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BTO PC「FRONTIER」の工場に潜入!26年のノウハウと配線職人の“技”を見てきた

ユーザーに“寄り添う”サービスを提供、低価格・高品質なオリジナルPCの裏側 text by 日沼諭史

達人級の職人もいるFRONTIERのBTO PC製造現場を直撃!
FRONTIERのゲーミングモデル「GHシリーズ」

 「フロンティア神代」あるいは「KOUZIRO」と聞いてすぐにピンとくる人は、そう多くないかもしれない。

 BTO PCの先がけとして1993年に「FRONTIER」ブランドを立ち上げた株式会社KOUZIROは、すでに会社としては解散している。しかし、その魂は今も山口県柳井市にある工場で生き続けている。

 PC/AT互換機が急速な盛り上がりを見せたWindows 95登場の前後から、当時としてはリーズナブルな価格で、高い品質・信頼性のBTO PCを提供するメーカーとして存在感を高めていったFRONTIER。現在はヤマダ電機の子会社であるインバースネットがそのブランドを引き継ぎ、同じ工場でBTO PCを組み立てている。

 ビジネス向けからゲーム向けまで、シンプルな製品ラインアップを堅実に展開する同社。実際の製造現場はどんなところなのだろうか。誰もまねできないレベルで美しくケーブルを取り回す「配線職人」がいる、などとも噂されるその工場にお邪魔して話をうかがった。

山口県の自然豊かな柳井市でBTO PCを組み立てベテランがテキパキと1時間半で完成

錦帯橋で知られる山口県岩国市の隣、柳井市に工場がある。

 日本有数の観光名所として知られる錦帯橋からクルマで数十分。中国山地の緑深い山あいを抜け、田園風景の広がるのどかな地域に、FRONTIERの工場がある。

 当初は山口県内の別の場所にあった工場から、当時のKOUZIROがこの地へ移転。1999年から操業を開始して以来およそ20年間、途中インバースネットによる事業承継を挟みながらもずっとここでPCを組み立ててきた。

のどかな田園風景のなかに出現したFRONTIERの工場。
大きな看板が目印。
こちらは正面入り口側。
入口にはKOUZIRO時代、DOS/Vパワーレポートで受賞したときのトロフィーが。

 全従業員数はパートタイマーを含めて40名ほど。そのうち常時15名ほどがPCの組み立て作業に従事し、1日に最大150台、月産3,200台の生産キャパシティを支えている。

 スタッフのなかにはKOUZIRO時代から変わらず勤務し続けている人もおり、FRONTIERブランドが生まれた1993年から数えると、まさに26年という長い年月で積み重ねられたノウハウが、ここに集約していると言っても過言ではない。

 工場での大まかなPC製造の流れは、「注文書を受け取る」→「注文内容に従ってパーツのピッキング」→「マザーボードへのパーツ取り付け」→「ケースへのパーツ取り付け、配線」→「動作検証」→「出荷」というもの。それらの役割ごとに担当者が割り振られ、複数の製造ラインで並行して作業する。

工場の内部。左側が組み立てライン、右側がパーツ置き場になっている。写真に収まらなかったが、見えている範囲の倍以上広い印象だ。
注文書を受け取った後の最初のステップ。パーツをピッキングするスタート地点。
Intel製CPUのトレイ。1つ数万~10万円はする高価なCPUがダース単位で置かれている。
メモリも大量。
M.2のSSDはハイエンドも揃える。
SATAのSSDもIntel製をはじめ豊富に用意されている。
ゲーミングPC向けの高性能GPU。
マザーボードとバックパネル。
光学ドライブとCPUクーラーが山になっている。
ハイエンド構成向けの水冷ユニットや電源ユニット。

 専用ソフトウェアを使用して自動実行する「動作検証」以外はすべて人の目と手による作業だが、1台のPCが組み上がるまでにかかる平均的なタクトタイムは1時間半ほど。

 ほとんどが手作業とはいえ、注文ごとに1つの識別コードで管理されており、必要なパーツや工程上の作業タスクで誤りや取り違いなどが発生しにくい仕組みを作り上げている。

ピッキングしたパーツは1つの大きなトレイに載せて運ぶ。
最初の行程はマザーボードへのパーツの取り付け。
ここから左右に分かれて2つ以上のラインで並行作業する
ケースへのパーツの取り付け作業。
次々組み上がっていく。
CPUクーラー装着時に使ったグリスはそのまま添付。一度装着した後は、剥がして確認するのがためらわれる部分だが、使用後のグリスがあればなんとなく安心だ。
組み上がったPCは検証工程へ。動画再生、音楽再生、高負荷のグラフィック表示といったテストを自動で反復実行する。
検証中の大量のPC。
検証が完了し、梱包作業へ。
ダンボール箱に収まったPC。これがユーザーのもとへ出荷される。
キャンペーンによっては「加須田まいこ」グッズが同梱されることも。

