特集、その他

HDD搭載の富士通 LIFEBOOK A574/Kを1TB SSDに換装、大容量化/高速化で快適に!

SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 佐藤岳大

 今回SSD換装の事例として紹介するのは、第4世代モバイルCoreプロセッサーを搭載する富士通「LIFEBOOK A574/K」。

 2014年に発売されたPCで、発売時はWindows 8.1 Proを搭載していたモデルだが、手に入れた個体はメンテナンス済みでWindows 10 Proへアップグレードされた個体だった。

 ストレージには320GBの2.5インチSATA HDDが搭載されており、今回はこれを1TBのSSDに換装し、大容量化と合わせて高速化を狙ってみたい。

※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。

LIFEBOOK A574/KをSSDに換装、1TB SSDで大容量/高速化

 今回のレビューで紹介するLIFEBOOK A574/Kは、2014年に富士通から発売されたビジネス向けのノートPC。型番「FMV08003」のモデルを使用している。

 中古品として入手したもので、CPUに2コア4スレッドのCore i5-4310M(ベース2.7GHz/ブースト時3.4GHz)、メモリにDDR3L-1600 8GB、ストレージにHDD 320GBを備えるモデルで、ディスプレイは15.6インチ/1,366×768ドット。

 法人向けの製品であることもあり、Webカメラや無線LANなどが省かれているが、HDMIやD-Sub、DVDドライブなどを搭載している。OSはWindows 10 Proがインストール済みとなっていた。

 古めのモデルではあるが、ストレージを強化すれば、軽い作業や普段使い用には問題の無い性能を持っていると言えるだろう。

搭載されていたのは2.5インチHDD「東芝 MQ01ABU032W」

 LIFEBOOK A574/Kに搭載されていたHDDだが、今回の個体には東芝のMQ01ABU032Wが装着されていた。SATA接続の2.5インチHDDで、容量は320GBだ。

PCに搭載されていた東芝MQ01ABU032W。
CrystalDiskInfoによるステータス。5,400rpm、3Gbps SATA対応。

換装に使うのは1TB/SATAのSamsung SSD 860 EVO

 今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 860 EVOの1TBモデル「MZ-76E1T0B/IT」。最大速度リード550MB/s・ライト520MB/sのSATA接続モデルで、インターフェイスはSATA 6Gbps。

Samsung SSD 860 EVO(MZ-76E1T0B/IT)。
CrystalDiskInfoによるステータス。

 Samsung SSD 860 EVOは250GB~4TBまでの5製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。

HDDからSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介

 ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。

 2.5インチSSD用の外付けケースは税込千円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。

換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう

 PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。

 今回使用している外付けケースはORICOの2577U3-BK。2.5インチストレージに対応したUSB 3.2 Gen1接続のケースで、ツールレスでネジを回す必要がなく容易にストレージを取り付けることができる。

●1 SSD外付けケース「2577U3-BK」と換装するSSDを準備。
●2 SSD外付けケースのふたを外す。
●3 基板にSSDを装着したらケースのふたを閉める。今回のSSD外付けケースはツールレスなのでネジ止めする必要はない。
●4 PCに接続すれば準備完了。

2.5インチドライブ用外付けケースの注意点

  2.5インチ用の外付ケースの場合、厚みに関わらず利用可能な物がほとんどだが、ごく稀に7mm厚のものしか入らなかったりするなど、物理的な相性が出る場合もある。使用するSSD/HDDが何mm厚なのか、ケース側の対応状況も念のため確認してから購入しよう。

データ移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0で簡単に

 今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。

 Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。

●1 Samsung公式サイトのSSDツールとソフトウェアのページから「Samsung Data Migration 4.0」をダウンロードする。
●2 Samsung Data Migration 4.0をセットアップし、起動させる。
●3 画面下側にあるターゲットドライブの項目を指定する。移行先のSSD(今回はSamsung SSD 860 EVO 1TB)を選択しよう。
●4 移行先のドライブのデータが全て消去される旨のダイアログが表示されるのでOKを選択。なお、安全にデータ移行を行うため、他のアプリケーションを起動したり、ながら作業をするのはやめよう。
●5 進行状況はプログレスバーで表示される。ちなみに、移行前のSSDの使用容量は26GBほどだったが、データのコピーは10分前後で終了した。
●6 データのコピーが完了すると自動的にPCはシャットダウンされる。

