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240Hz液晶、メカニカルスイッチ搭載の薄型筐体がゲーミングノートの新常識!?

さらに第10世代Core、RTX 2070 SUPERでガチプレイ、配信、動画編集にも対応する「AORUS 15G」 text by 加藤勝明

 ノートPCでも本格的なPCゲームが普通に遊べるようになった現在、ゲーミングノートPC選びはもはや単純なスペックだけでは語れない。PCメーカーも高性能、高フレームレートに加えて、最高のゲーム体験を与えてくれる「プラスα」の要素にこだわっている。そのプラスαはデザインや薄さ・軽さであったり、液晶の質であったりする。

 今回紹介するGIGABYTEのゲーミングノートPC「AORUS 15G XB-8JP2130MP」(以下、AORUS 15G)はそんなゲーミングノートPCシーンを象徴する1台だ。第10世代Coreプロセッサに先日登場したばかりのGeForce RTX 2070 SUPER Max-Qを採用と、基本性能は申し分ない。そしてプラスα要素としてリフレッシュレート240HzのフルHD液晶のほか、オムロン製メカニカルキーボードを搭載している。

 高リフレッシュレート液晶やメカニカルキーボード採用という点はすでに搭載例があるが、両方搭載していて厚さ25mm、重量2.2kgに収まっている製品はなかなかお目にかかれない。つまり、薄型軽量でもメカニカルキーの打鍵感が得られ、かつレイトレーシングをはじめ最新PCゲームを高fpsで快適に遊べるハイスペックゲーミングノートということになる。

GIGABYTEでは、高リフレッシュレート液晶とメカニカルキーがこれからのゲーミング環境には必須と考え、このAORUS 15Gの投入で“ゲーミングノートを再定義する”と意気込む。実際の使い勝手や性能はどうなのだろうか?ベンチマークなどを通じて検証してみたい。

厚さ25mmという普通のノートPCクラスの筐体に、メカニカルキーボードを搭載している「AORUS 15G XB-8JP2130MP」。実売価格は31万円前後

薄型ボディに最新ハードを凝縮

 では本体の外観チェックから始めよう。本体サイズは356(W)×250(D)×25(H) mmと、ごく普通の15インチ級ノートだ。

 デザインは、アクセントとして天板にハヤブサをモチーフにしたAORUSのシンボルマークを配し、そのほかはすべてシンプルにまとめたスポーティなデザイン。ボディはアルミ削り出しで製造されているため、モールド一つとってみてもカチッとエッジの立った造形になっているのは◎だ。

 ボディ背面と本体両側面の後ろ側はほぼ吸排気口となっており、USBなどの端子部分は本中盤から手前に配置されている。今時のノートPCだけあって、USB Type-CはThunderbolt 3対応だったり、SDカードリーダーはUHS-II対応だったりと、トレンドを漏れなく押さえている。

AORUS 15Gの正面。いわゆる“ベゼルレス”デザインを採用している
左側面にはHDMIやギガビットLANなどのポートを配置。オーディオミニジャックは4極対応なのでスマホ用のヘッドセットがそのままつながる。Mini DisplayPortを搭載しているのはめずらしい
右側面にはThunderbolt 3対応のUSB Type-CコネクタのほかにUHS-II対応のSDカードリーダーを配置。こちら側のUSB 3.0ポートはかなり手前にあるので、常時接続するデバイスには左側のポートを優先的に使うほうがよいかもしれない
天板は切り込みや溝などを設けずフラットに。ワンポイントにAORUSのシンボルを配している
ディスクリートGPUを搭載したゲーミングノートゆえ、ACアダプタは出力230Wのやや大きめのものが付属。バッテリ動作時はゲームのパフォーマンスが大幅に下がるので、ゲームプレイ時は常時接続しておくことが前提になる

 本機のウリであるメカニカルキースイッチを搭載したキーボードを見てみよう。キー配列はANSI(英語)配列のみとなる。普段JIS配列のキーボードを使っている人にはやや抵抗感があるかもしれないが、見た目も使い勝手もスマートにまとまっている点は評価したい。

