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現行GeForceの性能を人気ゲームで一斉比較!ZOTAC製NVIDIA GeForce搭載カード11製品で検証
フルHD/WQHD/4K環境でApex LegendsやMHWなどの動作をチェック text by 加藤勝明
2019年10月31日 06:00
メジャーリーガー、ダルビッシュ有氏の「GeForce RTX 2080 Tiというものが何のためのものか分からない(意訳)」という問いがTwitterでバズった(参考記事:ダルビッシュ選手にもわかるようにGeForce RTX 2080 Tiの解説記事を翻訳してみる)のはつい先日のことだ。普段PC、とくに自作PCに慣れ親しんでいる人には非常に簡単にイメージできるが、そうでない一般の人もたくさんいるのだ、ということを再認識させられた。
だが「GeForce RTX 2080 Tiは、PCに組み込まれる“ビデオカード”に搭載されるチップであり、PCのグラフィックス性能を向上させる。とくにゲーム画面の描画を美しく、動きをなめらかにする効果がある」と即答できるわれわれでも、具体的にどの程度のパフォーマンスが出せるのか、さらに同世代のGeForce間の性能がどの程度のものか、までは明確にイメージすることは難しい。ハイエンドであるRTX 2080 Tiと、一番下のGTX 1650の性能差は実際のゲームタイトルではどの程度なのか、しっかり把握できている人は少ないだろう。そこで、今回はZOTAC製の現行ビデオカードをすべて同じ環境、横並びで比較し、各GPUの立ち位置を明らかにしていきたい。
現行GeForceの代表的なモデルとZOTAC製の搭載カードを整理
現行のGeForceの代表的なモデルのラインナップと、これらを搭載したZOTAC製ビデオカードについて解説する。今回の検証で使用したのもの同じカードだ。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme(実売価格:210,000円前後)
DXR(リアルタイムレイトレーシング)を専用のハードで高速に処理できる機能を備えた最新世代(Turing世代)のGeForceの最上位が「GeForce RTX 2080 Ti」。そのRTX 2080 Tiを搭載したビデオカードはさまざまなメーカーが出しているが、その中でもZOATACの「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」はスペック面でもビジュアル面でもひときわ目立つ存在だ。
3スロット占有&3連ファン搭載の巨大クーラーと、それを囲むように設置された多数のアドレサブルRGB LEDの印象が強烈。この巨大なクーラーによる高い冷却性能は特筆すべきもので、リファレンスクロックよりも高クロックで動作(ブーストクロック1,815MHz)するようチューニングされたハイエンド好きのためのカードだ。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER AMP Extreme(実売価格:110,000円前後)
RTX 2080 Tiより1グレード下のGPUがRTX 2080 SUPERだ。もともとRTX 2080 Tiに続くモデルとしてRTX 2080が存在していたが、今年7月にラインナップ調整が入り、RTX 2080 Tiより下、RTX 2080より上のGPUとして、RTX 2080 SUPERが登場したのだ。AMP Extremeの名を冠している製品であるため、先に紹介したRTX 2080 Tiカードと同じ、高い冷却性能を備える超大型クーラーを搭載している。
RTX 2080 SUPERは設計的にはRTX 2080のベースになったTU104コアのフルスペック版であるため、メモリバス幅は256bit、NVLinkのリンク数も1(RTX 2080 Tiはそれぞれ352bit、2リンク)となっている。5K/8Kで高フレームレートを出すならRTX 2080 Tiのほうが適切だが、4Kでビデオメモリの消費量が8GBまでなら、RTX 2080 SUPERが好適だ。メモリ速度もRTX 20シリーズとしては最速の15Gbps相当に引き上げられている点も見逃せない。ぐっと手が出しやすくなった現実的なハイエンド機、と言っていいだろう。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 AMP Extreme(実売価格:120,000円前後)
