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Ryzen 9 3950Xを静かに使うなら水冷クーラー、CORSAIR H150i PRO RGBで16コアのフル性能を引き出せ!

大型水冷クーラーでRyzenを冷やすメリットを探ってみた text by 坂本はじめ

CORSAIRの3連ファン水冷クーラー「H150i PRO RGB」で「Ryzen 9 3950X」の性能を引き出してみた。

 第3世代Ryzenの最上位モデルとして注目を集める16コアCPU「Ryzen 9 3950X」。同CPUには純正CPUクーラーが付属しておらず、AMDは280mm以上のラジエーターを備えた水冷クーラーの利用をAMDが「推奨」している。

 今回、AMDの推奨を超える360mmサイズのラジエーターを備えたCORSAIRのオールインワン水冷クーラー「H150i PRO RGB(CW-9060031-WW)」を使って、AMDが大型水冷クーラーを推奨する理由を探るとともに、ハイエンドクラスのオールインワン水冷クーラーでRyzen 9 3950Xのポテンシャルをどこまで引き出せるのか試してみた。

360mmラジエーターのハイエンド・オールインワン水冷クーラー「H150i PRO RGB」

 今回Ryzen 9 3950Xの冷却に使用するCORSAIR H150i PRO RGBは、120mmファンを3基搭載できる360mmサイズのラジエーターを備えたオールインワン水冷クーラーだ。

 クローズな水冷システムにあらかじめ冷却水を充填したメンテナンスフリータイプで、製品をそのまま取り付けるだけでCPUの水冷化を実現できる。対応CPUソケットは、IntelのLGA 115x/LGA2066/2011と、AMDのSocket AM4/AM3/AM2。別途専用のブラケットを購入することで、Socket TR4にも対応できる。

360mmラジエーター搭載オールインワン水冷「CORSAIR H150i PRO RGB」。
120mmファンを3基搭載できる360mmラジエーター。面積では140mmファン×2基の280mmラジエーターを上回る。
水冷ヘッド。給電用のSATA電源コネクタの他、ファン制御用の4ピンファンコネクタ×3、回転数出力用の3ピンファンコネクタを設けている。
水冷ヘッドのCPU接地面。銅製プレートにはサーマルグリスが塗布されている。
標準付属の冷却ファン。サイズは120×120×25mmで、回転数は400~1,600rpm。
付属品一覧。IntelとAMDの主要なソケットに対応しているが、Socket TR4(sTRX4)での利用には別売りのリテンションキットが必要。

 CORSAIR H150i PRO RGBは、製品名のRGBからも想像できる通りイルミネーション用のRGB LEDを水冷ヘッドに搭載している。また、一定以下の温度で冷却ファンを停止するセミファンレス動作「ZERO RPM MODE」にも対応。イルミネーション機能による優れたルックスと高い静粛性を兼ね備えている。

 また、CORSAIRの総合ユーティリティ「CORSAIR iCUE」に対応しており、前述のRGB LEDやセミファンレス動作はiCUEで制御できる。LEDイルミネーションについては、他のiCUE対応デバイスとリンクさせることも可能なので、PCパーツをCORSAIR製品で揃えることでiCUEによるスマートな制御を実現できる。

水冷ヘッドにはイルミネーション用のRGB LEDが内蔵されている。
CORSAIRの総合ユーティリティ「iCUE」では、冷却ファンやポンプの動作を制御できる。
iCUEではRGB LEDの制御も可能で、他のiCUE対応デバイスと同期発光させることができる。
iCUEを使ってiCUE対応メモリ「CORSAIR VENGEANCE RGB PRO SERIES」と同期発光させたところ。

大型水冷クーラーを使うとAMD純正クーラー「Wraith PRISM」よりどれくらい冷える?

