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もう普通には戻れない?21:9の“超横長”5Kディスプレイで写真、動画編集環境が激変!

さらにテレワーク環境まで変えるMSI「Prestige PS341WU」 by マルオマサト

大迫力のウルトラワイド画面にクリエイティブ用途向けのハイスペック仕様

 ゲーマー向け液晶ディスプレイを多数展開するMSIだが、「Prestige PS341WU」は34型/5K (5120×2160) 解像度対応に対応するウルトラワイドな液晶ディスプレイだ。DCI-P3カバー率98%の広色域表示、さらにVESAのDisplayHDR 600にも対応するハイスペックを備える、いわゆる“クリエイター向け”の製品だ。

MSI「Prestige PS341WU」。DCI-P3カバー率98%、DisplayHDR 600対応のハイスペックな34型/5Kのウルトラワイド液晶だ

 写真編集や映像制作などのクリエイティブワークでは、レイヤーや作業履歴、ツールやエフェクトのパラメータを指定するウィンドウなど、同時に表示させて使いたい画面要素が多い。制作物のディテールを確認することも多く、高解像度で大きくワイドな画面を持つディスプレイの導入は作業効率の改善には有効だろう。実機を使ってみてレビューしよう。

 34型のウルトラワイドな画面は大迫力。5Kパネルのアスペクト比は21:9(厳密には約21.33:9)。4K(3,840×2,160ドット)の画面をさらに横に3割拡張したうれしくなる広さだ。広視野角で発色に優れるIPS方式のパネルを採用しており、表面は映り込みにくいノングレア仕様となっている。

広視野角で発色に優れるIPS方式のパネルを採用。表面は実用性重視の映り込みが少ないノングレア仕様

 34型というサイズはかなり離れた距離からでもしっかり視認できる大画面。5K解像度ということもあり、精細感はより増して、写真を表示すると被写体の立体感を感じさせる。

 Windows 10の表示は「150%」が推奨。推奨そのままで十分にテキスト情報は見やすく、デスクトップの広大さも存分に実感できる。

150%表示(Windows 10の推奨)、アイコンサイズ中の表示。ムリなく文字が読めるサイズでしかも広々
そのまま100%表示にしてみた。若い人ならこれでも余裕だろうか

パネルは大きくとも意外なほどにスマートなボディ

 画面は大きいが、ボディはスリム。スタンドのスクエアの部分は実測で幅345×奥行き135mmほど。さらにシリンダー部(実測奥行き約75mm)とケーブルをまとめるクランプがあるので奥行きはさらに10cmほど必要だが、画面以外は必要最小限のスペースしかないという印象だ。重さも軽くて扱いやすい(公称重量約8.2kg)。

 画面の高さは100mmの調整が可能。さらに左右角度調整(スイベル)は左35度~右35度、上下角度調整(チルト)は 上20度~下5度と、柔軟な向きや角度調整ができ、見やすい位置と角度で使うことができる。大きいだけに頻繁に位置を変えたりすることができないだけにこうした調整機能があるのはありがたい。

ボディのサイズは、幅817.1mm×奥行き500.7mm×高さ260.4mm。画面は大きいがとてもスリムだ。意外と軽く(公称重量約8.2kg)扱いやすい。
高さは100mmの間で自由に調整できる
裏面。あえて左右対称ではなく躍動感を持たせたラインで構成している。入力端子はカバーで隠されている
横から見るとスリムさが際立つ
画面の上下角度調整(チルト)は 上20度~下5度に調整できる
向かって左側の側面にSDメモリーカードスロット、Type-AのUSB 3.2(Gen 1)などがある
スタンドもスリム。フレーム状のスクエアの部分は実測で幅345×奥行き135mmほど
スタンドの向かって左奥だけマグネットが内蔵されており、付属のエンブレムを装着できる。このように紙を挟んでおくことも可能

豊富な入力端子、USBドック機能も

 映像入力端子として、HDMI 2.0bが2基、DisplayPort 1.4、USB Type-C(DP Alt Mode)と4系統を装備するほか、オーディオの入出力端子として、オーディオコンボジャック(PC接続用)、ヘッドホン出力とマイク入力を搭載している。

 また、USBハブ/ドック機能用(PC接続用)にUSB 3.2 Gen1 Type-Bを搭載。USBハブ/ドック機能としては、USB 3.2 Gen1 Type-Aを3基、SDメモリーカードリーダーを利用できる。SDメモリーカードリーダーの対応規格は記載がないが、UHS-I対応のメモリカードは本来の性能で利用できた。

 裏面にOSDの設定を行なうスティックとプログラマブルボタン(後述するCreator OSDの起動などに利用可能)、その近くに電源ボタンがある。

主要な端子は背面のカバー内にある。電源を内蔵しているため、ACアダプタは不要だ
映像入力は。HDMI 2.0bが2基、DisplayPort 1.4、USB Type-C(DP Alt Mode)と4系統を装備する。5K表示はDisplayPort 1.4のみで可能だ。USBハブ/PC接続用のType-BのUSB(USB 3.2 Gen 1)
側面の端子。USB 3.2 Gen 1 Type-Aを2基、SDメモリーカードリーダー、ヘッドホン出力、マイク入力
ケーブルをまとめられるクリップが装着されている
カッパーのケーブルクランプが付属している
カバーを閉めてケーブルクランプに通してやると非常にシンプルにまとまる

Windowsからディスプレイを操作できる「Creator OSD」が超絶便利!