上のRTX 2080 SUPERとRTX 2080は設計のベースが同じTU104コアであるが、内部に組み込まれているCUDAコア(ゲーム画面描画時の演算を行なう極小サイズ計算機)の数が若干少ない。Turing世代のGeForceの登場と同時に発表されたGPUで、性能・価格ともにハイレベルだったRTX 2080 Tiに比べるとぐっと手が出しやすいハイエンド機、という位置付け。
性能的には、SUPERが付いて総合力が上がったRTX 2080 SUPERに若干およばないものの、クーラーの仕様などは上のZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER AMP Extremeと同一だ。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER AMP Extreme(写真上、実売価格:75,000円前後)、ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER MINI(写真下、実売価格:67,000円前後)
PCパーツは、世代(シリーズ)が同じなら“型番の数字”が大きいほうが性能は高くなることが多い。となればRTX 2080の下に来るのはRTX 2070だが、RTX 2070のやや上、RTX 2080のやや下に位置するのがRTX 2070 SUPERだ。
ただこの“やや上/やや下”という表現は、一般論であって、強力なクーラーを搭載し、動作クロックを定格よりも高く設定したファクトリーOC(オーバークロック)モデルの場合はあてはまらないことがある。とくにZOTAC製品のように強力なクーラーを搭載した製品の場合は、クロックが低めのRTX 2080を搭載した製品と性能的に大差ないこともあるのだ。
今回RTX 2070 SUPERは強力なクーラーを搭載した「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER AMP Extreme」のほかに、クロックは定格だがカードの長さを210mmに切り詰めた「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER MINI」の2枚を準備した(MINIのテストは3DMarkおよび消費電力のみ実施)。性能的にはファクトリーOCされたAMP Extremeのほうが上だが、MINIは旧世代のPCケースや小型PCに組み込みやすいというメリットを備えている。サイズか性能か、どちらを重視するかで決めよう。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 AMP Extreme(実売価格:76,000円前後)
RTX 2070 SUPERのすぐ下にくるのがRTX 2070。RTX 2080と同じく、GeForce RTX 20シリーズ初期から投入されている製品だ。“SUPER”の登場により、位置付けとしては新ハイエンド下位モデルのRTX 2070 SUPERと新メインストリームのRTX 2060 SUPERの間というポジションになる。
RTX 2070は上位のRTX 2070 SUPERに対しCUDAコア数が少なく、NVLinkによるマルチGPUに対応しないという制限があるが、今のPCゲームは積極的にマルチGPUをサポートしない傾向が強い(=2枚挿しても効果が得られない)ため、1枚で運用する分には強烈なディスアドバンテージとはならないだろう。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 SUPER MINI(実売価格:50,000円前後)
RTX 2060を強化した新たなメインストリームGPUとして登場したのがRTX 2060 SUPERだ。これを搭載した「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 SUPER MINI」は、型番からも分かるとおり、カードの全長を210mmのコンパクトサイズに抑えて組み込みやすさを重視した製品だ。
RTX 2060 SUPERは、RTX 2060に対しCUDAコア数が多いというのはもちろんだが、メモリバス幅やROPといった“CUDAコアの処理結果をディスプレイに送り込む時に効いてくる部分”のスペックが高いことがアドバンテージになっている。また、ビデオメモリ容量が6GBから8GBに増加した点にも注目。つまり画面解像度を高くするほど、RTX 2060とRTX 2060 SUPERの差が開き、SUPER付きのほうが有利になってくる、というわけである。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 AMP(実売価格:50,000円前後)
