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10コアのCore i9-10900Kも余裕で冷やせる水冷クーラー「CORSAIR iCUE H150i RGB PRO XT」
全コア4.9GHz動作で長時間使用もOK、アドレッサブルRGB LEDで美しさも強化 text by 坂本はじめ
2020年6月23日 06:01
水冷ヘッドにアドレッサブルRGB LEDを搭載したCORSAIRのオールインワン水冷「iCUE RGB PRO XT」に、360mmラジエーターを搭載したハイエンドモデル「iCUE H150i RGB PRO XT(CW-9060045-WW)」が登場した。
今回は、CORSAIR最新の360mmラジエーター搭載オールインワン水冷の実力を測るべく、先日Intelより発売されたComet Lake-Sこと第10世代Coreプロセッサの最上位モデル「Core i9-10900K」を使用し、10コア20スレッドCPUの発熱を処理できるのか試してみた。
アドレッサブルRGB LED搭載でより美しく360mm級オールインワン水冷「iCUE H150i RGB PRO XT」
CORSAIR iCUE H150i RGB PRO XTは、120mmファンを3基搭載できる360mmサイズのラジエーターを備えたオールインワン水冷クーラーの新モデルだ。水冷ヘッドにアドレッサブルRGB LEDを搭載したことで、従来モデルよりイルミネーションの表現能力が向上している。
対応CPUソケットは、IntelのIntelのLGA 1200/115x/2066/2011/1366と、AMDのSocket AM4/AM3/AM2/sTRX4/TR4。冷却ファンには、磁気浮上ベアリングを採用する「ML120」3基を標準搭載している。実売価格は税込25,000円前後。
イルミネーションはユーティリティの「iCUE」から設定、他のデバイスと連動するイルミネーションも可能
iCUE H150i RGB PRO XTは、CORSAIR独自のユーティリティ「iCUE」に対応している。
付属のケーブルを用い、水冷ヘッドに設けられたmicroUSB端子とマザーボードを接続することで、ユーティリティのiCUEから一括管理が行える。
iCUE H150i RGB PRO XTであれば、冷却ファンやポンプのコントロール、動作状況のモニタリングの他、水冷ヘッドに内蔵されている16個のアドレッサブルRGB LEDを制御できる。
LEDイルミネーションについては、他のiCUE対応デバイス同期制御させることが可能で、RGB LED搭載製品をCORSAIRのiCUE対応モデルで統一することによって、高度にリンクしたLEDイルミネーションを楽しめる。
iCUE対応のメモリと連動させた場合の例になるが、実際にイルミネーションがどの程度リンクするのか、動画に撮影してみた。統一感のあるイルミネーションを構築したいと考えているユーザーは参考にして欲しい。
Core i9-10900Kも余裕で冷やす冷却能力、定格動作なら負荷時も静音状態で常用OK
それでは、Core i9-10900Kを使ってiCUE H150i RGB PRO XTの冷却性能をチェックしていこう。
テストに用いたのは、ASUS TUF GAMING Z490-PLUS (WI-FI)にCore i9-10900Kを搭載したIntel Z490環境。動画変換/編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」で、4K動画のエンコードを約10分間実行した際のモニタリングデータをHWiNFOとCORSAIR iCUEで取得した。
テスト時の室温は約25℃で、iCUE H150i RGB PRO XTのファン・ポンプ制御は標準の「安定」。CPUのCore i9-10900Kの動作はマザーボード標準設定(定格動作)に加え、電力リミットを解除した常時最大ブースト動作でもテストを行った。
今回のテスト機材では、Core i9-10900Kの電力リミットは、標準でTurbo Boost Power Max(PL1)の値が125W、Turbo Boost Short Power MAX(PL2)が250Wに設定されている。Core i9-10900Kは、250WのTurbo Boost Short Power MAX(PL2)の状態で動作する時間(Tau)は56秒に制限がかけられており、それ以降は125W枠での動作になる。
なお、実際に動画エンコードを行い、Intel Extreme Tuning Utilityで消費電力(Package TDP)を確認してみたが、250W枠動作時の消費電力は185W前後となっていた。リミット値としては250Wだが、実際の消費電力はブースト動作の設定やCPU負荷次第であり、必ず250Wフルに使い続けるわけではない点に留意してほしい。
