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ゲーミングなウルトラワイド液晶が仕事にも活躍する時代になった!? 34インチは超快適!

IPSで120Hz/3,440×1,440ドットな「Alienware AW3420DW」を購入した理由 text by 日沼諭史

自宅の仕事環境にワイドなゲーミングモニター「Alienware AW3420DW」を導入

 より快適に在宅勤務を続けられるようにするため、筆者は日々、自宅内業務環境の整備に余念がない。そんななか、ここ数カ月の機材アップデートで最も大きかったものの1つがディスプレイだ。

 最初は25インチWQHD(2,560×1,440ドット)モニター1台体制でスタートし、しばらく後に同じモニターの2台構成に変更。そして現在は3,440×1,440ドットの解像度をもつDellのゲーミングモニター「Alienware AW3420DW」に置き換えた。

 それほど熱心にゲームをしているわけでもなく、仕事用途がメイン。なのに、どうしてゲーミングな製品にしたのかというと、「仕事でもようやくゲーミングモニターが実用できる性能になった」ことがわかったからだ。今回は筆者が「Alienware AW3420DW」をなぜ選び、どんな風に仕事で役に立てているのか、ご紹介したい。

広視野角で見やすいIPSパネル液晶にも高リフレッシュレートモデルが増えてきたせっかく買うならゲーミング仕様かつ普段使いもしやすいモデルが欲しい

高リフレッシュレートなモニターにもIPS液晶のムーブメントが

 「ゲーミングモニター」の定義にはっきりしたものはないようだけれど、今のところ一番納得しやすい基準としては、リフレッシュレートが60Hzを超えるもの、ということになるだろうか。ゲーミングではない標準的なモニターは60Hz止まりで、ゲーミングモニターであれば75Hzから、最近は300Hzに達するものまで出てきている。

 リフレッシュレートが高いとどうしてゲームに適しているのかは、みなさんご存じの通り。描画が早ければ早いほど(PCのスペックが十分にあれば)ゲーム映像の動きが滑らかになるからだ。特にFPSのようなサバイバルゲーム的な内容のものだと、敵の瞬間的な動きも見え、画面全体のスクロールを細かく表現できる(ブレが抑えられる)ため、いち早く判断・反応できることにつながる。おそらく対戦時の勝率にも少なからず影響してくるだろう。

これまでメインで使ってきたビジネス用モニターは60Hz
対してゲーミングモニターは60Hzを超えるリフレッシュレートを実現している

 ビジネス用途だとそこまでの滑らかさが必要になる場面はあまりなく、60Hzもあれば必要十分、というのが多くの人の共通認識じゃないかと思う。動画を再生するときもほとんどが30~60fpsだし、そもそもYouTubeで見る60fpsの動画は十分に滑らかだ。

 でも本当に仕事で60Hz以上の高リフレッシュレートはいらないのだろうか、とも考えてしまう。リフレッシュレートが高速なことで、事務作業が今より快適になる可能性もあるのでは?

 そんな思いをずっと持ち続けていたものの、なかなかゲーミングモニターを導入するには至らなかった。一番の問題は液晶パネルの駆動方式だ。高速なリフレッシュレートを実現する液晶パネルが、これまではTNやVAといった方式を採用していることが多く、少しでも斜めから画面を見ると暗くなったり、色合いが変わってしまったりする。全体がギラついて見える場合もあり、目に疲労がたまりやすい。これだとテキストや写真を扱う筆者の仕事には適していないし、一般的な事務用途にも向かないだろう。

 やはり仕事用には、くっきり、はっきり、広い視野角で表示してくれるIPS方式の液晶ディスプレイじゃないと! と思っていたら、最近になってIPS方式を採用したゲーミングモニターが登場し始めた。トップクラスの高リフレッシュレート……というわけではないけれど、十分にゲーミングとして通用する性能で、徐々にメーカーや解像度の選択肢も、豊富とは言えないにしろ選べるくらいには増えてきた。こうなったら、わざわざゲーミングじゃないものを買う理由はない。

IPSパネルで大きすぎないことは外せない!個人的液晶選びのポイント……でも決め手はやっぱりお値段

 同じIPS液晶のゲーミングモニターでも仕様はいろいろ異なる。好みや環境によっても何を重視するかは変わってくるだろうけれど、筆者は以下のような条件でゲーミングモニターを絞り込むことにした。


    ・絶対にIPS液晶であること
    ・解像度は現在のモニター(WQHD)と同等かそれ以上
    ・モニターの大きさ(高さ)は現在と同等かそれ以下
    ・モニターアームが利用できる(VESA対応である)
    ・できるだけ安価
以前Dellからお借りした5,120×1,440ドットのディスプレイ。このサイズは自宅には大きすぎるし、使い切れなかった。
25インチ、2,560×1,440ドットのモニター2台体制の時代。ベゼルで中央で切れてしまうこともあり、2画面をフル活用できていたとは言えなかった……。