ZOTAC製ビデオカードにはいくつかのグレードがあるが、より高性能なクーラーを搭載しファクトリーOCも高めにした限界性能重視タイプが“AMP Extreme”であり、ファクトリーOCをややマイルドにしたのが“AMP”となる。
RTX 2060はRTX 2080 Tiを筆頭にするRTX 20シリーズの中でも最廉価版というべき存在。ビデオメモリが6GBとやや少ないため、PCゲームの解像度はフルHD~WQHD程度にしておきたい。
RTX 20シリーズはリアルタイムレイトレーシングレイトレーシング対応がとくに強調されがちなGPUだが、筆者的にはゲームの描画処理をAIで高速化する「DLSS」対応も強く推したい。レイトレーシングもDLSSもゲーム側の対応が必須だが、とくにDLSS対応ゲーム(モンスターハンター:ワールドなど)では劇的なパフォーマンスアップが期待できる。レイトレーシングやDLSSを体験してみたいが、予算は抑えたいという人に好適な製品と言える。
ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 Ti AMP(実売価格:39,000円前後)
RTX 20シリーズは、性能だけではなく将来に向けた付加価値を重視した設計であるため、やや値段も高め。だがレイトレーシング(DXR)やDLSSに対応しないゲームのほうがまだ圧倒的多数を占めている現状だと、RTX 20シリーズに踏み込みづらい……と考えている人もいるだろう。そういう人たちのために、RTX 20シリーズからレイトレーシングやDLSS対応の回路を取り去ってコストダウンしたのがGTX 16シリーズ。そのGTX 16シリーズの最上位に位置付けられるのがGTX 1660 Tiだ。
廉価版GPUとはいえ、本機はデュアルファンを搭載したクーラーを搭載。マイルドなファクトリーOCモデルとなっている。クーラーの冷却性能はブーストクロックの高さと持続力に影響する。ミドルレンジGPU製品といえどもこの点に抜かりがないのが“AMP”を冠するZOTAC製品ならでは、だ。
ちなみに、GTX 16シリーズのうち、GTX 1660 Tiと1660はリアルタイムレイトレーシング専用の回路を持たないが、CUDAコアを利用してレイトレーシングの処理を実行することができるため、レイトレーシング対応ゲームも動作する。ただしパフォーマンスはRTX 2060に大きく届かないため、画面の雰囲気を味見できる、程度のものと考えよう。
ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 AMP(実売価格:37,000円前後)
GTX 1660 Tiのすぐ下に位置するのがGTX 1660。ビデオメモリがGDDR5(GTX1660 TiはGDDR6)になり、CUDAコアが少し減った廉価版だ。本機もレイトレーシングを活かしたゲームは動くが、動作確認用という側面が強い。PUBGやApex Legendsといったeスポーツ性が高いゲームをフルHD&高フレームレート(120~144fps)で遊びたい人にベストの費用対効果を提供してくれるだろう。
ちなみに、RTX 20シリーズとGTX 1660 Ti/GTX 1660に組み込まれている動画エンコーダ「NVEnc」は同一の仕様となっており、従来のGeForceシリーズ&GTX 1650に比べて高画質かつ低負荷でゲーム画面を録画あるいは配信することが可能になっている。ゲーム動画の録画&配信の質向上を考えているなら、GeForceのRTX 20シリーズやGTX 16シリーズは狙い目だ。
ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 OC(実売価格:19,000円前後)
現行GeForce、とくに「GTX 16シリーズ」の最廉価モデルがGTX 1650だ。GTX 1660に比べかなりスペックダウンされているため、描画負荷がそれほど重くないゲーム(Apex Legendsやレインボーシックス シージなど)フルHDで楽しむ人のためのGPUで、現時点で補助電源ケーブルなしで動作するビデオカードで、もっともPCゲームでのパフォーマンスが期待できるのがこのGTX 1650となる。
だがGTX 1650の真の魅力は価格よりも組み込みやすさにある。GTX 1660以上のビデオカードはカード自体に補助電源ケーブルを接続しないと動作しないが、PC本体の電源ユニットがあまりに旧型だったり、低出力だったりすると補助電力ケーブル自体がないこともある。こういう場合、本機のような補助電源不要で動くビデオカードを使うのがベストだ。もちろん組み込む人が「ビデオカードの補助電源ケーブルって何?」レベルの場合にも非常に有効だ。カード長151mmのシングルファンタイプというシンプルで扱いやすい形状もこういった用途には適している。
