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たった2kgの筐体に最新GPU「GeForce RTX 3070」を詰め込んだ「GIGABYTE AORUS 15G」で最新&定番7タイトルのfpsを測定
text by 加藤勝明
2021年2月4日 00:00
ズバリ、言わせていただく。今、ノートPCでPCゲームを楽しみたいなら1月に発表されたばかりの、ノートパソコン向けの「GeForce RTX 30シリーズ」を搭載したハイパワーゲーミングノートPCがオススメだ。
まず、GPUの性能が前世代から大きく高まっている。ゲーミングにおいてはGPUパワーこそが正義なのは言うまでもない。そしてこのGPUを搭載するノートは、おしなべてCPU性能も高い。その上で、実際の製品を選ぶ上でチェックしてゆきたいのは、ゲームを快適に楽しめる高速液晶や高品位サウンド、そしてノートPCの命である機動性といった要素となる。
今回紹介するのは、GIGABYTEのGeForce RTX 3070搭載ノート「AORUS 15G XC-8JP2430SH」。AORUS 15Gと言えば、筆者は去年「RTX 2070 SUPER Max-Q」を搭載した2020年モデルをレビューしている。一見すると同じような印象の筐体だが、2020年モデルよりもボディが最大2mmほど薄くなり、かつ重量も約200g軽量化した進化版なのだ。それでいてGPUはGeForce RTX 3070に、CPUはComet Lake世代の最新8コアモデル(Core i7-10870H)に更新されて、価格は2020年モデルの登場当初よりなんと6万円程度も安くなっている。
パワーアップして薄型軽量化とあれば、試さないわけにはいかない。はたしてAORUS 15G最新版は人気PCゲームでどこまでのパフォーマンスを見せてくれるのだろうか? ノートPC用GPUの注目株と合わせてチェックしていこう。
キーボードがメンブレンになるかわりに薄く&軽く
まずはAORUS 15G(以降、断りがない限り2021年モデルを指す)の外観からチェックしよう。前述のとおり2020年モデルに比べて若干薄型&軽量化されたが、全体のデザインテイストは大きく変わっていない。
キーボードは大きく変わった。2020年モデルはオムロン製のクリッキータイプのメカニカルスイッチを採用したものであるのに対し、2021年モデルはメンブレンスイッチを使った普通ノートPC向けキーボードに変更されている。クリッキータイプ(俗に言う“青軸”風)のスイッチがもたらす打鍵感のキレが味わえなくなったものの、メンブレン式にすることで打鍵音が劇的に静かになったので、ゲームしながら配信を考えている人や、ほかの人がいる部屋で使いたい人にはかえって喜ばれるだろう。
メンブレンスイッチを採用したことで軽量化も薄型化もしやすくなったし、さらにJIS配列化も容易になるなど、多くの日本人ユーザーにとってはメリットの多い変更と言える。ちなみに上位モデルである「AORUS 17G」は、引き続きオムロン製のメカニカルキースイッチを採用し、キー配列もANSI(US)配列のみとなる。
ボディの両側後部から背面がすべて排気用スペースに割り当てられているため、インターフェース類はやや手前に配置されている。Thunerbolt 3/4ポートは搭載されておらず、5GbpsのUSB 3.2 Gen1仕様のUSBポートのみで構成されている。プロ向け/クリエイター向けモデルだと高速ストレージを接続する目的で欲しい装備だが、コストも意識してゲーミングに必要な機能を重点的に強化するという現実的な選択の結果だろう。
その視点で見てみると、ヘッドセットがTRRS(4極)プラグ対応でケーブル一本での着脱が可能だったり(スマホ用ヘッドセットがそのまま接続できるというメリットも)、安定したネット対戦には欠かせない有線LANポートが標準装備されているなど、ゲーマーが求めるインターフェースはしっかり押さえており、“分かっている”感がある。
AORUS 15Gに搭載されたフルHD液晶はリフレッシュレート240Hz対応のIGZO IPSパネルを採用し、動きの激しいゲームの展開も視認しやすい。ノングレアで、X-Rite Pantone色校正認証を取得したパネルなので動画鑑賞などにも最適だ。GIGABYTEいわく、一般的なノートPC向け液晶の色精度値(ΔE)が2〜3なのに対し、AORUS 15Gの液晶はΔEが1未満になるよう校正されたものであると言う。近年のビジュアルにこだわったゲームを楽しむなら、美しく正しい発色であるに越したことはないので、この点は非常にうれしい。
AIを利用したパワー&温度制御を組み込む
