一応ライターである。PCの総合性能がいくら高かろうと、それが役に立つ場面なんてないのでは、と思うかもしれない。
しかし、前回もお話した通り、ライターだからといって原稿を執筆するためのテキスト入力環境さえ整っていればいい、というわけではないのだ。
まず、ライターでも画像処理を頻繁に行なう。原稿のなかで使う写真はほとんどの場合自分で撮影しなければならず、その後は当然写真加工も必要となるからだ。
Webが中心といえど、読者のみなさんのディスプレイ解像度が高くなってきているのに合わせて、写真のクオリティも(写真のウデはともかく画質的な意味では)上げなければならず、そうすると高解像度のRAWデータを扱いたくなってくる。
JPEGではなくRAWで撮影するのは、「現場でうまく撮れなくても後から加工すればなんとかなる」という“保険”の意味合いが一番強いのだけれど、このサイズがだいたい1ファイル30MB前後。取材記事の1原稿当たりの写真枚数は平均すると50枚あたりで、多い時は100枚を超えるから、それだけで1.5~3GBにはなってしまう。
でもって、RAWデータはそのままではWebに掲載できないから、現像処理を施してJPEGデータにする。解像度を変えずにJPEG化すると1枚当たり20MB、実際にはその後さらにWeb用に数百KBまで縮小したバージョンも作るのだけれど、最終的にトータルの画像データは2.5~5GBというボリュームになる。
対してテキスト原稿のサイズはせいぜい10KB程度とささやかなもので、ライターっていったい何なんだろうと思う瞬間でもある……。
まあ、それはともかく、こうした画像処理で主に使用しているのが、「DxO PhotoLab 2」と「Adobe Photoshop CC」という2つのソフトだ。DxO PhotoLab 2で写真を一括で加工・現像してできるだけ見栄え良くし、Adobe Photoshop CCのバッチ処理でWeb用の画像を出力する。単純作業ではあるもののこの処理が意外とヘビーで、PC性能が如実に表れる部分となっている。
なかでも重要なのがGPUだ。いずれのソフトも今やGPUによる画像処理が当たり前。CPUのみでももちろん動作はするものの、GPUが処理を肩代わりすることで高速化が可能となる。GPUなんか使っていないという読者もいるかもしれないが、CPU内蔵のGPUも現在ではかなり活用されており、知らない間に助けられていることもある。
なお、GPU性能の良し悪しは、そのまま仕事の効率に直結すると言ってもいい。ゲームに最適なPCとして、CPUに第9世代 Intel Core i7-9700Kを、GPUに最新世代のGeForce RTX 2070を搭載している「G-Tune NEXTGEAR i690GA4」なら、画像処理も間違いなく高速だろう……というのがPCリプレース前の見立てでもあった。
では、G-Tune NEXTGEAR i690GA4になってこれらの画像処理は実際どれくらい高速になったのだろうか。9年前の自作PCとG-Tune NEXTGEAR i690GA4で、RAWの現像処理(DxO PhotoLab 2)と画像縮小のバッチ処理(Adobe Photoshop CCの自作アクションスクリプト)にかかる時間を計測してみた。
なお、新旧環境でSSDの条件がうまく揃わないため、G-Tune NEXTGEAR i690GA4は外付けUSB 3.0 SSD、旧自作PCは内蔵SATA SSDを書き出し先に指定してテストした。両者の速度は概ね同じくらいなので、ストレージ以外の性能がどう影響しているかの参考値になるはずだ。
「DxO PhotoLab 2」でRAWデータ100ファイルをJPEG(画質100%、解像度変更なし)で出力するのにかかった時間だが、G-Tune NEXTGEAR i690GA4が6分19秒(外付けSSDに書き出し)、旧自作PCが51分34秒(内蔵SATA SSDに書き出し)。
「Adobe Photoshop CC」でJPEG画像100ファイル(6,016×4,016ドット)を1,920×1,200ドットに縮小出力するのにかかった時間はG-Tune NEXTGEAR i690GA4が2分20秒(外付けSSDに書き出し)、旧自作PCが4分57秒(内蔵SATA SSD)。