 JIS配列が用意されない理由はコストの問題と言うよりも、メカニカルキースイッチを配置する関係上、ノートPC用JIS配列でよく見られるピッチがより狭いキーが実装できないからではないかと予想される。

 キーボードの使い勝手については後ほどもう少し細かく見ていくことにしたい。

キーボードは18.5mmピッチ(実測値)のスタンダードなテンキー付きANSI配列。カーソルキーを凸字に配置しても右CtrlやAltキーの幅が狭くなっていないのが美しい
キーボード上部中央、電源ボタンのすぐ上には物理的な無効化機構(カバー)の付いたWebカメラを配置している。

Comet Lake-HにRTX 2070 SUPER Max-Qという最新の組み合わせ

「CPU-Z」はまだ対応していないため、Name欄に型番は出ず、下のSpecification欄に表示された。8コア16スレッドであることも確認できる

 中身に目を向けてみよう。まず搭載CPUは第10世代Coreプロセッサに分類される「Core i7-10875H」。いわゆる“Comet Lake-H”世代の最新モバイルCPUだ。8コア16スレッドで「最大」5.1GHz動作というスペックは、CPU負荷の高い今時のゲームを高フレームレートで動かすためには欠かせない。

 フレームレートを維持しつつ(=ゲームで好成績が出やすい)ゲーム実況配信を行なうのにもコア数はダイレクトに効いてくる。TDPは45Wなので高クロックは短時間しか持続しないが、ゲーム中の実測クロック(タスクマネージャー読み)は3.3~3.5GHzあたりで落ち着く。

 そしてGPUはリアルタイムレイトレーシング&DLSSに対応した「GeForce RTX 2070 SUPER MAX-Q」。薄型ボディでも最高のグラフィックスを味わいたい人にとっては見逃せないポイントだ。

 さらにメモリはDDR4-2933で16GB(空きスロットはないものの、最大64GB搭載可能)、ストレージは512GBのNVMe M.2 SSD、通信系はKiller E2600(ギガビットLAN)にAX1650(Wi-Fi 6)+Bluetooth 5.0と今時のスペックで固めている。ただ現在はインストール時に1本200GBを要求するゲームがある現状を考えると、1TB級のSSDを搭載するモデルがあってもよいのではないだろうか。

「GPU-Z」で搭載GPUの情報を拾ってみた。Max-QのモデルはName欄にもMAX-Qと表示されるのだが、まだこのGPUが世に出て日が浅いせいか、RTX 2070 SUPERとしか表示されていない
「CrystalDiskInfo」で内蔵SSDの情報をチェック。Samsung製のPCI Express 3.0 x4接続NVMe SSDだ
ネットワーク系装備はKiller E2600+AX1650Xという割と定番の組み合わせ

 ぜひここでGIGABYTEの独自要素について触れておきたい。まずは同社独自の冷却機構である「WINDFORCE infinity」。5本のヒートパイプと二つのファンからなるもので、薄型筐体でもCPU、GPUを強力に冷却してくれる。

 クーラー自体の高性能化は各PCメーカーがしのぎを削っているが、本機にはもう一つのアプローチがある。同社は以前よりノートPCの冷却最適化において、MicrosoftのクラウドAIサービスであるAzure AIを組み込んでいる。本機を起動するとデスクトップ右上にガジェットが常駐するが、これがAI機能のコントロールを行なうUIになっている。

 このAIはクラウドから学習データをダウンロードすることで最適な冷却とGPUやCPUのパワー管理を行なう。以前からある「冷却ファンターボモード」やCPUの電力設定などをAIが自動的に最適化してくれるもの、といったところだ。WINDFORCE infinityという強力なクーラーをAIによってインテリジェントに駆動して、薄型筐体の厳しい条件下でも高い性能を維持しようという意欲的な設計だ。

