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DDR4-4000もいける第3世代Ryzen、MicronのOCメモリで高クロック動作を狙ってみた
当たりCPUならInfinity Fabric「1:1」モードでDDR4-3800も? text by 鈴木海斗
2019年11月5日 00:05
皆様こんにちは。オーバークロッカーのどーにゃこと鈴木海斗です。
今回は、Micronよりオーバークロックメモリ「Ballistix Elite 32GB (8GB×4枚) DDR4-4000 UDIMM(BLE4K8G4D40BEEAK)」をお借りできたので、最近なにかと話題の第3世代Ryzenと組み合わせた際のパフォーマンスを簡単にテストして見たいと思います。
なお、今回使用している個体とは違いますが、「Ballistix Elite DDR4」はメモリ動作クロックのワールドレコードを更新したモデルでもあるので、性能には期待したいところです。
DDR4-4000対応をうたうオーバークロックメモリ「Ballistix Elite」
Micronメモリといえば、「鉄板」「王道」「起源にして頂点」といったような、いわゆる堅実なメモリメーカーとして市場で高く評価されています。
そのMicronが本気でオーバークロックメモリを開発したとなれば、自然と血が滾るのはオーバークロッカーの性ですね。早速外観をチェックしていきましょう。なお、日本での発売は近日の予定となっています。
メモリはマットブラックを基調としたクールなデザイン。最近はLEDをありったけ搭載したメモリが多いですが、まさに武骨で堅牢なMicronメモリに対するイメージそのものを感じることができるデザインです。
あっさりDDR4-4000で起動、A-XMP設定で拍子抜けするほど簡単に動作
※オーバークロックはメーカー動作保証外の行為になります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。
今回の検証で使用した機材は以下の通りです。オーバークロックはメーカーの保証がない行為となり、個体差などもあるので、あくまでも今回テストした個体での動作結果として見てもらえればと思います。
CPU:Ryzen 7 3700X
マザーボード:MSI MEG X570 ACE
メモリ:Ballistix Elite 32GB (4x8GB) DDR4-4000 UDIMM
CPUクーラー:CORSAIR H100i RGB PLATINUM
電源:EVGA SuperNova 1600 T2 1600W Titanium電源
OS:Windows10 64bit Build 1903
室温:25℃
CPUはコストパフォーマンスに優れたRyzen 7 3700X、マザーボードはメモリクロックのオーバークロックに抜群の強さを見せるMSIから「MEG X570 ACE」をチョイス。簡易水冷クーラーは「Corsair H100i RGB PLATINUM」を採用しました。
メモリがスコアに影響し、実動作に近いベンチマークということで「Geekbench 5.0.1」を採用し、DDR4-4000動作時(A-XMPオート設定)とDDR4-3800動作時(Infinity Fabric 1:1/1:2モード手動設定)のスコア比較を行ってみました。なお、計測スコアのブレを防ぐため、CPUクロックはBIOS上で4GHzに固定しています。
まずはXMPの設定で動作できるのかを確認していきます。XMPはintel環境向けの規格なので、AMD環境で用いる場合は「A-XMP」という機能を使います。こちらは特に特別な設定は必要なく、BIOS上で「A-XMP」項目からプロファイルを読み込んで保存するだけでOKです。
さて、さっそくこのA-XMP機能を使ってオーバークロックを試してみたところ、何の問題もなくスペック通りの4000-18-19-19-39-1Tで起動しました。OS内でも快調に動作し、各種ベンチマークテストも問題なくパスしました。
BIOSの設定はただA-XMPの設定を読み込んだだけで、その他の項目の昇圧やマル秘テクニックなどは一切使っていません。
Ryzenといえば第1世代から「メモリオーバークロックに難あり」との評価をされてきましたが、その評価をすんなりと覆してくれました。メモリとの相性問題もこちらのBallistix Eliteとは無縁のようです。
第3世代Ryzenの性能が一番出る「Infinity Fabricv 1:1モード」で最高クロックを目指す、当たりならDDR4-3800で動作?
