特集、その他
高速メモリを使うとゲーム性能は上がる?大作7タイトルでメモリ使用量と速度の影響を調べてみた
ゲームに8GB×2枚は必須、配信もするなら16GB×2枚を 坂本はじめ
2020年3月2日 00:01
現代のPCにとって、ゲームは最も性能を要求される用途のひとつだ。ゲーミングPCではCPUとGPUの性能が特に重要であることが知られているが、メインメモリに関しては、各タイトルの最低容量や推奨容量程度の情報しか存在せず、その性能がゲームの動作にどう影響するのかという情報は少ない。
そこで、今回は7本のゲームを使って、ゲームプレイ中にPCのメモリがどれくらい使用されているのかと、メモリの性能がゲームのパフォーマンスに与える影響を調査してみた。ゲーミングPCの購入や自作を考えているユーザーにぜひチェックしてもらいたい。
ハイエンドゲーミングPCでメモリの効果をテストRyzen 9 3950X + GeForce RTX 2080 Ti搭載PCを用意
今回、ゲームが使用するメモリ容量と、メモリ性能がゲームのパフォーマンスに与える影響を調査するにあたって、16コア32スレッドCPU「Ryzen 9 3950X」と、NVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 2080 Ti」を使ったゲーミングPCを構築した。
DDR4-2133、DDR4-3200、DDR4-3200(低レイテンシ/OC)の3パターンの設定でテスト
テストに用いるメモリは、CrucialのDDR4-3200対応16GBメモリ2枚組「CT2K16G4DFD832A」。JEDEC規格に準拠したスタンダードメモリで、Micron純正のネイティブDDR4-3200メモリチップを搭載したメモリモジュールだ。
今回は、CT2K16G4DFD832Aを使って、同メモリの標準動作である「DDR4-3200(CL22)」に、SPD情報に記録された低クロック動作の「DDR4-2133(CL15)」と、手動でメモリタイミングを詰めた低レイテンシ/オーバークロック動作「DDR4-3200(CL19)」を加えた、3種類の動作設定で各ゲームのパフォーマンスがどう変化するのかをチェックする。
手動で設定した低レイテンシ動作のDDR4-3200(CL19)は、製品仕様外のオーバークロック動作だ。今回はレイテンシの純粋な影響も見るために実行したが、動作保証もなければ製品保証も失う自己責任での動作設定である点に注意して欲しい。
3パターンのメモリ性能の違いをベンチマークテストで確認、DDR4-3200(低レイテンシ)が最速
実際のゲームでのテスト結果を紹介する前に、今回のテストで用いる3通りのメモリ動作設定により、メモリ自体の性能がどの程度変わってくるのか、また典型的な3Dベンチマークではメモリ性能の差がどのように反映されるのかを確認してみよう。
SiSoftware Sandra 20/20で帯域幅とレイテンシを測定
まずは実行したのは総合ベンチマークソフト「SiSoftware Sandra 20/20」。このソフトではメモリの帯域幅とレイテンシを測定した。
測定の結果、DDR4-2133(CL15)の帯域幅が26.9GB/sで、レイテンシが59.7ナノ秒であったのに対し、DDR4-3200(CL22)はそれぞれ38.2GB/sと46.4ナノ秒を記録。帯域幅は1.42倍に増加し、レイテンシは8割弱に短縮されている。
最速を記録しているのは動作設定どおりDDR4-3200(CL19)で、DDR4-3200(CL22)より帯域幅とレイテンシの両方が僅かに向上している。なお、メモリクロックが同一なのに帯域幅が向上しているのは、レイテンシの短縮によりデータ転送に利用できる時間が増加した結果と考えられる。
ファイナルファンタジーXIVベンチマークでメモリの使用容量と速度をチェック
続いて、3Dベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 漆⿊のヴィランズ ベンチマーク」の結果を紹介しよう。ここでは、描画品質を「最高品質」に固定し、フルHD(1,920×1,080ドット)と4K(3,840×2,160ドット)、2つの画面解像度でテストを実行した。
ベンチマーク結果の前に、ベンチマーク実行中のメモリ使用量をチェックしてみたものが以下のスクリーンショットだ。ベンチマーク中に使用されているメモリ容量は、フルHDで4GB弱、4Kでは約4.4GBだった。なお、このメモリ使用量は総使用量であり、Windowsが起動時点で使用している容量も含まれる。
ベンチマークスコアをまとめたものが以下のグラフだ。フルHD解像度はメモリ性能の差がスコアに反映されており、DDR4-2133(CL15)のスコアを基準とした場合、DDR4-3200(CL22)は約13%、DDR4-3200(CL19)は約16%、それぞれ高いスコアを記録している。