初期不良を劇的に減らす電源ユニットチェック丸1日稼働させる「電源部屋」を用意

 組み立て工程において同工場で最も重点を置いているのが、初期不良の低減を目的としたパーツの「二重検証」だ。

 担当スタッフの方に話をうかがったところ、「相性問題や初期不良が最も出やすいパーツはメモリと電源ユニット」とのことで、組み立て工程の要所で通電して動作などに問題ないことを逐次確認している。

 特に電源ユニットについては、工程の早い段階でケースに組み込む必要があるにもかかわらず、問題がある場合にそれが発覚するタイミングが完全にPCとして組み上がった状態になることが多い。そうなると動作不良の原因特定が難しくなるだけでなく、最も手間のかかる配線をいったんばらす必要もあるため、致命的な作業の手戻りが発生することになる。

「電源部屋」に並ぶ電源ユニット。ここで24時間稼働させ、問題ないことを確認してから組み立てラインに投入する

 このことから、同社ではまず電源ユニットのみを単体で24時間通電して動作させる工程を組み立てラインとは別に設けている。

 コンセントに接続された大量の電源ユニットが並ぶ「電源部屋」で一晩動かし続け、問題のなかったものだけを組み立てラインに投入するようになっており、「このチェックをするだけでPCとしての初期不良率を大幅に減らすことができる」そうだ。

美しく配線するための必須のテクニックとは達人の技を実際に見てきた!

FRONTIERの裏配線が可能なモデルの一例。

 もう1つの組み立て工程におけるポイントは「配線」だ。最近はPCケースのサイドパネルを透明のガラスとし、LEDによる電飾とともに内部を“魅せる”タイプの製品も少なくない。

 その場合、マザーボードと周辺機器を接続するケーブルが見栄えを損なうこともあるため、ケーブルを隠せるようにケース内部を2層構造にしたうえで、マザーボードの背面側にあたる部分の空洞にケーブルを通す「裏配線」が可能なケースも多い。

 裏配線は、ケーブル類の大部分が目に見えない場所に隠れるため、見栄えの良いPCに仕上げやすいというメリットがある。しかしその反面、ケーブルの取り回しにはさまざまな工夫が求められ、無理矢理押し込んだケーブルに負荷がかかって故障の原因になりかねないなど、難易度としては高めになるのがネックだ。

 FRONTIERでも一部のモデルでそうした裏配線のPCケースを採用しているが、その配線を担当するのはこの道十数年のベテラン「配線職人」。

 個々のパーツをつなげるのに必要十分なケーブルの長さを完璧に把握し、裏側であっても可能な限り目につかない場所にケーブルを通して美しく仕上げる。淀みなく流れるように作業は進み、ミドルタワーケースの配線にかかった時間は20分ほどだった。

台の上に載せて、台ごと向きを変えながら配線していく。
1本ずつ丁寧に取り回す。
長い電源ケーブルは途中の端子部分で折り返すようにしてひとまとめに。
ケース底のデッドスペースは長いケーブルを隠すスペースとして有効活用。なお、購入後にストレージの増設などを行う可能性も考慮し、長く使っていく上で扱いやすいように意識して配線しているそうだ。
最終的な仕上がり。裏側から見てもごちゃついていないのはさすが。大小の結束バンドを使い分けているのもポイントだ。
表側はこの通り。遮るものがまったくない。

 コツは「最初にケーブルを伸ばして、できるだけまっすぐにしてから配線する」ことと、「適度なゆるみをもたせる」ことだという。

 購入直後は折りたたまれているケーブルは、そのまま配線すると波打つ状態になるためきれいに取り回すことができない。だからといって無理に引っ張るようにして配線すると余計なテンションがかかり、ケーブルだけでなく周辺パーツの寿命を縮めることにもなる。

 自分でPCを組み立てたり、パーツを交換・増設するようなときは、あらかじめ「ケーブルを伸ばすこと」と「ケーブルに緩みをもたせること」を頭に入れておくと良さそうだ。

実際に配線する前に、ケーブルはあらかじめ伸ばして癖を取っておくと良いのだとか。
配線が完了したPCと「配線職人」。見事なお手前でした。

26年続くBTO PC「FRONTIER」のこだわりを聞く不良品を極力出さないための二重検査を徹底

 FRONTIERブランドを展開するインバースネットによると、Windows 7のサポート終了にともなうPCの買い替え需要や、eスポーツ・ゲーミングPCの盛り上がり機運も手伝って、BTO PCの売上は拡大傾向にあるという。

