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冷却・静音どっちもいける「Define 7」、ストレージ満載/ハイエンドパーツ向けに内部も可変可能

スマートなPCが組めるFractal Designの最新PCケース text by 坂本はじめ

Fractal Design Define 7。

 今回のレビューでは、Fractal Designの新作PCケース「Define 7」を紹介する。

 汎用性を重視して設計されたDefineシリーズの最新作であるDefine 7は、モジュール化されたシャーシを組み替えることで、シンプルで冷却性を重視したモダンなPCから、多数のHDDや5インチ光学ドライブを搭載したクラシックなPCまで、さまざまなパーツ構成が実現できるケースだ。

 今回はDefine 7の外観紹介に加え、ハイエンドビデオカードを使用したゲーミングPCの組み立て例も紹介する。自由度の高い自作PCを楽しめるFractal Designの最新ケース、その仕上がりをぜひチェックしてもらいたい。

9種類のバリエーションが選べる「Define 7」標準モデルDefine 7 Black Solidの外観をチェック

Define 7 Black Solid (FD-C-DEF7A-01)。

 Fractal DesignのDefine 7は、定番PCケースとして高評価を獲得しているDefine R6の後継モデルとなるミドルタワー型PCケース。

 本体サイズは240×475×547mm(幅×高さ×奥行)で、対応マザーボードはE-ATX(横幅285mmまで)、ATX、microATX、Mini-ITX。

 Define 7には、内装と外装のカラー、ガラスパネルの有無により、9種類のバリエーションが用意されており、今回のレビューで取り上げるのは、ガラスパネル非搭載の標準モデル「Define 7 Black Solid (FD-C-DEF7A-01)」だ。

正面。
背面。
左側面。
右側面。

静音志向と冷却志向、2種類のトップカバーを選択可能

 Define 7には、防音シートを貼り付けた静音志向のトップカバーと、全面に通気口を設けた冷却志向のトップカバーが用意されており、ユーザーが天板のデザインを任意で選択できる。

 Define R6でも天板の一部を交換するシステムを採用していたが、Define 7は天板全体を覆うスチール製カバーを丸ごと交換する形であるため、従来モデルよりもデザイン性に優れている。また、トップカバーはツールフリーで簡単に着脱できる点も魅力だ。

Define 7には2種類のトップカバーが同梱されており、静音と冷却のどちらを優先するのかを選択できる。
トップカバー裏面。静音重視のカバーには防音シートが貼り付けられている。
天板全体を交換するため、どちらのトップカバーを選択した場合でも継ぎ目の無い天板が実現する。コストはかかるが、より見栄えの良さを重視したエレガントな設計だ。

充実したフロントパネルインターフェイス

天板のフロント側に配置されたフロントパネルインターフェイス。

 Define 7のフロントパネルインターフェイスは、USB 3.1 Gen2対応のUSB Type-Cポートの他、USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。

 これらのインターフェイスは、電源/リセットスイッチとともに、天板のフロントパネル側に配置されている。

 各インターフェイスを利用するための内蔵コネクタは以下の通り。

USB 3.1 Gen2 Type-C。
USB 3.0。
USB 2.0。
音声入出力用。
電源、リセットスイッチ、パワーインジケーターLED。

開閉方向を変更可能なドアタイプのフロントパネルを採用

 ヘアライン仕上げのアルミパネルを前面に装備したDefine 7のフロントパネルは、開閉可能なドア仕様となっている。

 フロントパネルのドア部分は、ヒンジと固定用マグネットの取り付け位置の変更が可能で、ユーザーがドアの開閉方向を任意で変更できる。

フロントパネルはドアのように開閉可能。
ドアを開放した状態の前面。ブラインド状のフレームは着脱可能なダストフィルター。
ヒンジとマグネットを付け替えて左開きにしたフロントパネル。
フロントパネルのドアは、初期状態では右開きになっている。