一方、4K解像度ではDDR4-3200(CL22)とDDR4-3200(CL19)はほぼ同スコアとなっており、DDR4-2133比でのスコア向上も約3%にとどまっている。
もともと、「ファイナルファンタジーXIV: 漆⿊のヴィランズ ベンチマーク」はメモリ性能がスコアに反映されやすいベンチマークテストなのだが、フルHDの方が4Kよりもメモリ性能がスコアに反映されたのは、より高いフレームレートであるためだろう。
フレームレートの増加はCPU処理を増加させ、それに伴ってメモリアクセスも増えるため、メモリ性能差がパフォーマンスにより大きく影響するという訳だ。
ゲームプレイ時のメモリ使用量は6~10GB前後、高速なメモリほどフレームレートは伸びやすい傾向7タイトルでメモリの使用量と速度の影響をチェック
それでは、7本のゲームタイトルを使って、ゲームプレイ中に使用されているPC全体のメモリ使用量と、メモリ性能によるパフォーマンスの変化を確認していこう。
今回テストに用いたのは7本のゲームは、「フォートナイト」、「モンスターハンターワールド:アイスボーン」、「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」、「レッド・デッド・リデンプション2」、「Call of Duty: Modern Warfare」、「バトルフィールド V」。
基本的に、各ゲームでは描画設定を「最高」かそれに準ずるものに設定した上で、フルHD解像度と4K解像度でメモリ使用量とパフォーマンスの測定を行った。
フォートナイト
人気のバトルロイヤルTPSゲーム「フォートナイト」では、リプレイデータを使って同一場面のフレームレートを測定してパフォーマンスの比較を行った。なお、グラフィックスAPIは「DirectX 11」を選択している。
まず、メモリの使用量については、フルHD時に約6.8GB、4Kで約7.7GBだった。
フレームレートの測定結果では、フルHD時に有意な差がついており、DDR4-2133(CL15)を基準とした場合、DDR4-3200(CL22)は約7%、DDR4-3200(CL19)は約10%のフレームレート向上が確認できる。
一方、4K時はメモリの性能差はフレームレートに反映されていない。
モンスターハンターワールド:アイスボーン
モンスターハンターワールド:アイスボーンでは、グラフィックス設定「最高」をベースに、テクスチャを高解像度化する「High Resolution Texture Pack」を適用。グラフィックスAPI「DirectX 12」でテストを実行した。
モンスターハンターワールド:アイスボーンでのメモリ使用量は、フルHD時に約7.4GB、4Kで約7.5GBだった。
なお、Windows 10標準のセキュリティソフト「Windows Defender」使用下でモンスターハンターワールド:アイスボーンを実行した場合、Windows Defenderのバックグラウンドプロセス「Antimalware Service Executable」のメモリ使用量が徐々に増加し続け20GB以上に達する現象が発生したが、これはモンスターハンターワールド:アイスボーンの実行ファイルをWindows Defenderの除外に追加することで解消した。
フレームレートの測定結果では、フルHD時にDDR4-2133(CL15)動作が明らかに低い数値を記録している。このDDR4-2133(CL15)を基準とすると、DDR4-3200(CL22)は約21%、DDR4-3200(CL19)は約22%、それぞれ高いフレームレートを記録している。
4K時のフレームレートは若干の差がついているものの、メモリ性能が反映されたものではなく、誤差の範囲内と言ったところだ。
SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE
The Game Awards 2019でゲームオブザイヤーを獲得したアクションアドベンチャー「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」では、描画設定を「最高」に設定してフレームレートを測定した。
SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE実行中のメモリ使用量は、フルHD時が約5.6GBで、4Kで約6.3GB。
フレームレートの測定結果だが、SEKIRO: SHADOWS DIE TWICEではフレームレートの上限が60fpsに固定されており、フルHDと4Kともに上限に到達したため、メモリ性能差が測定結果に反映されることは無かった。
