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冷却・静音どっちもいける「Define 7」、ストレージ満載/ハイエンドパーツ向けに内部も可変可能
スマートなPCが組めるFractal Designの最新PCケース text by 坂本はじめ
2020年2月21日 12:01
今回のレビューでは、Fractal Designの新作PCケース「Define 7」を紹介する。
汎用性を重視して設計されたDefineシリーズの最新作であるDefine 7は、モジュール化されたシャーシを組み替えることで、シンプルで冷却性を重視したモダンなPCから、多数のHDDや5インチ光学ドライブを搭載したクラシックなPCまで、さまざまなパーツ構成が実現できるケースだ。
今回はDefine 7の外観紹介に加え、ハイエンドビデオカードを使用したゲーミングPCの組み立て例も紹介する。自由度の高い自作PCを楽しめるFractal Designの最新ケース、その仕上がりをぜひチェックしてもらいたい。
9種類のバリエーションが選べる「Define 7」標準モデルDefine 7 Black Solidの外観をチェック
Fractal DesignのDefine 7は、定番PCケースとして高評価を獲得しているDefine R6の後継モデルとなるミドルタワー型PCケース。
本体サイズは240×475×547mm(幅×高さ×奥行)で、対応マザーボードはE-ATX(横幅285mmまで)、ATX、microATX、Mini-ITX。
Define 7には、内装と外装のカラー、ガラスパネルの有無により、9種類のバリエーションが用意されており、今回のレビューで取り上げるのは、ガラスパネル非搭載の標準モデル「Define 7 Black Solid (FD-C-DEF7A-01)」だ。
静音志向と冷却志向、2種類のトップカバーを選択可能
Define 7には、防音シートを貼り付けた静音志向のトップカバーと、全面に通気口を設けた冷却志向のトップカバーが用意されており、ユーザーが天板のデザインを任意で選択できる。
Define R6でも天板の一部を交換するシステムを採用していたが、Define 7は天板全体を覆うスチール製カバーを丸ごと交換する形であるため、従来モデルよりもデザイン性に優れている。また、トップカバーはツールフリーで簡単に着脱できる点も魅力だ。
充実したフロントパネルインターフェイス
Define 7のフロントパネルインターフェイスは、USB 3.1 Gen2対応のUSB Type-Cポートの他、USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力。
これらのインターフェイスは、電源/リセットスイッチとともに、天板のフロントパネル側に配置されている。
各インターフェイスを利用するための内蔵コネクタは以下の通り。
「オープン」と「ストレージ」、2つのレイアウトを選べる内装
Define 7のケース内部には、両側面のパネルを取り外すことでアクセスできる。
ケース内部は、本体左側がマザーボードなどのメインパーツ搭載スペースで、右側面が裏配線やストレージの搭載スペースとなっている。
Define 7の内装は標準では「オープンレイアウト」と呼ばれるレイアウトになっている。これは、搭載可能なストレージデバイスの数が少ないかわりに、大型のビデオカードや水冷パーツを組み込めるレイアウトだ。
一方、ケースフロント側の「ストレージプレート」の取り付け位置を変更することで、14台の3.5インチHDDと4台の2.5インチSSDを搭載できる「ストレージレイアウト」に内装を変更できる。
ストレージレイアウトはケースのフロント側に9台、底部のスペースに2+1台、天板のファンステイに2台で合計14台の3.5/2.5インチ両対応のストレージトレイを搭載できるため、大量のHDDを組み込みたいユーザーにとって有力なレイアウトだ。
しかし、標準で付属する3.5/2.5インチ両対応ストレージトレイは合計7個なので、搭載スペースをフル活用するにはオプションパーツを購入する必要がある。
大型ラジエーターを複数搭載可能なDefine 7の冷却システム
Define 7は、フロント、トップ、ボトム、リアの4か所に冷却ファンを搭載できる。各部に搭載可能な冷却ファンやラジエーターサイズを確認していこう。
フロントのファンステイはケースのシャーシに直付けで、最大で140mmまたは120mmファンを3基、水冷ラジエーターであれば280mmまたは360mmサイズのものを取り付けられる。
フロントにはFractal Designの140mmファン「Dynamic X2 GP-14 Fan」が2基、吸気用ファンとして標準搭載されている。
リアのファンステイもケースのシャーシに直付けで、140mmまたは120mmファンを1基、または120mmサイズのラジエーターを1基搭載できる。
ここにも標準でFractal Designの140mmファンが排気用に設置されており、フロントに配置された2基の吸気ファンと合わせてケース内のエアフローを構築している。
トップのファンステイは、140mmまたは120mmファンを最大3基、ラジエーターであれば最大で360mmまたは420mmサイズを搭載できる。このファンステイはシャーシから着脱可能であり、大型ラジエーターを組み込む際は、あらかじめファンステイに固定しておくことで組み込みやすくなる。
ファンステイと天板であるトップカバーの間には、着脱可能なダストフィルターが配置されており、天板を外せば簡単にフィルターの清掃が行える。なお、トップのファンステイを使う場合、トップカバーは通気口のある冷却志向の方に変更しておくべきだろう。