このほか、評価用のベースラインとして、GTX 970を搭載した旧世代のカードも用意した。
【検証環境】
CPU: Intel Core i9-9900K(8C16T、3.6GHz、最大5GHz)
マザーボード: GIGABYTE Z390 AORUS MASTER(rev. 1.0)(Intel Z390)
メモリ: G.Skill F4-3200C16D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※PC4-21300で動作)
システムSSD: Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
データSSD: Intel SSDPEKNW020T8X1[M.2(PCI Express 3.0 x4)、2TB]
電源: SilverStone Strider Platinum ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum)
CPUクーラー: NZXT Kraken X72(簡易水冷、36cmクラス)
OS: Windows 10 Pro 64bit版
電力計: ラトックシステム REX-BTWATTCH1
定番「3DMark」で力比べ
実ゲームで試す前に、ビデオカードの性能評価に多用される「3DMark」のスコアを確認しておこう。テストはDirectX 11ベースの“Fire Strike”および“Fire Strike Ultra”、DirectX 12ベースの“Time Spy”および“Time Spy Extreme”、さらにレイトレーシングに対応したカードについては、“Port Royal”も検証に加えた。このテストでは単純なスコアそのものより、どの辺りの製品からスコアが急激に伸びる/落ちるかを見ておきたい。
なお、本テストでは参考として、2枚のFounders Editionのスコアも掲載しておく。
ビデオカードは同世代(ここではRTX 20シリーズとGTX 16シリーズ)なら、搭載されているGPUの型番の数字の大きいほうが高性能。ここでもそれが見事に再現されている。ここで注目すべきは、RTX 2080 TiとRTX 2080 SUPERの間、RTX 2060とGTX 1660 Tiの間、さらにGTX 1660とGTX 1650の間に大きなスコアのギャップが存在することだ。もともとRTX 2070とRTX 2060の間にも大きなギャップがあったが、RTX 2060 SUPERの登場により、それが目立たなくなっている。
また、レイトレーシングを利用した描画性能に関しては、RTX 2060とGTX 1660 Tiの間にかなり大きなギャップ(スコアは4,250ポイントから1,699ポイントに急落)があることが分かる。これはRTX 2060はレイトレーシングの処理の一部をハードウェアで処理できるのに対し、GTX 1660 TiはCUDAコア上でソフトウェア的に処理しているためだ。レイトレーシングを使ったゲームを遊ぶのであればRTX 20シリーズだが、GTX 16シリーズだとレイトレーシングの動作を確認する程度にとどまる、ということだ。
最後に、GTX 970のほうがGTX 1650よりもスコアが高くなっているが、これは驚くに値しない。GPUの設計が2世代前ではあるが、GTX 970は当時の準ハイエンド的位置付け(価格は別として、今だとRTX 2070辺り)であるため、最廉価版であるGTX 1650のほうが下回るのはムリもない。逆に言えば、GTX 970ユーザーが描画性能向上を期待するなら、最低でもGTX 1660、2倍のパフォーマンスを期待したいならRTX 2070以上が必須ということになる。
アイドル時/高負荷時の消費電力の比較
3DMarkのスコアが高いビデオカードを使えば、その分ゲーム画面もなめらかに表示されるようになるが、高性能であることは電力消費も上がる傾向にある。そこでラトックシステム「BT-WATTCH1」を利用し、システム全体の消費電力がどの程度異なるかもチェックした。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkの“Time Spyデモ”実行中のピーク値を“高負荷時”としている。
なお、本テストについても2枚のFounders Editionの結果を参考として掲載する。