差がつかなかったのはゲームのフレームレート上限によるものだが、一般的なPCディスプレイのリフレッシュレートである60Hzに同期するのであれば、先に紹介した2タイトルもメモリによる差がつかないという結果になるだろう。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONでは、描画設定を「最高」にしてフレームレートを測定した。
メモリの使用量は、フルHD時に約8.6GB、4Kで約9.0GBだった。
フレームレートの測定結果はフルHD時に大きな差がついており、DDR4-2133(CL15)を基準とした場合、DDR4-3200(CL22)は約21%、DDR4-3200(CL19)は約24%、それぞれフレームレートが向上している。
4K時はフルHDほどではないものの、DDR4-3200(CL22)とDDR4-3200(CL19)が、DDR4-2133(CL15)から約3%のフレームレート向上を果たしている。
レッド・デッド・リデンプション2
レッド・デッド・リデンプション2では、描画設定の精密度プリセットレベルを「画質優先」の最大値に設定してベンチマークテストを実行、ベンチマーク実行中のメモリ使用量と結果の平均フレームレートを取得した。
メモリの使用量は、フルHD時に約9.4GB、4Kで約10.2GBだった。
平均フレームレートはかなり僅差となっており、DDR4-2133(CL15)を基準とした場合、DDR4-3200(CL22)は約1%、DDR4-3200(CL19)は約1~2%、それぞれ高いフレームレートを記録している。
Call of Duty: Modern Warfare
Call of Duty: Modern Warfareでは、リアルタイムレイトレーシングを無効にしたことを除き、グラフィック設定は可能な限り高い設定にして、フレームレートの測定を実行した。
メモリの使用量は、フルHDと4Kともに約10.4GBだった。
各メモリのフレームレート差は最大でも約1%となっており、メモリ性能の差が反映されたとは言い難い結果となっている。
フルHD時は180fps近い高フレームレートでありながらメモリ性能の差が反映されなかったこの結果は、高フレームレートだからと言ってメモリ性能が重要になるとは限らないということを示している。
メモリが足りなくなるとフレームレートが低下、スタッタリングの発生も
ゲームによってはメモリ使用量が10GBを超えるものもあったが、メモリ容量が不足するとどうなるのかをDDR4-3200対応4GBメモリ2枚組「Crucial CT2K4G4DFS632A」を使って確認してみた。
テストに使ったのは、メモリ使用量が8GBを超えていたFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONとレッド・デッド・リデンプション2。
これらのテストで測定されたフレームレートを比較してみると、メモリ容量が8GBとなる「CT2K4G4DFS632A」使用時は明らかにフレームレートが低下しており、メモリ不足がパフォーマンス低下に直結していることが確認できる。
また、実際にプレイしてみると、スタッタリングと呼ばれる画面がカクつく現象の発生頻度も増加しており、単なるフレームレートの低下以上にゲーム体験が損なわれていた。
ちなみに、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONの推奨メモリ容量は16GB、レッド・デッド・リデンプション2の推奨メモリ容量は12GB。ゲームを快適に遊ぶのであれば、メーカー推奨容量は下回らないようにすべきだろう。
ゲーミング用途ならDDR4-3200の8GB×2枚組がお薦め配信もするなら16GB×2枚組を
以上のように、今回はメモリ使用量とメモリ性能の違いによるゲームのパフォーマンス変化をチェックしてきた。
メモリ使用量に関しては、ゲームのみを実行している状況でもメモリ使用量が8GBを超えることが少なくなかった。高画質設定であることも影響しているが、メモリが不足した結果のパフォーマンス低下を考えれば、現代のゲーミングPCには16GBのメモリ容量は確保すべきだ。さらに倍の32GBを搭載すれば、ゲームと並行して動画配信などをするユーザーでも安心だろう。
メモリ性能とゲームのパフォーマンスに関しては、一部のゲームではフレームレートの大幅な向上が確認できる一方で、効果の薄いゲームではメモリ性能の差はゲーム体験を向上させることは無かった。安定して動作する限りにおいて、メモリが高性能で損をすることは無いが、どこまで高性能なメモリを使うべきなのかは、容量やコストとの兼ね合いと言ったところだ。
現在のメモリ価格を考慮すると、DDR4-3200の16GBキットや32GBキットは、ゲーミング用途においてコストパフォーマンスに優れた選択肢だ。このあたりのメモリを基準に検討してみると良いだろう。
[制作協力:Crucial]