底面。半分程度がメッシュになっており、底面からの吸排気にメーカーが心を砕いていることが分かる
カバーを外した状態。手前にバッテリ、その近くにM.2 SSDと無線LANカードやメモリモジュール。奥側のヒートパイプと左右のファンが、GIGABYTE独自の冷却機構「WINDFORCE infinity」で、その下にはCPUとGPUが搭載されている
デスクトップ右上に出現するAIアイコンを右クリックすると動作モードが変更できる。一番下(青)はAIで管理させ学習データもクラウドにアップロードするというもの。気に入らなければ2番目(橙)でも十分使える
AIアイコンはバッテリ動作時には単なる電源管理モードを切り換えるだけのものになる

 またGIGABYTE独自のツールとして「AORUS Control Center」がプリインストールされている。ハードウェアの状態の把握やキーボードのカスタマイズ(後述)、ドライバやツールのアップデート確認機能などが集約されている。

「AORUS Control Center」ではCPUやGPUの負荷状態がグラフで示される
省電力設定などハードウェアまわりの機能に素早くアクセスする機能も備える
ファンの回転数プロファイルも編集可能だ

B3KLスイッチの“押した”感は十分。フィーリングはあなたしだい

 さて本機のキーボードについて少し深掘りしておきたい。一般的なノートPCでは、キートップをパンタグラフ機構で支え、弾力はラバーカップ、スイッチの機構はフィルムで確保するメンブレン方式のキーボードを採用しているものが大多数を占める。メンブレン方式には押下時のソフトなフィーリングや音の静かさなどよい点もあるのだが、“カチッと押した”感のあるメカニカルキーボード好きには受けが悪い。

 そこで本機では、オムロンが開発したロープロファイルメカニカルスイッチ「B3KL」を採用した(初採用は同社の「AORUS 17」)。オムロンのキースイッチと言えばロジクール製品に採用された実績のある「Romer-G」スイッチがあるが、B3KLはそのロープロファイル版的位置付けと考えてよいだろう。Romer-Gはキーのステム(軸)の中にLEDを入れることでバックライトを美しく見せられるのが特徴だが、B3KLも同様の構造を採用し、さらに特殊なカバーをかけることで広い範囲を均一な光量で照らせるのがウリだ。

ANSI配列なのでキートップにムダな刻印はない。キー打鍵時にカチカチと音をたてるが、“青軸”キーボードが使える環境なら問題なく使える
AORUS 15Gに採用されているオムロン製「B3KL」スイッチ。写真には写らないタクタイル感はバタフライ機構で実装している
「Control Center」ではキーバックライトの発光パターンやキーマクロなどを設定可能

 AORUS 15Gに採用されているB3KLスイッチは、スイッチの分類で言えばカチカチと音のする“クリッキー”、いわゆる“青軸”タイプのスイッチだが、押下圧はCherry MX Blueよりもやや重い。ギガバイトの資料によれば、押下厚は最大70gでピークになり、その後55gに急激に下がった所(この辺で“押した感”が得られる)で接点がつながる。

 スイッチのトラベルディスタンスは2.5mmだが、アクチュエーションポイント(プリトラベル)は1.6mm。これは一般的なCherry MXキースイッチ(Red/Blue/Brownなど)のトラベルディスタンスが4mm、アクチュエーションポイントが2mmであることを考えると、より浅いストロークで打鍵できるのでゲーム向きと言える。ゲーム用として開発されたCherry MX Speed Silverのアクチュエーションポイント1.2mmよりは深いものの、この薄さでしっかり押した感じと“カチッ”というクリック感を得られるのはすごい。

AORUS 17の製品紹介ページに掲載されていたB3KLスイッチの特性

 ノートPCの筐体に本格的なキースイッチを組み込んだAORUS 15Gのコンセプトは素晴らしい。だが本機ならば外付けゲーミングキーボードは不要になるか?と問われると万人にとってそうとまでは言い切れない。