 フロントパネルのドアを開くと、ケース全面の通気口を覆うダストフィルターと、5インチベイにアクセスできる。

 側面パネルはツールフリーで着脱が可能な設計を採用しており、ケース背面のつまみを外側にスライドさせることで簡単に取り外すことができる。

フロントパネルのドア部分はヒンジと固定用マグネットの位置を変更できる。
ケース表面にはメーカー名などは無く、フロントパネルの左下にワンポイントのマークが入るのみ。
最上段は5インチベイとして利用可能で、独立したダストフィルターを備えている。
フロントパネルから取り外したダストフィルター。
サイドパネルは本体背面のつまみを外側にスライドさせることで取り外せる。
サイドパネルには防音シートが取り付けられている。

「オープン」と「ストレージ」、2つのレイアウトを選べる内装

 Define 7のケース内部には、両側面のパネルを取り外すことでアクセスできる。

 ケース内部は、本体左側がマザーボードなどのメインパーツ搭載スペースで、右側面が裏配線やストレージの搭載スペースとなっている。

左側面ケース内部。標準のオープンレイアウトは内部を広く利用できる。
別途ライザーカードを用意すれば向きを変えてビデオカードを設置することもできる。
電源搭載スペースはカバーで覆われる構造になっている。
右側面ケース内部。裏面配線用のスペースが用意されている。

 Define 7の内装は標準では「オープンレイアウト」と呼ばれるレイアウトになっている。これは、搭載可能なストレージデバイスの数が少ないかわりに、大型のビデオカードや水冷パーツを組み込めるレイアウトだ。

 一方、ケースフロント側の「ストレージプレート」の取り付け位置を変更することで、14台の3.5インチHDDと4台の2.5インチSSDを搭載できる「ストレージレイアウト」に内装を変更できる。

「ストレージプレート」の搭載位置をストレージレイアウトに変更した状態。
ストレージプレートには、最大で9つの3.5/2.5インチ両対応のストレージトレイを搭載できる。
ケース底部に配置されたストレージケージ。レイアウトを問わず、2つの3.5/2.5インチ両対応のストレージトレイが利用できる。不要であればケージ自体を取り外すことも可能。
背面に配置された2.5インチ専用ストレージトレイ。こちらもレイアウトを問わず利用できる。

 ストレージレイアウトはケースのフロント側に9台、底部のスペースに2+1台、天板のファンステイに2台で合計14台の3.5/2.5インチ両対応のストレージトレイを搭載できるため、大量のHDDを組み込みたいユーザーにとって有力なレイアウトだ。

 しかし、標準で付属する3.5/2.5インチ両対応ストレージトレイは合計7個なので、搭載スペースをフル活用するにはオプションパーツを購入する必要がある。

3.5/2.5インチ両対応のストレージトレイ。ケースに付属しているのは6個。オープンレイアウトで2個、ストレージレイアウトでは11個利用可能。
2.5インチ専用トレイ。ケースに付属するのは2個。レイアウトを問わず最大4個利用できる。
3.5/2.5インチ両対応のマルチブラケット。ケースに付属するのは2個。オープンレイアウトで7個、ストレージレイアウトでは3個が利用できる。
ストレージレイアウト時は、別途オプションのトレイなどを利用すれば多数のドライブを搭載可能。

大型ラジエーターを複数搭載可能なDefine 7の冷却システム

 Define 7は、フロント、トップ、ボトム、リアの4か所に冷却ファンを搭載できる。各部に搭載可能な冷却ファンやラジエーターサイズを確認していこう。

 フロントのファンステイはケースのシャーシに直付けで、最大で140mmまたは120mmファンを3基、水冷ラジエーターであれば280mmまたは360mmサイズのものを取り付けられる。

 フロントにはFractal Designの140mmファン「Dynamic X2 GP-14 Fan」が2基、吸気用ファンとして標準搭載されている。

フロントのファンステイ。ファンステイはシャーシ一体型で、140mmまたは120mmファンを最大3基搭載できる。搭載可能なラジエーターサイズは120/140/240/280/360mm。
フロントには標準で2基の140mmファン「Dynamic X2 GP-14 Fan」が搭載されている。

 リアのファンステイもケースのシャーシに直付けで、140mmまたは120mmファンを1基、または120mmサイズのラジエーターを1基搭載できる。

 ここにも標準でFractal Designの140mmファンが排気用に設置されており、フロントに配置された2基の吸気ファンと合わせてケース内のエアフローを構築している。