では内部に目を向けてみよう。CPUは8コア16スレッド対応の「Core i7-10870H」、GPUはノートPC向けの「RTX 3070」を採用している。以前レビューした2020年モデルはCore i7-10875Hなので、CPUに関しては新旧ともに第10世代Coreプロセッサのまま。第11世代Coreプロセッサは今のところ4コアモデルまでしか投入されていないための選択と思われる。
そして注目のGPUは世代が更新され、2020年モデルのRTX 2070 SUPER Max-Q(昨年レビューした機種)からRTX 3070に変更された。本機種に搭載されているノートPC用のRTX 3070は、デスクトップ用のRTX 3070に比較するとCUDAコア数は約15%少なく(5,888基→5,120基)、TGPも220Wから最大125W(ノートPCの設計に依存)に引き下げられたためデスクトップ版よりも性能は控えめだが、重量級ゲーム、とくにDXR(DirectX Raytracing)を使ったゲームをノートPCで楽しみたい、という人には注目のGPUだ。
これだけハイパワーなCPUとGPUを薄型ボディに詰め込むのだから、発熱とファンの回転速度をどう制御するかがキモになる。NVIDIAはノートPC向けRTX 30シリーズ発表イベントで「第3世代Max-Q」(薄型軽量ノートでパフォーマンスを発揮するためにチップや放熱、給電などを最適化したシステム)と、それに関連するパワー制御&ファン制御技術「Dynamic Boost 2.0」、「WhisperMode 2.0」技術を発表したが、AORUS 15Gでは第3世代Max-Qのみが使用され、Dynamic Boost 2.0とWhisperMode 2.0はあえて使われていない。
ではAORUS 15Gは何を使って電力やファン回転数を制御しているのかと言うと、2020年モデルに引き続きMicrosoftのAzure AIを使った独自機能を使用している。NVIDIAの考えた技術がよいのか、GIGABYTE独自の実装がよいのかまで比較することはできないが、デスクトップ上の「AI」ガジェットを利用してCPUとGPUのパワー制御を有効化できる。とくに理由がなければクラウドから学習データをダウンロードし、同時にこちらの学習データもアップロードする「AI Azure Download and Upload」を選んでおけばよいだろう。
NVIDIAの発表でAHモバイル向けRTX 30シリーズで対応とうたわれていた「Resizable BAR」(PCI Expressの機能を使った性能向上技術)への対応に関しては、今回の検証では確認できなかった。モバイルRTX 30シリーズはチップとしては全モデルがResizable BARに対応しているが、AORUS 15GのBIOSがResizable BAR対応ではないのがその理由。ただ、可能性としては、GIGABYTEが更新BIOSを提供することによりResizable BARに対応することもあり得る。将来的な対応に関するアナウンスは今のところないものの、同社の頑張りに期待したい。
内部構造は2020年版のAORUS 15Gとほぼ同じだ。CPUとGPUはボディ中央ヒンジ寄りに設置され、5本のヒートパイプによってボディ後部のヒートシンクと接続される。
搭載SSDはPCI Express Gen3接続NVMe SSDが標準搭載されているが、今のゲームだと1タイトルでで200GB以上使うこともあるので、あれもこれもとゲームを入れるには若干心もとない気がする。ただ内部にアクセスできれば空きM.2スロットが1基残されているので容量の確保は簡単だ。一方メモリはDDR4-3200の16GBモジュール(動作はDDR4-2933)を2枚搭載しているため、ゲーム中にメモリ不足を感じることはほとんどないだろう。
グラフィックス性能向上はどれくらい?
ゲームの検証に入る前にグラフィックス性能を「3DMark」で確認しておこう。2020年版AORUS 15Gの検証を行なったときに得られたスコアも比較用に掲載するが、OSやドライバーのバージョンが異なるので、厳密な比較にはならない点を強調しておきたい。
デスクトップ用のRTX 3070はRTX 2080 Tiにかなり近い性能(詳細は三門氏のレビュー記事を参照)であり、RTX 2070 SUPERよりも圧倒的に高速だ。一方、2021年版AORUS 15Gのパフォーマンスは2020年版の2割増し程度。CUDAコア数では2,560基→5,120基と2倍になっているのにパフォーマンスが2割増程度なのは、ノートPCの宿命である発熱を抑制する上での必然、具体的にはAORUS 15Gに搭載されたRTX 3070のパワーリミット設定が関係していると推測できる。しかしながら、1世代の進化で性能が2割アップなら悪くないし、最新世代ゲーミングPCにおいてとくに重視したいレイトレーシング性能を計測するPort RoyalやDirectX 12性能を計測するTime Spyでは3割増し近いスコアを示している点は注目しておきたい。
最新ゲームでのパフォーマンスはどうだ?