ストレージ交換には内部配線の着脱が必要、LIFEBOOK A574/Kは分解難易度は若干高め

 ここからはLIFEBOOK A574/Kの分解になるが、工具はドライバーとオープナーがあれば問題ない。ただし、後述する通り内部のケーブルの着脱などが必要とされるため、分解難易度そのものはやや高めだ。

 SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意しよう。バッテリーが外せるモデルの場合は外して作業を行うとより安全だ。LIFEBOOK A574/Kはバッテリーが外せるので、PCをシャットダウンしたら取り外して作業を始めよう。

 LIFEBOOK A574/Kは、背面にメモリへアクセスできるメンテナンスパネルが配置されているが、こちらのパネルからはストレージの交換ができない。まずは背面のネジを全て外していこう。

●1 背面パネル側、バッテリーの下にネジ3つが隠れている。
●2 底面のバッテリーのツメを引っ張りながら外す。
●3 ドライバーで底面パネルのネジを外す。
●4 バッテリー装着部のネジも外す。

 裏面のネジを外したら、次はキーボードを取り外す。まずはキーボード上部のパネルを外していくが、こちらはツメで固定されており、無理に広げるとツメが折れてしまうので取り外しは慎重に行おう。ケースオープナーを使うとスムーズに作業が進む。

 キーボードを外すため、パネル下のネジ2本を取り外す。これでキーボードが取り外せるが、フレキシブルケーブルでマザーボードと繋がっているため、ケーブルを破損しないように気をつけよう。

●5 隙間にオープナーを入れ、キーボード上部のパネルを外していく
●6 パネルを取り外した様子。
●7 赤丸で囲ったネジ2本を外す。
●8 キーボードが取り外せた。この時点ではまだ基板とフレキシブルケーブルが繋がっているので、引っ張らないように気をつけよう。

 次にキーボードのフレキシブルケーブルを外していく。マザーボード側のコネクタにロック機構が備わっているため、ロックを外してから引き抜こう。

●9 キーボードとマザーボードを繋ぐフレキシブルケーブル。
●10 コネクタのツメを緩めて引き抜こう。ここが外れればキーボードを完全に取り外せる。

 キーボードを外したら、次はそのほかの内部コネクタを外していく。ディスプレイケーブルとスピーカーケーブル、タッチパッドケーブル、電源ボタンケーブルの4カ所だ。

●11 赤丸で囲われたディスプレイケーブルとスピーカーケーブル、タッチパッドケーブル、電源ボタンケーブルの4カ所を外していく。
●12 茶色のコネクタはツメを持ち上げてロックを解除しよう。
●13 ロックを解除したところ。
●14 スピーカーケーブルはロック機構がないのでそのまま引き抜ける。
●15 ディスプレイケーブルは黒いビニールが付属しており、こちらを引っ張ると外せる。
●16 経年劣化などでビニールの耐久性に不安があれば、オープナーなどを使ってコネクタを持ち上げてはずそう。

 コネクタを外したらパネルの固定ネジとヒンジのネジを外していく。赤丸で示した4カ所のネジを外し、ヒンジ部のネジも外そう。

 これでストレージにアクセスが可能になる。パネルを持ち上げる際には先程外したケーブル類を挟んだりして痛めないように気をつけよう。

●17 パネルのネジを外す。
●18 左ヒンジのネジを外す。ケーブルを破損しないよう気をつけよう。右のヒンジも同様だ。
●19 これでストレージへアクセスできる状態になった。開ける前にケーブルを痛めないよう配置に気をつけよう。
●20 パネルを持ち上げたところ。

 パネルを空けたらHDDを取り外してSSDへ交換する。HDDはプラスチックの固定具とゴムのカバーで固定されているのでそちらもSSDへ装着しよう。

●21 パネルを外した状態。
●22 HDDベイは本体中央だ。
●23 プラスチックの固定具を外す。
●24 HDDを取り外す。
●25 HDDにはゴム製のマウンタが装着されている。
●26 HDDから取り外したマウンタをSSDに取り付ける。
●27 SSDをベイに装着する。
●28 プラスチックの固定具を戻す。

