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Ryzen APUの性能を引出す高速SO-DIMM、ゲームはもちろん仕事もちょっと快適に
DeskMini A300×Crucial Ballistix SO-DIMMで卓上にも置ける小型PCを組んでみた text by 坂本はじめ
2020年5月26日 06:01
CPUとGPUを統合したAMDのAPUは、テレワークにも使えるパフォーマンスを備え、コスト面でも優れたPCを自作するのに適した製品だ。
特に、ASRockの小型PC自作キット「DeskMini A300」とRyzen APUの組み合わせは、コンパクトなPCを低コストで実現できるセットとして人気を博している。
今回は、Ryzen APUとDeskMini A300の性能をさらに引き出すべく、オーバークロックメモリを組み合わせてみた結果をレポートする。
「Ryzen 5 3400G × DeskMini A300」でコスパ抜群のコンパクトPCを手軽に
今回ベースとなる機材は、AMDから発売中の第2世代Ryzen APU「Ryzen 5 3400G」と、ASRockの小型PC自作キット「DeskMini A300」。まずは両製品について簡単に紹介しよう。
Ryzen 5 3400Gは、Zen+ベースの4コア8スレッドCPUと、11基のコンピュートユニット(CU)を備えるVegaベースのGPU「Radeon RX Vega 11 Graphics」を統合したAPUで、実売価格は税込で20,500円前後。記事執筆時点でDeskMini A300に搭載できるAPUの中でもっとも高性能なモデルだ。
ASRock DeskMini A300は、Socket AM4対応のAPUを搭載できる小型PC自作キット。幅155×奥行き155×高さ80mmという、1.92Lサイズのコンパクトな筐体にSTX規格のマザーボードを標準搭載。CPUクーラーとACアダプタも付属しており、ユーザーはAPU、メモリ、ストレージを用意するだけでPCを構築できる。
DeskMini A300の実売価格は税込で1万7,500円前後。ケース、電源、マザーボード、CPUクーラーのセットとしては非常に安価であり、コストパフォーマンスが魅力のAPUとの組み合わせで人気を博するのも頷ける。設置スペースをとらず、HDMIでテレビとも接続できるミニPCは、テレワークへの対応や手軽に使えるPCが欲しいユーザーに好適だろう。
また、今回コンパクトなPCを組むということで、SSDはM.2型のNVMe SSDを選択した。
高コストパフォーマンスなPCとなると、ストレージは2.5インチSATA SSDが有力な候補となるが、M.2型のNVMe SSDも廉価なモデルが増えつつあり、せっかくPCを快適にするならこちらをおすすめしたい。
例えば、CrucialのNVMe SSD「P2」は、同社の6Gbps SATA SSDである「MX500」との価格差がおおむね1,000円以下でありながら、アクセス性能はシーケンシャル・ランダムともに上回っており、システムストレージに好適な特性を備えている。スペースもとらずケーブルなども不要とM.2 SSDは小型PCでの利用にも適しており、DeskMini A300との組み合わせにも好適だ。
DeskMini A300で使えるオーバークロックメモリ「Crucial BL2K8G32C16S4B」
高コストパフォーマンスなミニPCを自作する手段として鉄板とも言える評価を獲得しているRyzen APUとDeskMini A300。
その性能を一つ上のステップに引き上げるべく用意したのが、ゲーマー向けオーバークロックメモリであるCrucial Ballistix SODIMMの「BL2K8G32C16S4B」だ。
BL2K8G32C16S4Bは、DDR4-3200かつCL16(16-18-18-36)動作に対応する8GBメモリ2枚組セット。動作電圧は1.35Vで、メモリプロファイルの「XMP 2.0」に対応。DeskMini A300もXMPに対応しているので、メモリの動作設定はUEFI上でXMPを読み込むだけで完了する。
もともと、Crucial Ballistix SODIMMはゲーミングノート向けに開発されたメモリだが、DDR4-3200というRyzen APUでも動作が期待できるメモリクロックのSO-DIMMであるBL2K8G32C16S4Bは、Ryzen APUとDeskMini A300に最適なスペックのオーバークロックメモリとも言える。
また、高クロック動作は発熱が伴うものだが、Crucial Ballistix SODIMMには薄手とは言えヒートスプレッダが備えられており、放熱性を意識した製品になっている。エアフローがある環境であれば効果も期待できそうだ。
なお、CrucialはBL2K8G32C16S4BをDeskMini A300に互換性のある製品として販売しており、動作確認が取れているメモリとしてリストアップされている。
APUの性能をさらに引き出すオーバークロックメモリの効果DDR4-3200対応SO-DIMMとDDR4-2400対応SO-DIMMで比較してみた
内蔵GPUがメインメモリをVRAMとして利用するAPUでは、メモリクロックがGPU性能に影響することが以前から知られている。加えて、RyzenではインターコネクトのInfinity Fabricやメモリコントローラの動作クロックが、メモリのクロック信号と同期しているため、高クロックメモリのメリットがより大きくなることが期待できる。
今回用意したDDR4-3200動作のオーバークロックメモリ「BL2K8G32C16S4B」によって、Ryzen APUとDeskMini A300がどのくらいパワーアップするのか、DDR4-2400動作のスタンダードメモリとの比較を通してチェックしてみよう。
メモリ帯域は25%も向上、実レイテンシも18%ほど改善
まずはメモリの違いにより、メモリアクセス性能自体がどの程度変化するのか、「SiSoftware Sandra 20/20 (v30.41)」でチェックしてみた。
メモリ帯域幅は、DDR4-2400メモリが28.19GB/sを記録したのに対し、DDR4-3200メモリでは35.41GB/sを記録。オーバークロックメモリの利用によって、メモリ帯域幅は約25.6%も増加したことになる。
一方、DDR4-3200メモリ利用時のメモリレイテンシについては、DDR4-2400メモリ利用時の82.5ナノ秒から、8割程度となる67.3ナノ秒にまで大きく短縮されている。
DDR4-3200メモリの利用によって、メモリ帯域幅とメモリレイテンシの両方が大きく改善していることが確認できた。これが、実際の利用シーンでどの程度効いてくるのかをチェックしていこう。
ファイナルファンタジーXIVはDDR4-3200とDDR4-2400で性能差は最大21%、APUに高クロックメモリはアリ!