 これだけ画面が広大だと持て余してしまいそうになるが、そこで活躍するのがMSIオリジナルの「Creator OSD」ユーティリティ。これは、さまざまな設定をWindows上からできてしまうという優れ物だ(USB接続が必要)。OSDにも用意されているカラーモードの変更やアラームクロック、PIP(画面の中に別の画面を表示)、PBP(2系統の画面を並べて表示)の設定などが可能。USBで通信するために少しタイムラグはあるものの、ボディの後ろに手を回してOSDで操作するより格段に使いやすい。

OSDの起動や操作はスティックボタンで行なう。その下のボタンは、プログラマブルボタン。標準では「Creator OSD」ユーティリティが起動する。画面底部に電源ボタンがある
OSD。スティックボタンのナビゲーターが下に表示されているので分かりやすい。
MSIオリジナルの「Creator OSD」ユーティリティ。さまざまな設定をWindows上からできる
アプリ/ウィンドウをレイアウトに合わせて並べてくれる「分割ウィンドウ」機能が非常に便利だ

 Creator OSDにのみ用意されている機能も多数ある。中でも便利なのが、開いているウィンドウをレイアウトに合わせて整列させてくれる「分割ウィンドウ」。どこに何を表示するかも明快に設定できるので非常に便利。5Kウルトラワイドならではの広大な表示領域を有効活用できる。

スリープの設定、スクリーンキーボード機能なども用意されている
背面のボタンで起動するアプリを選べる。標準では「Creator OSD」ユーティリティが起動する
PIP機能を利用したところ。メイン画面はデスクトップPC、サブで右上にノートPCの画面を表示させている

DCI-P3を98%カバーするプロ仕様の広色域

X-Riteのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」での計測中の様子

 クリエイター向けとして重要なのが、表示できる色の範囲を示す色域。本製品は、インターネットコンテンツの標準であるsRGBよりもはるかに広く、映像業界の主流であるDCI-P3を98%カバーする広色域を持っており、プロユースの制作作業にも十分使えるスペックだ。

 OSDやCreator OSDではカラーモードの選択ができ、DCI-P3、sRGB、AdobeRGBと使いたい色域モードを選べる。また、映画や電子書籍の読書に適したモード、医療用のDICOMに準拠したモードなども用意されている。

 エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」で計測したところ、最大輝度が379cd/m2、最低輝度は0.298cd/m2、コントラスト比は1272:1、色温度は7947Kだった。色温度はカラーモードを選べば、適した色温度へ調整される。色域もDCI-P3カバー率約95.5%とほぼ公称値どおりだった。

 i1 Display Proを使って、ユニフォーミティ(色、輝度の均一性)もチェックしてみた。上部の輝度がやや低い傾向はあるものの、クリエイティブ向けとして十分許容範囲だろう。

i1 Display Proによる計測結果
「i1 Display Pro」を用いて作成したICCプロファイルをPhonon氏制作の色度図作成ソフト「Color AC」で表示した。DCI-P3の色域(赤の点線)と本製品(黒の実線)はほぼ重なっている
「i1 Display Pro」のユニフォーミティ検査の結果。上部がやや低いという結果
「i1 Display Pro」のユニフォーミティの結果(輝度)

DisplayHDR 600対応、HDRコンテンツも楽しめる

Windows 10上でHDRを利用する設定にすると、ディスプレイも自動的にHDRモードになる

 また、DisplayHDR 600に対応している。DisplayHDRは、VESAが定めるHDRを楽しむためのディスプレイの基準を段階別に示した規格で、DisplayHDR 600では、最大600cd/m2の高輝度と0.1cd/m2の低輝度などかなりのハイスペックを満たす必要があるが、本製品はその要件をクリアしている。

 Windows 10上でHDRを利用する設定にすると、ディスプレイも自動的にHDRモードになるので簡単だ。実際にYouTubeでHDRのコンテンツを再生してみるととくに明暗差の激しい場所で顕著。標準状態では階調表現優先なのか白っぽい映像であるのに対し、HDRモード時は階調を残しつつ締めるところは締めたいい感じの映像で楽しめた。