 ノートPCゆえにキー全体がフラットに配置されているため、FPS系でよく使われる「CtrlでしゃがみつつWASDで移動」はやりづらい(キーバインド変えろ、というのは別の話)。加えてアクチュエーションポイントがやや浅めのせいか、誤爆を防止するためにオペレーティングフォース(最大荷重)は約70gとやや重め。Cherry MX Blueは約60gなので、一般的な“青軸のキーボード”よりも力をかける必要がある。筆者が試した限りでは、Cherry MX Greenに近いフィーリングだ。

 また、このキースイッチは押下中のこすれる感じが強く、筆者のプレイ感ではFPS系で素早く横移動やリーンを駆使してもの陰から覗き込むような操作ではそれなりに意識して指に力を入れないとならない印象。実際の動作とは異なり、キーが重くてモタ付いているように錯覚している可能性もある。これはギガバイトの設計云々ではなくB3KLスイッチの特性とも言えそうだ。

 ともあれ本機のキーボードの評価は個人の感覚、好みに大きく左右される。これはデスクトップ用の単体キーボードと同じ次元の話だ。裏を返せば、本機はノートPCながらそのレベルに達しているということでもある。ハマる方も多いと思われるので、まずは一度触ってみてほしい。ちなみに筆者がゲームに使うキーボードは荷重35gのバネを仕込んだスイッチを使っているので、辛めの表現は筆者の好みによる部分もあることをお断りしておく。

リフレッシュレート240Hzは快適。IGZOパネルで画質面も抜かりなし

 前述のとおりAORUS 15GにはRTX 2070 SUPER Max-Qが搭載されているが、このクラスのGPUだとフルHD@60fps程度では完全にオーバースペックというゲームも増えてくる。しかしイマドキのゲーミングノートは高リフレッシュレート液晶を搭載しているので、よりなめらかなゲーム画面を楽しめるというわけで、本機も例外ではない。

 ただし、搭載されている15.6インチフルHD液晶のリフレッシュレートは240Hzと、現時点で手に入るものとしては最速もものを採用。超高リフレッシュレート液晶だとTNパネルで視野角がいまひとつなことが多いが、IGZOパネルを採用するAORUS 15Gの色表現は良好。色域のカバー率はNTSC 72%をうたっており、さらにX-Rite PANTONE認証による補正が施されている。映像ソースの色とディスプレイ表示色の差を示すDelta Eのランクは、Delta E <1と非常に高い。

搭載液晶のリフレッシュレートは標準で240Hz。60Hz設定にもできるがそうする意味はほとんどない
AORUS 15Gの液晶はWindows上では「LQ156M1JW03」と表示された。メーカーによればIGZO液晶とのこと

 パネルの型番から推察するに、sRGBカバー率は100%、AdobeRGBカバー率は74%であるため、商用クオリティの写真編集などにはややスペック不足であるもの、一般ユーザーが使うには十分なスペックを備えている。

 フルHD解像度であるためクリエイターに向けとまでは言わないが、ゲームも写真・動画編集もやりたい人にはとても魅力的な装備と言える。とくに、ゲーム実況をはじめとする動画配信で映像クオリティにもこだわってみたいのであれば、本機の高いスペックと相まって威力を発揮するだろう。

階調表現も良好だ。若干モアレが出ているが、これは写真撮影環境によるものだ
ベゼルは非常に狭く、ディスプレイの端から表示エリアまでのギャップは実測で約7.1mmだった

AIがCPU、GPUパフォーマンスを絞り出す

 では性能の検証に入ろう。今回は比較対象として第8世代のCore i9-8950HKとGTX 1080を搭載した2年前の17インチの大型ゲーミングノートを準備した。2年前の製品との比較ではあまり進化していないように思えるが、結論から言えば重量5kgに迫る巨大なハイエンドノートが、最新の2.2kgの薄型ノートにあっさりと抜かれてしまったのだ。

 まずは基礎体力テストとして「CINEBENCH R20」と「PCMark 10」そして「3DMark」の3種類のテストを実施する。前述のAzure AIを利用した機能については、OFFとON(アップロード&ダウンロード有効)の状態で比較する。