 それでは、360mmラジエーターを備える大型水冷クーラーであるH150i PRO RGBが、Ryzen 9 3950Xをどれほど冷やすことができるのかをチェックしてみよう。

 今回は比較対象として、AMD純正のCPUクーラー「Wraith PRISM」を用意した。このCPUクーラーはSocket AM4向けAMD純正クーラーの最上位モデルで、TDP 105WとRyzen 9 3950Xもカバー範囲に入っているが付属はしていない。そこで、Ryzen 9 3900X付属のものを今回は調達した。

AMD純正クーラー「Wraith PRISM」。Ryzen 9 3900Xの付属品を利用した。
H150i PRO RGBとWraith PRISM。並べるとコンパクトなWraith PRISMだが、全開動作時に発揮する冷却性能は侮れないものを備えている。

 冷却性能の比較では、両CPUクーラーの冷却ファンをフルスピードで動作させた際の冷却能力、すなわち最大冷却性能を発揮できる状態で、16コア32スレッドCPU「Ryzen 9 3950X」をどれだけ冷やせるのかをチェックする。

 比較テストの内容は、標準状態の「定格動作」に加え、電力関係のリミッターを開放する「Precision Boost Overdrive(PBO)」と自動OCを行う「Auto Overclocking」を有効にした「PBO+AutoOC」で、それぞれストレステストを20分間実行。テスト中の最大CPU温度と、テスト開始前の最低CPU温度をモニタリングソフトで測定する。

「定格動作」でPrime95実行中のRyzen Master画面。画面上部のリミッターが標準値(PPT=142W/TDC=95A/EDC=140A)であることが確認できる。
「PBO+AutoOC」でPrime95実行中のRyzen Master画面。リミッターは開放されており、OC ModeがAuto Overclockingになっている。

〇静かにハイエンドCPUを使うなら大型水冷クーラー、ファン回転数半分以下で約10℃低温に

 テストで測定したCPU温度の最大値と最低値をまとめた結果が以下のグラフだ。

 CORSAIR H150i PRO RGBは、Wraith PRISMよりも10℃ほど低い数値を記録した。

 なお、この10℃の差は数値以上に大きな差があり、Wraith PRISMは100mmファンを約3,600rpmという高速で回転させ、轟音と引き換えに冷却しているのに対し、CORSAIR H150i PRO RGBはファンスピード1,600rpm弱と常用範囲で冷却できており、その動作音はWraith PRISMより断然静かだ。

 遥かに静かな動作音で10℃以上CPUを冷やせているのだから、大型水冷クーラーの冷却性能の高さが示された結果であるとも言えるのだが、Ryzen 9 3950XでCPUクーラーに大型水冷クーラーを用いたメリットは、単にCPU温度を測定しただけでは見えてこないものなのである。

ストレステスト実行時のCPU温度。

〇ブーストクロックが綺麗に伸びる大型水冷クーラー、当然性能も上に

 以下のグラフは、今回のテストで取得したモニタリングデータからCPU温度と全CPUコアの平均動作クロックの推移をまとめたものだ。

 このグラフで注目して欲しいのはCPU温度の推移ではなく、緑と青の線で表示したCPUクロックの推移だ。3,300MHzから4,300MHzでのCPUクロック変化に注目して表示したこのグラフをみると、緑線のH150i PRO RGB利用時に比べ、青線のWraith PRISM利用時は定格動作で50~100MHzほど、PBO+AutoOCでは約100MHz、それぞれCPUクロックが低くなっていることが確認できる。

定格動作時のCPU温度とCPUクロック推移。
PBO + Auto OC時のCPU温度とCPUクロック推移。

 これは、Ryzen 9 3950Xのブースト機能「Precision Boost」が、CPUの上限温度に到達していない状態でも、CPU温度に応じたCPUクロックの調整を行っていることによるものだ。より低いCPU温度を保っているH150i PRO RGBの方が、ブースト機能により高いCPUクロックでの動作を許されているという訳だ。

 また、高クロック動作時の方が発熱量は大きくなる。H150i PRO RGBがWraith PRISMにつけた約10℃という温度差は、CPUの発熱がより大きい条件の下で記録した差なのである。