あまりにDDR4-4000がすんなりと動作してしまったので、Ryzen 3000系で一番性能が出るといわれているDDR4-3600~3800のレンジでどれくらい性能を引き出せるのか、Infinity Fabric Divider設定の違いとレイテンシの設定を詰めてチェックしてみました。
既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、第3世代Ryzenでは「Infinity Fabric Divider」という機能が実装されています。
第2世代Ryzenまでは、CPU間を接続するインターフェイスの「Infinity Fabric」とメモリクロックが同期されてしまっており、メモリ側が超高クロックで動作できたとしても、Infinity Fabric側が先に動作限界クロックに達してしまい、メモリのオーバークロックが行いにくい仕様になっていました。
第3世代Ryzenで新たに追加されたInfinity Fabric Divider機能を使用すれば、Infinity Fabricの動作周波数をメモリクロックの半分で動作させることが可能で、その分メモリクロックの大幅なオーバークロックが可能になりました。俗に、Infinity Fabric Divider無効時を「1:1モード」、有効時を「1:2モード」と呼ばれています。
ただし、Infinity Fabric Dividerのデメリットとして、Infinity Fabricの動作周波数がメモリの動作クロックの半分に落ちることになるので、「1:2モード」で見かけ上のメモリクロックが高くても、実動作ではクロックを下げて「1:1モード」で動作させたほうが高速に動作する、なんてことも大いに考えられます。
「1:1モード」でどこまでメモリクロックが伸ばせるのかは、マザーボードの設計や、CPUのメモリコントローラの個体性能、メモリの個体性能などによりますが、概ねDDR4-3600~3733あたりが1:1モードで動作する限界と言われています。
なお、Infinity Fabric Dividerが有効になっているかいないかを確認するには、CPU-ZのMEMORYタブが最もわかりやすいかと思います。以下は実際DDR4-3800に設定した際のInfinity Fabric Divider有効時と無効時のスクリーンショットで、この部分の数値から動作モードを簡単に確認できます。
手動で「1:1モード」と「1:2モード」を切り替えるには、MSI製X570マザーボードの場合はBIOS画面のMEMORYタブにある「FCLK Frequency」の項目を、ターゲットとしたいメモリ速度の半分に設定すると「1:1モード」に、1/4のクロックにすると「1:2モード」に切り替えることができます。
少しわかりにくいのですが、「1:1モード」といった項目が用意されているわけでは無く、動作クロックから選択する点には注意です。
実際に今回使用した機材でどこまで設定が詰められたのかを先に紹介しておきますが、「1:1モード」で動作させた場合、メモリ速度はDDR4-3800、レイテンシはCL16-17-17-36 1Tに設定することが可能でした。
第3世代RyzenはDDR4-3733動作あたりが限界と言われることが多いのですが、CPUのメモリコントローラの耐性が高い個体を用意し、なおかつメモリチップとマザーボードの性能も良ければ、DDR4-3800程度までは動作するようです。ちなみに、今回使用している個体は全て選別品などでは無いので、たまたま耐性が良いCPUだったのかもしれません。
節の冒頭でInfinity Fabricは「1:1モード」の方が性能が高くなると解説しましたが、これもテストしてみました。
「Geekbench 5.0.1」を使用し、DDR4-3800(CL16-17-17-36 1T)の「1:1モード」動作時、DR4-3800(CL16-17-17-36 1T)の「1:2モード」動作時、A-XMPで設定したDDR4-4000(CL18-19-19-39 1T)の「1:2モード」動作時の3パターンでスコアを比較してみました。
Single-Core Scoreは、DDR4-3800同士では性能差が見られませんでしたが、Multi-Core Scoreは「1:1モード」動作させた方がスコアが上回っています。
トータルの性能で見ても、DDR4-4000「1:2モード」よりもDDR4-3800「1:1モード」が上回っており、必ずしもメモリクロックが高い方がパフォーマンスも上になるわけでは無いのが第3世代Ryzenの面白いところです。
ちなみに、Ballistix Eliteはレイテンシを比較的下げやすい印象で、高速化しやすいメモリと言えるかもしれません。短時間触った感じでは、手動で設定を詰める楽しみもあるメモリといった感触でした。
OCメモリも扱いやすくなった第3世代Ryzen、自作らしく楽しむなら高クロックメモリもアリ
Ballistix Eliteと第3世代Ryzen 3000系の相性は素晴らしく、A-XMPを活用した自動オーバークロックだけでなく上級者向けの手動オーバークロックも十分楽しめるという結果になりました。
今回のように、メモリクロックをDDR4-3800以上のような高クロック帯に設定し、レイテンシも下げて使用しようとする場合、耐性の低いメモリでは動作が不安定になってしまったり、そもそも起動しないといった状態になってしまうことが多いです。
その場合、あえてターゲットとするメモリクロックよりも上の周波数で動作するオーバークロックメモリを使用し、メモリ側にマージンを設けることで安定性が向上し、パフォーマンスを向上させやすくなる場合もあります。今回のように、DDR4-4000のメモリをDDR4-3800で使うといったやり方はテクニックの一つになります。
Ryzenで見た目の速度だけで無く実動作時のパフォーマンスにもこだわる方は、是非目標とするクロックの一段階上のメモリを試してみることをおすすめします。第3世代Ryzenで快適に動作するオーバークロックメモリを探している方は、Ballistix Eliteを選択肢に加えることを検討してみてはいかがでしょうか。