自作PCはサブとして使っていたもので、画像処理のような重い作業は途中からMacを使うようになっていたため、この時間を毎回待っていたわけでは無いのだが、いざ比べてみるとかなり想像以上に差があった。トータルで見るとG-Tune NEXTGEAR i690GA4は旧自作PCの6.5倍くらいは速い。
この数字を見るまでもなく、G-Tune NEXTGEAR i690GA4を導入した直後、日々仕事しているなかでも現像処理の高速さははっきりと体感できるほどで、感動を覚えていたくらい。当然、メインに使用していたMacよりもかなり速い。
これまでは数十枚以上のRAW現像処理を実行すると、PC上では他の作業もままならないので放置し、ヒマなのでスマートフォンでWebを見ていたが、もはやそんな“休憩”は許されなくなった。「お前の本分は原稿書きなんだろう? 現像しといてやったぞ。ほら、休まず原稿を書け」と言わんばかりの高速さである。容赦ない。
そして、最近は写真だけでなく動画を扱うことも増えてきた。凝った動画編集をすることはないが、余計な前後をカットして画質や音声を少し調整し、テロップを入れるといった簡単な加工を施す。その程度のことでも、編集操作への追従性やプレビューの快適さ、エンコード(ファイル出力)速度といった部分は大切だ。
主に使用するソフトは「DaVinci Resolve」だが、これもGPU処理に対応しているので、求められるPC性能は写真の時と変わらない。こちらもエンコード(ファイル出力)にかかる時間をそれぞれの環境で計測してみたが、結果は下記の通り。
フルHD/6分15秒のMP4(H.264)ファイルを出力するのにかかった時間はG-Tune NEXTGEAR i690GA4が2分10秒に対して、旧自作PCが15分48秒。GPUはかなり活用されている。
仕事効率を高めるユーティリティ性能にも着目
そんなわけで、筆者のようなしがないライターでも、昨今はGPU処理に対応するソフトが増えてきたために、ゲーミングPCのような高いGPU性能があればあるほど仕事は効率的になるのである。
でも、GPUが高速なだけで仕事マシンとして100%満足できるかというと、そういうわけでもない。PCのユーティリティ性能も重要だ。冒頭でUSB 2.0しか使えず辛かったエピソードを紹介したが、インターフェイス周りが速いに越したことは無い。
たとえば写真や動画をPCで扱うということは、その前にデータをカメラからPCに移す必要がある。カメラからファイルをコピーし、画像処理できるようにするまでのインターフェース回りの装備や性能が、可能な限り充実していることもPCに求められるべき条件である。
NEXTGEAR i690GA4をさわって再認識したが、筆者が最も必要としていたのは、アクセスしやすいSDカードリーダーと、外部ストレージとのデータ転送を高速に行なえるインターフェース。もっと具体的にいうと、PCの前面にSDカードリーダーがあり、10Gbpsの転送速度を実現するUSB 3.1 Gen.2のType-Cポートを備えていることだった。
この両方を備えたゲーミングPCとしての性能をもつBTOマシンは、他のメーカーだけでなく、G-Tuneブランドのなかでも、NEXTGEARシリーズ以外にはまだそれほど多くない。USB 3.1 Gen.2のType-Cポートを搭載するPCは徐々に増えてきてはいるとはいえ、さらに標準でSDカードリーダーを搭載する機種はまれだ。
「ゲーミングPCでSDカードリーダーは使わないだろう」というユーザーへのコスト負担を減らすための配慮なのかもしれないけれど、仕事で写真を扱う以上、筆者としてはアクセス性の高いSDカードリーダーは必須。ゲームだけでなく写真も趣味という人にとっても、SDカードリーダーはありがたい装備のはずだ。
で、もう1つのUSB 3.1 Gen.2 Type-Cポートはなぜ必要なのかというと、現在、写真や動画を含む仕事データを同インターフェースの外付けSSDで一括管理しているため。
