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【一斉検証】フォートナイト、モンハンワールド、CoD:MWを高fps&高画質でプレイするならどのビデオカード?

ZOTAC GAMING GeForce RTXの主力ラインナップでテスト text by 加藤勝明

処理性能、付加価値ともに現役最強シリーズ「GeForce RTX 20シリーズ」

 この冬、PCでゲームをガッツリ遊びたいと思っている人は多いことだろう。今使っているPCのゲーミング性能に不満がある場合、PCの買い換え、ビデオカード交換、自作派であれば新規作成などが選択肢なってくるが、いずれにしてもまず気にしたいのはビデオカードの性能。PCゲームを快適に遊ぶには、ビデオカードは設計が新しく、かつ性能が高いものを選ぶのがオススメだ。4年くらい前のビデオカードでも解像度や画質を落とせば遊べる……という主張もあるが、旧世代のビデオカードに搭載されているGPUは、最新ゲームが使っている描画技法(シェーダー)の処理が遅かったり、最悪対応していない映像表現があったりするからだ。

 では今PCゲーミング環境を整えたいなら、どんなGPUを搭載したビデオカードを選ぶべきか? 2018年から2019年にかけて新しいGPUが数多く登場したが、映像表現の幅や絶対的パフォーマンス、そして魅力的な製品の選択肢が豊富という点において強いのは断然GeForce系だ。

リアルタイム・レイトレーシングを筆頭に多くの付加機能を搭載するGeForce RTX 20シリーズ。写真は最新のRTX 2080 SUPERのチップ

 現在のGeForceは“Turing”と呼ばれるアーキテクチャをベースにしているが、値段が安めのGTX 16シリーズ(GTX 1650~1660 Tiまで)、業界的には“Turing GTX”と呼ばれるシリーズは機能を削減した廉価版だ。軽めのゲームをフルHD液晶で遊ぶスタイルならこれでもよいが、もっと快適もしくは画質を重視したプレイスタイルを目指している人にはややもの足りないかもしれない。リアルタイム・レイトレーシング(DXR)やAIを利用したアンチエイリアシング技術(DLSS)、そして144fpsオーバーの高フレームレートといった極上のゲーミング環境を手に入れたい場合には、Turingアーキテクチャ本来の機能をすべて備えたRTX 20シリーズを選ぶべきなのだ。

 現在のGeForce系GPUは製品数がやたら多くて迷いそうになるが、基本的に数字型番だけのGPUよりも、“SUPER”付きのものが高性能。そしてそのシリーズの最上位にのみ“Ti”という符合が付くというルールになっている。つまりRTX 20シリーズの場合一番安価(性能も控えめ)なのがRTX 2060で、RTX 2060 SUPERはRTX 2060の上となる。さらに2070→2070 SUPER→2080→2080 SUPERと続き、頂点に君臨するのがRTX 2080 Tiという序列になっている。ちなみにGTX 16シリーズの最上位はGTX 1660 Tiだが、機能的にも性能的にもRTX 2060の下になっている。

 今回はRTX 20シリーズから、現在主力となる5モデルのパフォーマンスを、実ゲームベンチを通じてまとめてみた。

NVIDIA GeForce RTXシリーズのGPUの主な仕様
GeForce RTX 2080 TiGeForce RTX 2080 SUPERGeForce RTX 2070 SUPERGeForce RTX 2070GeForce RTX 2060 SUPERGeForce RTX 2060
開発コードネームTU102TU104TU104TU106TU106TU106
CUDAコア数4,3523,0722,5602,3042,1761,920
RT/Tensorコア数68/54448/38440/32036/28834/27230/240
コアクロック1,350MHz1,650MHz1,605MHz1,410MHz1,470MHz1,365MHz
ブーストクロック1,545MHz1,815MHz1,770MHz1,620MHz1,650MHz1,680MHz
ビデオメモリGDDR6 8GBGDDR6 8GBGDDR6 8GBGDDR6 8GBGDDR6 8GBGDDR6 6GB
メモリバス幅352bit256bit256bit256bit256bit192bit
メモリデータレート14Gbps15.5Gbps14Gbps14Gbps14Gbps14Gbps
カード電力250W250W215W175W175W160W

 最新のRTX 20シリーズGPUの基本スペック。表にRTX 2080(SUPERが付かないもの)がないのは、RTX 2070 SUPERと性能が近く、RTX 2080自体のチップ生産も終了(流通在庫のみ)しているためだ

