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M.2 SSD換装がより手軽に、外付けケース経由でのOS移行にも対応したSamsungのツールを試す
「Samsung Data Migration」が改良、NVMe SSDもUSB外付けケースで引越しOKに text by 芹澤 正芳
2020年7月31日 06:01
テレワーク需要やPCゲームプレイヤーの増加から、PCのパフォーマンスに不満を持つ人が増えている。ちょっと古めのPCでは、内蔵ストレージがHDDの製品が多く、こういったケースでは大容量のSSDに交換すると、大幅なパフォーマンスアップと容量不足の解消が狙える。少し世代が新しくなるとSSDを搭載しているが、これを最新のNVMe対応SSDに変えるとさらなる高速化が可能だ。
とはいえ、何も用意せずにもとの内蔵ドライブから新しいドライブへシステムやデータを移行するというのは、それなりにめんどうな作業が伴ってしまう。
Samsungでは、同社の対象SSD製品であれば無料で使えるデータ移行ソフトウェア「Samsung Data Migration」を提供しており、Windows上のソフトウェア操作で簡単にデータの移行作業が可能だ。そのため、安価に購入した中古PCのストレージ強化を目的に同社SSDを購入する層も多い。
同ソフトウェアの最新版である「Samsung Data Migration 4.0」にて、新たにNVMe M.2 SSD製品のUSB外付ケースでのデータ移行にも対応し、使いやすさがさらに高まった。
そこで今回は、実際にVAIOノートとNVMe SSD、外付けNVMe SSDケースを使ったデータ移行手順を紹介しよう。
M.2のSATA SSDを高速/大容量なNVMe SSDに換装ちょっと前のVAIOノートを快適にしたい!
作業をはじめる前に必ずチェックしておきたいのが、現在使っているノートPCのストレージの種類だ。
現在のSSDは、2.5インチとM.2形状が主流だ。2.5インチのHDD/SSDはほぼSerial ATA接続なので、移行先は同じ2.5インチでSerial ATA接続のSSDを選択すれば問題ない。
注意が必要なのは、M.2形状だ。M.2 SSDは、接続インターフェースとしてSerial ATAとPCI Expressの2種類があり、同じスロットに取り付けられるものの両者には互換性がない。ノートPCに搭載されているM.2スロットによっては両方の接続インターフェースに対応している場合もあるが、どちらか片方だけの対応ということもある。目安として、M.2スロットのPCI Express接続SSDに対応したPCは、IntelではHaswell以降のCPU搭載製品に限られる。
そのほかの注意事項としては、PCI Exrpressに対応していてもGen2止まりということもあり、その場合はGen3やGen4のSSDも動作は問題ないが転送速度が制限される。また、スロットの長さが一般的な2280ではなく、2242などの短い長さのものというパターンもある。
そこを事前にしっかりと調べて、用意するSSDを決めたい。
今回、ストレージの換装に挑戦するのは、VAIOの2016年モデル「VAIO S13 (VJS131C11N)」だ。CPUはCore i5-6200Uを搭載し、まだまだ現役で快適に使えるスペックを持つ。
本機ではSerial ATAとPCI Expressの両方に対応するM.2スロットを備えているため、換装に使えるストレージの幅は広い。標準ではSerial ATA接続で容量128GBのSSDが搭載されていたが、さすがに最近では容量が少なく感じるところだ。
そこで、今回は容量とデータ転送速度アップの両方を狙い、SamsungのPCI Express 3.0 x4接続NVMe SSD「970 EVO Plus」の1TB版「MZ-V7S1T0B」を用意した。シーケンシャルリード3,500MB/sを実現したハイエンドモデルだ。
VAIO S13はM.2スロットが1基しかないため、970 EVO PlusをUSB接続の外付けケースに入れて、ノートPCのUSBポートに接続することでデータ移行を実行する。ここではAOTECHの「AOK-M2NVME-U31G2」を用意した。
そして、データ移行の主役となるのが「Samsung Data Migration 4.0」だ。Samsung製のSSDを接続した環境で使用できるクローニングソフトで、OSを含むシステムを丸ごと移行できる。PCに詳しくない方にはハードルが高い、ノートPCのストレージ換装を簡単にしてくれる心強い存在だ。
なお、Samsung Data Migration 4.0が対応するOSとSSDは以下のとおりだ (記事作成時点)。
対応OS
- Windows 7 SP1/8/8.1/10
対応SSD
- Samsung SSD 970 PRO
- Samsung SSD 970 EVO
- Samsung SSD 970 EVO Plus
- Samsung SSD 960 PRO
- Samsung SSD 960 EVO
- Samsung SSD 950 PRO
- Samsung SSD 860 EVOシリーズ
- Samsung SSD 860 PRO
- Samsung SSD 860 QVO
- Samsung SSD 850 EVOシリーズ
- Samsung SSD 850 PRO
- Samsung SSD 840 EVOシリーズ
- Samsung SSD 840シリーズ
- Samsung SSD 840 PRO シリーズ
- Samsung SSD 830シリーズ
- Samsung SSD 470シリーズ
外付けケースを使ったOS移行は組み合わせが重要、確実に動作するのはJMicron製チップ採用ケース
Samsung Data Migration 4.0を使う上で注意したいのは、ソフトが利⽤できるNVMe SSD対応外付けケースと、できない外付けケースが存在することだ。
今回は、VAIO S13と970 EVO Plusの組み合わせで、複数のNVMe SSD対応外付けケースを用意し、実際に検証を行なった。その結果は以下のとおりだ。