 IPS方式のゲーミングモニターは、今のところフルHD解像度のものが多い印象で、価格もわりとこなれている。けれども、既存のWQHDディスプレイより解像度が低くなると当然ながら仕事の効率が下がってしまうから、候補から自動的に外れることになる。

 既存のWQHDのディスプレイ2台分をそっくり1台で置き換える5,120×1,440ドットの超横長ディスプレイも気にはなっていたが、過去に一度メーカーからお借りしてオフィスで試してみたときの感覚を思い出すと、自宅の仕事部屋にはちょっと大きすぎる。

 そもそも、その時点で使っていた2台体制のWQHDモニター自体、2画面全体をあまり活用できずにいた。25インチのWQHD解像度というのは、1台でもそれなりに広々としていて、自分にとっては絶妙のサイズ感。普段の仕事内容だと1画面でもわりと間に合っていた。

 オンライン会議・取材のときに一方のディスプレイを映像専用にして、もう片方のディスプレイでメモを取る、なんていう使い分けはかなり便利だったけれど、言ってみればフル活用するのはそういうときだけ。

 ただ、1画面だけで常に効率良く仕事できる、というわけでもない。2台分までの広さは必要ないけれど、1台だけだとそれはそれで窮屈なときも多い。だからといって27インチとか、31インチとかの大きなサイズを選びたいとも思わない。

 できるだけ現状の画面サイズ感を維持しつつ、ほどよくデスクトップを広くしたい。それでいてリフレッシュレートの高いゲーミングモニターでIPS液晶がほしい……というわがままさ。

 わがままついでに言うと、デスクの奥行きが60cmとあまり広くはないので、場合によっては画面から顔までの距離を稼げるようモニターアームを使うことも想定し、VESA対応であってほしい。……となると、選択肢は非常に限られてくる。

 候補として何機種かは見つかったものの、相場としてはだいたい15万円前後で、踏ん切りをつけるのがなかなか難しい投資額だ。

もともと15万6,800円だったのが、期間限定クーポンなどで6万円引きで購入可能になっていた。チャンスは有効に使いたい。
注文から3日で届いた「Alienware AW3420DW」。箱はかなりデカい。

 が、しばらく様子見していると、候補の1つだったDellの「Alienware AW3420DW」が、直販サイトでキャンペーンやクーポンの合わせ技を使うと標準価格15万6,800円の約6万円引き、96,280円(税抜き)になるという、どう見てもお買い得じゃないのこれ、としか言えない値段でセールされていたので、ポチったのだった。

 Dellの直販サイトは、こうした時々びっくりするようなセールもあるので見逃せない。ただ、納期が長いケースもあるので注意は必要だ。実際、今回も注文前には納期が1カ月以上と表示されていた。

 迷ったのだけれど、こんな値段で購入できることはそうめったにないだろうと覚悟を決めたら、なぜか3日後には届いた。つまり、お買い得品があったらとにかく迷わず注文せよ、ということである。

3,440×1,440ドットはミドルスペックGPUでも使い切れる性能でちょうどイイ!付属スタンドを使うかアームを使うかは悩みどころ

 AW3420DWは、これまでの25インチ、2,560×1,440ドットのモニター1.3台分余りの解像度となる3,440×1,440ドット、34.1インチ。画面の実表示領域の高さは以前と比べて+2cm余りだから大きくは変わらず、イメージ的には「横に半画面分くらい長くなったなあ」という感じだ。

 ワイドでありながら意外と小回りの利く大きさで、奥行き60cmのデスクで使う分には個人的にはベストなサイズ感に思える。

スタンドを組み立てて取り付ける
デスクに設置してみた

 リフレッシュレートは120Hzで、最近のゲーミングモニターで標準的なスペックになりつつある144Hzや240Hzには及ばないものの、通常モニターの2倍あると考えれば十分に高性能。ゲーム用途でも存分に違いを感じられる。

 でもって、IPS方式の液晶は当然ながら視野角が広く、どの角度から見ても細部までキリッと表示し、今までのモニターと同じように違和感なく使えるのがうれしいところだ。

IPS液晶なので斜めから見ても画面はくっきりきれいに表示

 3,440×1,440ドット、120Hzというスペックは、ガチのゲーム用途には物足りないと思われるかもしれない。けれど、ゲーム用途ではしっかりゲーミングしつつ、さらに仕事に兼用するモニターとしては、実にちょうどいいバランスだ。