テストに使うビデオカードをチェック

 今回のテストでは、ZOTACのGeForce RTX 20シリーズ搭載製品を使用した。ZOTACのビデオカードは、クーラーの性能やLED発光機能が異なるいくつかのグレードが用意されている。まずはこの辺りを整理しつつ、使用カードを紹介する。

AMP Extreme

 ZOTAC GAMINGシリーズの中でも、とくに高いオーバークロック設定が施された、究極のパフォーマンスを欲する人向けのグレード。大型のヒートシンクと、2系統で制御される3連ファンを備え、上位GPUモデルでは、電力の安定供給を行なう「PowerBoost」を実装する。RTX 2080以上のモデルでは、クーラー全体にアドレサブルLEDが装備されており、見た目の美しさもトップクラスだ。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER AMP Extreme

 今回は、ZOTAC製品の最高峰「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Extreme」および「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 SUPER AMP Extreme」を使用した。

MINI

 MINIは文字どおりカードサイズを可能な限り切り詰めたショート基板モデルだ。高い性能を持つ代わりに、カード長30cmを超える大サイズのAMP Extremeに比べると、クロック設定は控えめだが、約21cm程度とぐっと使いやすいサイズに収まっている。搭載GPUはRTX 2070 SUPERとRTX 2060 SUPERの2種類なので、パフォーマンスも十分高い。サイズと性能のどちらも妥協したくないときに選びたいグレードだ。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER MINI
ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 SUPER MINI

 今回のテストでは、「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 SUPER MINI」を使用した。

AMP

 AMPはAMP Extremeに続く性能を誇るオーバークロックモデル。上位GPU搭載モデルにおいては、AMP Extremeよりもクロックと発熱、消費電力抑えてクーラーを一部簡略化、全体のコストを抑えて求めやすくしたモデルという位置付けだ。RGB LEDによる発光機能もカード上部のロゴだけとシンプル。ハデなPCパーツは不要というならこちらがオススメ。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 AMP Edition

 今回使用した「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2060 AMP Edition」は、RTX 2060 SUPER搭載製品の中ではトップモデルとなる。

今回のテスト環境

ここまで紹介したビデオカードのパフォーマンスを検証するにあたって用意したシステムの構成は以下のとおりだ。

【検証環境】

CPU: Intel Core i9-9900K(8C16T、3.6GHz、最大5GHz)
マザーボード: GIGABYTE Z390 AORUS MASTER(rev. 1.0)(Intel Z390)
メモリ: G.Skill F4-3200C16D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※PC4-21300で動作)
システムSSD: Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
データSSD: Micron Crucial MX300 CT1050MX300SSD4/JP[M.2(Serial ATA 3.0)、1.05TB]
電源: SilverStone Strider Platinum ST85F-PT(850W、80PLUS Platinum)
CPUクーラー: NZXT Kraken X72(簡易水冷、36cmクラス)
OS: Windows 10 Pro 64bit版(November 2019 Update)

 カードの基本的なパフォーマンスはこちらの記事でまとめている。あわせて参考にしていただきつつ、本稿のテーマである実ゲームのパフォーマンス比較を早速はじめるとしよう。

影のディテール感に注目!「Call of Duty:Modern Warfare」

 今ミリタリー系FPSはさまざまなタイトルが存在するが、RTX 20シリーズのパフォーマンスが遺憾なく発揮されるタイトルの一つが「Call of Duty: Modern Warfare」(CoD:MW)だ。PCのFPS系ゲームとしては割と軽めの部類に入るため、RTX 20シリーズなら画質を盛っても高フレームレートを出しやすい。

 だが、このゲームの映像美の神髄を見たいなら、ぜひともDXRの効果を体感すべきだ。DXRなしの状態では、影はカチッとした輪郭を持って描かれるが、DXRを有効にするとより影が影らしいソフトな輪郭をまとい、無効時では省略されてしまったディテールが浮かび上がる。対戦プレイ時ではフレームレートを稼ぐためにDXRを切るのも手だが、最新ゲームの映像美を見るためにDXR ONの世界はぜひとも体験しておきたい。

DXRがOFF(デフォルト)の状態では影の輪郭はパキッとシャープ
(C)2019 Activision Publishing, Inc.
DXRをONにすると壁に落ちる影の輪郭がよりリアルさを増す。天井に反射する照明も“よりそれっぽく”表現されている
(C)2019 Activision Publishing, Inc.