 スマートフォンの普及などによりPC離れも叫ばれるが、FRONTIERはしっかりとユーザーニーズをつかんでいる。今回、工場の見学と合わせ、どのような考え方、方針でBTO PCの事業を進めているのか、インバースネット株式会社 取締役 営業本部長 吉岡浩之氏に話をうかがった。

インバースネット株式会社 取締役 営業本部長 吉岡浩之氏。
FRONTIERブランドのPCは26年にも及ぶ歴史がある。

――:FRONTIERのBTO PCを製造しているこの工場は、ずいぶん長い歴史があると伺っています。改めてその歴史と、インバースネットとしての事業方針を伺ってもよろしいでしょうか。

[吉岡氏]:元々は文具屋を営んでいた創業者が株式会社KOUZIROを立ち上げ、「FRONTIER」ブランドのPC/AT互換機を製造していたのがこの工場です。

 「FRONTIER」ブランドのPCは1993年からスタートし、現工場は1999年から操業を開始しましたが、2013年にヤマダ電機がKOUZIROを吸収合併したタイミングで、ヤマダ電機の子会社である我々インバースネットがKOUZIROのPC部門を工場とともに引き継ぎました。

 その頃、インバースネットとしてはオリジナルBTOマシンの製造はしていませんでしたが、他社製PCの組み立てや、中古PCの売買などを行なっていて、PCの組み立てと修理にかかわるノウハウがあった、ということもあって事業承継しました。当時としては「FRONTIER」というPC/AT互換機のブランドは認知度も高かったので、ブランド名もそのまま使い続けることにしたんです。

 現在はWindows 7のサポート終了による買い替え需要や、ゲーミングPCの流行などもありますが、その影響以上に出荷数は右肩上がりです。しかし大手メーカーのナショナルブランドと勝負しようとは思っていません。規模も違いますので。

 我々としては、BTOでしっかりお客様のニーズに合ったものを提供できるようにしたい、と考えています。


先に紹介した電源の事前チェックを始め、出荷前の検証も念入りに実施。極力不良品を出さないための取り組みが行われている。
工場にあったManli製のビデオカード。十分な性能と品質を備えているわりに軽量で、マザーボードへの負荷が少ないという。

――:FRONTIERのBTO PCの製造におけるこだわりはどんなところにありますか。

[吉岡氏]:不良品を極力出さず、しっかりした製品を出すということ。そのために部品からチェックして、可能な部分は二重検査することで、製品の初期不良を減らすようにしています。また、他にも製造工程のなかでいくつか工夫しているところがあります。

 特にゲーミングPCだと、冷却性能を上げないと本来のパフォーマンスを発揮できないということで、各社エアフローを工夫したり、水冷システムを取り入れたりなど、いろいろ対策されています。

 ただ、ケース内部にケーブルがあるとどうしても冷えにくいんですね。そこで、我々の一部のモデルでは裏配線を採用して、職人の手で見栄え良く配線して仕上げています。風通しを良くして部品が冷えれば、製品としての寿命も延びて長く快適に使ってもらえますので。

 ビデオカードやCPUクーラーのような大型パーツも選択できる物に関しては、極端に重いものは積極的には採用していません。重量があるとマザーボードに歪みが出て寿命を縮める原因にもなりますし、パーツが重いと輸送中に故障などのトラブルに遭う可能性も高まるからです。

 一度、配送中にビデオカードを固定する部品が取れてスロットから外れていた事例もあります。ですので、どのモデルであっても、配送時にはケースメーカーの標準的な緩衝材よりワンランク上の厚みがある緩衝材にカスタマイズしてお届けするようにしています。

入門者にやさしい「アップグレード相談」と「買取りサービス」

メモリは今の時代も相性が出やすいパーツの一つ。FRONTIERでは安定性が高い点は当然として、長期間供給されるモデルが使用されている。

――:BTO PCの搭載パーツは自作PCとほぼ変わらないので、パーツごとの相性問題も少なくないかと思います。検証の手間はそれなりにかかるのではないでしょうか。

[吉岡氏]:けっこう検証には時間かかっていますよ。僕が担当者に「まだやってんのか」って怒ってるくらいですからね(笑)。新製品が出る時期が重なったときは特にそうです。

 それでも、パーツによってはメーカー指定したいというお客様のニーズもありますので、BTO PCとして十分な選択肢からカスタマイズできるように可能な限り多くの組み合わせで検証しています。