3DMarkのスコアの序列とほぼ同様に、GPUの型番の数字の大きいものほど消費電力が大きい、ということが示された。ただ、3DMarkのスコアでギャップができていた場所、とくにRTX 2080 TiとRTX 2080 SUPERの消費電力を見ると、ギャップと言えるほどの差は出ていない点に注目したい。また、RTX 2060 SUPERとRTX 2060はほぼ同レベルの消費電力だが、前者のGPU動作クロックは定格仕様なのに対し、後者はファクトリーOC仕様(定格より消費電力は大きくなる)であるという理由がある。
とはいえ、一番消費電力の大きいRTX 2080 Tiでも高負荷時は500Wを越えない。もちろん手動でオーバークロックして高負のきわめて高い演算をさせる(例:仮想通貨のマイニングなど)、というような用途であれば話は別だが、普通にゲームで使う分なら電源ユニットは650W~700Wもあればまかなえる。ただし電源ユニットの補助電源ケーブルが足りないと後で苦労するので、電源ユニットから8ピンの補助電源が二つ取り出せるものに限る、という制約がある点に注意したい。
描画軽めの「Apex Legends」でのパフォーマンスを見る
3DMarkはビデオカードの性能を比較するための指標を提示してくれるが、実ゲームでのと必ずしも一致するわけではない。ゲームエンジンの最適化や画面の描き込み度合いの違い、ゲーム自体のターゲット(基本無料で間口を広くするゲームか、買い切りの超大作か、など)により変わってくる。今回は描画負荷の違うゲームを何本かチョイスして実際に比較してみた。
まずは描画負荷の軽い「Apex Legends」で試してみた。画質は最高画質とし、フルHD/WQHD/4Kそれぞれの解像度におけるフレームレートを計測する。トレーニング用ステージにおける一定のコースを動いたときのフレームレートを「CapFrameX」で計測した。
この結果から読み取れる重要なポイントは、平均fpsが144fps辺りで頭打ちになってしまう、という点だ。高性能なビデオカードを使っても際限なくフレームレートが上がるわけではなく、Apex Legendsのようにゲーム側で制限をかけているゲームも少なくない。あまり高フレームレートを出し過ぎると、CPUの処理が大変になるなど、ビデオカード以外の部分が問題になる(=動画配信など、他のアプリの動作への影響が出てくる)こともあるためだ。
今回の検証では、フルHDだとRTX 2060以上のGPUだと平均144fpsの壁となって立ちふさがり、WQHDだとRTX 2070 SUPER以上で壁になる。液晶の解像度がフルHD~WQHDなら、RTX 2060またはRTX 2070 SUPERより高性能なGPUを使ってもほとんど意味がない、ということだ。4Kともなると、RTX 2080 Tiでないと120fpsの壁を超えることはできない。
だがこれは裏を返すと、自分の液晶のリフレッシュレート(1秒間に画面を書き換える頻度)が60Hzなら、ビデオカードが60fps以上出せてもそれを目視し、恩恵を受けることはできない、ということになる。つまりフルHDならGTX 1650でも平均60fpsは出せるのだ。ただ最低fps(下位1%点)を見ると、GTX 1660以上で80fpsを超えるため、ゲーム画面を60fpsで張り付かせたい場合は、GTX 1650でなくGTX 1660を選ぶほうが賢い、と言えるだろう。
「モンスターハンター:ワールド」はDLSSの活用で化ける
PC版「モンスターハンター:ワールド」の描画負荷は中~やや重めといったところだ。ゆえに画質“最高”設定でビジュアルを重視するとなると、それなりに強力なGPUが必要となる。そこで今回は集会エリアにおける一定のコースを移動する際のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。解像度はApex Legendsと同じフルHD/WQHD/4Kとしている。
Apex Legendsと比較すると、同じ解像度でもフレームレートがだいぶ下がっていることが分かる。つまりモンスターハンター:ワールドのほうが描画負荷は格段に高いということである。Apex Legendsのように高フレームレートでプレイする必要性があまりないゲームではあるが、俊敏な攻撃を繰り出してくるモンスターの動きを見切ることを考えると、最低fpsが60fps以上、可能であれば平均120fps程度出せるビデオカードで楽しみたいところだ。前者の条件でいけばRTX 2060以上、後者の条件ならRTX 2080以上が好適だ。
ここでポイントになるのは二つ。まず3DMarkでGTX1650をスコアで上回っていたGTX 970だが、このゲームではGTX 1650のわずか上レベルにとどまっている。これは2世代前のGTX 970の設計が古いため、モンスターハンター:ワールドのゲームエンジンが効率よく処理できないためだと推察することができる。