また、今回テストする電力リミット解除設定では、PL1とPL2がともに4,095W(Unlimited)まで緩和されるため、CPUは実質的に無制限の電力消費を許容されることになる。ただし、ブースト動作のクロックや電圧設定は変わらないため、標準設定で記録した185W前後での最大ブースト動作が常に維持されることになる。
常時全コア4.9GHz動作でも余裕、リミッター解除のCore i9-10900Kでも70℃台に抑え込む冷却性能
CPU温度の測定結果だが、まとめたものが以下のグラフだ。CPU温度の最低値と最大値に加え、エンコード処理を実行している際の平均CPU温度も計測した。なお、室温は25℃の環境でテストしている。
動画エンコード中の最大CPU温度は、標準リミット時に72℃で、リミット解除時には76℃を記録。Core i9-10900Kのサーマルスロットリング作動温度は100℃なので、どちらも20℃以上もの余裕がある温度となっている。
一方、動画エンコード実行中の平均CPU温度は、標準リミット時が58.4℃で、リミット解除時は70.3℃。最大温度では4℃だった差が12℃近くにまで開いているのは、CPUが125Wを超えて最大ブースト動作を維持できる時間が異なるためだ。なお、最低CPU温度についてはどちらも31℃だった。
標準リミット時とリミット解除時に、CPUとiCUE H150i RGB PRO XTがどのような動作をしていたのか、テスト中のモニタリングデータをまとめた結果から確認してみよう。
まず、標準リミット時の動作を確認する。処理開始から最初の1分弱の間、CPUは190W弱の電力を消費しながら約4.9GHzで動作しており、ブースト動作の制限時間経過後に消費電力が125Wに制限されると、CPU温度も60℃弱に低下している。最大CPU温度の72℃は、最初の最大ブースト動作の終了間際に記録された温度だ。
iCUE H150i RGB PRO XTのポンプスピードは常に2,330rpm前後を維持している一方、冷却ファンに関しては最大で約1,230rpm、平均すると1,000rpm程度で動作していた。このスピードは搭載ファンの最大値である2,400rpmの半分程度であり、ファンの動作音もかなり小さく抑えられていた。
リミット解除時のCPUは、動画エンコード実行中は常に190W前後の電力を消費しながら、約4.9GHz動作を維持している。最大CPU温度である76℃が記録されたのは、エンコード開始からiCUE H150i RGB PRO XTのファンスピードが上昇するまでの間で、ファンスピードが上昇して以降のCPU温度は70℃前後で安定している。
iCUE H150i RGB PRO XTのポンプスピードは約2,320rpmで一定で、ファンスピードは一時的に約1,380rpmにまで上昇したのち、やや速度を落として1,200rpm前後で動作していた。標準リミット時に比べると動作音も多少増加しているが、依然として風切り音は小さく静粛性に優れた動作を実現している。
モニタリングデータの結果から、リミットを解除して常時全コア4.9GHzで動作するCore i9-10900Kであっても、iCUE H150i RGB PRO XTはCPU温度とファンスピードに相当な余裕をもって冷却できていることが伺える。
中低速といえる程度のファンスピードでCPU温度を70℃前後に抑え込んでいるところをみると、それほど発熱の大きなCPUであるかのように思えてくるが、全コア4.9GHzで動画エンコードを実行しているCore i9-10900Kは190W前後の電力を消費している大きな発熱源だ。その発熱をここまで抑え込めているのは、ひとえにiCUE H150i RGB PRO XTが備える冷却性能の高さ故である。
リミッター解除のCore i9-10900Kでも余裕で冷やせる高性能水冷クーラー美しいLEDイルミネーションも魅力
CORSAIRの360mmラジエーター搭載オールインワン水冷クーラーであるiCUE H150i RGB PRO XTは、アドレッサブルRGB LED採用によって表現力が向上したイルミネーション機能と、電力リミッターを解除したCore i9-10900Kの発熱を余裕で抑え込める抜群の冷却性能を兼ね備えている。
特に、Comet Lake-S最上位のCore i9-10900Kが低発熱なCPUであるように錯覚するほどに優れた冷却性能は、オーバークロックやメニーコアCPUでの利用にも適している。
高性能で美しいPCの自作に挑戦するユーザーにとって、CPUクーラーにiCUE H150i RGB PRO XTはぜひとも検討すべきCPUクーラーであると言えるだろう。
[制作協力:CORSAIR]