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2019年のフルHD~WQHDゲーミングはGeForce RTX 2060 SUPERで攻めろ!

静かで冷えて高クロックの「MSI GeForce RTX 2060 SUPER GAMING X」 text by 芹澤正芳

GPUにGeForce RTX 2060 SUPERを搭載するMSIのGeForce RTX 2060 SUPER GAMING X。実売価格は62,000円前後

 2019年7月2日に発表されたNVIDIAの新GPU「GeForce RTX 2060 SUPER」。スペック的には既存のGeForce RTX 2070とGeForce RTX 2060のちょうど間に入るポジションの製品で、7月9日より各ビデオカードメーカーから製品が発売されている。

 ここでは、その中からMSIの「GeForce RTX 2060 SUPER GAMING X」を紹介する。

TWIN FROZR 7 Thermal Designによる強力な冷却

 MSIのビデオカードと言っても、その数は非常に多く、性格もそれぞれ異なる。その中で「GAMING X」と冠するビデオカードは、OC動作でスペックよし、MYSTIC LIGHT対応のRGB LED内蔵と演出もよしのハイグレードタイプだ。GeForce RTX 2060 SUPER GAMING Xでは、ツインファンの大型クーラー「TWIN FROZR 7 Thermal Design」を採用し、ブーストクロックは1,695MHzと定格の1,650MHzより45MHzアップとなっている。

GPU-Zの画面。OCモデルの本機のブーストクロックは、リファレンス仕様の1,650MHzに対して1,695MHzに設定されている

 TWIN FROZR 7 Thermal Designは、2種類の羽根を交互に組み合わせて空気の流れを加速させるトルクスファン 3.0、アルミと銅を組み合わせたヒートシンク、60℃以下の低負荷時にファンを停止させるZero Frozr機能などを組み合わせたもの。これにより、高い冷却性と静音性の両立を実現しているのは、同社の得意とするところである。

異なる羽根を交互に配置することで冷却力を高めるトルクスファン 3.0を採用
背面にはクーラーなどの重さによる基板のたわみを防ぐバックプレートを備える
ヒートシンクとヒートパイプによっても冷却を強化している。またGPUとヒートシンクの間に塗るシリコングリスにもこだわっていると言う

 カード長は24.8cmとOCモデルとしてはコンパクト。補助電源も一部ハイエンドモデルは8ピン+6ピンという構成も見られるが、本製品は8ピンだけと扱いやすい。ただ、厚みは3スロット分ある点は注意しておきたい。また、出力はDisplayPort 1.4が3基、HDMI 2.0bが1基の合計4系統だ。

電源は8ピンが1系統。推奨電源は550W以上だ
映像出力はDisplayPort 1.4が3基、HDMI 2.0bが1基。Type-C出力は持たない
カード長は24.8cmとOCモデルのGeForce RTX 2060 SUPERとしては短いほうだが、GeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionに比べると若干長い
厚さは3スロット分のスペースが必要だ。右はGeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition。こちらは2スロット厚

GeForce RTX 2070に肉薄する実力を見せる

 次は実際の性能をチェックしていこう。比較対象は、デュアルファン/定格仕様のGeForce RTX 2070搭載カード、NVIDIA GeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition、NVIDIA GeForce RTX 2060 Founders Editionの3枚だ。テストには、定番3Dベンチマークの「3DMark」、人気MMORPGベースのベンチ「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、人気バトルロイヤルの「フォートナイト」に加え、レイトレーシング対応タイトルとして「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」を使用した。

【検証環境】

CPU: Intel Core i7-9700K(3.6GHz)
マザーボード: Intel Z390マザーボード
メモリ: G.Skill F4-3600C19D-16GSXW(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2、※PC4-21300で動作)
ストレージ: Lite-On Plextor M8Pe PX-512M8PeGN[M.2(PCI Express 3.0 x4)、512GB]
OS: Windows 10 Pro 64bit版
室温:24℃、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:3DMark-Time Spyデモモード実行中の最大値
電力計:ラトックシステム REX-BTWATTCH1、フォートナイト:プレイグラウンドのリプレイデータ再生時のフレームレートをOCATで測定、シャドウ オブ ザ トゥームレイダー:内蔵ベンチマークで測定

3DMark v2.9.6631
Time Spy ExtremeやFire Strike Ultraなど負荷の高いテストほどGeForce RTX 2070のスコアに迫っている
ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズベンチマーク(画質"最高品質")
どの解像度でもRTX 2060 SUPER Founders Editionを引き離し、GeForce RTX 2070に近くなっている
(C)2010 - 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