もう一つのポイントは解像度を上げるとフレームレートがどんどん下がっていくことだ。解像度を上げると描きかえるべき画面のドット数が増えるのでフレームレートが落ちるのは当たり前だが、Apex Legendsより描き込みの負荷が高いため、解像度上げのインパクトは大きい。4K設定では最上位のRTX 2080 Tiでさえも平均50fpsを割り込んでしまう。
しかし、モンスターハンター:ワールドはRTX 20シリーズのみが対応する「DLSS」を利用することができる。DLSSの仕組や構造についての詳細な解説は省くが、モンスターハンター:ワールドでは“AI/ディープラーニングを利用してアンチエイリアスの処理を高速化”することができる。
ただしDLSSは適用解像度が制限されており、モンスターハンター:ワールドの場合は解像度をWQHD以上にしないと有効にすることはできない。現時点では、フルHD液晶しかない場合はDLSSが活用できない点に注意したい。
上のグラフから分かるとおり、WQHD時ではDLSS無効のフルHD時に近いフレームレートが、4K時ではWQHD時に近いフレームレートといったように、40%程度のパフォーマンス向上が得られる。RTX 2080 Tiなら4Kでも60fpsにほぼ張り付くフレームレートが得られるのは大きなメリットだ。
今後DLSSに対応するゲームがどの程度増えるかは不明だが、DLSSはレイトレーシングとセットで実装されることが多いため、レイトレーシング対応ゲームが増えればDLSSのメリットも自動的に大きくなると言えるだろう。
スーパーヘビー級「Metro Exodus」におけるレイトレーシングの性能
最後に試すのは「Metro Exodus」だ。いわゆる“ポストアポカリプスもの”の陰鬱な世界を超絶的な描き込みで表現するため、このゲームの描写はとりわけ重い。このゲームはレイトレーシング(DXR)にも対応しているが、まずはレイトレーシングを無効にして、DirectX 12モードでのパフォーマンスを計測する。検証はゲームに同梱されているベンチマーク専用アプリを利用し、画質“Extreme”におけるフレームレートを計測した。
まずはレイトレーシング(DXR)を使用しない状態でのテスト結果から。DXRなしでもご覧のとおりモンスターハンター:ワールドよりさらに輪をかけて重い。フルHDでも平均60fpsを越えられたのはRTX 2080 Tiのみで、GTX 1660 Ti以下だと平均30fpsを割り込んでしまうという強烈な重さだ。RTX 2080 Ti以外のGPUでは、画質はExtremeではなく、1~2段落とした設定にするのが現実的となるだろう。
ではこのMetro Exodusでレイトレーシングを有効にしたときのフレームレートを見てみよう。WQHDと4K時についてはDLSSも有効にした状態で計測している。また、DXRに対応していないGTX 1650とGTX 970は計測から除外している。
RTX 2070 SUPER~RTX 2080 SUPERで一部平均fpsが入り乱れている点はあるが、おおむねレイトレーシングなしのときよりフレームレートは15%程度低下する。レイトレーシング無効時と有効時におけるフレームレートの下落率はゲームによって異なり、モノによっては40%程度落ちるものもあるが、Metro Exodusはもともとの描画がきわめて重いため、この程度の下落率にとどまっているようだ。この場合でも平均60fpsでのプレイを目指すなら、フルHDでRTX 2080 Tiが欲しくなる。
まとめ:予算と遊ぶゲームに合わせて最適なGPU選択を
以上でZOTAC製GeForceカードを使った性能一斉比較は終了だ。Apex Legendsのように軽いゲームならGTX 1660辺りでも高フレームレートが出せるが、Metro Exodusのように重いエンジンを使ったゲームの場合はRTX 2080 Tiでも足りないこともある。
GPU選びのコツとしては、自分の遊びたいゲーム、遊ぶときに使うディスプレイと必要なフレームレート(60fpsでよいのか、120~144fps必要なのか、それ以上を追求するのか)をまず決めて、それに合致したパフォーマンスが出るGPUをチョイスするのが賢くムダのない道筋だ。
これに加えて録画や配信といった遊び方も視野に入れるなら、GPUに加えてCPUなどのパーツとのバランスにも気を使う必要が出てくる。予算、性能、ゲームの特性などなど、複数の要素を考慮に入れながらスペックを検討する作業は難しくもあるが、PCいじりの醍醐味でもある。また機会を改めて、別の環境、別のゲームでの実例を挙げながら解説・検証を行なってみたいところだ。
[制作協力:ZOTAC]