ボトムのファンステイは、140mmまたは120mmファンを最大2基、ラジエーターであれば最大で240mmまたは280mmサイズを搭載できる。ボトムのファンステイは、先に紹介したストレージケージと共用であり、最大限にファンを搭載するためにはストレージケージを取り外す必要がある。
ケース底面にも着脱可能なダストフィルターが搭載されており、ケースフロントパネル側から抜き差しする形で着脱できる。
最大9基のファンを接続可能な冷却ファンハブ「Nexus+ 2 PWM Fan Hub」
多くの冷却ファンを搭載可能なDefine 7は、冷却ファンを一括管理するユニット「Nexus+ 2 PWM Fan Hub」が搭載している。
ケース右側面上部に配置されたこのユニットは、4ピンのファンコネクタ×3個と、3ピンのファンコネクタ×6個を備えており、冷却ファンに一括で電力供給とファンコントロールを提供する。
Nexus+ 2 PWM Fan Hubは、給電用のSATA電源コネクタの他、PWM信号供給用の4ピンファンコネクタと、回転数出力用の3ピンファンコネクタを備えている。接続されたPWM対応ファンにはPWM信号を提供し、3ピンコネクタに接続されたファンには、PWM信号に基づいて5~12Vの範囲で調整した電圧を供給して制御する。
マザーボードのファンコネクタが不足する場合や、冷却ファンをよりスマートに配線したい場合は、このNexus+ 2 PWM Fan Hubを利用すると良いだろう。
黒にこだわってハイスペックなゲーミングPCを組んでみた長時間の3Dベンチマークでケースの冷却性能もチェック
ここからは、Define 7を使ってハイスペックなゲーミングPCを構築してみた結果の紹介だ。
スペックや外観から収容力や汎用性に優れたケースであることが分かるDefine 7だが、組み込んだハイエンドパーツの発熱に対応できるのかをチェックしてみよう。
今回、Define 7で構築したのは、Ryzen 9 3950XとGeForce RTX 2080 Tiの組み合わせたゲーミングPCだ。使用したパーツは以下の通り。
スマートな裏配で美しいPCを構築可能、黒でまとめたモダンなPCを作ってみた
今回構築したのは、ハイエンドクラスのCPUやGPUを搭載しながらも、ストレージデバイスなどは最小限にとどめ、代わりに大型ラジエーターを搭載する水冷クーラーを使用したモダンな構成のゲーミングPCだ。
ケース右側面に設けられた配線スペースを活用することで、結束バンドを多用せずとも配線をまとめることができ、想像していたよりも簡単に組み上げることができた。手間が掛からなかったわりに、組みあがったPCの内装もすっきりしており、かなり組み立てやすいPCケースであるように感じた。
トップパネルのファンステイに水冷ラジエーターを配置する関係で、トップカバーは冷却重視のものに換装したが、ケースファンをマザーボードのファン制御、CPUクーラーの冷却ファンを水冷クーラーの自動制御に任せた結果、思いのほか静粛性の高いPCに仕上がった。
ハイエンドパーツもしっかり冷却できるDefine 7、パフォーマンス重視の用途にも好適
それでは、組みあがったPCがしっかりと運用できるレベルにあるのかをチェックしてみよう。
実行したテストは、GPU負荷の高さに定評のある「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」。これを、WQHD(2,560×1,440ドット)の画面解像度かつ「高品質」設定でループ再生を実行。約20分間連続でGPUに最大級に負荷を掛け続けて、CPUとGPUの温度がどのように推移するのか、モニタリングソフトのHWiNFO v6.22で確認した。
その結果が以下のグラフで、テスト中の最高温度はCPUが78.1℃、GPUが74℃だった。いずれもそれぞれの最大動作温度には十分な余裕がある温度を維持できている。
このグラフで注目すべきは、CPUとGPUの温度上昇が開始5分程度から変化していないことと、冷却ファンの速度の上昇もそのあたりからあまり変化していない点だ。
温度とファン速度の上昇が止まった理由は、CPUやGPUの発熱量とクーラーの放熱量が釣り合ったことと、それ以降、ケース内温度が大きく上昇していないためだ。もし、ケース内温度が上昇していれば、クーラーの放熱効率が低下するため、CPUやGPUの温度上昇や、ファン速度を高めて温度を維持しようとする様子がみられるはずだ。
つまりこの結果は、オールインワン水冷クーラーの排気と、標準搭載の冷却ファンを600rpm少々で動作させるだけで、Define 7がGeForce RTX 2080 Tiの発熱を処理できたことを意味するものだ。設計的には静音志向に見えるケースだが、ハイエンド構成をしっかり冷やせるケースであると言えよう。
抜群の収容能力とエレガントさを兼ね備えた汎用PCケースハイエンドデスクトップを構築したいユーザーにもおすすめ
Define 7は多数の冷却ファンやラジエーター、そしてストレージを搭載することができる収容能力の高さが光るPCケースだ。静音PCから、発熱の大きなパーツを組み込むハイエンドデスクトップまで、幅広い構成に対応することができる。
その収容力や汎用性の高さはもちろん魅力的だが、純粋に組み立てやすいケースであると言う点を本ケースの魅力として推したい。裏配線に不慣れな自作PC初心者であっても、多少時間を使えば無理なくスマートな配線を行うことができるはずだ。
Define 7のPCケースとしての実力は確かなものだ。Define 7に魅力を感じたのなら、自分好みの見た目に仕上げられるのがどのモデルなのか、バリエーションモデルを検討してみると良いだろう。
[制作協力:Fractal Design]