もっとも大切なゲームのパフォーマンスを見てみよう。まずは軽めの「Apex Legends」から検証する。最高画質設定のほかに、設定を中程度(ON・OFF系の設定はすべてオン)に絞った設定の二通りでフレームレートを比較しよう。「CapFrameX」を利用し射撃練習場における一定の行動をとったときのフレームレートを測定した。また、ここからの検証データは2021年版AORUS 15Gのみとなる。
Apex Legendsの起動オプションで“+fps_max unlimited”設定を明示的に追加して検証したが、AORUS 15Gでは画質を中程度に絞っても300fpsの上限に達することはなかった。最低fpsの落ち込みも激しく、デスクトップ向けのRTX 3070のパフォーマンスよりもかなり控えめな性能である点に注意したい。とはいえ、60fpsを割り込むことはなく、高速液晶の性能を活かすことができている。
続いては「レインボーシックス シージ」を試してみよう。APIはVulkanを選択し、画質“最大”“高”“中”の3とおりにレンダースケール100%設定を追加した状態で検証する。フレームレートの計測は内蔵ベンチマーク機能を使用した。
描画の軽いApex Legendsよりも高フレームレートが期待できる。最低fpsは最高設定でも222fps、中設定にまで落とせば245fpsと高め。前述のとおりAORUS 15Gの液晶はリフレッシュレート240Hzなので、このゲームなら液晶のスペックをほぼ使い切ってライバルに差を付けることができるはずだ。
続いては「Dirt 5」で試してみよう。画質はプリセットの“Ultra High”“High”“Medium”とし、動的設定変更系の設定はOFFとした。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測する。
60fpsを維持するにはMediumまで落とすことになる。Ultra High設定でも微妙にスタッターが出ることはあるが快適に遊べることは確かだ。
次は重量級タイトルの「Assassin's Creed Valhara」で試してみよう。画質は“最高”“高+”“高”“中”で比較する。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測する。
こちらもDirt 5と同じく最高画質設定では平均60fps近辺の勝負となるが、最低fpsの落ち込みが激しい(デスクトップPCでももともとそんな感じだが)ことが分かる。このゲームでも中設定に落とすことで60fpsキープが可能になるようだ。
ここから先はDXR対応ゲームでのパフォーマンスを見てみよう。まずは「Call of Duty: Black Ops Cold War」で試してみる。画質はすべて最高(ただしモーションブラーはOFF)にした設定と、中程度(ON・OFF系の設定はON)にした設定を準備。これにレイトレーシング(RT)最高設定と中設定をそれぞれ組み合わせた4とおりの条件で計測した。DLSSはいずれの設定でも“高性能”としている。
シングルプレイヤー用ステージ「フラクチャー・ジョー」をプレイしたときのフレームレートを「CapFrameX」で測定した。
モバイル向けRTX 30シリーズは最新の第2世代RTコアを搭載しているのでDXRのパフォーマンスも上がっていることは確かだが、AORUS 15Gでは画質中+RT中でも60fpsキープはできなかった。ただ最高+RT最高設定でも平均60fpsはなんとか到達できているので、極端にオブジェクトの多いシーンでなければそうつらいわけではない。Warzoneなど対戦系コンテンツを中心にしたいなら、レイトレーシングはOFFにしてDLSSを使ってフレームレートの底上げをしよう。中設定なら比較的フレームレートを稼ぐことができる。
続いては「Watch Dogs: Legion」を動かしてみる。画質は“最大”“超高”“高”の3設定をベースに、レイトレーシングとDLSS(パフォーマンス)を追加した6パターンで検証する。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定した。
全体的な傾向は前のCall of Duty: Black Ops Cold Warと似ているが、超高+RT高+DLSSならば60fpsキープがなんとか可能であり、高+RT中+DLSSならなお余裕が出る。RTなしでのプレイもよいが、ノートPCでWatch Dogs: Legionの世界を楽しみたいなら、ぜひともAORUS 15Gで試してみてほしいものだ。
最後に試すのは「Cyberpunk 2077」だ。プリセットの“レイトレーシング:ウルトラ”“レイトレーシング:中”“ウルトラ”“高”“中”の5設定で比較する。群衆密度は最高に設定した。RTありの設定ではDLSSが“自動”となってしまうため、手動でDLSS“パフォーマンス”に設定している。
ここではマップの特定のルートを車で移動した際に「CapFrameX」でフレームレートを測定した。