 ではCoD:MWのパフォーマンスを検証しよう。画質は最高設定とし、解像度はフルHD/WQHD/4Kの3とおりで検証した。シングルプレイ用のステージ“ピカデリー”で一定のコースを動いたときのフレームレートを「CapFrameX」で計測した。まずはDXR無効時のパフォーマンスを見てみよう。

「Call of Duty: Modern Warfare」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Call of Duty: Modern Warfare」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Call of Duty: Modern Warfare」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 DXR無効の状態であれば、RTX 20シリーズは最高画質でもかなりの高フレームレートが出せる。フルHDならRTX 2060でも平均120fps近く出せるし、RTX 2070 SUPERより上なら高速ゲーミング液晶の性能も活かし切れる。解像度を上げるほどにフレームレートは落ちるが、RTX 2080 Tiなら4Kでも60fpsをほぼ常時キープすることができるだろう。

 ではDXRを有効にしたときのパフォーマンスを見てみよう。テスト条件はまったく同じだ。

「Call of Duty: Modern Warfare」DXR有効、1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Call of Duty: Modern Warfare」DXR有効、2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Call of Duty: Modern Warfare」DXR有効、3,840×2,160ドット時のフレームレート

 CoD:MWのDXRは比較的性能に対するインパクトが弱く、フレームレートの落ち込みはせいぜい20%程度にとどまる。フルHD環境なら、どのRTX 20シリーズでも平均90fps以上は出せている。120fps超えを目指すとなるとRTX 2080 SUPER以上のGPUが必要になるが、CoD:MWのDXRは最高画質設定でも猛烈に重いわけではないのだ。

 ちなみに、GTX 1660~1660 TiでもCoD:MWのDXRの世界を体験することができるが、レイトレーシング処理の一部を高速化するハードを持たないため、フルHDでも快適とは言い難い。

このゲームのビデオメモリ使用量(Memory Used)は最高画質&フルHDで4.5GB、4Kでも5GBちょっと。だがGPU-Zなどで見ると10GB以上(RTX 2080 Tiの場合)使っているように見えるが、これは空き領域を有効に使っているだけ。ビデオメモリ 6GBのRTX 2060でも快適に遊べる

重量級の「モンスターハンター:ワールド」はDLSSの活用がカギ

 続いては「モンスターハンター:ワールド」(MHW)で試してみよう。MHWと言えば拡張パック「モンスターハンターワールド:アイスボーン」が2020年の年明け早々、PC版にもやってくる。家庭用ゲーム機版の評価はさておいても、PCで楽しむために待っていたという人も少なくないはずだ。

 MHWの処理はCPU・GPUともにかなり高め。PCゲーム全体の中でも重量級に分類できる。とくにグラフィックス設定を盛ると旧世代のミドルレンジGPUではつらいので、高画質で遊びたいならRTX 20シリーズがオススメだ。

MHWは現状RTX 20シリーズでしか使えないDLSSに対応する。ただし画面解像度をWQHD(2,560×1,440ドット)以上にしないと有効にできない
(C)CAPCOM CO., LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED.

 その理由はAI(ディープラーニング)を利用してアンチエイリアスをかける“DLSS(Deep Learning Super Sampling)”を組み込んでおり、これが使えるのは現状RTX 20シリーズのみだからだ。DLSSを使うには解像度がWQHD(16:9の場合)以上である必要があるが、DLSSなしのときに比べ格段に動作が軽くなるのだ。フルHDプレイではガマンできないというハンターは、RTX 20シリーズとDLSSをセットで使ってみよう。

これがDLSS OFF(デフォルト)の状態。WQHD&画質“最高”+高解像度テクスチャパックを使った場合
(C)CAPCOM CO., LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED.
DLSSをONにした状態。画面上部にあるロープのディテールがパキッとしているのが分かるだろうか? 画質を維持しながら負荷を軽くするのがDLSSのよいところだ
(C)CAPCOM CO., LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED.