 これでSSDへの交換は完了だ。あとは先程と逆の手順でケーブルやパネルなどを戻していこう。特にケーブルを戻す際は、しっかりと接続されているか確認しよう。

●29 パネルやケーブルをもとに戻してネジを締める。
●30 無事PCが起動すれば成功だ。

 冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。

 保証が切れている使い込んだノートPCなどであれば、SSDの換装は投資に見合った効果が得られやすいので、PCを買い換える前に試してみる価値はある。

SSD換装でシーケンシャルアクセスは速度は約5倍に、体感速度も大幅に向上

 実際にSSD換装を行い得られたメリットも紹介しておこう。今回は容量と起動速度、ベンチマークの結果を紹介する。

1TB SSDで空き容量に余裕、長く使えてゆとりのある環境に

 まずは容量の面だが、LIFEBOOK A574/Kには320GBのHDDが搭載されており、リカバリー領域などを除いてシステム上から見た実際の容量は約297GBだ。

 データをため込んだりしなければある程度ゆとりがあるが、画像や動画などを無計画に保存していると足りなくなる容量だ。特に空き容量を意識せず使うのであれば、1TB以上のストレージにしておきたい。今回1TBのSSDに換装することで、空き容量は約904GBとなった。これだけあれば当面容量が足りなくなるようなことも無いだろう。

換装前の320GB HDD「TOSHIBA MQ01ABU032W」。空き容量は272GBで、ソフトウェアなど一式入れて、写真や動画なども保存していると、意外にゆとりがなくなる容量だ。
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 860 EVO」。空き容量は904GBで、大容量ファイルなどを置いても空き容量は十分。データを入れっぱなしにできるゆとりがある。

HDDからSSDへの換装で速度は大幅アップ、ランダムアクセスの大幅向上で快適さは別物

 HDDからSSDへの換装は効果が非常に大きく、メリットが大きい。

 今回のケースでもそれは数値に表れており、ベンチマークの結果は全項目で換装後の方が高速となり、シーケンシャルアクセスは5倍以上、特にランダムアクセスでは比較にならないほどの差が出る結果となった。HDDからSSDへの換装は数値だけで無く体感速度もかなり向上するので、非常に効果的だ。

換装前の320GB HDD「TOSHIBA MQ01ABU032W」。
5,400rpmSATA接続HDDとしては標準的な速度。
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 860 EVO」
ほぼ期待値通りの数値が発揮された。

OS起動時間は約4倍高速化、待ち時間を大幅に短縮

 HDDからSSDへの換装で一番体感速度の向上が実感できるものと言えば「PCの立ち上がりにかかる時間の差を比較する」のが鉄板だろう。ということで、SSD換装前とSSD換装後で電源ボタンをONにしたタイミングからスタート画面が表示されるまでにかかる時間を計測してみた。

 結果として、換装前のHDDでは起動までに約58秒を要した。一方、換装後のSSDでは14秒で起動を完了し、大幅に高速化した。

 SSDへの換装後は、デスクトップ画面表示後にすぐ操作しても問題なくサクサクと操作でき、体感速度や快適性の面で大きな違いがある。ソフトウェアの各動作やファイル保存など、要所で速度面における快適さを感じられるので、SSD化の恩恵を様々な面で感じられるだろう。

 ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。

 今回とりあげた富士通のLIFEBOOK A574/Kは、8GBメモリに第4世代モバイルCoreプロセッサーと性能は控えめではあるが、バッテリー交換が容易に行えることもあり、製品自体は長く使い続けられる。長く使うという観点で見ると、SSDは物理的な衝撃にも強いので、故障率を下げるという面でも効果があるだろう。

 古いPCのSSD換装は、追加コストを抑えつつ快適さを手に入れられる有効な手段だ。特にHDDを搭載しているPCのSSD換装は体感面でも大きな変化があるので、使用しているPCにモタつきなどを感じているのであれば検討してもらいたい。

[制作協力:Samsung]