 最も相性問題等の出やすいところはメモリと電源ユニットです。新しいメモリを採用するときは、扱っている全てのマザーボードで動作チェックして、およそ1年間同じ製造ロットに固定して安定動作するものをメーカーに発注する形にしています。

 お客様から注文いただくときにメモリの種類の選択肢が少ないと感じられる点は不便をおかけしているかと思いますが、そこには相性問題を出さないようにする、という理由があるのでご理解いただければと。

購入前の相談や、PCアップグレードなどの相談を受け付ける窓口を設けており、メールのほか、電話やチャットでも問い合わせを受け付けている。
パーツ交換でのアップグレードでは性能が足りないといったユーザーには買取りサービスも行っている。
FRONTIERのPCは店舗で実機を触ることもできる。パソコンロッジ 神保町店では複数モデルがデモ機として用意されている。また、公式サイトには展示が行われている店舗一覧のリストも用意されている。
店舗で特価販売が行われていることもあるので、近くに展示ショップがある場合はぜひのぞいてみて欲しい。

――:長く使い続けていると、プレーしたいゲームがスムーズに動作しなかったり、ストレージが不足したりして、性能アップや拡張をしたくなる人もいるのではないでしょうか。

[吉岡氏]:購入後にビデオカードを高性能なものに変えたい、メモリを増設したい、といったような希望がありましたら、アップグレード相談を受け付けています。

 Webサイトから問い合わせいただければ、要望をヒアリングしたうえで最適な方法をご提案させていただきます。その後、PC本体をこちらに送っていただいて、増設、アップグレードしてお戻しするという流れになりますので、PCをカスタムするのに不安な人でも安心してご利用いただけるかと思います。

 今使っているFRONTIERのPCが古くなってしまったり、そのPCのアップグレード可能な範囲ではプレーしたいゲームが動かなかったりして、性能アップが難しいときもあるかと思います。

 そういうときは買取りサービスもご利用いただけます。当社の別の部署で中古パソコン売買もしておりますので、現在お使いの中古のPCを買取らせていただき、新しいPCを購入していただくというものですね。

――:アップグレードや下取りはPC入門者にとってはうれしいサービスかもしれませんね。

[吉岡氏]:もし購入する時に不明なところがあれば、チャットや電話、メールで相談していただける窓口も用意しています。

 電話の場合はWeb上のBTOのカスタマイズ画面を双方で見ながら、要望をお客様から伺いつつ、それに合った構成を一緒に選んで注文できます。その時点で要望にマッチしているお買い得なセール品があれば、それをおすすめすることもありますね。

――:相談があるのはどういった世代の人たちが多いですか。

[吉岡氏]:以前はお客様の年齢層は比較的高めでしたが、チャットなどでオンライン相談される人だと、最近は若い20代の方も増えています。主にゲームを入口に、我々としてはライトユーザーも取り込んでいきたいという考えがありますが、そういうところでチャットはよく使われているようです。

――:気軽に購入やアップグレードの相談ができることや、価格帯、ラインアップを改めて見てみると、入門者にちょうどいいという感じがします。

[吉岡氏]:“寄り添う”フロンティア、といいますか。製品の品質だけじゃなしに、サービス・サポート部門はもっともっと充実させていかなければだめかなと思っています。

駆け出しのプロゲーミングチームをサポートする理由“パートナーとともに成長”を目指すFRONTIER

FRONTIERがサポートしているプロゲーミングチーム「Zoo Gaming」。長い期間サポートしており、ともに成長してきた歴史がある。
吉本興業のプロゲーミングチーム「よしもとLibalent」のサポートも行っている。
工場に貼られていた「燃やせ!インバース魂」

――:FRONTIERでは、かなり以前からプロゲーミングチーム「Zoo Gaming」のサポートもしていますね。しかもまだ知名度があまり高くない頃から地道に支援してきたという感じです。どんな狙いがあるのでしょうか。

[吉岡氏]:現在サポートしているのは「Zoo Gaming」と「よしもとLibalent」の2チームです。前者はPUBGをメインに活動しているのでゲーミングPCを提供しています。後者はコンソールゲーム機のプレーヤーが中心ですので、主に動画配信用としてPCを提供しています。

 プロゲーミングチームの動向は、eスポーツのメジャーな大会がまだなかった頃から見ていて、そういうチームと一緒にやっていけないか、という思いはもっていました。ゲーミングPCのカテゴリーを強化しようとしたときに、機材提供することでFRONTIERをアピールできるのではないかと思ったんですね。