YouTubeで公開されているHDRのデモ映像(https://www.youtube.com/watch?v=RcxJ8x-S64w)を再生している画面をカメラで撮影した。HDRを利用しないと全体に白っぽく表示された
HDRを有効にしてみると、階調を残しつつも締めるところは締めたいい感じの映像になる。

ウルトラワイドとクリエイティブツールと相性のよさを再確認、トレーニングとの相性も抜群

 性能、機能を一通りチェックしてきたところで、いろいろなアプリを実際に利用して、使用感をチェックしてみた。Windows 10の表示設定は、推奨の150%を基本にしている。

 まずは僚誌「DOS/V POWER REPORT」電子版のPDFデータを表示してみた。全体の3/4でも紙の同誌と同じ大きさの見開き表示が余裕。残りの1/4はビデオ会議の映像やチャット画面、Webサイトなどを表示させて実用的に活用できる。

DOS/V POWER REPORT電子版を表示したところ。100%見開き表示しても余裕があったので、CreatorOSDでWebページと一緒に表示させてみた。なお、サイズ比較用に置いたDOS/V POWER REPORTの判型は209×277mmm

 次はビデオ編集ツールのAdobe Premiere Pro。これは画面が横に伸びたぶん、タイムラインの横幅が多くとれるのが実によい。画面が狭いと何か作業をするたびにその作業に合わせてタイムラインの縮尺を頻繁に変えなければならないが、その手間は激減だ。

 34型で150%表示なので16:9相当の画面でも快適度はかなりのもの。Premiere Pro CC自体は16:9相当として、脇に別のウィンドウを表示するパターンも試してみたが、これもよい。動画学習教材、チュートリアルなどを見たり、Webページで関連情報やヘルプなどを参照したりしながら作業することも多いと思うが、ウィンドウを切り換えずに横に表示させたまま使えるというのがとてもよい。

Premiere Pro。タイムラインの表示領域を大きくとれるため、長い動画も楽に編集できる
16:9相当の画面でも十分な広さ。動画チュートリアルなどを表示させて作業するという場面でもムリなく使える

 Lightroom Classicは、管理/整理用のライブラリ画面と現像作業を行なう画面、デュアルディスプレイが欲しいアプリケーションだが、このサイズと解像度ならシングルでも十分快適。下にフィルムストリップ形式でサムネイル表示しながら作業履歴、現像パラメータなど必要なパレットを全部表示させたまま現像作業が可能。2枚同時でも大きく表示できるので頻繁に表示倍率を変えなくともディテール、全体のバランスを比較できるし、表情の比較などもしやすく、セレクトも容易になった。

 Photoshop CCもレイヤーとヒストリー(作業履歴)はもちろん、色の分布を示すヒストグラム、エフェクトなどのパラメータを表示するプロパティあたりは同時表示して使いたいところだが、5Kウルトラワイドの本製品ならば余裕。ディテールの確認が楽なのはほかのツールと同様だ。複数画像を組み合わせて一つの画像にするような作業も楽にできる。

Lightroom Classicの画面。2枚同時でも十分な大きさ、ビフォー/アフターのチェック、表情の比較などもしやすく、セレクトも容易になった
Photoshop CC。カラー、プロパティ、ヒストリー、レイヤーなどを同時表示させても1枚なら余裕があり過ぎる。複数画像を1枚の画像にまとめるような作業もはかどる

クリエイターの作業効率アップの即戦力、オフィスワーク、オンライン授業にも

 Prestige PS341WUを実際に使用してみた感想は、とにかく快適の一言だ。34型というサイズであるために通常の16:9の領域だけでも大きく広く使えるところに、追加のワイドな領域が加わっている。Creator OSDで簡単にウィンドウを並べることができるため、追加領域で動画を再生したり、Webページを表示させるといったことが簡単にできる。

 普段筆者はデュアルディスプレイ環境で利用することが多いが、片方の画面は動画を再生しているだけだったり、Webページを表示しているだけだったりするので、それと変わらない。1台でデュアル/トリプルのディスプレイを利用しているのとあまり変わらない感覚だ。それでいて、底面積は1台分、最小限のケーブル接続でできるのだからうれしい。クリエイティブアプリはヘルプページやWebの解説記事、チュートリアル動画などを見ながら使う機会も多いだけに、この点も強調できる。

 クリエイティブとの相性がよいのは言うまでもないが、オフィスワークや学習にも最適だ。会議(講義)の映像、WebやPDF資料などを同時に表示しながら、書類作成などの作業を進められる。画面が大きく、画面から目を離して使える上、角度も柔軟に変更できるので、疲労もたまりにくいことだろう。導入すれば作業効率のアップに貢献するのは疑いがないところだ。さすがに少し値は張るが、それに見合う恩恵が受けられる製品だろう。

[制作協力:MSI]