基礎体力テスト「CINEBENCH R20」、「PCMark 10」、「3DMark」

「CINEBENCH R20」
「PCMark 10」
「3DMark」
「CINEBENCH R20」のスコア

 今回比較に使用した旧世代ノートPCに搭載されていたCore i9-8950HKは6コア12スレッドのCPUであるため、AORUS 15Gに搭載される8コア16スレッドのCore i7-10875Hはスペック的に大きく上を行っている。実際テストしてみてもマルチスレッドで1.7倍弱の性能を示した。

 ここで興味深いのはAIをONにすることで、変動しにくいシングルコアのスコアが上がっている点だ。マルチスレッド時は逆に下がっているが、これは誤差と言えるかもしれない、という程度だ。

「PCMark 10」Standardテストにおけるスコア

 AIについてCINEBENCH R20では目立った効果が見られなかったが、PCMark 10では顕著な差として現われた。AIオフの状態だと旧世代ノートとあまり変わらない程度だが、AIをオンにすると全テストグループで顕著なスコアアップが観測できた。

 AIをオフにしてもDCC(Digital Contents Creation)テストグループでスコアが伸びているので、コア数がモノを言う状況ではAIオフでも十分性能は確保できるが、PC全体の性能を十全に引き出すためにはAIを積極的に利用したほうがよいようだ。

「3DMark」のスコア

 3DMarkにおいては旧世代PCから大きな性能向上を見て取れるが、これはGTX 1080からRTX 2070 SUPER MAX-Qへのジャンプアップ効果だけではなく、CPUパワーも上がったこと、さらにAIオンの際にはCPU、GPUの性能を一層効率よく引き出せるようになった結果と言えるだろう。

 AIに関しては、以前同社のこの機能を試した際はまだ出始めで学習も進んでいなかったせいもあり、それほど大きな効果を得られなかったが、ここまでスコアが違えば、常時AIオンで運用するのがよいだろう。そこで、これ以降のテストはすべてAIオンの状態で進めることにしたい。

 基礎体力編の最後に「CrystalDiskMark」の結果も見ておきたい。

「CrystalDiskMark」によるSSDの読み書き性能測定結果

 AORUS 15Gに搭載されたHM470チップセットはPCI Express 3.0世代であるため、ストレージの性能はある程度予測がつく。搭載するSSDは、NVMe SSDとしてはとくに速くも遅くもないが、Serial ATA SSDよりは大幅に高速。この性能はゲームのプレイ動画を編集したりする場合は大いに快適さに貢献してくれるだろう。

実ゲームでの実力をチェック

 それではここから実ゲームでの実力テストといこう。リフレッシュレート240Hzの液晶を搭載しているため、いかに画質を盛りつつフルHD環境でフレームレートが稼げるかを中心に見ていくことにする。

 まずは「レインボーシックス シージ」をVulakn API環境で検証する。レンダースケールは100%とし、内蔵ベンチマーク機能を利用して計測した。AORUS 15Gの画質は“最高”、“高”、“中”とし、比較用ノートPCは“最高”設定でのみ検証した。

今回テストしたゲームタイトル

レインボーシックス シージ:(C)2015 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved.
Apex Legends:(C) 2020 Electronic Arts Inc.
Call of Duty:Modern Warfare:(C)2019-2020 Activision Publishing, Inc.
モンスターハンター:ワールド:(C)CAPCOM CO., LTD. 2018, 2019 ALL RIGHTS RESERVED
「レインボーシックス シージ」Vulkanモード、1,920×1,080ドット時のフレームレート

 このベンチは最低値と最高値がややブレやすいが、平均fpsは画質設定にしっかりリンクする。AORUS 15Gならば中設定に落とせば高速液晶のポテンシャルをフルに活かせるフレームレートが出せるが、高や最高設定でも十分になめらかだ。旧世代の比較用ノートPCと比べても、フレームレートの出方が段違いだが、今回検証に使ったノートPCはデータを見る限り120fps(液晶のリフレッシュレートと同じ)でキャップがかかっている感じもする。