リアのファンステイ。ファンステイはシャーシ一体型で、140mmまたは120mmファンを1基搭載できる。搭載可能なラジエーターサイズは120mm。
リアにも140mmファン「Dynamic X2 GP-14 Fan」を排気用に標準搭載。

 トップのファンステイは、140mmまたは120mmファンを最大3基、ラジエーターであれば最大で360mmまたは420mmサイズを搭載できる。このファンステイはシャーシから着脱可能であり、大型ラジエーターを組み込む際は、あらかじめファンステイに固定しておくことで組み込みやすくなる。

 ファンステイと天板であるトップカバーの間には、着脱可能なダストフィルターが配置されており、天板を外せば簡単にフィルターの清掃が行える。なお、トップのファンステイを使う場合、トップカバーは通気口のある冷却志向の方に変更しておくべきだろう。

トップのファンステイには、140mmまたは120mmファンを3基搭載できる。搭載可能なラジエーターサイズは120/140/240/280/360/420mm。
トップのファンステイはケースのシャーシから取り外せる。
トップカバーとファンステイの間にはダストフィルターを装備。
ダストフィルターは完全に取り外して清掃できる。

 ボトムのファンステイは、140mmまたは120mmファンを最大2基、ラジエーターであれば最大で240mmまたは280mmサイズを搭載できる。ボトムのファンステイは、先に紹介したストレージケージと共用であり、最大限にファンを搭載するためにはストレージケージを取り外す必要がある。

 ケース底面にも着脱可能なダストフィルターが搭載されており、ケースフロントパネル側から抜き差しする形で着脱できる。

ボトムのファンステイには、140mmまたは120mmファンを2基搭載できる。搭載可能なラジエーターサイズは120/140/240/280mm。
ケース底面全体を覆うダストフィルターを備えており、フロントパネル側に抜き差しする形で着脱可能。

最大9基のファンを接続可能な冷却ファンハブ「Nexus+ 2 PWM Fan Hub」

 多くの冷却ファンを搭載可能なDefine 7は、冷却ファンを一括管理するユニット「Nexus+ 2 PWM Fan Hub」が搭載している。

 ケース右側面上部に配置されたこのユニットは、4ピンのファンコネクタ×3個と、3ピンのファンコネクタ×6個を備えており、冷却ファンに一括で電力供給とファンコントロールを提供する。

冷却ファン管理ユニット「Nexus+ 2 PWM Fan Hub」。PWMファンを3基、非PWMファンを6基まとめて管理できる。
Nexus+ 2 PWM Fan Hubは、給電用のSATA電源コネクタの他に、マザーボードに接続するPWM信号取得用4ピンコネクタと、回転数出力用3ピンコネクタを備えている。

 Nexus+ 2 PWM Fan Hubは、給電用のSATA電源コネクタの他、PWM信号供給用の4ピンファンコネクタと、回転数出力用の3ピンファンコネクタを備えている。接続されたPWM対応ファンにはPWM信号を提供し、3ピンコネクタに接続されたファンには、PWM信号に基づいて5~12Vの範囲で調整した電圧を供給して制御する。

 マザーボードのファンコネクタが不足する場合や、冷却ファンをよりスマートに配線したい場合は、このNexus+ 2 PWM Fan Hubを利用すると良いだろう。

黒にこだわってハイスペックなゲーミングPCを組んでみた長時間の3Dベンチマークでケースの冷却性能もチェック

 ここからは、Define 7を使ってハイスペックなゲーミングPCを構築してみた結果の紹介だ。

 スペックや外観から収容力や汎用性に優れたケースであることが分かるDefine 7だが、組み込んだハイエンドパーツの発熱に対応できるのかをチェックしてみよう。

 今回、Define 7で構築したのは、Ryzen 9 3950XとGeForce RTX 2080 Tiの組み合わせたゲーミングPCだ。使用したパーツは以下の通り。

16コア32スレッドCPU「Ryzen 9 3950X」。
GeForce RTX 2080 Ti搭載カード「MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」。
AMD X570搭載マザーボード「MSI MEG X570 UNIFY」
DDR4-4000対応8GBメモリ×4枚組「BLE4K8G4D40BEEAK」。
80Plus Platinum認証の860W電源「Fractal Design Ion+ Platinum 860W」
360mmラジエーター搭載水冷クーラー「Fractal Design Celsius S36 Blackout」