続いては、ゲームベンチマークである「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」の結果をみてみよう。今回は、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)で、描画品質を「標準品質 (デスクトップPC)」と「最高品質」に設定した場合のスコアを比較した。
標準品質 (デスクトップPC)では、DDR4-2400メモリでのスコアが「4,306」で評価が「快適」であったのに対し、DDR4-3200メモリではスコアが「5,206」で評価は「とても快適」だった。DDR4-3200メモリの利用によって、約21%のスコア向上と、1段階の評価向上を果たしたことになる。
最高品質設定では、DDR4-2400メモリのスコアが「2,583」で「やや快適」の評価だったのに対し、DDR4-3200メモリのスコアは「3,052」で、評価は「やや快適」だった。評価こそ変わらないものの、スコアは約18%上昇している。
先に述べた通り、過去のAPUでは、内蔵GPUがメインメモリをVRAMとして利用する関係で、メモリクロックがGPU性能に大きく影響することが知られていた。この傾向がRyzen 5 3400GとDeskMini A300の組み合わせでも通用することが、この結果から証明されたと言える。
Ryzen APUでフォートナイトを楽しむなら高クロックメモリ、DDR4-3200とDDR4-2400の性能差は約20%
続いて、バトルロイヤルTPS「フォートナイト」でDDR4-3200メモリの効果をみてみよう。フルHD解像度で描画品質を「低」、3D解像度は100%に設定。リプレイ機能を使って同一シーンのフレームレートを測定した。
ゲーム中の平均フレームレートは、DDR4-2400メモリが57.9fpsで、DDR4-3200メモリでは約69.2fps。フレームレートは約20%向上しており、メモリの違いによって60fpsを維持できるシーンが大幅に増加した。DDR4-3200メモリを用いれば、息抜きにフォートナイトをプレイする程度は十分にこなせそうだ。
仕事や普段使いの性能も高クロックSO-DIMMで若干パフォーマンス向上PCMark 10でテスト
最後に、PCの総合的な性能を測定するベンチマーク「PCMark 10」の結果を紹介する。
PCMark10の総合スコアは、DDR4-2400メモリが「4,523」であったのに対し、DDR4-3200メモリは「4,645」を記録。DDR4-3200メモリの利用によって、約3%ほど性能が向上している。
テスト項目ごとのスコアを見てみると、アプリの起動やビデオ会議の性能を測定する「Essential」で約3%、写真やビデオ編集などの性能を測定する「Digital Content Creation」で約5%、スコアが上昇している。GPUをフル活用するゲーム程ではないものの、メモリクロック向上の恩恵がさまざまなシーンで得られることがわかる。
APUに高クロックメモリの組み合わせは効果的DeskMini A300で一台組むならメモリクロックにもこだわろう
以上の通り、Ryzen 5 3400GとDeskMini A300に、DDR4-3200動作のオーバークロックメモリを組み合わせることで、GPU性能を中心に性能を向上させることができた。
特にGPU性能に関しては数段上のパフォーマンスに引き上げることができており、様々な用途で使うことになる自宅用PCでの恩恵は大きなものとなるだろう。
とはいえ、DeskMini A300を検討するユーザーにとって気になるのは、オーバークロックメモリのコストだろう。スタンダードメモリとの価格差が大きいと導入がためらわれるところだが、Crucial Ballistix SODIMM BL2K8G32C16S4Bの価格は1万2,000円前後で、比較に用いたDDR4-2400メモリとの価格差は2,000円ほど。コストパフォーマンスを重視するユーザーにとっても、十分検討に値する価格だ。
[制作協力:Crucial]