 パフォーマンス検証だが、画質は“最高”をベースに、高解像度テクスチャパックを有効化。周回エリアにおける一定のコースを移動したときのフレームレートを「CapFrameX」で計測した。まずはDLSSを使わない状態でのパフォーマンスをみる。

「モンスターハンター:ワールド」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「モンスターハンター:ワールド」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「モンスターハンター:ワールド」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 フルHDならRTX 2060で60fpsキープは余裕だが、144Hzのゲーミング液晶の性能を活かすフレームレートにするには少なくともRTX 2080 SUPERは必要。WQHD以上になるとRTX 2070以上でないとカクつき感が出てくる。

 だがMHWをWQHD以上で遊ぶ場合は前述のとおりDLSSの併用がオススメだ。同じテストをDLSSを有効にして試したのが以下のグラフだ。

「モンスターハンター:ワールド」DLSSあり、2,560×1,440ドット時のフレームレート
「モンスターハンター:ワールド」DLSSあり、3,840×2,160ドット時のフレームレート

 DLSSを有効にしただけで、WQHD環境でもRTX 2060で60fpsキープが可能になる。DLSSを使うにはWQHDや4Kといった解像度にする必要があるが、DLSSをONにすれば解像度を1ランク下げたときに近いフレームレートを得られるのだ。

MHWのビデオメモリ使用量は高解像度テクスチャパックを使うとフルHD時で約5GB、WQHDで6GB強といったところ。さすがに4KだとRTX 2080 Tiが欲しくなる……

描画の軽い「フォートナイト」は超高fpsで楽しむ

 最後に「フォートナイト」のパフォーマンスもチェックしてみよう。このゲームの処理はとても軽く、DLSSやDXRのような特定のGPU設計に依存するような特殊な設定は盛り込まれていない。だが描画が軽いゲームなら、超高速ゲーミング液晶を組み合わせることで、より動きのなめらかなゲーミング環境が構築できる。そのために必要なのはハイパワーGPUだ。フォートナイトにRTX 20シリーズを組み合わせることで、極上のプレイ環境を作ることができるだろう。

CoD:MWやMHWに比べるとフォートナイトのグラフィックスはきわめて軽い。ミドルレンジGPU向けのゲームだが、RTX 20シリーズなら高フレームレートで安定させやすくなる
(C)2019, Epic Games, Inc.
フォートナイトは2019年11月にDirectX 12に対応した。従来のDirectX 11よりもPCのパワーを引き出しやすくなる。さらにインプットラグの軽減も期待できるだろう
(C)2019, Epic Games, Inc.

 フォートナイトの検証はクリエイティブモードで遊んだ時のリプレイを利用した。フォートナイトの場合周囲にあるオブジェクト数により負荷が大きく変わるため、町の中で動き回るようなプレイを心掛けている。なお、画質は“最高”、DirectX 12モードに設定した。リプレイを再生したときのフレームレートを「CapFrameX」で計測したのが次のグラフである。

「フォートナイト」DirectX 12、1,920×1,080ドット時のフレームレート
「フォートナイト」DirectX 12、2,560×1,440ドット時のフレームレート
「フォートナイト」DirectX 12、3,840×2,160ドット時のフレームレート

 グラフの傾向を見れば分かるとおり、描画が軽いゲームといえど4Kで高フレームレートを出すようなプレイはかなり厳しい。だが、フルHDならRTX 20シリーズ最安のRTX 2060でも平均120fpsを超える高フレームレートを達成。RTX 2070以上であれば、144Hzのゲーミング液晶のパワーを存分に活かせるだろう。

まとめ:ゲームによりオススメGPUは異なるが、フルHDならRTX 2060 SUPERがコスパよし

 以上3本のゲームで解像度を変えながらパフォーマンスを検証してきた。どのゲーム、どの解像度でもRTX 2080 Tiのパフォーマンスは飛び抜けていたが、さすがにゲームのためにあの金額をポンと出せる人はそう多くないハズ。コストパフォーマンスを重視するなら、RTX 2060 SUPERもしくはRTX 2070 SUPERがオススメだ。RTX 2060の安さは魅力だが、ビデオメモリが6GBとやや少ないため、MHWのような重量級ゲームで画質を盛るとビデオメモリが少し心もとない。だがRTX 2060 SUPERなら8GBと多いので、その心配もないのだ。

 ただ今回試したゲーム3種のパフォーマンスを見ると、RTX 2070 SUPERも捨て難い。RTX 2080 SUPERだと高価過ぎるが、RTX 2060 SUPERだと高解像度になると力不足感が出てくる。WQHDゲーミング入門用としては、RTX 2070 SUPERは非常によい選択ではないだろうか。最近はゲーム側の対応状況がやや微妙になってきてはいるが、RTX 2070 SUPERはNVLinkを使ったSLIにも対応できるという点も魅力と言えるだろう。

[制作協力:ZOTAC]