メインPCをWindowsのデスクトップマシンにするにしても、この仕事データの入った外付けSSDが使えなければ意味がない。現行のMacBook Proはこれからも自宅での作業や外出時に使い続けるので、データソースの共通化の面でも、デスクトップPCにはUSB 3.1 Gen.2 Type-Cポートが不可欠だ。
NEXTGEAR i690GA4は、背面にUSB 3.1 Gen.2ポートを2つ装備する。1つはType-A、もう1つがType-Cだ。ここに接続した外付けストレージは最大10Gbpsでデータ転送でき、SATA接続のストレージをUSB接続した場合でも、PC内蔵のSATA接続と同等かそれ以上の読み込み・書き込み速度を達成する。SDカードからのデータコピーはもちろん、現像処理においても、インターフェース自体の上限性能の高さのおかげでPC本来の性能の妨げにならないのがポイントだ。
外付けのSATA接続ならSSDであってもUSB 3.0/3.1 Gen.1(5Gbps)で十分ではないか、と思う人もいるかもしれない。
が、下記のベンチマーク結果の通り、USB 3.1 Gen.1とUSB 3.1 Gen.2とでは、全く同じハードウェアでもシーケンシャルリード・ライトで100MB/s前後の違いが出る。単純計算で30MBのRAW画像のやりとりに秒間3ファイル以上、30秒で100ファイル近く差がつくと考えれば、Gen.2(10Gbps)にこだわる理由がおわかりいただけるはず。
ゲーミング性能の高さは仕事効率の高さに直結する
仕事でPCを使う以上、ゲーミングPCによくある派手な“光り物”はできるだけ避けたい。そういう意味でも、G-Tuneブランドはせいぜい前面が渋い赤で光るくらいで、全体的にはブラックの、ビジネス向けとしても通用するおとなしめのデザインだ。
サイドパネルを透明のガラスにしてPC内部の装飾を目立たせるオプションもあるが、透けないスチールカバーのバージョンを用意してあるところも、ユーザーニーズをしっかりくみ取ってもらえている感じがする。
静音性の面でも優秀だ。自作PCでもできるだけ静音性に配慮してGPUはファンレスのものにしていた。けれども、G-Tuneの普段の動作ノイズはそれより明らかに小さい。近くに置いてあっても部屋の隅の方で弱風のサーキュレーターを回しているかのようなわずかなノイズ。
負荷が高くなると音は大きくなってくるが、それでも「部屋に隙間風が吹き込んでるのかな?」みたいに感じる程度だ。決してノイズがゼロというわけではないけれど、耳障りにならない低周波音なのがうれしい。
G-TuneブランドのNEXTGEAR i690GA4は最新の3Dゲームを余裕をもってプレーできるゲーミングPCでありながら、このように筆者の仕事においてもその性能や特徴を活かせる場面が多い。とりわけ筆者と同じように写真や動画を扱う仕事をしているなら、「ゲーミング性能の高さ=仕事効率の高さ」と言い換えても大げさではないだろう。
今回の筆者のように第1世代から第9世代へと一気にジャンプアップするときはもちろんだが、数世代を飛び越える程度であっても大きなパフォーマンスアップが実感できるはず。
しかし、その場合、おそらく流用できないアイテムが大半のはずだ。もしくは流用できたとしても、パフォーマンスはその分犠牲になることを覚悟しなければならない。
ならば、ここは思い切って“過去の資産”を一切捨て去り、現時点で自分の用途に合う最高の性能・装備のBTOマシンを新たに選んでみるのもいいのではないか。仕事で使うPCは、購入から実使用まで、できるだけ手間をかけずストレスなく使えるのが一番。高速かつ安定して動作する環境をすぐに手に入れられるBTO PCはそれにぴったりだ。
自作派にとっては試行錯誤してゼロから組み立てる過程が楽しめないと思うだろうけれど、そのフラストレーションは必要に応じてPCを段階的にパワーアップさせていくときに思う存分発散すればいい。今回の企画が古くなったPCのアップグレード方法や仕事(兼遊び)マシンの選び方に悩んでいる人の参考になれば幸いだ。
[制作協力:G-Tune]