 というのも、これ以上に解像度やリフレッシュレートが高いと、性能をフルに活かすにはPC側にもそれ相応のスペックが要求される。特にGPUなんかは現時点のハイエンドに近いもの(NVIDIA GeForce RTX 2080など)でなければモニター本来の性能が活かせる画質・フレームレートで表示できないだろう。

 筆者が使用しているデスクトップPCは、すでに世代遅れとなってしまった第2世代Ryzen 5で、GPUはRTX 2060というミドルスペックな装備。これでも原稿執筆、写真のRAW現像や動画の編集なんかにはもったいないくらいに余裕があるし、3,440×1,440ドットの画面でヘビーなゲームを動かすときでも、だいたいは高画質設定で60fps以上を維持できる。AW3420DWは、そこそこのPCで使い切れる性能をもつ、ちょうどいい製品なのである。

最新ゲームの最高画質だと60fpsを切ることもあるが、見た目に遜色ないある程度高画質な設定に調整すればヌルヌル動く画面でプレーできる

 そして、筆者的に最も注目なのが、VESA規格のネジ穴がきっちり背面に設けられていること。付属スタンドの代わりに市販のモニターアームを使えるのだ。こうしたワイドモニターの多くはVESA非対応のものばかりなのだけれど、その原因はおそらく重量。モニター本体が重すぎて、そもそも支えられるモニターアームが世の中にほとんど存在しないために対応していないものと考えられる。

 しかし、AW3420DWはスタンドを除いた本体重量が6.8kgと、この手のモニターにしては比較的軽量な部類に入る。だいたいのモニターアームが対応できるだろう。

 筆者が以前から所有しているエルゴトロンの「LXデュアルデスクマウントアーム」は、モニター2台を横に並べて支えられるモニターアームで、片側9.1kgまで、両側同時使用時は18.1kgまでの耐荷重性能をもつ。6.8kgのAW3420DWなら何ら問題なく支えることが可能だ。

写真だとちょっと見にくいが、背面にはVESA準拠のネジ穴が用意されている
標準のスタンドからモニターアームに変更

 ただ、モニターアームにしてしまうとデメリットもある。それは、AW3420DWのスタンドが備えているLEDライティング機能が使えなくなってしまうことだ。

 ホワイトの背面に映えるフルカラーのライティング機能は、モニターの設定画面(OSD)などから光り方を変えることができ、ゲーミングな雰囲気を盛り上げてくれる。……のだが、スタンドを使わないということはこれをすっぱり諦めることになる。

 背面隅にあるエイリアンロゴやモニター下などのライトは生きるので、完全にライティング機能がなくなるわけではないけれど、その魅力が半減してしまうのは悲しいところではある。

スタンドにはライティング機能のためにピンヘッダが設けられている。これが本体側端子と接触して通電する仕組み
OSDで設定できるライティング機能
こんな風にいろいろ光らせることができるけれど、モニターアームを使うなら諦めなければならない
イルミネーションがなかなか綺麗なので惜しいところではある
背面隅にあるロゴや、本体下部のダウンライト、電源ボタンのライトは生かしたままにできる

 とはいえAW3420DWのスタンドを使うにしても、ワイドモニターということもあって立派な作りで、サイズもそれなりにある。

 スタンドの大きさ(フットプリント)は実測で幅56cm、奥行き28cmで、120×60cmのデスクにはかなりのインパクト。というか、普通に設置するとディスプレイ面からデスク手前端まで30cmくらいしか残らず、顔に近すぎる状態になってしまう。

スタンドのフットプリントはけっこうなスペースを食う
ディスプレイ面がデスクの半分くらいのところまできている
デスクの手前側にはまったくゆとりが無い
常用していると視力がさらに悪化しそうな距離ではある

 画面と目の距離を適切に保つには、デスクを大きくするか、背面方向にぎりぎりまで追い込めるモニターアームを使うか。仕事部屋が4畳半なのでデスクを大きくするという選択肢はなく、つまり筆者の環境ではモニターアームにするしかない。

 ここはAW3420DWがVESA対応で、本当に良かったと思うところ。狭い仕事部屋、狭いデスクには、VESA対応のモニターかどうかはとても重要なポイントだ。

モニターアームにすることで背面側にギリギリまで追い込める
かなり余裕ができた

ゲーミングモニターが仕事に役立つ3つのポイントマウスカーソルが見やすい!・ブラウザのスクロールも滑らか・色彩設定も細かく調整可能

 さて、疑問なのは、ゲームではなく仕事がメインの用途なのに、どこでゲーミングモニターの高性能が活躍するのか、というところだろう。これには主に3つの「仕事効率アップ」につながるポイントがあると筆者は思っている。

 1つは、マウスカーソルの動きが圧倒的に滑らかになること。通常の60Hzのモニターに慣れているとあまり意識することはないけれど、ゲーミングモニターにすると最初に気付くのがマウスカーソルの動きの違いだ。素早く動かしてもカーソルが残像のように(途中でワープしたように)見えることがなく、その動きを最初から最後まで目で追うことができる。