 続いては同じ軽量FPSタイトルである「Apex Legends」でも試してみよう。画質は一番重い最高設定と、すべて中庸(2段階ものものは上)、すべて下の設定の3とおりを準備した。テストは射撃訓練場の一定のコースを移動したときのフレームレートを「CapFrameX」で計測している。

「Apex Legends」1,920×1,080ドット時のフレームレート

 こちら画質はすべて低設定で平均230fps前後出せているが、最高設定でも平均160fpsかつ120fps以上はキープできている。

 続いてはやや重めの「Call of Duty: Modern Warfare」を試してみる。これも画質は最高/中庸/低めの3設定で試すが、最高設定のみDXR(レイトレーシング)を組み合わせてみた。比較用ノートPCも最高設定+DXRと最高設定のみの二通りで検証する。

「Call of Duty: Modern Warfare」1,920×1,080ドット時のフレームレート

 Apex Legendsに比べると描画負荷はかなり重くなっていることが分かる。だが最高設定でも平均100fpsは超えているため十分快適。このゲームに関しては比較用ノートPCも割と頑張っているが、DXRを有効にすると大きくフレームレートを落としている点に注目だ。

 GTX 1080でもDXRは処理可能だが、RTコアを持たないためレイトレーシング系のゲームでは「動きを確認する程度」の効果しか期待できない。先日β版がリリースされた「Minecraft RTX」を試したいなら、AORUS 15GのようなRTX 20シリーズを搭載したPCが活躍するはずだ。ちなみにAORUS 15GでMinecraft RTX betaをフルHD(フルスクリーン)で動かしたところ、フレームレートの安定値は“43fps”であった(Neon District RTXで測定)。

 ゲーム編の最後として重量級ゲームである「モンスターハンター:ワールド」をDirectX 12 APIモードで試してみた。

「モンスターハンター:ワールド」DirectX 12モード、1,920×1,080ドット時のフレームレート

 RTX 2070 SUPER MAX-QとGTX 1080ではGPUパワーが近いせいか、最高画質設定でのフレームレートはほぼ同格。ただし、外付けディスプレイでWQHD以上の解像度で遊ぶ場合は、RTX 2070 SUPER Max-QのほうがDLSS ONでさらにフレームレートが向上するため有利になる。AORUS 15Gほどの性能があれば、外付け液晶と組み合わせるシステムもありだろう。

クリエイティブ系アプリでも速い

 パワーのある物理8コアCPUと色校正済みの液晶を搭載しているのだから、クリエイティブ系アプリでも活躍することは間違いない。そこで動画編集とRAW現像系アプリでのパフォーマンスも比較してみよう。

 まずは「Premiere Pro」で編集した再生時間約3分半の4K動画を「Media Encoder 2020」を利用してMP4動画に出力する時間を比較する。コーデックとbitレートはH.264が80Mbps、H.265が50Mbps、どちらもVBR&1パスエンコードとした。

「Media Encoder 2020」によるエンコード時間

 CPUの物理コア数が6から→8になったことから、ある程度の差が付くことは予想していたが、実際はコア数の違い以上に大きな差が付いた。とくに計算負荷の高いH.265ではAORUS 15Gの速さが際立つ。第10世代Coreプロセッサの設計的(Thermal Velocity Boostなど)なアドバンテージとコア数増加のアドバンテージに加え、AIによる冷却やパワーの最適化が影響している可能性がある。

 RAW現像検証は「Lightroom Classic」を使用した。100枚のDNG画像(24メガピクセル)に対し色やレンズ補正などを適用し、それを最高画質のJPEGに書き出す時間を計測する。シャープネス処理を書き出し時に追加しているので、CPU負荷はそれなりに高い。

「Lightroom Classic」によるJPEG書き出し時間

 Media Encoder 2020によるエンコード処理同様に旧世代ノートPCよりも1.5倍程度高速であることを示している。ゲームもクリエイティブ系アプリも攻めたい人にとっては、AORUS 15Gは非常にバランスのよいノートPCであると言えるだろう。

熱・クロック・パワーは?