さすが“現代のCrysis”と評されるほどの重さを持ったゲームだけに、レイトレーシング:ウルトラ設定では平均60fpsに一歩およばない。しかし1段下のレイトレーシング:中設定なら平均60fpsは超えることができる。レイトレーシングなしの“高”や“中”のほうがフレームレートが稼げるが、Cyberpunk 2077の退廃的な世界観を満喫したいなら、ぜひともレイトレーシング有りの設定で楽しんでいただきたい。重さ2kgのノートPCであることを考えれば、十二分に納得のいく性能と言える。
CPU温度にやや難あり
ゲームの検証が一通り終わったところで、薄型化したAORUS 15Gの冷却は十分なのかチェックしてみたい。室温約25℃の環境でCyberpunk 2077(レイトレーシング:ウルトラ設定)を起動し、約30分プレイ状態で放置したときのCPUパッケージ温度やGPU温度などを「HWiNFO」で追跡した。
GPU温度は83℃辺りで頭打ちになるのに対し、CPUは86℃辺りで上下し、ほんの一瞬90℃を超えることもある、といった様子。さすがにCPUはサーマルスロットリングに入るコアが毎秒どれかしら出現する(Core i7-10870Hのサーマルスロットリングはコア単位でON・OFFになる)。ヒートパイプ5本を使っているとはいえ、薄型ボディに14nmプロセスのCPUを搭載した苦労が伺える。
次のグラフは、同じタイミングでCPUとGPUのクロックを追跡したものである。“平均実効クロック”とは、占有率も加味したクロックのことで、クロックが高い状態でも仕事をしていなければ実効クロックは低くなる。
CPUの最大クロックはおおよそ3GHz台前半に収まり、ときどき3.7GHz辺りまで上昇するのに対し、GPUは1,350MHz辺りでほぼ安定している。モバイル向けRTX 3070は発熱を抑えるためにクロックをかなり抑えて動かしているようだ。これならCUDAコア数が2倍になった割にRTX 2070 SUPERに2割程度の差しか付かなかった理由も納得がゆく。ここまで低クロックだということは、GPUのTGP(Total Graphics Power)もそうとう低めになっていることが予想される。HWiNFOで読み取れる「GPU Power」もどんな感じなのかチェックしてみよう。
AORUS 15GのRTX 3070は、平均すると87W程度のパワーで運用されている。モバイル向けRTX 3070のTGPは80〜125W+となっているので、AORUS 15GのRTX 3070は設計上の下限に限りなく近い領域で運用されるようにチューニングされていることが読み取れる。これは薄型で約2kgという筐体に最新のハイパフォーマンスGPUを入れるための選択の結果と見るべきだろう。
2kg台のノートでここまで遊べる時代に。eスポーツもレイトレ対応タイトルも、いろんな場所で遊び倒せ!
昨年2020年版のAORUS 15Gを使い、今年も最新版AORUS 15Gに触れることができたが、デスクトップ向けのRTX 20シリーズ→30シリーズ交代劇のような鮮烈な印象は正直得られなかった。理由はすぐ上で解説しているとおり、薄型軽量ボディにハイパワーのRTX 3070を納めるためだ。
とはいえ、GPUの性能をフルに活かしていないと残念がる必要はない。薄型ノートでここまでゲームが遊べるようになったという大きな進化があるのだ。とくにCyberpunk 2077のような重量級のDXR対応ゲームがしっかり動くのは驚いた。ゲーミング用途においても、ノートPCにある程度の省スペース性と機動性を確保したいというニーズは少なからずある。巣ごもり、テレワークで家の中のあちこちを移動するにしても、コロナ禍が終息してからLANパーティであちこち転戦するにしても、そうした声の高まりは変わらないだろう。そんな場合にハイパフォーマンスでゲームを楽しみたいなら、AORUS 15Gは大いに検討に値する1台だ。
型番 | AORUS 15G XC-8JP2430SH |
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OS | Windows 10 Home |
CPU | Intel Core i7-10870H (8C16T、最大5GHz) |
ディスプレイ | 15.6インチ 1920x1080ドット 240Hzパネル X-Rite Pantone 色校正認証済 |
メモリ | DDR4-2933 16GB×2 (2933MHz動作) 空きスロットなし (最大64GB) |
グラフィック | NVIDIA GeForce RTX 3070 (VRAM 8GB) |
ストレージ | SSD 512GB(M.2 NVMe) 空きM.2 NVMe/SATAスロット×1 |
インターフェース | USB 3.2 Gen1 (Type-C) ×1 HDMI 2.1 ×1 mini DisplayPort 1.4×1 UHS-II対応SDカードリーダー×1 USB 3.2 Gen1 (Type-A)×3 ヘッドセット×1 (4極対応) LAN×1 |
通信 | RTL8125-BG REALTEK (2.5G) Ethernet Intel AX200 Wireless (802.11ax, a/b/g/n/ac/ax) Bluetooth: Bluetooth V5.0 + LE |
サイズ/重量 | 357(W) x 244(D) x 23 (H) mm 、約2kg |
[制作協力:GIGABYTE]