メーカー | 製品 | インターフェース | ケース本体のコネクタ | 搭載チップ | Data Migrationの動作 |
---|---|---|---|---|---|
AOTECH | AOK-M2NVME-U31G2 | USB 3.2 Gen 2 (10Gbps) | USB Type-C | JMicron JMS583 | 動作 |
AOTECH | AOK-M2NVME-U31G2C | USB 3.2 Gen 2 (10Gbps) | USB Type-C | JMicron JMS583 | 動作 |
ORICO | PRM2-BK | USB 3.2 Gen 2 (10Gbps) | USB Type-C | JMicron JMS583 | 動作 |
エアリア | SD-M2NV | USB 3.2 Gen 2 (10Gbps) | USB Type-C | ASMedia ASM2362 | 動作せず |
ASUS | ROG Strix Arion | USB 3.2 Gen 2 (10Gbps) | USB Type-C | ASMedia ASM2362 | 動作せず |
センチュリー | CM2NVU31C_FP | USB 3.2 Gen 2 (10Gbps) | USB Type-C | ASMedia ASM2362 | 動作せず |
INEO | C2598 NVMe | USB 3.2 Gen 2 (10Gbps) | USB Type-C | ASMedia ASM2362 | 動作せず |
※USBの対応規格に関しては、製品の発売時期によりUSB 3.1 Gen2表記とUSB 3.2 Gen2表記のものがあるが、事実上同一規格のため、表内のインターフェース表記についてはUSB 3.2 Gen2で統一している。
今回筆者が試した限りでは、NVMe SSDをUSB接続に変換するためのチップに「JMicron JMS583」を採用しているものは問題なく動作し、「ASMedia ASM2362」を採用しているものでは動作しなかった。あくまで筆者個人での検証結果ではあるが、外付けケースを選ぶ際の目安としてほしい。
もちろん、チップにASMedia ASM2362を使っているものでも、外付けドライブとしては問題なく動作する。あくまで、Samsung Data Migration 4.0では動作しないだけだ。
M.2 SSD外付けケースを使ってOS環境をNVMe SSDに引っ越しSSDの組み込み方からデータの移行まで手順を紹介
それではここからは、実際にストレージ換装の手順を紹介していこう。基本的な流れは
- ノートPCにSamsung Data Migration 4.0とSamsung NVMeドライバをインストールする
- 970 EVO Plusを外付けケースに取り付け
- 外付けケースをPCのUSBコネクタに接続
- Samsung Data Migration 4.0でノートPCのデータを970 EVO Plusに複製
- PCからもとのSSDを取り外す
- 970 EVO PlusをPCに取り付ける
となる。ノートPC内部へのアクセス方法やストレージの搭載位置は製品によって大きく異なる。事前にマニュアルなどで確認しておこう。また、BitLocker (Windowsの暗号化機能)が有効になっているとデータ移行に失敗することがある。もし、有効になっている場合は事前に無効へと変更しておこう。
このほか、970 EVO Plusなどデータの移行先がNVMe SSDの場合は、データ移行作業前にSamsung NVMeドライバをインストールしておかないとこれも移行に失敗することがある。忘れずインストールしておきたい。Samsung NVMeドライバもSamsungのWebサイトからダウンロードが可能だ。
なお、移行作業時にSSDが発熱している場合があるため、ケースからSSDを取り外すさいには、念の為少し時間を置いてから作業に取り掛かりたい。
これで移行作業は完了だ。試しに移行前と移行後のデータ転送速度を比べてみよう。
移行前のSSDはSATA接続なので、シーケンシャルリードは535.44MB/s。シーケンシャルライトは124.83MB/sに留まる。その一方、移行後の970 EVO Plusはシーケンシャルリードでは3,132.11MB/sに達した。シーケンシャルライトは2,950.11MB/sと約23倍も高速化している。
容量も128GBから1TBに増加しているため、多くのデータを保存できるようになったのも心強い。
ちなみに、Samsung Data Migration 4.0はたとえば移行元のノートPCが1TBのHDD、移行先となるSamsungのSSDが500GBなど、移行先のほうが容量が少なくなる場合への対応として、クローニング (複製)から除外するファイルの選択機能も備えている。
その場合は丸ごとの移行とはいかなくなるが、HDDは大容量でも安いがデータ転送速度が遅いため、小容量でもよいのでデータ転送速度が高速なSSDに乗り換えたい、といった目的には便利な機能だ。
USB外付けケースを介したOS移行に正式対応より便利になったSamsung Data Migration 4.0
ここまで紹介してきたように、Samsung Data Migration 4.0では外付けドライブへの移行をサポートしたことで、ノートPCのようにストレージが1つしか内蔵できない環境におけるデータ移行における使い勝手が大きく高まった。
HDD→SSD換装で便利な特定のファイルを除外して移行できる機能など、有償ソフトウェアと遜色のない高度な機能も備えたSamsung Data Migration 4.0を無償で利用できるSamsung製SSDは、ストレージ換装先の選択肢としてもってこいだ。
なお、Samsung SSDの国内販売特約店のITGマーケティングでは、970 EVO Plusの1TB版と500GB版に、「AOK-M2NVME-U31G2」をバンドルしたものを8月上旬より発売予定だ。ノートPCのストレージ移行を考えているなら、このバンドル版を購入するのがよいだろう。
[制作協力:Samsung]