 3DMarkはスペック順にキレイに並んでいるが、注目は本製品とGeForce RTX 2070のスコアが近いことだ。また、GeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionとはそこそこスコア差が開いており、さすがOCモデルと言える。これはファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークでも同じ傾向だ。

フォートナイト(画質"エピック"、平均fps)
フルHDでは負荷が軽過ぎて差はないが、WQHD以上ではGeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionをはっきりと上回り、GeForce RTX 2070と変わらない性能を見せている
(C)2019, Epic Games, Inc.

 やや軽めのゲームとしてフォートナイトの結果を見ていこう。プレイグラウンドのリプレイデータ再生時のフレームレートをOCATで測定した。フルHDでは負荷が低過ぎて大きな差は出ていないが、WQHD以上では明確な差が出ている。ここでもGeForce RTX 2070とほぼ同じ数字を出している。

シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(Direct X12、画質"最高"、平均fps)
GeForce RTX 2070とはほぼ同じフレームレート。同時に、ミドルレンジクラスのGPUで4K解像度プレイするのは厳しいのが分かる結果だ
(C)2018 Square Enix Ltd. All rights reserved.
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(DXR"最高"、画質"最高"、平均fps)
レイトレーシング(DXR)を使うレイトレースシャドウクオリティを最高設定にするとWQHDでも平均60fpsをキープできない
(C)2018 Square Enix Ltd. All rights reserved.
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(DXR"中"、画質"最高"、平均fps)
中設定まで下げればWQHDでも快適にプレイできるレベルになる。DXRを有効にしてもGeForce RTX 2070とほぼ同じフレームレートである点は変わらない
(C)2018 Square Enix Ltd. All rights reserved.

 シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(内蔵ベンチマークを利用)ではGeForce RTX 2070とほぼ差がないと言ってよいほどだ。ちなみにこのゲームでは、DXRはレイトレースシャドウクオリティという項目で用意されている(影の表現でレイトレーシングが使われているため)。最高、高、中の設定があり、ここでは最高と中でテストを行なった。さすがに最高設定ではフレームレートがガクッと下がる。中設定ならWQHDでも平均60fpsをキープできるので、プレイする解像度に合わせて調整するとよいだろう。

静かで冷えて、高クロック動作も維持と文句なし

 シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(DXR最高設定、4K解像度)を約30分動作させたときの動作クロックと温度の推移を「HWiNFO」で追跡した。GeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionと比較している。動作クロックを見ると、本製品は1,905~1,935MHz辺りで動作、一方でGeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionは1,845MHz~1,860MHzで動作。スペック上のブーストクロックではわずか45MHzの差だが、実際の動作クロックでは大きな差が出ている。これがGeForce RTX 2070に肉薄するスコアを出している秘密と言えるだろう。

GPUクロックの推移。多くのシーンで1,905~1,935MHzとGeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionを上回るクロックで動作しているのが分かる

 温度も本製品のほうが66℃前後で安定と70℃前後のGeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionよりも冷えている。さらに動作音もGeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionよりも静かだった。TWIN FROZR 7 Thermal Designの実力がよく分かる結果だ。

GPU温度の推移。高クロック動作ながらGeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionよりも約4℃も低いとクーラーの性能の高さが分かる

 OS起動後10分後をアイドル時、3DMarkのTime Spyデモモード実行時の最大値を高負荷時としてシステム全体の消費電力も測定した。こちらは順当な結果だ。GeForce RTX 2070と性能も近いが消費電力も同等レベルにあることが分かる。

システム全体の消費電力は性能を考えると順当な結果だ

 ここまでの検証で、本製品がRTX 2070に近い性能を持ちながら、比較的コンパクトで冷却力も高く、動作音も静かとまさにスーパーな1枚であることが分かる。クーラーのできのよさ、RTX 2070に匹敵する性能と扱いやすいサイズ感、MYSTIC LIGHTへの対応などを総合的に考えると、フルHDからWQHDの解像度でゲームをプレイするユーザーにとって魅力的な選択肢であることは間違いない。また、RTX 2060との性能面での差別化もハッキリしており、NVIDIAの言うところの「メインストリーム」向けのGPUをこれから狙うのであれば、選んで損のないハイポテンシャルな製品と言ってよいだろう。