 これだけ高性能なゲーミングノートPCともなるとゲーム中にCPUやGPUがどの程度発熱しているかが気になる。そこで「モンスターハンター:ワールド」をプレイ状態(画質は最高設定)で約30分放置し、その際のCPUパッケージ温度とGPU温度を「HWiNFO」で追跡することにした。また、ここではAIオンとオフで差が出るかも比較することとしたい。

ゲーム中のCPUパッケージ温度とGPU温度の推移

 3DMarkで性能に大きな差が出たのだから温度も差が付くだろう……と考えていたが、フタを開けてみると両者に目立った違いはない。GPUは82~83℃で、微妙にAIオンの時のほうが低くなったが、ほぼ誤差と言ってもよいレベル。

 CPUはAIの状態に関係なく最大91℃まで上昇しているが、ノートPCのクーラーを考えれば至極当然の結果。AIオフの時のほうがゲーム開始直後に温度が急激に上昇しているが、3分も経過すればAIに関係なく温度は天井に貼り付く感じだ。

 では動作クロックに違いは出るのだろうか? 上の温度データを計測中のCPUの“平均実効クロック(Average Effective Clock)”とGPUのクロックもグラフにしてみた。

ゲーム中のCPU Average Effective ClockとGPUクロックの推移

 AIオンの状態ではCPUもGPUもクロックがやや上昇するという興味深い結果を得た。まずGPUはAIオフのときに比べ100MHz程度クロックが上昇。CPUは最初は同レベルだが負荷が続くにつれてAIオフ時はクロックが緩やかに落ちてくる。3DMarkなどでスコアがアップしたのはCPUとGPUがより高クロックで動くようになったから、と言える。

 最後にCPUとGPUの消費電力、すなわちCPU Package PowerとGPU Powerも追跡してみた。

ゲーム中のCPU Package PowerとGPU Powerの推移

 まずCPUだが、ゲーム起動直後はAIオフ時のほうがよりパワーを引き出してガンガン回ろうとするが、ゲームが始まるとすぐに低下する。AIオンのときは最初に激しく変動するフェーズはあるものの、50秒くらいのところからはほぼフラットで、その後もそれを維持し続けている。GPUにいたってはAIオフ時よりもオン時のほうが10Wも消費電力が上がっている。言葉を換えれば、AIによってCPUもGPUもよりアクセルを踏み込めるようになった結果がこのグラフだ。

【総評】高品質、薄型&パワフルの新世代ゲーミングノートPCである点に疑問はない

 以上でAORUS 15Gのレビューは終了だ。重さ2.2kgの15インチ級ノートもついにここまで来たかと思わせる仕上がりになっている。ボディの薄さや液晶のクオリティは文句の付けようがない。

 ただ薄型ボディを採⽤しているせいか、アイドル時でもファンは常に回っている。中上位以上のGPUを搭載したノートPCの多くがそうであるように、ゲーム中はそれなりの動作音になる。とはいえ本機の場合はヘッドセットを装着しなくてもゲームの⾳はしっかり聞こえるレベルなので、気にしすぎる必要はないだろう。

 好みが分かれそうなのが本機のウリであるメカニカルキースイッチを採用したキーボードのフィーリングである。カチカチと音を発するクリッキータイプのスイッチを使っているため打鍵時のキレはよい。ノートでもこの感覚を求める方には間違いなく有力な選択肢となるはず。ただ、ボイスチャットをしながらキーを打鍵するときはカチカチ音が気になるかもしれない。

 この辺りはユーザーの慣れと好みに強く依存するし、最近ではソフトウェアによる打鍵音低減という手も考えられるので、こういう意見もあるという程度にとどめていただきたい。

 いずれにせよAORUS 15Gはゲームもクリエイティブワークもカバーできる高性能ノートPCであることは間違いない。そろそろ最新世代のノートPCに更新したいと考えているなら、AORUS 15Gを検討してみてはどうだろうか。

[制作協力:GIGABYTE Technology]