 これは、手で動かすマウスの挙動に正確に追従させて、ポイントしたいところに正確に移動させられることにつながる。Webブラウジングの際にページ内のリンクをクリックするにしろ、テキスト文書やスプレッドシートの任意の場所にカーソルを移動するにしろ、全てが正確に操作できるのだ。

 マウスカーソルの移動速度を数段階早い設定にしても問題なく扱えるし、ワイド画面でデスクトップが広いこともあり、そうした方がより効率的にマウス操作できる。FPSなどのゲームでは高DPIのマウスがよく使われるようだが、高リフレッシュレートのモニターにすると、仕事用途であっても高DPI設定可能なゲーミングマウスが欲しくなってくるに違いない(筆者は以前から使っているが)。

高DPI設定も可能なゲーミングマウスがあるとゲーミングモニターはさらに活用できる
マウスカーソルを素早く動かしても、120Hzなら常に目で追える

 2つ目は、スクロールの滑らかさ。仕事でよく使うソフトはWebブラウザーやチャットソフト、Officeアプリケーションなど、縦スクロールで閲覧していくものがほとんどだ。滑らかにスクロールできるかどうかは、今の時代、もはや仕事のしやすさに直結すると言ってもいい。たとえばWebブラウザーで文章を読み進めていくときでも、スクロール中に文字や画像がかすれにくく、くっきりとした表示を維持し、必要な情報を見逃してしまうことを防げる。

 「あの人、この間なんて書き込んでいたっけ」と思ってチャットの過去ログを遡るようなときも、該当の発言を見付けやすい。Google マップのような地図サイトであれば、マウス操作に対する地図表示の反応速度、追従性が高まる(ように感じられる)ため、ローディング自体が速くなったのではないかと思うほどだ。経路・スポット検索するときの操作効率も高まることは間違いない。

60Hzでのスクロールはボケて見える
120HzのAW3420DWではスクロール中もはっきり見える

 3つ目は、多彩な色調設定や広い色域をもつなど、幅広い色設定・カラーコレクションが可能になっていること。ゲーミングモニターでは長時間画面に向き合うゲーム用途を考慮して、色調や輝度の調整だけでなく、用途に合わせた色調設定への切り替えが可能になっていることが多い。さらには一般的なsRGBを超える色域をもつDCI-P3のような色空間に対応し、正確で見やすい色再現も達成しているのが特徴だ。

 AW3420DWも、ゲームのジャンルごとに最適な色調設定に一発で切り替えられるだけでなく、業務用途にも適したブルーライトを抑える暖色の「コンフォートビュー」や「ウォーム」といったモードが用意されている。また、DCI-P3の98%の色域をカバーする仕様で、sRGBよりも豊かな色再現能力を備えることから、写真や映像の編集にも都合が良い。これらの設定・性能は、1日中画面とにらめっこする筆者の仕事においては目の疲労軽減に効果があるはずだ。

ゲームジャンルごとに最適な色調設定に切り替えられる
「コンフォートビュー」や「ウォーム」は目の疲労を軽減しながら使いたい人に適している

普段の仕事環境にマッチするバランスの良いゲーミングモニターを3,440×1,440/34インチのワイドディスプレイに大満足

Zoomなどを使ったオンライン会議・取材では、画面の半分にビデオチャットを、もう半分にメモアプリを表示させることで効率良く作業できる。16:9の一般的なモニターだと厳しいが、AW3420DWのような21:9のモニターだといい感じ

 ゲーミングモニターが仕事にも使えるようになった一番の要因としては、やはり高リフレッシュレートを可能にしたIPS液晶が登場し、これまでのTN/VA液晶の欠点とされてきた部分を解消したことが大きいだろう。それを過剰なPCスペックが必要とされない3,440×1,440ドットのワイドディスプレイで実現したAW3420DWは、ゲーム用としても仕事用としても、過不足のないちょうどいいバランスの性能をもっているように感じる。

 特にVESA対応でモニターアームでも支えられる点は、仕事スペースを広く取りにくい在宅勤務をしている人にとってもありがたい部分ではないかと思う。むしろ筆者としては、いくら高性能で安価なゲーミングモニターでもVESA対応でなければ購入することは考えられなかった。

 快適さを求めてとにかく高解像度、高リフレッシュレートのハイスペックモニターを購入したくなるものだが、テレワーク化が進む今、自分の普段の環境で使い勝手よく扱えるバランスの良さがあるかどうか、という視点はもっと大事にすべきかもしれない。

 在宅勤務のお供としてAW3420DWを導入した今回の選択には、筆者としてはかなり満足しているところだ。