スマートな裏配で美しいPCを構築可能、黒でまとめたモダンなPCを作ってみた

 今回構築したのは、ハイエンドクラスのCPUやGPUを搭載しながらも、ストレージデバイスなどは最小限にとどめ、代わりに大型ラジエーターを搭載する水冷クーラーを使用したモダンな構成のゲーミングPCだ。

組みあがったゲーミングPC。

 ケース右側面に設けられた配線スペースを活用することで、結束バンドを多用せずとも配線をまとめることができ、想像していたよりも簡単に組み上げることができた。手間が掛からなかったわりに、組みあがったPCの内装もすっきりしており、かなり組み立てやすいPCケースであるように感じた。

 トップパネルのファンステイに水冷ラジエーターを配置する関係で、トップカバーは冷却重視のものに換装したが、ケースファンをマザーボードのファン制御、CPUクーラーの冷却ファンを水冷クーラーの自動制御に任せた結果、思いのほか静粛性の高いPCに仕上がった。

ケース左側面内部。黒色のパーツで揃えたため、かなりスマートな見た目に仕上がった。
ケース右側面内部。電源ユニット部分はカバーで隠されているため配線が見えるのは最小限だ。
オープンレイアウトではケース内スペースが広く、大型ラジエーターも組み込みやすい。
結束バンドを多用しなくとも裏配線をまとめることが可能で、配線の試行錯誤もやりやすい。

ハイエンドパーツもしっかり冷却できるDefine 7、パフォーマンス重視の用途にも好適

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク。

 それでは、組みあがったPCがしっかりと運用できるレベルにあるのかをチェックしてみよう。

 実行したテストは、GPU負荷の高さに定評のある「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」。これを、WQHD(2,560×1,440ドット)の画面解像度かつ「高品質」設定でループ再生を実行。約20分間連続でGPUに最大級に負荷を掛け続けて、CPUとGPUの温度がどのように推移するのか、モニタリングソフトのHWiNFO v6.22で確認した。

 その結果が以下のグラフで、テスト中の最高温度はCPUが78.1℃、GPUが74℃だった。いずれもそれぞれの最大動作温度には十分な余裕がある温度を維持できている。

 このグラフで注目すべきは、CPUとGPUの温度上昇が開始5分程度から変化していないことと、冷却ファンの速度の上昇もそのあたりからあまり変化していない点だ。

 温度とファン速度の上昇が止まった理由は、CPUやGPUの発熱量とクーラーの放熱量が釣り合ったことと、それ以降、ケース内温度が大きく上昇していないためだ。もし、ケース内温度が上昇していれば、クーラーの放熱効率が低下するため、CPUやGPUの温度上昇や、ファン速度を高めて温度を維持しようとする様子がみられるはずだ。

 つまりこの結果は、オールインワン水冷クーラーの排気と、標準搭載の冷却ファンを600rpm少々で動作させるだけで、Define 7がGeForce RTX 2080 Tiの発熱を処理できたことを意味するものだ。設計的には静音志向に見えるケースだが、ハイエンド構成をしっかり冷やせるケースであると言えよう。

抜群の収容能力とエレガントさを兼ね備えた汎用PCケースハイエンドデスクトップを構築したいユーザーにもおすすめ

 Define 7は多数の冷却ファンやラジエーター、そしてストレージを搭載することができる収容能力の高さが光るPCケースだ。静音PCから、発熱の大きなパーツを組み込むハイエンドデスクトップまで、幅広い構成に対応することができる。

 その収容力や汎用性の高さはもちろん魅力的だが、純粋に組み立てやすいケースであると言う点を本ケースの魅力として推したい。裏配線に不慣れな自作PC初心者であっても、多少時間を使えば無理なくスマートな配線を行うことができるはずだ。

 Define 7のPCケースとしての実力は確かなものだ。Define 7に魅力を感じたのなら、自分好みの見た目に仕上げられるのがどのモデルなのか、バリエーションモデルを検討してみると良いだろう。

[制作協力:Fractal Design]