 すでに注目度の高いプロゲーミングチームもいくつかありましたが、我々としてもゲーミングPCカテゴリーの立ち上げ時期。そこまで知名度が高くない者同士で共に成長していくストーリーの方がチャレンジしがいがあるのではないか、と考えました。みんなに応援してもらえるブランドになりたいなと。

 ありがたいことに、Zoo Gamingはコンスタントに順位を上げています。ゲーミングPCの販売も順調に伸びていっているので、少なからずサポートの結果が出始めているのはうれしいですね。

 それでも、FRONTIERというブランドを露出して認知してもらうための施策はもっと打ち出していかないとと思っています。ゆくゆくは山口でeスポーツの大会ができたら、なんてことも考えていますね(笑)。

――:BTO PCを選ぶ理由や、BTO PCの魅力というのは、どんなところにあるのでしょう。

[吉岡氏]:手軽に好きなものを選べるのがまず第一ですよね。個人的には自分でPCを組み立てるのはあまり好きじゃない(笑)。こだわって材料を選びたいけれども、料理人にはなりたくないんですよね。好きな材料をしっかり選びながら、そのうえで手間をかけずに完成品として手に入れられて、すぐに使い始められるのがBTO PCの魅力ではないでしょうか。

[吉岡氏]:自作するときは相性問題が怖いと感じる人も多いでしょうけど、BTOだとまず動作が保証されていて、システムとしても1年間保証されるところは大きいですよね。それにフロンティアのBTOなら、購入後に性能を改善したくなったときにはアップグレード相談もできますから、安心度も高いのではないかと思います。

FRONTIERではBTOに対応したゲーミングノートPCも製造している。
内部はこのようになっている。カスタマイズできる箇所は主にメモリとストレージ。
バッテリーの取り外しが可能なので、予備を用意しておくこともできる。

実用性に重きを置いた高コストパフォーマンスなゲーミングPCを拡充生産体制を強化して最短で当日出荷も目指す

――:今後のFRONTIERの展開について、明らかにできるところがあれば教えてください

組み立てスペースの増床が予定されており、現在の倍程度の規模にすることが予定されている。
現在ノートPCなどは翌日出荷サービスが利用できるが、増床後は当日出荷サービスの実施も検討しているという。
FRONTIERのラインアップのなかで光るゲーミングPCは現在1種類。今後もこのタイプのPCが大幅に増えることはなさそうだが、その分コストパフォーマンスの高い実用性能重視のPCが充実することになりそうだ

[吉岡氏]:今の生産能力は最大で月産3,200台ほどですが、より短納期で納品できるように、ということで、工場内のレイアウト変更をしている真っ最中です。

 組み立てのための作業スペースを倍近くに広げますので、2019年度内には生産能力も倍近くの月産6,000台超となる予定です。将来的には、午前中にいただいた注文は即日出荷するようなオプションも用意したいと考えています。

[吉岡氏]:工場はそうやって拡張しますが、当面の目標はよりブランドの認知を上げることと、製品ラインアップの拡充、サービス・サポートのさらなる充実ですね。

 サポートについては2017年に内製化して、お客様の声を製品開発に活かしていく体制を作り上げましたが、しっかりした製品をつくって、認知向上とラインアップ増加でユーザーの裾野を広げて、お客様の悩みに答えられるようなコミュニケーションが取れるブランドを作り上げたいと思っています。

――:ラインアップを充実させたいとのことですが、具体的な方向性はどのようなものなのでしょうか。

[吉岡氏]:ゲーミングPCに関してはもっと選択肢を広げたいですね。今は、まさにゲーミングPC、というようなモデルは少なく、あとはシンプルなものが多い。

 ですので、カラーリングを黒以外にも増やしたり、細部のデザインに凝ってみたりなど、バリエーションを増やすようなチャレンジをしていきたいと思っています。

 今よく売れているのは、ゲームプレーに適した高性能なビデオカードを搭載したタイプです。ゲーム入門者向けに「ゲーミングPCとはこういうものだ」というような鉄板商品を提供できれば、次の買い替えタイミングではより高付加価値のモデルを選んでもらえるかもしれません。

 FRONTIERでは信頼性の高い、それでいてコストを抑えた部品を厳選して、コストパフォーマンスを意識した商品を取り扱っています。光るPCもトレンドの1つではありますが、コスト面を考えると、派手さよりは実用性の方を攻めていく方がいいと思っています。これからもそういったラインアップ作りをしていければと思っていますね。

【BTOパソコンのブランド「FRONTIER」】

[製作協力:FRONTIER]