 当然ながら、CPUクロックが高ければ性能も高くなる。

 以下は、PBO+AutoOC動作でCPUベンチマークの「CINEBENCH R20」を実行した結果。Wraith PRISMのスコア「9,367pts」に対し、H150i PRO RGBは約1.5%高い「9,512pts」を記録した。

▼「PBO+AutoOC」動作でのCINEBENCH R20実行結果
H150i PRO RGBの結果。スコアは9,512ptsで、実行中のピーク温度は74.4℃。
Wraith PRISMの結果。スコアは9,367ptsで、実行中のピーク温度は81.8℃。

 ベンチマーク中の最大CPU温度は、Wraith PRISMが81.8℃で、H150i PRO RGBは74.4℃。短時間のCPU負荷であるため温度差はそれほど大きく無いが、この程度の温度差でもベンチマークスコアには有意な差が生じている。

 このCPU温度の影響が大きなブースト動作の仕様こそ、AMDがRyzen 9 3950Xに大型水冷クーラーを推奨する理由だろう。より低いCPU温度を実現すれば、よりRyzen 9 3950Xの性能を引き出すことができるという訳だ。

水冷クーラーの冷却性能を生かして手動オーバークロックに挑戦CINEBENCH R20でスコア10,000超えを目指してみた

 Ryzen 9 3950X標準のブースト動作でも、H150i PRO RGBの優れた冷却性能はCPU性能をより引き出すことができた。今度は、その優れた冷却性能を手動オーバークロックで生かしてみよう。

 手動オーバークロックを行うにあたって目標としたのは、先のテストで最高「9,512」を記録したCINEBENCH R20において1万超えのスコアを記録すること。この実現のため、CPUの電力リミッターを開放した上で、CPU倍率を44倍、CPU電圧を1.375Vにそれぞれ設定して、全CPUコアが4.4GHzで動作するようにチューニングした。

4.4GHz@1.375V動作時のCPU-Z実行画面。
4.4GHz@1.375V動作でCINEBENCH R20実行中のRyzen Master実行画面。

 4.4GHz@1.375V設定でCINEBENCH R20を実行すると、電力リミッター(PPT)の参照値は約204Wに達し、最大CPU温度は78.8℃にまで上昇したが、無事ベンチマークを完走。記録されたスコアは「10,259pts」で、目標としていた1万超えのスコアを実現できた。

CINEBENCH R20の結果。スコアは10,259ptsで、実行中のピーク温度は78.8℃。

 ちなみに、この4.4GHz@1.375V設定を純正クーラーのWraith PRISMで冷却しようとした場合、テスト中にCPU温度が90℃に到達するくらいのタイミングで画面がブラックアウトして再起動がかかり、テストを完走することはできなかった。

 Wraith PRISMは純正クーラーとしては優秀な冷却性能を備えているが、16コア32スレッドCPUのオーバークロックを楽しむのであれば、H150i PRO RGBのように優れた冷却性能を備える大型水冷クーラーを用意すべきだろう。

4.4GHz@1.375VでCINEBENCH R20実行中のCPU温度推移。純正クーラー(Wraith PRISM)のCPU温度がグラフ中の30秒経過前に途切れているのは、その時点でシステムの動作が停止してしまったため。

Ryzen 9 3950Xのポテンシャルを引き出せる大型水冷クーラーPBOやオーバークロックにはもちろん、定格運用でも効果アリ

 Ryzen 9 3950Xでは、冷却性能に優れた大型水冷クーラーの利用が、オーバークロック動作の実現や静粛性の向上につながるだけでなく、ブースト動作の性能向上にもつながることが確認できた。これにより、オーバークロックをするつもりのないユーザーであっても性能向上のメリットを享受できる。

 CPUクーラーが付属しないRyzen 9 3950Xを使うには、どのみち別売りのCPUクーラーを用意する必要がある。せっかくのハイエンドCPU、その性能をより引き出すことのできる大型水冷クーラーを選んでみてはいかがだろう。

[制作協力:CORSAIR]

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